夏の日の一コマ
「翠、よく聞いて」 寝落ち電話と題し幼馴染の海斗と何時間も通話を続けた結果、一段と深刻な風に彼からそう切り出されたのは真夜中の一時だった。 「なに、なんか怖い話しようとしてる訳」 「怖くはないと思う」 「そう」 どんなことでも構わないけど、と付け足した。そして、彼の言葉を待った。しかし彼は何も言わず、少しの間が開く。時計の秒針が動く音だけが耳に当てたスマホを挟んで聞こえてくる。 「ほら、翠のお母さん…いないじゃん」 それを否定する理由もなく「うん」とスマホに向かって返事をする。 「会えるよ、明日」 何言ってるのと、ため息混じりの掠れた声が出た。 「霊感持ちなのは知ってるけど流石にそれは」 「本当だよ」 私の言葉を遮った彼の声は、どこか楽しげな雰囲気を纏っていた。それが不気味で、耳に強く押し付けたスマホを少し遠ざける。 「怖いって、まじで」 彼が言った。「…会いなよ。俺も一緒に行くし」 「騙すな」 「騙してない」 彼の言葉に若干の呆れが見えたような気がした。私は黙り、彼もそうする。 「…別に翠が嫌ならいい」 先に口を開いたのは彼だった。 「んー…ダメ元で行ってみようかな」 口が勝手に言った。そして二人とも黙った時間の合間に心がそれに賛同した。 「じゃあ明日の夜、一時に緑丘公園で。今日はお休み」 「…お休み」 そこであっけらかんと私たちの会話は幕を閉じた。ぷち、と電話が切れる音がする。画面を見ると、『通話終了 三時間十六分』黒色の背景に白の文字でそう表示されていた。 「やっほ」 「…うん」 夏の夜らしい、独特の涼しさだった。沢山の星たちが、輝きに輝いて自己主張をしている。 「時間的にもう少し」 スマホのロック画面を見ながら、海斗は呟いた。 「…はぁ。騙してんだろ、もう馬鹿馬鹿しいわ」思ってもいない言葉、といえば嘘になる。が、本当はそこまで思っていなかった。来たのは間違いなく自分の意思なのは十分にわかっている。 「じゃあなんで来たの? 俺別に強制してないけど」 「…好奇心」 適当に言っておき、海斗の言う、その時が来るのを待った。 五分後。 私は涙を流していた。しかし、その涙の主要成分は必ずと言って喜びや感動ではない。 それは、あまりにも ー 会えたとしても、心の底から望んでいたものじゃなかった。 「ママ…?」 ーーーーー 読んでくれてありがとうございました 最後のシーンはご自由に想像してください() 何かアドバイス等ありましたらご記入お願いします(小説家志望なので)