9月20日
涼音は、途方に暮れていた。 一体、何時間こうしていたのだろう。 あたりはまっしろ。冷たい、霧のようなものに囲まれている。 「だれかー?」 だれかー、だれかー、だれかー、れかー、れかー、れかー、かー、かー、かー……。 叫んでも、返ってくるのは、やまびこだけ。 そして、次の瞬間――。 一歩踏み出すと、体がぐらっと傾いた。 落ちていく。 目をつぶっていてもそれだけがわかった。 不思議と、怖くない。 暖かい何かに包み込まれているような感覚。 心地よさにうつつを抜かしていると、すとん、と体がおろされた。 目を開ける。明るい。 もう一度目を閉じようとすると、誰かが涼音をよんだ。 「涼音!早く起きなさい」 あぁ、わたしはこの流れを知っている。 この、9月20日の朝を、わたしが体験するのは、一体何回目のことなのだろうか。