曇り空の向こう
小学校、僕らは5年生になった。2組だった。
クラス発表の紙を見た時。男友達を増やしたかった僕は、皆の名前を覚えようとした。
相田翔。
1番上に書かれたその名前を、しっかりと頭に入れた。
教室に入り、先生が出席番号順に点呼をとる。
相田翔。
「はい」
耳に飛び込んできたその声は、男とは思えないような高くて可愛らしいものだった。
そこで僕は初めて翔という女子を認識し、男ではなかったことに残念がった。
それでもなんとなく気になり、少し目で追うようになっていた。
小学生の僕なりにコミュニケーションをとろうとからかったりもした。彼女は怒っていたが、どこか楽しんでいた。
中学校、入学したばかりの頃、僕は吹奏楽部に入った。小学生の時の友達作りには失敗したので、周りに合わせる必要も無かった。
彼女とはあまり喋らなくなった。
トランペットを吹いていた。
教室で友達と楽しそうに話す姿は、僕を安心させた。
高校、始め彼女はいなかった。病気だったらしい。手術を受けて帰ってきた時、僕は思わず声をかけてしまった。彼女は笑いながら言葉を返してくれた。
それからは少しずつ話すようになり、次第に打ち解けていった。
色んなことを話した。
知らず知らずの間に、僕は彼女のことが好きになっていった。
お互いになくてはならない存在。
そう感じていた。
仲良くなってからは、頻繁に会うようになった。
僕と彼女には何か通じるものがあった、気がする。
ちっぽけな僕は、何もできないまま高校を卒業した。
大学は離れた。二人の将来の方向性は全く違っていた。彼女は見事に夢を叶え自分の道を進んでいた。
僕は、そこそこの会社に勤め、どこにでもいるサラリーマンになった。
もう、彼女とは会わない。そう思ったし、それで良かった。
そのはずだった。
だけど、いま目の前にいるのは紛れもなく彼女。運命でもなんでもない、ただの偶然。
色々な感情が飛び交う中、やっと発した声。
「…翔?」
驚いた顔で振り向く彼女は、ほっとする優しそうな、あの時のままだった。
見開いた目をだんだんと細くしながら、僕を一瞬で誰だか察したらしい、
「…久しぶり」
「もう7年ぶりかな」
「そうだね」
覚えてくれていた。
それだけで気持ちが溢れそうなのだが、大の大人が外でもじもじとと話すのもと思い、2人で軽い食事に行った。
話している間にだんだん慣れてきたようで、彼女もよく話すようになった。
「いやぁ、ほんとに久しぶりだねえ。
もうアラサーの仲間入りだよ笑」
「君は最近何してるの?」
もう会わないと諦めていた人との食事は、楽しくて仕方がなかった。徐々にあの頃の自分を取り戻していき、随分と長く話してしまった。
「それじゃあねー。また今度!」
そう言って彼女は手を振った。
「ああ、それじゃ…」
小さく言いかけてやめた。
やっぱり、言うべきだ。
「ごめん、ちょっと来てほしい」
真剣な声色になったせいか、彼女は少し動揺していた。
彼女を連れて行った場所は、あまり人気のない、少し離れた歩道橋。
「こういう場所来るの珍しいね」
「…うん」
僕は彼女に背を向け、心の準備をしていた。
彼女の方に戻り、目を見て言った。
「中学の時から好きでした、良かったら
付き合ってほしいです。」
子どもみたいな告白だった。
顔をあげると、彼女は優しく笑ってい
た。
「私もね。好きだったよ、ずっと。中学
から。」
彼女は続けた。
「結婚したんだ、2年前に」
言葉を失ってしまった。
当たり前だ、7年も会ってなかった。
彼女も結婚くらいするだろう。
後悔と、自責の念が押し寄せてきた。
聞いてもどうしようもないのに、聞いてしまった。
「…相手は?」
「会社の人。」
申し訳なさそうに俯く彼女は、とても見ていられなかった。
「そっか。おめでとう。」
「うん…ごめんなさい」
見る限り、彼女は相手の男性の事が本当に好きなのだろう。
自惚れすぎたし、遅すぎた。
彼女の微笑みを見て、うまくいくと根拠も無く確信していた。愚かだ。
「引き止めてごめん。もう帰って大丈夫だから」
「本当にごめんね。
それじゃあ…さようなら」
そう言って彼女は去っていった。
彼女の口から出た「さようなら」は、本当に、本当にもう会うことがないんだと僕に実感させた。
君のいない歩道橋。
意味もなく見上げた夜空は、僕の気持ちを嘲笑うようにひどく晴れていた。
-----------------------------
こんにちは!わらびもちです。
初めて小説書いたんですけど、どうでしょうか…
感想待ってます! わらびもちさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年6月10日みんなの答え:3件
クラス発表の紙を見た時。男友達を増やしたかった僕は、皆の名前を覚えようとした。
相田翔。
1番上に書かれたその名前を、しっかりと頭に入れた。
教室に入り、先生が出席番号順に点呼をとる。
相田翔。
「はい」
耳に飛び込んできたその声は、男とは思えないような高くて可愛らしいものだった。
そこで僕は初めて翔という女子を認識し、男ではなかったことに残念がった。
それでもなんとなく気になり、少し目で追うようになっていた。
