二度目の初恋【短編小説】
足音の響く廊下。
泣きはらした目にはまぶしすぎた夕日。
今でも、覚えている。
授業中、ななめ前の席に座る高沢を見つめる。
席替えしてから、ついそっちを見てしまって、ますます苦しい。
私、山ア華は一年前に、高沢に告白してあっさり振られた。
諦めたはずなのに、まだ近くにいるとドキドキしてしまう。よく目も合うからなおさら落ち着かない。
きっと、まだ好きなんだと思う。
でももう話すこともないし、早くこの気持ちは忘れたい。
「では、山アさん、次の文から読んで」
ハッと黒板の方を見る。今は国語の授業だから、指名されたんだ。さっきのは先生の声だった。
どうしよう、どうしよう。ぼーっとしてて聞いてなかった。どこから読めばいいんだろう。
震える手を見つめながら、さっと立つ。
でも、読む部分が分からない私は、何もできない。何も言えない。
「山アさん?」
怖いと評判の先生だから、分からないとも言い出せない。泣き出しそうになったとき、
「128ページの5行目から」
視線をあげると、高沢がこっちを見ていた。小声で教えてくれたんだ。
「......次の日、私はまた牧場へ行き、子牛の研究を始めた。すると......」
無事に範囲を読み終えることができて、席に座る。でも、もう頭の中は高沢のことでいっぱいだった。体全体が熱くて仕方ない。きっと顔も赤いだろう。
両手で頬を包みながら、またななめ前を見る。もう抑えられない。やっぱり好きなんだ。
キーンコーン、カーンコーン......。
「高沢!」
みんなが部活に行く中、廊下で高沢に話しかけた。今日はバスケ部は活動はないらしい。制服姿だった。
『ごめんな、お前のこと、友達としか見れないんだ』
一年前の放課後、誰もいない廊下に響いた言葉。
高沢に話しかけようとすると、いつも思い出してしまう。だから、あれ以来話せていないんだ。
「どうした?」
振り向いて首をかしげる高沢。
「おいおい、どうした〜?」
「ヒューヒュー! お前ら仲良かったもんな!」
高沢の隣にいた男子たちが冷やかしてくる。私たちがある日を境に話さなくなったから、告白したのはすぐにバレたんだった。
男子たちはもう忘れていると思ってたけど、まだ覚えてたんだ。
このまま話しかけて大丈夫か迷っていると、
「お前ら、ちょっと先帰ってろ」
そう言って、高沢は私の手を引いて走り出した。
「ヒューヒュー」と声が聞こえるけど、そんなことはどうでも良かった。今は、高沢のことしか見れない。
人気のない空き教室に来ると、息を整えながら高沢の背中に話しかけた。
「男子たちが色々言ってたけど、大丈夫なの?」
「まあ、明日は何か言われるだろうけど、俺は平気」
そして振り返ると、
「それで、何か用?」
優しい声で聞いてきた。
「あのね、まず、授業中のこと、ありがとうね。ぼーっとしてて」
「ああ、お前っていつも真面目だけど、たまにボケっとしてるもんな。そんな理由だと思った」
そう言って笑うと、
「まあ、そんなちょっとしたことでお礼言うのも、お前らしいけど」
高沢はやっぱり優しい。顔も声も雰囲気も、全てを包みこんでくれる優しさだ。
「私っ、もうムリだって分かってるけど、まだ高沢のこと好きなの。もう気持ちが抑えきれなかった」
言ってしまった。久々に話せたのに、また話せなくなってしまうの? でも、好きだから、気持ちを伝えたかった。
「ごめんね、前にも同じこと言って、振られたのに」
逃げ帰ってしまいたくなったとき、
「実はさ、俺も」
思わずうつむいていた顔をあげた。今、「俺も」って......。
「あれからお前のこと意識し始めて、気づいたら、好きなんだって思って。ごめんな、気づくのが遅くなって」
胸が、今まで感じたことないくらいドキドキしていた。一年前、気持ちを伝える前とのドキドキより、もっと胸が強く鳴っている。
「だからさ」
空き教室にいることも忘れて、高沢を見ていた。二人だけの世界みたい。
「俺と、付き合ってください」
両想いになれるなんて、思ってなかった。嬉しい。嬉しすぎて世界がふわふわしてる。
「はい」
何とかしぼり出したその言葉を聞いて、高沢の目は少し細くなった。
そして、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
あの初恋。一度は実らないと思ったけれど、一年後、しっかり叶ったよ。 ココみんさん(埼玉・14さい)からの相談
とうこう日:2020年6月14日みんなの答え:1件
泣きはらした目にはまぶしすぎた夕日。
今でも、覚えている。
授業中、ななめ前の席に座る高沢を見つめる。
席替えしてから、ついそっちを見てしまって、ますます苦しい。
私、山ア華は一年前に、高沢に告白してあっさり振られた。
