ずっとおんなじ君が良かった
「おかえり!ご飯作っといたから一緒に食べよ!」 満面の笑顔でキミは言った。 キミは愛らしいショートカットをふわふわさせながら、廊下の奥のリビングから、弾むような足取りで僕に歩み寄ってきた。玄関で靴を脱いでいる僕のコートを素早く脱がせ、ハンガーにかけると、その白く滑らかな指を絡ませるようにして僕の手を握ってくる。 「今日は立也の好きなハンバーグを作ったんだ。ちょっと焦がしちゃったけど、その分ソースは完璧だから安心して」 僕の隣を歩きながら、おどけるようにそう言って僕を見上げるキミ。確かに、リビングから漂ってくる匂いはキミの作るデミグラスソースのものだ。 「ほんとだ。いつものいい匂いだね」 隠し味があるとかで、作っているところは一回も見たことがないが、キミがちょくちょく作ってくれるので、匂いでわかるようになってしまった。こんな時ばかりは、出張ばかりのこの仕事にも感謝の念が湧いてくる。 「今回は長かったのに、まだ覚えててくれたんだ。嬉しい」 そう言ってぴったり寄り添ってくれるキミの温もりが、自分如きに守れるなんて勘違いしていたのは何年前だろう。 夕食後、キミがベッドで静かに横になっているのを確認した僕は、そのうなじにぽつんと張り付いているボタンを押した。そのカチリ、という無機質な音は、毎回僕を現実に引き戻す。その音から逃れたくて、僕はスマホを耳に押し当てた。宛先を探す電話アプリのツー、ツー、という鳴き声に耳を傾ける。やっと繋がったのを確認すると、僕は相手の挨拶も待たずにまくし立てた。 「LN28星3695番地の三津立也です。アンドロイドによる故人代行サービスの利用者として連絡しました」 ずっと前に死んでしまった君を僕のそばに留めるために。 「不具合の修正についてです」 兵士のくせに自分の恋人一人守れなかった自分の情けなさから目を逸らして。 「」 完璧な僕の記憶の中の君を求め続けるために。 今日もまた、キミの親元に訴えるのだ。