映らぬ僕
カーテンの隙間から光が差し込み朝だということを静かに伝えられた。
夢現を瞬きを数回して確認する。
リビングで母が朝食の準備をしていた。
「あら、起きてたのね、おはよう"伊織"」
「…おはよう」
私の母は私の事が見えていない。
私は死んでいるからだ。
否、私自身を見ていない。
「今日の朝ご飯は伊織の好きな焼き鮭があるよ〜」
「ありがとう」
私の名前は伊織ではない。
伊織は姉の名前だ。私の名は碧だ。
母は私の事を伊織だと思っている。
母の中で私はもう死んでいるのだ。
………10年前
とてもよく晴れた気持ちの良い日だった。双子の伊織と碧は外で遊んでいた。
「お姉ちゃん、アイス食べたい」
「ここからコンビニ遠いよ?歩ける?」
「歩けるよ、だから行こうよ!」
………
「歩き疲れた…少し休もうよ…」
「碧が行きたいって言ったんでしょ。
私も喉乾いたし、それにもう少しだから」
碧は点滅している信号に気が付かずのろのろと道路を歩いていた。そして信号は赤に変わる。
碧の死角からトラックが来ていた。
「危ないっ…」
トラックに気がついた伊織は急いで碧を突き飛ばした。
トラックが子供に気が付き急いで急ブレーキをかけた。伊織の体が引きずられる。
…碧が見たのは、鮮やかな赤色。
それは伊織の頭から飛び散った血だった。鮮血がじわじわと地面に広がっていく。拉げた彼女の体。
「っっっ…!ぁ…」
声が出なかった。涙すら出なかった。
驚きと焦りで涙と声が出なかったのだ。
血だらけの彼女に歩み寄った。
彼女の目から光が失ってした。
私はその場に崩れ落ちた。
「目、開けてよ…ああああああああぁぁぁ…」
碧は叫んだ。喉が潰れるくらいに泣き叫んだ。周りの大人たちが通報する。
だがもうなんの意味も無いのだ。
伊織は死んでしまったのだから。
「私の、せいで」
…
その後、母と父が来た。
病院に運ばれた、霊安室にある伊織の体を見て、何も言わずにただ見つめるだけだった。母はゆっくりと口を開けた。
「碧…可哀想に…痛かったでしょう…?」
私は一瞬、母が何を言ったのか理解が出来なかった。
私たち双子は、瓜二つで声や背丈まで一緒だったが母が伊織と私を間違えたことは一度たりともない。
「それはいお…」
私は、「それは伊織だよ」と言いかけてやめた。言っている途中に理解した。
母は出来がよく、素直な伊織を私より愛していた。私は賢くはないし生意気で何か注意されるごとに生意気に言い返していた。そんな私を母は嫌っていた。
母の愛している伊織が死んだということを受け止められず、伊織を私だと思っているのだ。母の中で碧は死んでしまったのだと理解してしまった。
何も言わなかった。何も言えなかった。
私はその日から「伊織」になると決めた。
…
勉強も死に物狂いで頑張った。
喋り方、性格、癖までも私の知っている限り全てを真似た。
私は伊織なのだから素直でなくては
私は伊織なのだから優しくなくては
私は伊織なのだから賢くなくては
伊織なのだから…
「あれ…そう言えば私のってなんだったんだっけ、どんな性格だっけ?どんな感じだっけ…」
私は私自身を忘れてしまった。
ずっと伊織を演じ続けてきたから
ずっと伊織でいたから
…ずっと前に自分というものを殺したから
もう分からなくていいとさえ思ってしまった。だって私ら伊織なのだから…。
えみおさん(埼玉・10さい)からの相談
とうこう日:2020年6月11日みんなの答え:1件
夢現を瞬きを数回して確認する。
リビングで母が朝食の準備をしていた。
「あら、起きてたのね、おはよう"伊織"」
「…おはよう」
私の母は私の事が見えていない。
私は死んでいるからだ。
否、私自身を見ていない。
「今日の朝ご飯は伊織の好きな焼き鮭があるよ〜」
「ありがとう」
私の名前は伊織ではない。
伊織は姉の名前だ。私の名は碧だ。
母は私の事を伊織だと思っている。
母の中で私はもう死んでいるのだ。
………10年前
とてもよく晴れた気持ちの良い日だった。双子の伊織と碧は外で遊んでいた。
「お姉ちゃん、アイス食べたい」
「ここからコンビニ遠いよ?歩ける?」
「歩けるよ、だから行こうよ!」
………
「歩き疲れた…少し休もうよ…」
「碧が行きたいって言ったんでしょ。
私も喉乾いたし、それにもう少しだから」
碧は点滅している信号に気が付かずのろのろと道路を歩いていた。そして信号は赤に変わる。
碧の死角からトラックが来ていた。
「危ないっ…」
トラックに気がついた伊織は急いで碧を突き飛ばした。
トラックが子供に気が付き急いで急ブレーキをかけた。伊織の体が引きずられる。
…碧が見たのは、鮮やかな赤色。
それは伊織の頭から飛び散った血だった。鮮血がじわじわと地面に広がっていく。拉げた彼女の体。
「っっっ…!ぁ…」
声が出なかった。涙すら出なかった。
驚きと焦りで涙と声が出なかったのだ。
血だらけの彼女に歩み寄った。
彼女の目から光が失ってした。
私はその場に崩れ落ちた。
「目、開けてよ…ああああああああぁぁぁ…」
碧は叫んだ。喉が潰れるくらいに泣き叫んだ。周りの大人たちが通報する。
だがもうなんの意味も無いのだ。
伊織は死んでしまったのだから。
「私の、せいで」
…
その後、母と父が来た。
病院に運ばれた、霊安室にある伊織の体を見て、何も言わずにただ見つめるだけだった。母はゆっくりと口を開けた。
「碧…可哀想に…痛かったでしょう…?」
私は一瞬、母が何を言ったのか理解が出来なかった。
私たち双子は、瓜二つで声や背丈まで一緒だったが母が伊織と私を間違えたことは一度たりともない。
「それはいお…」
私は、「それは伊織だよ」と言いかけてやめた。言っている途中に理解した。
母は出来がよく、素直な伊織を私より愛していた。私は賢くはないし生意気で何か注意されるごとに生意気に言い返していた。そんな私を母は嫌っていた。
母の愛している伊織が死んだということを受け止められず、伊織を私だと思っているのだ。母の中で碧は死んでしまったのだと理解してしまった。
何も言わなかった。何も言えなかった。
私はその日から「伊織」になると決めた。
…
勉強も死に物狂いで頑張った。
喋り方、性格、癖までも私の知っている限り全てを真似た。
私は伊織なのだから素直でなくては
私は伊織なのだから優しくなくては
私は伊織なのだから賢くなくては
伊織なのだから…
「あれ…そう言えば私のってなんだったんだっけ、どんな性格だっけ?どんな感じだっけ…」
私は私自身を忘れてしまった。
ずっと伊織を演じ続けてきたから
ずっと伊織でいたから
…ずっと前に自分というものを殺したから
もう分からなくていいとさえ思ってしまった。だって私ら伊織なのだから…。
えみおさん(埼玉・10さい)からの相談
とうこう日:2020年6月11日みんなの答え:1件
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怖・・・・ とても面白いですね。 猫さん(新潟・12さい)からの答え
とうこう日:2020年6月12日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
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