月のない夜
どうして。私はあの時、こう言ってあげられなかったんだろう。正解かはわからないけれど、何も言えないよりはマシだったはずなのに。どうして。
ゴールデンウィーク。
学生は部活三昧。
私 宮田莉愛(みやた りあ)は小3から仲良しの水無月菜(みずなし るな)と一緒に1日だけ部活をサボって、渋谷で1日を満喫した後に、小学生の頃によく遊んでいた近所の公園に寄った。
そういえば私たちが初めて一緒に遊びに来たのはこの公園だったなと思い、2人でブランコを漕ぎながら話した。
「ねぇ、そういえば私たちが初めて一緒に遊び来たのもここじゃない?」
月菜が答える。
「え、そうだったかも!小3とかだっけ?もう8年目の付き合い!?長っ!」
「やば(笑)」
そんな他愛もない話をしていた、ある時。急に月菜の声のトーンが低くなった気がした。
「ねぇ莉愛。」
「ん?」
「人ってさ、なんで、生きてるのかな。」
「・・・へ?」
突然の重い質問に、つい戸惑ってしまった。
「あーほら、前YouTubeショートに流れてきてさ、人生辛いならここのコメント欄に書いてー的なの(笑)」
「あーね、よくあるよね(笑)」
「別に辛くはないけどさ、意味感じなくない?」
「確かに(笑)推しにいつか認知してもらえると信じて生きてますわ(笑)」
「いやー、私推しとかいないからさ、ほんと困っちゃう(笑)しかも莉愛と違って頭悪いしさ、将来困りそう(笑)」
私は笑ってしまった。
「私が死んでも世界は回るしな〜。」
「それはそう(笑)」
「誰も困らないよね。」
これに、私は何も答えられなかった。
私が困ると、言えなかった。
数日後、ゴールデンウィークも終わり、忙しい日常が戻ってきた。
そしてそこには、何も変わらない月菜がいた。
そう思っていた。
7月下旬。
梅雨に入ったと天気予報では聞いたのにも関わらず快晴。
夏休み中の部活に行こうといつも一緒に登校している月菜の家へ向かう。
すると、彼女の家の前には救急車と数人の野次馬たち。
驚いてそこまで走ると、ちょうど担架の上でぐったりとした月菜と涙目の月菜ママと月菜パパ、それに月菜の弟の陽斗(はると)くんが出てきた。
月菜ママは月菜と一緒に救急車に乗り込み、月菜パパはそれを心配そうに見つめている。
その横にいた陽斗くんと目が合い、月菜パパに
「パパ、莉愛ちゃん。」
と。それで私に気づいた月菜パパがこっちに来て、状況を説明してくれた。
「実は、今日の朝月菜が起きてこなくて、莉愛ちゃんが迎えに来ちゃうって起こしに行ったら・・・月菜が・・・部屋で・・・その、自殺・・・しようとしたみたいで・・・もう意識もなくて、呼吸もしてなくて、」
「え・・・」
「部屋に、これが・・・」
そう言って見せてくれたのは、所謂遺書というやつだった。
両親はバレーボールがとても得意で将来はバレーボール選手になると言われている陽斗くんに手をかけすぎていて、もう高校生だからと月菜にあまり時間をかけられなかったらしい。それでも月菜は毎日元気だし友達も多いし、明るい子だと思っていた。どうやらそれは月菜の仮面であって、私といる時には素の自分でいれる気がすると。思い返せば1年ほど前に、「莉愛といる時が1番楽!親友最高!」と言われた記憶がある。その頃から既に、この前言っていた生きている意味を感じられなかったのではないだろうと思い、気づいてあげられなかった自分に嫌気がさす。とりあえず部活どころじゃなくなってしまったので、月菜の家に入れてもらった。1時間ほどしただろうか、月菜ママから家電が。それをとった月菜パパが涙ながらにただ一言。
「月菜・・・死んだって・・・」
月菜パパは陽斗くんを連れて病院に向かうと言う。一緒に行こうと誘われたが、私はどうしても行く気にはなれず断った。
自宅への帰り道。
急に雨が降ってきた。
ああ、そういえばもう梅雨だったな。
雨降らなすぎて忘れてたよ。
傘、家だな。
まぁ帰るだけだしいいや。
「月菜。」
名前を口にしてみると、急に視界がぼやけた。
呼吸が苦しくなり、思わずその場にしゃがみこんだ。
5分ほどした頃か、落ち着いたので再び立ち上がると、雨は止んでいた。
でも、私の周りだけ大雨のように暗く、目の前は濃霧でもかかっているかのようにぼやけていた。
ごめんね月菜。
あの時こう言えばよかったよね。
人1人いなくなったくらいじゃ世界はなにも変わらない。
でも、きっと誰かが困る。
だって月菜がいなくなったら、
私の周りはずっと梅雨のまま、
私の目の前は霧のまま、
月菜には悪いけど、私が幸せでいるために存在していて欲しい
そんな自分勝手な答えを。
これ以降、私の周りは霧は見えなくても、月のない夜のように、真っ暗闇なままだ。 まほさん(神奈川・16さい)からの相談
とうこう日:2024年9月15日みんなの答え:1件
ゴールデンウィーク。
学生は部活三昧。
私 宮田莉愛(みやた りあ)は小3から仲良しの水無月菜(みずなし るな)と一緒に1日だけ部活をサボって、渋谷で1日を満喫した後に、小学生の頃によく遊んでいた近所の公園に寄った。
