幼馴染
久しぶりの学校はなんだかつまらなかった。暫く学校を休んでいたから、授業にもついていけない。友だちの会話にも。
お弁当を食べていたとき、ふと、佐恵子ちゃんが「知ってる?」と声を顰めた。
「原田と瀬野さん、付き合ったんだよ」
「えっ? そうなの?」
びっくりして思わずお箸を落としそうになる。俊が瀬野さんと喋るところなんて殆ど見たことがなかった。
「知らなかったかー、幼馴染だし知ってると思ったんだけどな。風邪で休んでたとき、原田がプリント届けてたでしょ。喋らなかった?」
「うん。お礼言うぐらい」
瀬野さんはお洒落だし可愛い。このクラスの一軍女子だ。密かに思いを寄せている男子も多かったから、俊が瀬野さんと付き合ったのは悔しかっただろう。
「でもあたし、美香と付き合うと思ってたのに。まさか瀬野さんなんてね。気持ちはわからなくもないけど。原田、美香のこと好きだと思ってた」
佐恵子ちゃんが取り繕うように言ってくれる。私は苦笑した。
「あたし、別にあいつのことどうとも思ってないよ。ただの幼馴染だもん」
なのに、この気持ちはなんなんだろう。
その日の帰り道、俊が声を掛けてきた。
「プリント、ありがと」
お礼を言って、適当な話で場を埋める。俊の様子はどこかおかしかった。なんだか、私に遠慮しているような。
「ねえ、あのさ」
言わないほうがいいのかもしれない。でも、聞かずにはいられなかった。
「俊って瀬野さんと付き合ってるんだね。おめでとう。可愛いし、いいじゃん」
俊が気まずそうに頷く。今日は俊の誕生日だった。鞄の中に入っている包みが、今は鬱陶しく思える。話題を変えようとする俊に苛々とした。
「瀬野さんと帰れば? なんであたしと帰んの? いるじゃん、あそこに」
もうどうでもよくなって、角を曲がろうとする瀬野さんに顔を向ける。
「いや、でもさ、あの……」
しどろもどろになる俊に怒りが爆発した。鞄の中から包みを取り出す。そのままおめでとうって渡せばよかった。でも私はそうしなかった。包装用紙を破って、中身をすぐ横に流れている川に放った。それから用紙を俊に投げつける。
「大っ嫌い! さっさと行ってきなさいよ、馬鹿! もう二度と話しかけないで!」
呆然とする俊の横をすり抜けて私は駆け出した。
その次の日、俊は私に話しかけようとしてきた。私は無視を決め込む。そんな日が続いた。
あれから一週間が経った。
「なあ、美香!」
俊が走ってくる。
「部活じゃないの?」
するりと言葉が出た。
「いや、抜けてきた」
俊は勢いよく頭を下げる。
「すみませんでした」
そう言って、あの日私が捨てたはずの誕生日プレゼントを取り出した。
「あの、オレにとって美香は、妹っつーか、手のかかるやつだけど、だから、甘えてたのかもしれない。……瀬野とは別れてきた。泣かれて、もうとりあえず、土下座して謝った。許してもらえたかはわかんないけど」
「俊……」
馬鹿、ほんと馬鹿。瀬野さんの気持ちも考えられないし、ほんとに……。
でも俊って、そんなやつだっけ? そんなに行動力あったっけ?
