夢の狭間に消えた
夢は海のようになっているらしい。 夢の底には、自分も知らない、自分の記憶が刻まれているらしい。 らしい、というのは今語ったことは全て噂でしかないからだ。 火のないところに煙は立たないが、 少々煙が上がりすぎというのが現状だ。 今日もまた、夢の中に沈んでいく。 今日はどこまで潜ることができるだろうか。 永劫に続くような、須臾に消えゆくような、 そんな時間の中で、浮かばないように、 必死に潜り続ける。 潜り続けるうちに、綺麗なカケラを拾い、 そのカケラが魅せる夢幻に、 笑みを浮かべ、又は苦悶の顔を浮かべ、 時間も、何もかもを忘れ去っていくのだ。 カケラの中には、拾ってしまっては いけない物も紛れ込んでいる。 それが俗に言う悪夢である。 それとは別に、夢の狭間に行ってしまうのもある。それを拾えば、瞬く間に暗闇に 放り出されてしまう。 遠い遠い場所に見える小さな光を 目印にして、歩み続けなければいけない。 今日は運が悪かった。 狭間のカケラを拾ってしまった。 もう何度か経験しているが、 やはり暗闇というのは、夢であっても 恐怖心を煽ってくるようだ。 暫く歩いているうちに、まだ試していない パターンを思いついた。 逆に向かって歩くことはまだしていない。 くるりと踵を返して、光の見えない、 真っ暗な場所を、慎重に歩いた。 本来なら、こういう事はすべきでない。 最悪、夢に取り込まれてしまうからだ。 しかし、私の中の好奇心がそれを良しと しなかった。暗闇を歩き続けていると、 メリーゴーランドが目の前に現れた。 それは普通ではなかった。どうやったのか、 凍り付いていて、氷柱も出来ていた。 勿論動くことは出来ない。 見たことが無い状況に、笑ってしまう。 少し氷柱を触って、夢だと刻み込む。 夢に取り込まれる可能性を呑み込んで、 そっとメリーゴーランドに触れた。 周りが一瞬光に包まれ、場所が変わった。 つまり、先程のメリーゴーランドは カケラの一部であったということだ。 この場所は、昔よく遊んだ遊園地だ。 目の前にはあの頃と全く変わらない、場所。 少しばかり目を潤ませ、それを指で拭う。 そのまま幸せな夢に、走り出していた。 _________________________________M 彼女の手記を最後まで読み終えた。 彼女は思い違いをしていたせいで、 取り込まれてしまった。 彼女の考えた取り込まれ方は、 悪夢から逃げきれないこと、 夢海で普段と違う行いをすること。 しかし実際は違った。 起きたく無いと、心底から思う事により 取り込まれてしまうのだ。 どんなに悪夢に捕まっても、 時間が経てば普通に起きる。 普段と違う行いをしても、夢海は広く、 別の区域の夢海に入るだけだ。 彼女は名の知れた研究者であったが、 誰もわからない事に触れてしまったせいで 対処法も分からず、 今も夢海を彷徨う羽目になっている。 先人は偉大だな、と呟き、手記を閉じた。
みんなの答え
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なるほど…
みなさんこんにちは! 莉暖です! なるほどです… 何か考えるものがありましたが、まさか他の人の手記だとは思いませんでした! 個人的に、表現方法が刺さって、魅力的でした! 素敵な作品ありがとうございましたm(_ _)mペコリ おつりのん~!