そういえば私たちが初めて一緒に遊びに来たのはこの公園だったなと思い、2人でブランコを漕ぎながら話した。
「ねぇ、そういえば私たちが初めて一緒に遊び来たのもここじゃない?」
月菜が答える。
「え、そうだったかも!小3とかだっけ?もう8年目の付き合い!?長っ!」
「やば(笑)」
そんな他愛もない話をしていた、ある時。急に月菜の声のトーンが低くなった気がした。
「ねぇ莉愛。」
「ん?」
「人ってさ、なんで、生きてるのかな。」
「・・・へ?」
突然の重い質問に、つい戸惑ってしまった。
「あーほら、前YouTubeショートに流れてきてさ、人生辛いならここのコメント欄に書いてー的なの(笑)」
「あーね、よくあるよね(笑)」
「別に辛くはないけどさ、意味感じなくない?」
「確かに(笑)推しにいつか認知してもらえると信じて生きてますわ(笑)」
「いやー、私推しとかいないからさ、ほんと困っちゃう(笑)しかも莉愛と違って頭悪いしさ、将来困りそう(笑)」
私は笑ってしまった。
「私が死んでも世界は回るしな〜。」
「それはそう(笑)」
「誰も困らないよね。」
これに、私は何も答えられなかった。
私が困ると、言えなかった。
数日後、ゴールデンウィークも終わり、忙しい日常が戻ってきた。
そしてそこには、何も変わらない月菜がいた。
そう思っていた。
7月下旬。
梅雨に入ったと天気予報では聞いたのにも関わらず快晴。
夏休み中の部活に行こうといつも一緒に登校している月菜の家へ向かう。
すると、彼女の家の前には救急車と数人の野次馬たち。
驚いてそこまで走ると、ちょうど担架の上でぐったりとした月菜と涙目の月菜ママと月菜パパ、それに月菜の弟の陽斗(はると)くんが出てきた。
月菜ママは月菜と一緒に救急車に乗り込み、月菜パパはそれを心配そうに見つめている。
その横にいた陽斗くんと目が合い、月菜パパに
「パパ、莉愛ちゃん。」
と。それで私に気づいた月菜パパがこっちに来て、状況を説明してくれた。
「実は、今日の朝月菜が起きてこなくて、莉愛ちゃんが迎えに来ちゃうって起こしに行ったら・・・月菜が・・・部屋で・・・その、自殺・・・しようとしたみたいで・・・もう意識もなくて、呼吸もしてなくて、」
「え・・・」
「部屋に、これが・・・」
そう言って見せてくれたのは、所謂遺書というやつだった。
両親はバレーボールがとても得意で将来はバレーボール選手になると言われている陽斗くんに手をかけすぎていて、もう高校生だからと月菜にあまり時間をかけられなかったらしい。それでも月菜は毎日元気だし友達も多いし、明るい子だと思っていた。どうやらそれは月菜の仮面であって、私といる時には素の自分でいれる気がすると。思い返せば1年ほど前に、「莉愛といる時が1番楽!親友最高!」と言われた記憶がある。その頃から既に、この前言っていた生きている意味を感じられなかったのではないだろうと思い、気づいてあげられなかった自分に嫌気がさす。とりあえず部活どころじゃなくなってしまったので、月菜の家に入れてもらった。1時間ほどしただろうか、月菜ママから家電が。それをとった月菜パパが涙ながらにただ一言。
「月菜・・・死んだって・・・」
月菜パパは陽斗くんを連れて病院に向かうと言う。一緒に行こうと誘われたが、私はどうしても行く気にはなれず断った。
自宅への帰り道。
急に雨が降ってきた。
ああ、そういえばもう梅雨だったな。
雨降らなすぎて忘れてたよ。
傘、家だな。
まぁ帰るだけだしいいや。
「月菜。」
名前を口にしてみると、急に視界がぼやけた。
呼吸が苦しくなり、思わずその場にしゃがみこんだ。
5分ほどした頃か、落ち着いたので再び立ち上がると、雨は止んでいた。
でも、私の周りだけ大雨のように暗く、目の前は濃霧でもかかっているかのようにぼやけていた。
ごめんね月菜。
あの時こう言えばよかったよね。
人1人いなくなったくらいじゃ世界はなにも変わらない。
でも、きっと誰かが困る。
だって月菜がいなくなったら、
私の周りはずっと梅雨のまま、
私の目の前は霧のまま、
月菜には悪いけど、私が幸せでいるために存在していて欲しい
そんな自分勝手な答えを。
これ以降、私の周りは霧は見えなくても、月のない夜のように、真っ暗闇なままだ。 まほさん(神奈川・16さい)からの相談
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すごい こんちゃ !
元 ゆゆか × あさ × 珠莉 の 氷翠 ですっ . **°+*
♪ **. Start .** ♪
すご!!月菜は軽くキラキラネーム??
仲良い友達には生きてて欲しいよね!!
♪ **. Finish .** ♪
誤字 & 脱字 等 あったら ごめんなさい … (´-ω-`)
ぐっばい ! 氷翠*でした~ ! 氷翠*hisui ぴちりすさん(滋賀・10さい)からの答え
とうこう日:2024年12月18日
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