短編小説みんなの答え:11

【恋愛短編小説】きっと。

「ほら、止まるな止まるな!あと3周!」 グラウンドに先生の大きな声が響き渡る。 「はぁ‥っ、は、はぁ‥っ」 私はクラクラするのを何とか堪えて、もう一歩を踏み出した。 「こら、そこ!喋りながら走るんじゃないぞ!」 先生が誰かに注意している。 喋る余裕がある子がいるんだ‥。 私は今もう倒れそうだというのに。 体育なんて‥それこそ、陸上なんて、大嫌いだ。 「は‥っ、あ、‥っ、はぁっ‥‥」     ‥ ‥ ‥ そのとき、颯爽と私の横を駆け抜けていった男の子がいた。 __中島颯太くん。 中学1年生でありながら、陸上部のエースとも言われている、中島くん。 私が、密かに、恋心を抱いている‥、中島くん。 中島くんは、私があとグラウンド3周もあるというのに、もうゴールしたようだった。 同じときにスタートしたとは思えない。 そのとき、後ろから、笑いながら3人の女の子が私のことを追い抜いていった。 きっと3人の話の中で笑ったんだろうけど、私に「足おっそ!」と言っているように聞こえてしまう。 これで私はクラスで1番最後尾になった。 走り終わった中島くんと、数人が、楽しそうに笑っている。 その笑いって、私のこと‥? 私の足が、遅いって‥? そう思った瞬間、私の足は動かなくなった。 膝がカクンと曲がって、手も動いてくれない。 やば、このままじゃ、顔から‥ 先生っ‥ 声が出ない。 先生は記録を取っていてこっちを見ていない。 私が1番後ろにいるせいで、誰も気づいてくれない。 どうしよう。 あぁ、このまま、私、倒れるんだ。 怪我しちゃう、だろうな‥。 「__り!!」 誰かが、何か叫んでる。 「__おり!!」 え、なに‥? 「詩織っ!!!」 私の、名前‥? 私の腕に誰かが触れる。 そのまま、引っ張られて、起き上がる。 クラッとして、まだ目を開けられない私を、優しく支えてくれる、影。 「先生!あの、詩織が‥!」 先生の走ってくる足音。 「詩織、急に倒れて‥」 みんなのざわめき。 「俺、詩織のこと、保健室‥連れて行きます」 俺‥? 男の子? 誰、今私を支えてくれてるの。 体が浮いた。 しっかりした背中に、私の体が乗っている。 「詩織。大丈夫か‥?」 私は小さく頷く。 「よかった‥。無理すんなよ」 その声が、中島くんのものに、聞こえたのは。 __きっと、私の、気のせいだ。

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