木の葉
目が覚める。そこは、見慣れた場所だった。
あぁそうだ。この世界に未練があったから戻ってきたんだ。
えっーと何だっけ?私は起き上がる。未練の内容が分からなければ、この世界に来た意味がない。
早く願いを叶えなければ、このまま消えてしまう。
私は立ち上がる。まずこの辺りを散歩してみよう。何か思いつくかもしれない。
すると、前から誰かが近づいてくるのが見える。近づくにつれ、その子の姿がだんだん見えてくる。
その姿を見た私は、言葉を失った。美雨だ。小学校からの親友。
ここは‥私がまだこの世界にいた時住んでいた町なのだろうか?
美雨は知らない女の子と楽しそうに歩いている。空は黄金色に染まっている。恐らく下校中だろう。
背は明かに伸び、私といた頃ボブだった髪は、ロングになっている。制服はシャツになり、中学校の制服では無い。高校生になったのだろうか?
すると、美雨のバッグから、紙らしき物が落ちてくるのが見えた。
私はそれを拾うと、「あの!」と声をかける。だが無反応。私の事が見えないのだろう。
そうだ。神様が「此岸では、自分の未練の為に会わなければいけない人しか、死者の事を見る事が出来ない。」
だからだ。せめて最後に話したかったな‥
ふと、美雨が落とした紙らしきものを見る。それは写真だった。
私も写っている。勿論美雨も。後は‥、思い出した。私の願い。
人間は、私達の事は見えないが、物はちゃんと動く。気づかれないようにバッグのファスナーを開くと、写真を丁寧に入れてあげた。
よし。残り時間は短い。彼に合わなければ。美雨が通っている高校に行く。学校の場所は、近くにあった掲示板から見つけた。彼はきっと美雨と同じ学校に通っているはず。校門近くにいた先生に彼の名前を伝え、学校にいるか聞くと、もう帰ったと言った。学校じゃなければどこにいるんだろう?図書館か?それとも‥走った。そしてある場所に行く。
私は彼の後ろに立った。やっぱり‥ここにいた。
「司。」
「来るの、待ってた。信じてたから。」
彼はゆっくりと振り向いた。懐かしい。なんだ。少し大人っぽくなったじゃん。
司。美雨と同じで、小学校からの友達で‥私の初恋相手。
今日は約束の日。一年前、私は今日ここに来るように言った。中学校時代、沢山遊んだ場所。
「話は?まぁでも何となく想像はつくけど。」
「なら話は早いね。司、ずっと前から好きだった。いつも不器用な癖に優しくて‥で?返事は?」
私はドキドキしながら聞く。
「いいに決まってんだろ。何でも人の事優先しちゃう所が好きだ。気取ってるのに優しいところも。全部。」
涙が溢れた。止まらない。いつもの私ならここで急いで涙を拭くはずなのに、何故か拭く事が出来ない。
今はただ、恥ずかしい気持ちよりも、嬉しい気持ちの方が強かった。
私の事を優しく抱きしめてくれた。その事がもっと嬉しくて、もっと涙が溢れた。
「何だよ。相変わらず子供っぽいな。」
「何よ。司だって急に抱きしめて何なのよ?」
「そっ、それはっ」
私の言った事が恥ずかしかったらしく、手を離そうとする。
その手を、今度は私が掴んだ。
「いいよ。今回だけ許してあげる。」
あ‥手の色が消え始めてきてる。そろそろ消えるだろう。
「ねぇ、私がいなくなっても寂しくなんて何ないでよ?」
「それは‥分からない。」
珍しい。あの司が否定しないなんて。でも消えるのは止められない。すでに顔まできてる。司は気づかないみたいだ。
「もし‥私が消えたら、また逢いに行くから。」
「絶対か?」
「うん。絶対。」
「だったら‥」司が何かを言おうと上を見上げたら、もう私はいなかった。
ただ、今までに見たことのない綺麗な木の葉が落ちているだけだった。 りんごさん(埼玉・11さい)からの相談
とうこう日:2020年6月7日みんなの答え:2件
あぁそうだ。この世界に未練があったから戻ってきたんだ。
えっーと何だっけ?私は起き上がる。未練の内容が分からなければ、この世界に来た意味がない。
早く願いを叶えなければ、このまま消えてしまう。
私は立ち上がる。まずこの辺りを散歩してみよう。何か思いつくかもしれない。
すると、前から誰かが近づいてくるのが見える。近づくにつれ、その子の姿がだんだん見えてくる。
その姿を見た私は、言葉を失った。美雨だ。小学校からの親友。
ここは‥私がまだこの世界にいた時住んでいた町なのだろうか?
