【短編小説】命のロウソク(初投稿)
私のロウソクは、残り三本である。
ロウソクとは、誰もがご存じのとおり、真夜中にぽつんと灯る、あのロウソクである。しかし、私のロウソクは、ただのロウソクではない。
命のロウソク。
毎日、少しずつ溶けていき、寿命を、時間を消費していく。そしていつも、溶けきる頃には、夜明けなのだ。
……それから、もう一度言うと、私の命のロウソクは、残り三本である。
はじめの頃は、この命のロウソクが消費していくことに、辛さを感じていた。胸の奥がきゅうっと掴まれたように苦しくなる感覚は、今でも覚えている。
しかし、今では胸の奥の締め付けは消え、いつの間にか、苦しさも消えた。
…少し長い話になってしまったけれど、要するに、“逆らえない運命”というものなんだろう。
私の運命について考えてみたいけれど、もうロウソクも溶けきる頃だ。今日は、おやすみなさい。
命のロウソク、残り二本。
最近、カフェテリアでよく彼と話す。彼は、素敵な銀縁眼鏡をかけていて、本が好きだという。
今日は、彼に一冊の小説を貰った。正直、小説は小難しいので苦手だけれど、素敵な表紙だったので、貰うことにした。
家に帰ると、ベッドに横になりながら、今日貰った小説の表紙を見つめた。
夕暮れで朱に染まった、踏切が描かれた表紙。
私は、夕暮れが好きだ。夕暮れの柔らかい光は、凍てついた私の心を、優しく暖めてくれる。
命のロウソクが、どんどん消費されていくことに怯える私は、いつも夕暮れに癒された。穏やかな夕空も、柔らかい光をもつ夕日も、全部、全部が私を包み込んでくれた。
…ふと、今の瞬間に何かがよぎった。
もしも、命のロウソクが全て、尽きてしまったら。
この想いも、私の何もかも、消えてしまうのだろうか。
そう思うと、当たり前のように過ぎていくこの時間も、何だか愛おしく思えてきた。だから、今日は一日中この本を読むことにする。読み終わったら、また読み返すので、時間は無駄にならない。私って、なんて頭がいいのだろう。
命のロウソク、残り一本。
昨日の夜は、ずっと小説を読んでいたので、眠れなかった。主人公の死の間際の、「“また会う日まで”」というセリフが素敵で、何度も何度も読み返した。
しかし、今日は最期の日。
大変特別な日なので、小説は読まないことにする。
彼は、雨の日も、風の日も、私が遅刻した日も、苦いコーヒーと小説を片手に、ずっと待っていてくれた。多分、今も待っている。
だから、私が来なくて困っているだろう彼のために、
私は今から、彼へ手紙を書く。
そう、考えたものの……。
どうやら、寝てしまったみたいだ。昨日の夜更かしが祟った。今は何時だろう。
ふと、窓の外を見ると、空は夕焼けに染まっていた。
柔らかい夕日の光が、部屋全体を包み込む。
何をしていたのだろう。えっと…。
そうだ、手紙だ。
書かなくては、と思い、机の上の鉛筆を手に取ろうと…
したけれど、空を掴むだけだった。机の上には、用意した便箋と封筒と切手だけ。
鉛筆がない。どこかに転がり落ちたのかと思い、探したけれど、鉛筆はどこにもなかった。
今、時間は無駄にできない。仕方ない、ボールペンで書こう。
便箋も、封筒も、残り一枚。ボールペンだから、書き直しはできない。一発勝負。
書かないと、と心の中で思いながら、ペンを握りしめた。
夕日の射し込む部屋で、私は慎重に手紙を書きながら、色々なことを思い返した。
私は…小さい頃から、優しいものが好きだった。
優しく柔らかい光も、優しくうなじを撫でる風も、優しい声で歌う、子守唄も。
まるで夜明けの日のように優しく、朗らかに微笑む彼も…。
ロウソクの光も、優しかった。仄かで儚いけれど、暖かくて柔らかい光だった。
命も、まるでロウソクの灯火ように、儚くて、優しかった。
小さくなった命のロウソクを見つめ、私は、目頭が熱くなるのを感じた。
……世の中には、“逆らえない運命”っていうものがある。
でも、私はその運命の中でも、楽しくやれた。
もう、大満足だ。
その時、胸の奥がきゅうっと締め付けられるような感覚がした。
あと少しで、この夕暮れともお別れだ。
