樹海の彼女は
目を覚ましたら、目の前の景色は木で埋め尽くされていた
意味がわからなかった。家にいたのになぜ?ここはどこ?夢?
疑問は山ほどあったが、まずここを出るのが先だ
道もないような鬱蒼とした樹海
よいしょよいしょと草木の間を縫い、私はその樹海を歩いた
もうどのくらい歩いたかもわからない
足が棒のようで、力も入らない
その場に座り込んだ途端、今まで気が付かなかった疲労がどっと押し寄せてきた
ここで死んでしまうのではないかと思ったほどだ
でも、私はここから出なきゃいけない。歩かなきゃいけない
そんな気持ちでどうにか前を向いた時
さっきまでの鬱陶しいほどの木は中心を避けるようになくなっており、
中心には岩が一つ、そこに向かって日が差していた
そして、その岩の上にいたのは、一人の人間だった
長く艶のある白髪がなびく
こちらを見て微笑む彼女は、この世のものとは思えぬほど儚く、美しかった
「こんにちは、迷子かしら」
手を差し出す彼女は女神のようで、思わず泣き出してしまった
「な、なんで泣くの?大丈夫?私でよかったら、話を聞くわよ」
彼女は名をシルウァと言った
話を聞きながら、一緒に出口を探してくれた
「こんな森に女の子が一人で座り込んでるんだもの、吃驚しちゃったわ」
ふふ、と彼女は笑いながら言う
「でも、あなたも一人でしたよね。ここに住んでるんですか?」
「…私のことはいいのよ、それより、出口を探しましょう?」
数秒間をおいて、彼女はそう答えた
歩いても歩いても景色は変わらず、ただ疲労だけが蓄積されていく
私が何度も座り込んでしまう中、彼女は疲れを感じないのか、ずっと笑みを浮かべていた
笑顔を絶やさない彼女に、最初は愛想がいい人だと思ったが、
時が経つにつれだんだんと不気味に感じるようになっていった
けれども、彼女にも疲労は溜まっていたようで、行動の節々からその片鱗が伺えた
確かに笑顔を絶やさなかったが、その笑顔も少し引き攣っていた
細く白い足も小さく震え、足元がおぼつかなくなった
そして、歩けば歩くほど、彼女の口数は減っていった
よく笑いよく喋った彼女は、口を真一文に結んで開かなくなり、
話しかけても返ってくる言葉は「ふふ」「そうね」ばかり
彼女の疲労の色が濃くなってきた頃
「…く、食……い、…がす……」
「何か言いました?」
「いえ、なんでもないわ」
全部は聞き取れなかったが、声色が今までよりも冷たく、ひどい違和感を覚えた
彼女の行動の違和感はだんだんと増してきた
声色がおかしく、行動も上品さが失われてきていた
数分後、彼女の本性を知ることになった
彼女は疲れで口を滑らせ、はっきりと言ったのだ
「しぶとい…女は美味いんだから、さっさと食べたいってのに…」
本当に驚いた。数時間前の上品な言葉遣いも笑顔も嘘のようだった
ハッとした彼女は口を押さえ、すぐに諦めたような顔でこっちに近寄ってきた
「畜生、今回はバレねぇと思ったのに。しぶてぇんだよ!早く食われちまえ!!」
死ぬ
そう思って目を瞑った時、響いたのはシルウァの唸り声だった
目を開けると、前には見知らぬ女性
「アンタ!何ボケっとしてるの!逃げるわよ!」
ぐっと手を引っ張られそのままその場から走り去り、気がついたら見慣れた町だった
「展開が早すぎてついていけない…あなたは誰?一体あそこはなんだったの?」
「アタシはサルース。あそこのことについては…話せば長くなるけど、いい?」
私が頷くと、彼女は事細かに説明してくれた
最近、この辺りで行方不明者が続出してること
シルウァは人の行動を操ることができる、
樹海に誘い込んで弱らせて人間を喰らう怪異だったこと
サルースさんが来なければ、私は死んでいたこと
そして、行方不明者が次々と内臓や手足のない惨い状態で発見されていること
「じゃあつまり…私はまんまとシルウァに騙されてたってことですか?」
「そうね。ほんと危機一髪だったわよ。シルウァの爪が、アンタの顔に刺さる寸前だったわ」
そう言われた瞬間、さっきのことが脳裏にフラッシュバックして、
途端に私がどれだけ危険な状況に置かれていたのか再認識した
本当に死は私の目の前にあったのだと思うと、背筋が凍る感じがした
「まだ、シルウァは生きてるんですか?」
「ええ、残念ながらね…だから私もずっとここに留まるわけにはいかない。
ごめんね。時間は有限なの。シルウァから市民を守るために、アタシ、また出かけてくるわ」
そう立ち上がったサルースさんを私は引き留めた
「サルースさん、私も、シルウァを倒したい」
「…へえ?」
「一緒に戦わせてください!」
「アンタ、度胸あるね。いいわ!一緒に戦いましょう」
サルースさんが差し出した手を握り締め、私たちは共に樹海へ向かった
シルウァを、あの化け物を倒すために ぬづさん(愛知・13さい)からの相談
とうこう日:2024年9月19日みんなの答え:0件
意味がわからなかった。家にいたのになぜ?ここはどこ?夢?
