一歩
『一歩』、足を踏み出す。 知らない景色が目に飛び込んでくる。 足がすくみ、不安が心を支配する。 ……それでも。勇気を振り絞って━━ 「結夏(ゆいか)!起きて!遅刻するよ!!」 大きな声がして目が覚めた。何か、夢を見ていた気がする。 私の名前は森崎(もりさき)結夏。至って普通の中学2年生だ。 今日は学校の始業式。支度をして家を出ようとすると、 「……本当に大丈夫なの?」 とお母さんに心配された。 「大丈夫!行ってきます」 と強気に答えたが本当は不安で仕方がなかった。私は震える足を無理矢理動かして学校へ向かった。 学校に着くと沢山の知らない人で溢れていた。 その瞬間、不安と恐怖が私を襲ってきて━━ 気がついたら私は保健室のベッドの上に横になっていた。 「森崎さん、気づいたのね!よかった……」 と保健の川西(かわにし)先生が言う。 周りを見渡し、先生しか居ないことを確認するとホッとして力が抜けた。 ……やっぱりだめだった。きっとお母さんには学校から連絡が来ているだろう。それを聞いたらお母さんはどれだけ悲しむか。 私は「普通の子」ではない。PTSDという精神の病気を持っている。小学校の時にいじめられていたのが原因だ。中1の時も同じ様に倒れてしまい、そこからずっと不登校だった。 私は「普通の子」にはなれない。 でも、もう不登校になってお母さんに心配をかけたくなかった。だから私は保健室登校をすることにした。 保健室登校を始めて数日経ったある日、私は海咲(みさき)という女の子と出会った。自分と同じでたまに保健室登校をしている子だ。 海咲は1つ上の先輩だったけど「タメ口がいい!」と言われたのでそうしている。そして、海咲は私に勉強を教えてくれた。海咲と話していると、なぜか心が落ち着いた。 ある日、海咲と勉強をしている私を見て、川西先生が 「1人で勉強してるの?」 と聞いてきたので 「?いえ、海咲に教えてもらっています」 と答えると川西先生は驚きながらある昔話をし始めた。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 4年前、この学校には上田(うえだ)海咲という少女がいた。とても明るい子だったが、価値観や考え方が他の人と違かったことが原因でクラスでいじめを受けていた。 そしてそれに耐えられなくなった海咲は保健室登校をすることにした。しかし、それからしばらくして事件が起きた。 突然海咲が消えたのだ。実は、保健室登校をしてる間にもいじめられていたという。それに耐えられなかったのだろう。 それから、この保健室には海咲の幽霊がいて、同じ境遇の子と過ごしているらしい……。 ━━━━━━━━━━━━━━━ 息をするのを忘れるかのように私はその話を聞いていた。 海咲が幽霊? そんなわけ……。 考えれば考えるほど混乱してくる。 私はショックに耐えられずに走って家に帰った。 次の日。恐る恐る保健室に行くと海咲がいた。 「あ……」 「結夏……。私の事、川西先生から聞いたんだよね。怖がらせてごめんね」 私が何か言う前に海咲は謝ってきた。 「そんなことない!海咲は優しくて、強くてっ……」 「ねえ、結夏」 海咲は悲しそうな顔で私に話しかけてきた。 「私ね、ずっと後悔してたんだ。信頼できる人と一緒に居たらよかったな。って。 それで思ったの。他の人に私と同じ思いをして欲しくないって。だから、結夏と一緒にいたんだ。」 思わず、涙がこぼれた。 海咲が私の涙を拭こうと手を差し出すが、その手は私をすり抜けた。 「私は、幽霊。自分もわからないけど、私と同じ思いをしている人を助けたいっていう気持ちが、私をここに居させているんだと思う。 でも、もう限界かも。身体が、少しづつ薄くなってるの。」 海咲の、最後の言葉を聞く。 「ねえ、結夏。悩みは、ひとりで抱えなくていいんだよ。周りには、結夏のこと笑ったり、変だなって思ってくる人も、いるかもしれない。でも同時に、いやそれ以上に。結夏のことを守ってくれる人が沢山いるんだよ。結夏。世の中には自分と気の合う人が絶対いるよ。だから━━。 無理してとは言わないけど、結夏にはほんの『一歩』でいいから足を踏み出して欲しい。それだけで見える世界がすごく変わるから。どうか、怖がらないで。私はずっと、結夏のそばにいるよ。」 海咲はそう言うと少しづつ薄く、薄くなっていった。 「いかないで!!海咲!!」 「大丈夫。結夏ならできるよ。いつでも私は応援してるからね」 海咲は微笑むと、溶けるように消えてしまった。 今日から中学3年生。新しい学年に新しいクラス。不安でいっぱいだ。でも。 「結夏ならできるよ。」 今も、私のそばには海咲がいる。 私は「普通の子」じゃないかもしれない。それでも、前に進む。 海咲の言葉を思い出して━━ 私は新たな『一歩』を踏み出した。
いろんな相談先があります
子供のSOSの相談窓口
チャイルドライン[特定非営利活動法人
チャイルドライン支援センター]
みんなの答え
※きびしいコメントを見たくない人は
「見ない」をおすと表示されなくなるよ!
すごいっ
すごいです!感動するし、まさか幽霊だったとは…! ちゃんと物語って感じ(?)がしてすごくすきです!
(゚∀゚)←言葉が出ない
どーもこんちはめいです! えと、えっとね、 やばいわ。(語彙力喪失) もう、文章から文才あるオーラ溢れ出てる。 やばい、うん、もうほんとにこの世のどの言葉でも 言い表せない。 小説にして売ろう。うん。 やばいぃよぉ!!すごすぎる!! 私も投稿しようとしてるけど自信喪失するくらいにやばい。 とにかくこの才能は伸ばしたほうがいいと思いますね。
えとねえとねーすごい!!
こんにちは∩^ω^∩ 低浮上すぎるはるちゃんです♪ 〈本題〉 題名と、文章の関連がすごくいいと思いました。 短くもなく、長くもない題名とすごく いい関係が醸し出されていました! 上から目線ごめんなさい! では!
神か
こんな短さで人を泣かせられるのはマジで神。発想がすごい。私はPTSDじゃないけど、自分もちょっとくらい辛いことがあっても頑張ろうって励まされました。とても良かったです!
す、凄すぎてショック。
こんにちは!はなといいます! あのー私が出した作品なんてもうダメダメやん って思うくらいすごいですね。こんな凄いものしか採用されないのか泣
すごい…!!
こんちゃ!そーらですピコン☆ この短編小説を読んでいじめのつらさ、保健室登校の事などなど…いろんなことを学べました。 私、こんな感じの小説が好きなのでとっても感動しました…!語彙力がなくてすみません>_<
え、ちょっと待って、神ですか?
こんちゃっ!元綺星の紫陽花だよー! アジサイじゃなくて、「しおか」! +*°.START.°*+ え...cocoaさん神なんですか...? 神ですよね...? このお話良すぎますよ...! 改行とか「」をちゃんと使っていて読みやすいし、ネーミングセンス良さすぎるし、ストーリーも良すぎるし、海咲ちゃん優しすぎるし、結夏ちゃんも優しいし...涙 特に心に残ったのは 「今も、私のそばには海咲がいる。」 っていう文! 本当にいいお話をありがとう! +*°.FINISH.°*+ またねっ!