「あの、オレ、美香と、恋愛とかそういうのじゃなくて、ふつうに、元みたいに戻りたくて……ふつうの幼馴染のままに。土下座しろっていうなら土下座する。だから……」
周りくどい告白に笑ってしまう。
「ほんっと……やっぱり馬鹿だよ」
俊はやっぱり、一番の幼馴染。
ここなっつさん(東京・12さい)からの相談
とうこう日:2024年8月14日みんなの答え:2件
お弁当を食べていたとき、ふと、佐恵子ちゃんが「知ってる?」と声を顰めた。
「原田と瀬野さん、付き合ったんだよ」
「えっ? そうなの?」
びっくりして思わずお箸を落としそうになる。俊が瀬野さんと喋るところなんて殆ど見たことがなかった。
「知らなかったかー、幼馴染だし知ってると思ったんだけどな。風邪で休んでたとき、原田がプリント届けてたでしょ。喋らなかった?」
「うん。お礼言うぐらい」
瀬野さんはお洒落だし可愛い。このクラスの一軍女子だ。密かに思いを寄せている男子も多かったから、俊が瀬野さんと付き合ったのは悔しかっただろう。
「でもあたし、美香と付き合うと思ってたのに。まさか瀬野さんなんてね。気持ちはわからなくもないけど。原田、美香のこと好きだと思ってた」
佐恵子ちゃんが取り繕うように言ってくれる。私は苦笑した。
「あたし、別にあいつのことどうとも思ってないよ。ただの幼馴染だもん」
なのに、この気持ちはなんなんだろう。
その日の帰り道、俊が声を掛けてきた。
「プリント、ありがと」
お礼を言って、適当な話で場を埋める。俊の様子はどこかおかしかった。なんだか、私に遠慮しているような。
「ねえ、あのさ」
言わないほうがいいのかもしれない。でも、聞かずにはいられなかった。
「俊って瀬野さんと付き合ってるんだね。おめでとう。可愛いし、いいじゃん」
俊が気まずそうに頷く。今日は俊の誕生日だった。鞄の中に入っている包みが、今は鬱陶しく思える。話題を変えようとする俊に苛々とした。
「瀬野さんと帰れば? なんであたしと帰んの? いるじゃん、あそこに」
もうどうでもよくなって、角を曲がろうとする瀬野さんに顔を向ける。
「いや、でもさ、あの……」
しどろもどろになる俊に怒りが爆発した。鞄の中から包みを取り出す。そのままおめでとうって渡せばよかった。でも私はそうしなかった。包装用紙を破って、中身をすぐ横に流れている川に放った。それから用紙を俊に投げつける。
「大っ嫌い! さっさと行ってきなさいよ、馬鹿! もう二度と話しかけないで!」
呆然とする俊の横をすり抜けて私は駆け出した。
その次の日、俊は私に話しかけようとしてきた。私は無視を決め込む。そんな日が続いた。
あれから一週間が経った。
「なあ、美香!」
俊が走ってくる。
「部活じゃないの?」
するりと言葉が出た。
「いや、抜けてきた」
俊は勢いよく頭を下げる。
「すみませんでした」
そう言って、あの日私が捨てたはずの誕生日プレゼントを取り出した。
「あの、オレにとって美香は、妹っつーか、手のかかるやつだけど、だから、甘えてたのかもしれない。……瀬野とは別れてきた。泣かれて、もうとりあえず、土下座して謝った。許してもらえたかはわかんないけど」
「俊……」
馬鹿、ほんと馬鹿。瀬野さんの気持ちも考えられないし、ほんとに……。
でも俊って、そんなやつだっけ? そんなに行動力あったっけ?
「あの、オレ、美香と、恋愛とかそういうのじゃなくて、ふつうに、元みたいに戻りたくて……ふつうの幼馴染のままに。土下座しろっていうなら土下座する。だから……」
周りくどい告白に笑ってしまう。
「ほんっと……やっぱり馬鹿だよ」
俊はやっぱり、一番の幼馴染。
ここなっつさん(東京・12さい)からの相談
とうこう日:2024年8月14日みんなの答え:2件
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いい話! ヤッホー!!
虹色花火だよ!
本題
とてもいい話でした!最後の方の文がとても良い!
ありがとうございました! 虹色花火#明日相談公開されたら改名予定さん(神奈川・11さい)からの答え
とうこう日:2024年11月19日 -
え待ってすごすぎ…!! SUN★お日様だよ(*^▽^*)
すごすぎる…!!
内容も、幼馴染をテーマにした
すごく素敵なお話だった!
ここなっつさん、
天才ですか!?(((((
本当の小説家かと思っちゃいました!!
語彙力とかめっちゃあるし、
なんかプロの書き方?みたいな
すごく読みやすくて、
話に引き込まれました!!
じゃね☆彡 お日様さん(埼玉・12さい)からの答え
とうこう日:2024年11月19日
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