「僕は星になりたい」
彼が余命宣告されていた日にちから、三週間経っている事は承知の上だった。
どんどんと痩せ細っていく彼の姿の変化にも気づいていた。
けれど私は知らない振りをし、いつも通りに接した。
自分の気持ちは伝えずに。
明日、明日と、先延ばしにしながら。
私の初恋の相手、透乃遥は重い病気を患っており、命は長く持たないとされていた。
私と遥は幼馴染だ。一番近い存在だった。近すぎたくらいに。
彼の傍に居れるなら幼馴染でもいいと思えた。
なのに、消えてしまうの?
クッションに抱き着き、そんな事を考えていた時だった。
携帯が鳴り、遥の母からの着信に戸惑う。
「どうしたの、おばさん?」
「千世ちゃん!遥が…っ!」
おばさんの荒れた声に、嫌な予感が張り付いた。
気がつくと、私は走っていた。
バスに乗り、落ち着かないまま病院へ向かう。
遥の病室へ直行し、勢いよく扉を開けた。
「千世ちゃん…」
「どうしたんですか!遥は!?」
「遥の状況が悪化して…危ない状態なの」
息を呑む。
「治療は終わって、今は落ち着いているんだけど、先生がもう持たないって…っ」
だから、最後になるかもしれないって事?
唇を噛み、ベッドに横たわっている遥の元へ行く。
「遥…」
私の声で、遥はゆっくりと瞼を上げた。
日の光が当たり、遥を照らす。
「千世…来てくれたんだね」
掠れた声で、遥は微笑んだ。
お医者さんが入ってきて、おばさんを呼び出す。
病室に二人きりになった。
「僕、死ぬみたいだ」
遥はいつもと変わらない、優しい笑顔を浮かべていた。
「何で…」
「分かるんだ。何だろうね。でも、最後に千世に会えてよかった」
遥の手をとる。
そうでもしないと、消えてしまいそうだったから。
「遥はまだ死なない!まだ死んじゃ駄目なの!」
涙を堪え、そういう。
まだ、逝かないで。私の傍に居てよ。
「千世…」
ずっと後回しにしてきた。
でも、もうしない。
最後だからじゃない。これからも一緒に居たいから。
「遥、私、遥の事好きなの。大好きなの。」
優しい笑顔も、優しい声も、強い所も、全部。
遥は驚いた様に目を見開き、そして微笑んだ。
私の大好きな笑顔だった。
「逝かないで。ずっと一緒に居よう?」
縋り付く様に、言う。
視界が濁り、良く見えない。
「泣かないでよ、千世」
その涙を、遥は拭ってくれた。
「僕も、千世が好きだよ」
驚きと嬉しさで、嗚咽が出るほど涙が零れる。
そんな私を、遥は優しく見守ってくれた。
「だからね、千世。」
遥の声。優しくて、芯があって、安心するの。
「僕は星になりたい。そして、千世を見守っときたい」
「はる、か…っ」
駄目だ、分かってしまう。
逝ってしまう。待って、待ってよ。
この気持ちをどうしたらいいのか分からなくて、遥の手を強く、強く握る。
「逝かないで、遥…っ」
遥が私の後頭部を優しく引き付けた。
遥の唇に、触れる。
「千世、泣かないで。僕は千世の笑った顏が好きだ。大好きだ」
遥も泣いていた。
透明で、綺麗で、輝いていた。
「来世でも、僕は千世を見つけるよ」
約束、と、遥は小指を差しだしてきた。
私は遥の小指と、自分の小指をしっかり結びつける。
「ずっと一緒だよ、千世」
遥はそう言って、息を引き取った。
遥の寝顔は、本当に、本当に美しかった。
その日の夜空は、数えきれないほどの数の星が、夜空を埋め尽くしていた。 き る .さん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2024年8月16日みんなの答え:4件
どんどんと痩せ細っていく彼の姿の変化にも気づいていた。
けれど私は知らない振りをし、いつも通りに接した。
自分の気持ちは伝えずに。
明日、明日と、先延ばしにしながら。
私の初恋の相手、透乃遥は重い病気を患っており、命は長く持たないとされていた。
私と遥は幼馴染だ。一番近い存在だった。近すぎたくらいに。
彼の傍に居れるなら幼馴染でもいいと思えた。
なのに、消えてしまうの?