私は、命のロウソクを目の前に、彼に貰った小説を読み返した。特に、主人公の最期のセリフを、何度も、何度も繰り返し、読んだ。
この頃、カフェテリアで彼女の顔を見ない。心配を抱きつつも、おもむろに郵便ポストを覗くと、中には封筒が入っていた。
自分宛のもので、カフェテリアで出会った彼女の名前が書かれている。
直接渡せなかったのには、何か理由があったのだろうか。
愛用の銀縁眼鏡を指で軽く押すと、封筒の中の手紙を出す。
手紙には、長い文章は書いていなかった。
ただ一文だけ、書かれていた。
“また会う日まで”
と。 ララ子さん(愛知・12さい)からの相談
とうこう日:2020年6月8日みんなの答え:5件
ロウソクとは、誰もがご存じのとおり、真夜中にぽつんと灯る、あのロウソクである。しかし、私のロウソクは、ただのロウソクではない。
命のロウソク。
毎日、少しずつ溶けていき、寿命を、時間を消費していく。そしていつも、溶けきる頃には、夜明けなのだ。
……それから、もう一度言うと、私の命のロウソクは、残り三本である。
はじめの頃は、この命のロウソクが消費していくことに、辛さを感じていた。胸の奥がきゅうっと掴まれたように苦しくなる感覚は、今でも覚えている。
しかし、今では胸の奥の締め付けは消え、いつの間にか、苦しさも消えた。
…少し長い話になってしまったけれど、要するに、“逆らえない運命”というものなんだろう。
私の運命について考えてみたいけれど、もうロウソクも溶けきる頃だ。今日は、おやすみなさい。
命のロウソク、残り二本。
最近、カフェテリアでよく彼と話す。彼は、素敵な銀縁眼鏡をかけていて、本が好きだという。
今日は、彼に一冊の小説を貰った。正直、小説は小難しいので苦手だけれど、素敵な表紙だったので、貰うことにした。
家に帰ると、ベッドに横になりながら、今日貰った小説の表紙を見つめた。
夕暮れで朱に染まった、踏切が描かれた表紙。
私は、夕暮れが好きだ。夕暮れの柔らかい光は、凍てついた私の心を、優しく暖めてくれる。
命のロウソクが、どんどん消費されていくことに怯える私は、いつも夕暮れに癒された。穏やかな夕空も、柔らかい光をもつ夕日も、全部、全部が私を包み込んでくれた。
…ふと、今の瞬間に何かがよぎった。
もしも、命のロウソクが全て、尽きてしまったら。
この想いも、私の何もかも、消えてしまうのだろうか。
そう思うと、当たり前のように過ぎていくこの時間も、何だか愛おしく思えてきた。だから、今日は一日中この本を読むことにする。読み終わったら、また読み返すので、時間は無駄にならない。私って、なんて頭がいいのだろう。
命のロウソク、残り一本。
昨日の夜は、ずっと小説を読んでいたので、眠れなかった。主人公の死の間際の、「“また会う日まで”」というセリフが素敵で、何度も何度も読み返した。
しかし、今日は最期の日。
大変特別な日なので、小説は読まないことにする。
彼は、雨の日も、風の日も、私が遅刻した日も、苦いコーヒーと小説を片手に、ずっと待っていてくれた。多分、今も待っている。
だから、私が来なくて困っているだろう彼のために、
私は今から、彼へ手紙を書く。
そう、考えたものの……。
どうやら、寝てしまったみたいだ。昨日の夜更かしが祟った。今は何時だろう。
ふと、窓の外を見ると、空は夕焼けに染まっていた。
柔らかい夕日の光が、部屋全体を包み込む。
何をしていたのだろう。えっと…。
そうだ、手紙だ。
書かなくては、と思い、机の上の鉛筆を手に取ろうと…
したけれど、空を掴むだけだった。机の上には、用意した便箋と封筒と切手だけ。
鉛筆がない。どこかに転がり落ちたのかと思い、探したけれど、鉛筆はどこにもなかった。
今、時間は無駄にできない。仕方ない、ボールペンで書こう。
便箋も、封筒も、残り一枚。ボールペンだから、書き直しはできない。一発勝負。
書かないと、と心の中で思いながら、ペンを握りしめた。
夕日の射し込む部屋で、私は慎重に手紙を書きながら、色々なことを思い返した。
私は…小さい頃から、優しいものが好きだった。
優しく柔らかい光も、優しくうなじを撫でる風も、優しい声で歌う、子守唄も。