諦めたはずなのに、まだ近くにいるとドキドキしてしまう。よく目も合うからなおさら落ち着かない。
きっと、まだ好きなんだと思う。
でももう話すこともないし、早くこの気持ちは忘れたい。
「では、山アさん、次の文から読んで」
ハッと黒板の方を見る。今は国語の授業だから、指名されたんだ。さっきのは先生の声だった。
どうしよう、どうしよう。ぼーっとしてて聞いてなかった。どこから読めばいいんだろう。
震える手を見つめながら、さっと立つ。
でも、読む部分が分からない私は、何もできない。何も言えない。
「山アさん?」
怖いと評判の先生だから、分からないとも言い出せない。泣き出しそうになったとき、
「128ページの5行目から」
視線をあげると、高沢がこっちを見ていた。小声で教えてくれたんだ。
「......次の日、私はまた牧場へ行き、子牛の研究を始めた。すると......」
無事に範囲を読み終えることができて、席に座る。でも、もう頭の中は高沢のことでいっぱいだった。体全体が熱くて仕方ない。きっと顔も赤いだろう。
両手で頬を包みながら、またななめ前を見る。もう抑えられない。やっぱり好きなんだ。
キーンコーン、カーンコーン......。
「高沢!」
みんなが部活に行く中、廊下で高沢に話しかけた。今日はバスケ部は活動はないらしい。制服姿だった。
『ごめんな、お前のこと、友達としか見れないんだ』
一年前の放課後、誰もいない廊下に響いた言葉。
高沢に話しかけようとすると、いつも思い出してしまう。だから、あれ以来話せていないんだ。
「どうした?」
振り向いて首をかしげる高沢。
「おいおい、どうした〜?」
「ヒューヒュー! お前ら仲良かったもんな!」
高沢の隣にいた男子たちが冷やかしてくる。私たちがある日を境に話さなくなったから、告白したのはすぐにバレたんだった。
男子たちはもう忘れていると思ってたけど、まだ覚えてたんだ。
このまま話しかけて大丈夫か迷っていると、
「お前ら、ちょっと先帰ってろ」
そう言って、高沢は私の手を引いて走り出した。
「ヒューヒュー」と声が聞こえるけど、そんなことはどうでも良かった。今は、高沢のことしか見れない。
人気のない空き教室に来ると、息を整えながら高沢の背中に話しかけた。
「男子たちが色々言ってたけど、大丈夫なの?」
「まあ、明日は何か言われるだろうけど、俺は平気」
そして振り返ると、
「それで、何か用?」
優しい声で聞いてきた。
「あのね、まず、授業中のこと、ありがとうね。ぼーっとしてて」
「ああ、お前っていつも真面目だけど、たまにボケっとしてるもんな。そんな理由だと思った」
そう言って笑うと、
「まあ、そんなちょっとしたことでお礼言うのも、お前らしいけど」
高沢はやっぱり優しい。顔も声も雰囲気も、全てを包みこんでくれる優しさだ。
「私っ、もうムリだって分かってるけど、まだ高沢のこと好きなの。もう気持ちが抑えきれなかった」
言ってしまった。久々に話せたのに、また話せなくなってしまうの? でも、好きだから、気持ちを伝えたかった。
「ごめんね、前にも同じこと言って、振られたのに」
逃げ帰ってしまいたくなったとき、
「実はさ、俺も」
思わずうつむいていた顔をあげた。今、「俺も」って......。
「あれからお前のこと意識し始めて、気づいたら、好きなんだって思って。ごめんな、気づくのが遅くなって」
胸が、今まで感じたことないくらいドキドキしていた。一年前、気持ちを伝える前とのドキドキより、もっと胸が強く鳴っている。
「だからさ」
空き教室にいることも忘れて、高沢を見ていた。二人だけの世界みたい。
「俺と、付き合ってください」
両想いになれるなんて、思ってなかった。嬉しい。嬉しすぎて世界がふわふわしてる。
「はい」
何とかしぼり出したその言葉を聞いて、高沢の目は少し細くなった。
そして、私の頭をポンポンと軽く叩いた。
あの初恋。一度は実らないと思ったけれど、一年後、しっかり叶ったよ。 ココみんさん(埼玉・14さい)からの相談
とうこう日:2020年6月14日みんなの答え:1件
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ステキです。。。 おはよー!こんにちは!こんばんは!
私少女漫画より少年漫画派なんですけどめっちゃキュンキュンしました!
意識のもっていきかたというか…めっちゃ引き込まれます!もどかしい気持ちが伝わってきてすごいです!(語彙の死)
本だしたら売れそうです(* >ω<)
次の作品も楽しみにしてます! もっちもちパンダさん(兵庫・14さい)からの答え
とうこう日:2020年6月15日
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