疑問は山ほどあったが、まずここを出るのが先だ
道もないような鬱蒼とした樹海
よいしょよいしょと草木の間を縫い、私はその樹海を歩いた
もうどのくらい歩いたかもわからない
足が棒のようで、力も入らない
その場に座り込んだ途端、今まで気が付かなかった疲労がどっと押し寄せてきた
ここで死んでしまうのではないかと思ったほどだ
でも、私はここから出なきゃいけない。歩かなきゃいけない
そんな気持ちでどうにか前を向いた時
さっきまでの鬱陶しいほどの木は中心を避けるようになくなっており、
中心には岩が一つ、そこに向かって日が差していた
そして、その岩の上にいたのは、一人の人間だった
長く艶のある白髪がなびく
こちらを見て微笑む彼女は、この世のものとは思えぬほど儚く、美しかった
「こんにちは、迷子かしら」
手を差し出す彼女は女神のようで、思わず泣き出してしまった
「な、なんで泣くの?大丈夫?私でよかったら、話を聞くわよ」
彼女は名をシルウァと言った
話を聞きながら、一緒に出口を探してくれた
「こんな森に女の子が一人で座り込んでるんだもの、吃驚しちゃったわ」
ふふ、と彼女は笑いながら言う
「でも、あなたも一人でしたよね。ここに住んでるんですか?」
「…私のことはいいのよ、それより、出口を探しましょう?」
数秒間をおいて、彼女はそう答えた
歩いても歩いても景色は変わらず、ただ疲労だけが蓄積されていく
私が何度も座り込んでしまう中、彼女は疲れを感じないのか、ずっと笑みを浮かべていた
笑顔を絶やさない彼女に、最初は愛想がいい人だと思ったが、
時が経つにつれだんだんと不気味に感じるようになっていった
けれども、彼女にも疲労は溜まっていたようで、行動の節々からその片鱗が伺えた
確かに笑顔を絶やさなかったが、その笑顔も少し引き攣っていた
細く白い足も小さく震え、足元がおぼつかなくなった
そして、歩けば歩くほど、彼女の口数は減っていった
よく笑いよく喋った彼女は、口を真一文に結んで開かなくなり、
話しかけても返ってくる言葉は「ふふ」「そうね」ばかり
彼女の疲労の色が濃くなってきた頃
「…く、食……い、…がす……」
「何か言いました?」
「いえ、なんでもないわ」
全部は聞き取れなかったが、声色が今までよりも冷たく、ひどい違和感を覚えた
彼女の行動の違和感はだんだんと増してきた
声色がおかしく、行動も上品さが失われてきていた
数分後、彼女の本性を知ることになった
彼女は疲れで口を滑らせ、はっきりと言ったのだ
「しぶとい…女は美味いんだから、さっさと食べたいってのに…」
本当に驚いた。数時間前の上品な言葉遣いも笑顔も嘘のようだった
ハッとした彼女は口を押さえ、すぐに諦めたような顔でこっちに近寄ってきた
「畜生、今回はバレねぇと思ったのに。しぶてぇんだよ!早く食われちまえ!!」
死ぬ
そう思って目を瞑った時、響いたのはシルウァの唸り声だった
目を開けると、前には見知らぬ女性
「アンタ!何ボケっとしてるの!逃げるわよ!」
ぐっと手を引っ張られそのままその場から走り去り、気がついたら見慣れた町だった
「展開が早すぎてついていけない…あなたは誰?一体あそこはなんだったの?」
「アタシはサルース。あそこのことについては…話せば長くなるけど、いい?」
私が頷くと、彼女は事細かに説明してくれた
最近、この辺りで行方不明者が続出してること
シルウァは人の行動を操ることができる、
樹海に誘い込んで弱らせて人間を喰らう怪異だったこと
サルースさんが来なければ、私は死んでいたこと
そして、行方不明者が次々と内臓や手足のない惨い状態で発見されていること
「じゃあつまり…私はまんまとシルウァに騙されてたってことですか?」
「そうね。ほんと危機一髪だったわよ。シルウァの爪が、アンタの顔に刺さる寸前だったわ」
そう言われた瞬間、さっきのことが脳裏にフラッシュバックして、
途端に私がどれだけ危険な状況に置かれていたのか再認識した
本当に死は私の目の前にあったのだと思うと、背筋が凍る感じがした
「まだ、シルウァは生きてるんですか?」
「ええ、残念ながらね…だから私もずっとここに留まるわけにはいかない。
ごめんね。時間は有限なの。シルウァから市民を守るために、アタシ、また出かけてくるわ」
そう立ち上がったサルースさんを私は引き留めた
「サルースさん、私も、シルウァを倒したい」
「…へえ?」
「一緒に戦わせてください!」
「アンタ、度胸あるね。いいわ!一緒に戦いましょう」
サルースさんが差し出した手を握り締め、私たちは共に樹海へ向かった
シルウァを、あの化け物を倒すために ぬづさん(愛知・13さい)からの相談
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