美雨は知らない女の子と楽しそうに歩いている。空は黄金色に染まっている。恐らく下校中だろう。
背は明かに伸び、私といた頃ボブだった髪は、ロングになっている。制服はシャツになり、中学校の制服では無い。高校生になったのだろうか?
すると、美雨のバッグから、紙らしき物が落ちてくるのが見えた。
私はそれを拾うと、「あの!」と声をかける。だが無反応。私の事が見えないのだろう。
そうだ。神様が「此岸では、自分の未練の為に会わなければいけない人しか、死者の事を見る事が出来ない。」
だからだ。せめて最後に話したかったな‥
ふと、美雨が落とした紙らしきものを見る。それは写真だった。
私も写っている。勿論美雨も。後は‥、思い出した。私の願い。
人間は、私達の事は見えないが、物はちゃんと動く。気づかれないようにバッグのファスナーを開くと、写真を丁寧に入れてあげた。
よし。残り時間は短い。彼に合わなければ。美雨が通っている高校に行く。学校の場所は、近くにあった掲示板から見つけた。彼はきっと美雨と同じ学校に通っているはず。校門近くにいた先生に彼の名前を伝え、学校にいるか聞くと、もう帰ったと言った。学校じゃなければどこにいるんだろう?図書館か?それとも‥走った。そしてある場所に行く。
私は彼の後ろに立った。やっぱり‥ここにいた。
「司。」
「来るの、待ってた。信じてたから。」
彼はゆっくりと振り向いた。懐かしい。なんだ。少し大人っぽくなったじゃん。
司。美雨と同じで、小学校からの友達で‥私の初恋相手。
今日は約束の日。一年前、私は今日ここに来るように言った。中学校時代、沢山遊んだ場所。
「話は?まぁでも何となく想像はつくけど。」
「なら話は早いね。司、ずっと前から好きだった。いつも不器用な癖に優しくて‥で?返事は?」
私はドキドキしながら聞く。
「いいに決まってんだろ。何でも人の事優先しちゃう所が好きだ。気取ってるのに優しいところも。全部。」
涙が溢れた。止まらない。いつもの私ならここで急いで涙を拭くはずなのに、何故か拭く事が出来ない。
今はただ、恥ずかしい気持ちよりも、嬉しい気持ちの方が強かった。
私の事を優しく抱きしめてくれた。その事がもっと嬉しくて、もっと涙が溢れた。
「何だよ。相変わらず子供っぽいな。」
「何よ。司だって急に抱きしめて何なのよ?」
「そっ、それはっ」
私の言った事が恥ずかしかったらしく、手を離そうとする。
その手を、今度は私が掴んだ。
「いいよ。今回だけ許してあげる。」
あ‥手の色が消え始めてきてる。そろそろ消えるだろう。
「ねぇ、私がいなくなっても寂しくなんて何ないでよ?」
「それは‥分からない。」
珍しい。あの司が否定しないなんて。でも消えるのは止められない。すでに顔まできてる。司は気づかないみたいだ。
「もし‥私が消えたら、また逢いに行くから。」
「絶対か?」
「うん。絶対。」
「だったら‥」司が何かを言おうと上を見上げたら、もう私はいなかった。
ただ、今までに見たことのない綺麗な木の葉が落ちているだけだった。 りんごさん(埼玉・11さい)からの相談
とうこう日:2020年6月7日みんなの答え:2件
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面白い! りんごさんの「木の葉」、見させて頂きましたが、想像以上に素晴らしかったです!
ラブストーリーが私的に好きなので、また短編小説を出してくれることに期待してます。 レイラさん(埼玉・12さい)からの答え
とうこう日:2020年6月10日 -
凄ーい! りんごさんの「木の葉」、とっても感動しました!
特に、「ただ、今までに見たことのない綺麗な木の葉が落ちているだけだった。」が凄い心に残りました!
切ない生まれ変わりストーリーかと思いきや、切ないラブストーリーだったという事も凄いと思います!
同年代なのに、語彙力が高すぎてびっくりです!
すみません!この短編小説が面白すぎてなんかいっぱい書いてしまいました!
では! Hana(o^^o)さん(埼玉・11さい)からの答え
とうこう日:2020年6月9日
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