まるで夜明けの日のように優しく、朗らかに微笑む彼も…。
ロウソクの光も、優しかった。仄かで儚いけれど、暖かくて柔らかい光だった。
命も、まるでロウソクの灯火ように、儚くて、優しかった。
小さくなった命のロウソクを見つめ、私は、目頭が熱くなるのを感じた。
……世の中には、“逆らえない運命”っていうものがある。
でも、私はその運命の中でも、楽しくやれた。
もう、大満足だ。
その時、胸の奥がきゅうっと締め付けられるような感覚がした。
あと少しで、この夕暮れともお別れだ。
私は、命のロウソクを目の前に、彼に貰った小説を読み返した。特に、主人公の最期のセリフを、何度も、何度も繰り返し、読んだ。
この頃、カフェテリアで彼女の顔を見ない。心配を抱きつつも、おもむろに郵便ポストを覗くと、中には封筒が入っていた。
自分宛のもので、カフェテリアで出会った彼女の名前が書かれている。
直接渡せなかったのには、何か理由があったのだろうか。
愛用の銀縁眼鏡を指で軽く押すと、封筒の中の手紙を出す。
手紙には、長い文章は書いていなかった。
ただ一文だけ、書かれていた。
“また会う日まで”
と。 ララ子さん(愛知・12さい)からの相談
とうこう日:2020年6月8日みんなの答え:5件
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感動しました すごく素敵なお話ですね。
命には限りがある。
だからこそ、今を大切にしないとな。と思いました。
それで、1つだけ、
最後の「この頃〜」の所から、
誰目線というのが突然変わっているので、
もう少しだけ空けたほうが、
時が経ったのも、男性目線になったのも
すんなり入ってくるなと思いました。
とても感動しました。 ブルーさん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2020年6月11日 -
感動! 読み終えて、年齢を見た時本当に驚きました。
正直、私は小説を途中で飽きて適当にザーッと読んだり
小説の世界に入り込むのがすごく苦手なのですが
小説の世界に入り込むことができました。
時間を忘れるくらい、綺麗で本当に感動しました。
12さいの人が書いたと思えない内容で驚きました!
本当に年下ですか…?
私ももっとララ子さんの小説を読みたいです! きなさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年6月10日 -
すごい好き 何なのこの美しくって優しい世界。初投稿とか本当ですか。
最後のボールペンを書くシーン凄すぎる。書き直しが出来ないからこそ心を込めて文字を手紙に書いていく主人公の姿が目の前にあるようでした。もっと評価されてもいいと思います。
主人公と彼そして小説という物語のキーアイテムによって作られるこの小説は儚さと言うんでしょうか。大体の人が死ぬ小説とは違った感想を持ちました。
強いて無理やり何か言うとしたら逆らえない運命っていう言葉はそこまで目立たせないほうが逆に良かったんじゃないかと思います。他の表現が凄すぎるから印象に全く残らなかったです。
また小説出されること楽しみにしてます。 ぶるーべりーさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年6月9日 -
無題 一文一文が綺麗で美しくて、何度も読み返したくなるお話でした。
物語そのものも、優しく儚く美しい印象で、私は凄く好きです。
もっとララ子さんの小説を読んでみたいです。
失礼しました。 黎明さん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年6月9日 -
おー 何か色々と考えさせられる文ですねー。命には限りがある。だから大事にしないとなーと思いました。 戦慄のタツマキさん(愛知・11さい)からの答え
とうこう日:2020年6月9日
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