再会
「はぁ…最悪」 今日は、彼氏に振られた日。すでに婚約者がいて、私は「浮気相手」だったらしい。 クズな元カレのせいで慰謝料まで払わされたんだけど…。 街中で思いっきりビンタされ、私の頬は今もひりひりしている。 「…一樹なら」 私の、高校時代の彼氏。 大学まで続いていて順調、だったんだけど、ある日、別れることになって、それから疎遠だ。 私が、本当に本当に、大好きな人。 これは、過去形にはならない。 今も大好きだから。 「…雨降ってきちゃった」 傘ーー持ってないや。 なんてついてない日なんだろう。最悪の日だーー。 なにもかも、疲れた。 「…鈴?」 ーーなんで、あなたが。 噂をすれば現れるとは、こういうことだろうかーー口には出していないけれど。 「…かず、き…」 ああ、本当に。 今日は人生最悪の日だ。 「…あ…目、覚めた?」 ここは、と見慣れない天井を視界に映した直後、ふと懐かしいその声が耳に入ってきた。 「…一樹、よね?」 「うん。鈴だろ?」 「…うん」 大好きな元カレ。なんで私を振ったんだろうーー。 「…熱があるみたい。大丈夫?」 そっか…あのとき、私は雨に打たれて風邪をひいちゃったのかぁ…。 「良ければ話聞くけど」 なんだかもうどうでも良くなって全部洗いざらい話してしまった。 熱の影響が大きいんだと思う。 頭があまり働かないなか、私はとうとう言ってしまった。 「ーーだからね、誰かに振られるといつも一樹のこと思い出しちゃうの。なんで振ったの?ってーー私は、大好きだったんだよ!?すっごく大好きで…」 熱で、朦朧とするなかでも、言った後はすぐに口を抑えた。 言ってはいけない、言ってはいけないのにーー。 一樹は、何も言わずにぎゅっと私を抱きしめた。 「…ごめん。俺も、大好きーー」 「なら、なんで振ったの!?」 「…医者の夢を叶えたかったんだ。だけど、鈴は反対してるんだって思ったーー勘違いだった」 そういえばあのとき、「勉強しないと」と時間を作ってくれない彼にちょっと強く言っちゃったんだ。 ーー医者になる夢もいいけど、それよりも周りのことよく見てよ 医者の夢はずっと応援してきた。 彼が兄を病気で失った時からの、大事な大事な夢だったから。 私のせいでもあったんだねーー。 「ごめんね」 「!ううん。俺も悪かった」 二人で謝罪をし合ううちに、なんだかおかしくなってきた。 目を合わせて、二人でくすっと笑った。 「…大好きだよ、一樹」 「…うん。俺も、鈴が大好きーー…もう一度、付き合ってほしい」 「もちろんです…!」 それから、私たちは、会えなかった分の埋め合わせのように、たくさんデートして、たくさん一緒に過ごした。 今日は、結婚式の日だ。 もちろん、私と、一樹の。 「「おめでとー!」」 みんなから祝福されながら、私は左手の薬指に光る、結婚指輪を見つめた。