クッションに抱き着き、そんな事を考えていた時だった。
携帯が鳴り、遥の母からの着信に戸惑う。
「どうしたの、おばさん?」
「千世ちゃん!遥が…っ!」
おばさんの荒れた声に、嫌な予感が張り付いた。
気がつくと、私は走っていた。
バスに乗り、落ち着かないまま病院へ向かう。
遥の病室へ直行し、勢いよく扉を開けた。
「千世ちゃん…」
「どうしたんですか!遥は!?」
「遥の状況が悪化して…危ない状態なの」
息を呑む。
「治療は終わって、今は落ち着いているんだけど、先生がもう持たないって…っ」
だから、最後になるかもしれないって事?
唇を噛み、ベッドに横たわっている遥の元へ行く。
「遥…」
私の声で、遥はゆっくりと瞼を上げた。
日の光が当たり、遥を照らす。
「千世…来てくれたんだね」
掠れた声で、遥は微笑んだ。
お医者さんが入ってきて、おばさんを呼び出す。
病室に二人きりになった。
「僕、死ぬみたいだ」
遥はいつもと変わらない、優しい笑顔を浮かべていた。
「何で…」
「分かるんだ。何だろうね。でも、最後に千世に会えてよかった」
遥の手をとる。
そうでもしないと、消えてしまいそうだったから。
「遥はまだ死なない!まだ死んじゃ駄目なの!」
涙を堪え、そういう。
まだ、逝かないで。私の傍に居てよ。
「千世…」
ずっと後回しにしてきた。
でも、もうしない。
最後だからじゃない。これからも一緒に居たいから。
「遥、私、遥の事好きなの。大好きなの。」
優しい笑顔も、優しい声も、強い所も、全部。
遥は驚いた様に目を見開き、そして微笑んだ。
私の大好きな笑顔だった。
「逝かないで。ずっと一緒に居よう?」
縋り付く様に、言う。
視界が濁り、良く見えない。
「泣かないでよ、千世」
その涙を、遥は拭ってくれた。
「僕も、千世が好きだよ」
驚きと嬉しさで、嗚咽が出るほど涙が零れる。
そんな私を、遥は優しく見守ってくれた。
「だからね、千世。」
遥の声。優しくて、芯があって、安心するの。
「僕は星になりたい。そして、千世を見守っときたい」
「はる、か…っ」
駄目だ、分かってしまう。
逝ってしまう。待って、待ってよ。
この気持ちをどうしたらいいのか分からなくて、遥の手を強く、強く握る。
「逝かないで、遥…っ」
遥が私の後頭部を優しく引き付けた。
遥の唇に、触れる。
「千世、泣かないで。僕は千世の笑った顏が好きだ。大好きだ」
遥も泣いていた。
透明で、綺麗で、輝いていた。
「来世でも、僕は千世を見つけるよ」
約束、と、遥は小指を差しだしてきた。
私は遥の小指と、自分の小指をしっかり結びつける。
「ずっと一緒だよ、千世」
遥はそう言って、息を引き取った。
遥の寝顔は、本当に、本当に美しかった。
その日の夜空は、数えきれないほどの数の星が、夜空を埋め尽くしていた。 き る .さん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2024年8月16日みんなの答え:4件
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うぐ・・・ 泣ける話だね。亡くなる前の告白って・・・
がんばれ千代ちゃん!
星になれたかな・・
みかんさん(静岡・10さい)からの答え
とうこう日:2024年12月9日 -
素敵 ... # 12 / 1 改名 決定 ~ .**
元 月那 × 楓葵 × 恋舞蕗 の 蝶露 ですっ . **°+*
♪ **. Main .** ♪
めちゃくちゃ 素敵 ... !!
切ないけど 心に残る
印象的な 短編小説でした !!
遥くん , 星になって 千代ちゃんを
見守ってくれてたら いいなっ
♪ **. Finish .** ♪
読んでくれて ありがと ~ .☆*
誤字 & 脱字 等 あったら ごめんなさい ... (*o_ _) *o))
また きずなんで 会えるのを 楽しみにしてます !!
蝶露 / Charo # ぴちりすさん(千葉・11さい)からの答え
とうこう日:2024年11月26日 -
泣ける・・ こんにちは、にゃんこです!
泣ける話でした。そして、とってもいい話でした!
千世さんに対する遥さんの優しさに涙が出そうになりました・・。
こんな素晴らしいのを書いてくださってありがとうございました。 にゃんこさん(静岡・11さい)からの答え
とうこう日:2024年11月21日 -
素敵! ヤッホー(^^) みゅゆんだよ
とっても素敵な小説だね!
最後の1文がいいなって思った みゅゆんさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2024年11月21日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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