小学生の僕なりにコミュニケーションをとろうとからかったりもした。彼女は怒っていたが、どこか楽しんでいた。
中学校、入学したばかりの頃、僕は吹奏楽部に入った。小学生の時の友達作りには失敗したので、周りに合わせる必要も無かった。
彼女とはあまり喋らなくなった。
トランペットを吹いていた。
教室で友達と楽しそうに話す姿は、僕を安心させた。
高校、始め彼女はいなかった。病気だったらしい。手術を受けて帰ってきた時、僕は思わず声をかけてしまった。彼女は笑いながら言葉を返してくれた。
それからは少しずつ話すようになり、次第に打ち解けていった。
色んなことを話した。
知らず知らずの間に、僕は彼女のことが好きになっていった。
お互いになくてはならない存在。
そう感じていた。
仲良くなってからは、頻繁に会うようになった。
僕と彼女には何か通じるものがあった、気がする。
ちっぽけな僕は、何もできないまま高校を卒業した。
大学は離れた。二人の将来の方向性は全く違っていた。彼女は見事に夢を叶え自分の道を進んでいた。
僕は、そこそこの会社に勤め、どこにでもいるサラリーマンになった。
もう、彼女とは会わない。そう思ったし、それで良かった。
そのはずだった。
だけど、いま目の前にいるのは紛れもなく彼女。運命でもなんでもない、ただの偶然。
色々な感情が飛び交う中、やっと発した声。
「…翔?」
驚いた顔で振り向く彼女は、ほっとする優しそうな、あの時のままだった。
見開いた目をだんだんと細くしながら、僕を一瞬で誰だか察したらしい、
「…久しぶり」
「もう7年ぶりかな」
「そうだね」
覚えてくれていた。
それだけで気持ちが溢れそうなのだが、大の大人が外でもじもじとと話すのもと思い、2人で軽い食事に行った。
話している間にだんだん慣れてきたようで、彼女もよく話すようになった。
「いやぁ、ほんとに久しぶりだねえ。
もうアラサーの仲間入りだよ笑」
「君は最近何してるの?」
もう会わないと諦めていた人との食事は、楽しくて仕方がなかった。徐々にあの頃の自分を取り戻していき、随分と長く話してしまった。
「それじゃあねー。また今度!」
そう言って彼女は手を振った。
「ああ、それじゃ…」
小さく言いかけてやめた。
やっぱり、言うべきだ。
「ごめん、ちょっと来てほしい」
真剣な声色になったせいか、彼女は少し動揺していた。
彼女を連れて行った場所は、あまり人気のない、少し離れた歩道橋。
「こういう場所来るの珍しいね」
「…うん」
僕は彼女に背を向け、心の準備をしていた。
彼女の方に戻り、目を見て言った。
「中学の時から好きでした、良かったら
付き合ってほしいです。」
子どもみたいな告白だった。
顔をあげると、彼女は優しく笑ってい
た。
「私もね。好きだったよ、ずっと。中学
から。」
彼女は続けた。
「結婚したんだ、2年前に」
言葉を失ってしまった。
当たり前だ、7年も会ってなかった。
彼女も結婚くらいするだろう。
後悔と、自責の念が押し寄せてきた。
聞いてもどうしようもないのに、聞いてしまった。
「…相手は?」
「会社の人。」
申し訳なさそうに俯く彼女は、とても見ていられなかった。
「そっか。おめでとう。」
「うん…ごめんなさい」
見る限り、彼女は相手の男性の事が本当に好きなのだろう。
自惚れすぎたし、遅すぎた。
彼女の微笑みを見て、うまくいくと根拠も無く確信していた。愚かだ。
「引き止めてごめん。もう帰って大丈夫だから」
「本当にごめんね。
それじゃあ…さようなら」
そう言って彼女は去っていった。
彼女の口から出た「さようなら」は、本当に、本当にもう会うことがないんだと僕に実感させた。
君のいない歩道橋。
意味もなく見上げた夜空は、僕の気持ちを嘲笑うようにひどく晴れていた。
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こんにちは!わらびもちです。
初めて小説書いたんですけど、どうでしょうか…
感想待ってます! わらびもちさん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年6月10日みんなの答え:3件
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すごい! 起承転結の
比率がちょうどよくて
何がメインなのかとても分かりやすくて読みやすかったです! きなさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年6月14日 -
まあ素人からの一言ですが いいと思いますよ。
なんだか王道系ストーリーな気がしますが、やっぱりこれがいいんでしょうね。 りりあさん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2020年6月11日 -
スゴーい!! 同い年とは思えない!
翔ちゃんが結婚してるって打ち明けた時、ホントにビックリした…
とっても切ないけど、とってもステキなお話ですね! ジュビさん(埼玉・12さい)からの答え
とうこう日:2020年6月11日
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