SAKURA SAKU
2月の寒い冬の朝。 桜はまだ枝がむき出しだ。 私は涙ぐむ母に背中を押されて、門をくぐる。 今までの全てを背負って、私は今ここにいる。 張り詰めた空気のなか、ただひたすらに歩く。歩く。歩く。 案内板など見なくたって、ここの地図はもう頭に入りきっている。 階段を上り、廊下を少し歩くと右手側に教室が見えた。 目を瞑って、深呼吸。大丈夫だ、私は強い。教室へ足を踏み入れた。 席について時計を見ると、まだ少し余裕がある。 お手洗いに向かった。 鏡に映った自分の顔は、どこか不安げで頼りない。 作り笑いをし、心の中で10数えた。 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 教室に戻ったとき、試験監督が入ってきた。 問題が配られ、解答用紙に受験番号と名前を記入する。 「どうせ最後だし、とことんやろう」 自分にしか聞こえないような声で呟く。 もう一度目を瞑り、深呼吸。 まぶたの裏には塾の先生、親、友達の顔が浮かぶ。 「始めてください」 桜を、咲かせる。