【短編小説】
時は昔。まだお侍がいた頃。
夜姫と言う姫様がおった。
同じ時代。与吉と言う男もいた。
このお話はそんな二人の物語。
□
つまらない。私は常に暇だった。
姫って言っても親が帝の妻なだけで私自身に特別な仕事がある訳じゃない。
みんなはお姫様になりたい、とか考えるんだろうけど私は普通の生活をしたい。
みんなもお姫様になってみてよ。
お人形さんの気分になれるから。
庭を見るとしとしとと優しい雨が降っていた。
とんとん
誰かが私が入っている簾を叩く。
私は誰だかすぐに分かった。
だけどわざと分からないふりをした。
「なんのご用?」
「私のことを忘れてしまったのです?」
外から少しくだけた話し方で話しかけてくる男。与吉だ。
雨の日は毎日ここに来てくれる。
だから私は雨が好き。
「忘れてませんよ。与吉様。」
「こんにちは。夜姫様。」
与吉の顔は見たことがないが話している感じでは好青年といった感じだ。
私は与吉に好意を寄せている。
でもこの恋心は隠さなければ。
与吉のことが好きなどと公言してしまえばたちまち与吉は牢獄行き。
そんなこと私が耐えきれない。
「与吉様は毎回どうやってここまで来ているんです?」
「それは秘密でございます」
「そうですか」
城の警備は異様に厳しい。
そう簡単には入ってこれない。
だから与吉の職業は忍者かなにかなのではないかと私は思っている。
しばらく与吉と静かに話す。
この時間は姫をやっていて唯一と言ってもいい楽しい時間だ。
与吉は私に好意を持っているのだろう。
そうでなければこんなに何回も命を懸けて城に入っては来ない。
与吉にもっと近い人間として与吉に会いたかった。そんな世界にいきたい。
□
それからしばらく晴れの日が続いた。
しかし私の心は灰色に沈んでいた。晴れの日は与吉に会えない。
重い着物を着せられて、ずっと座る。
たまに意味不明な和歌を書かされて。
城を抜け出したい。
そんな思いが日に日に強くなっていったある日。ついに雨が降った。
とんとん
いつも通り簾を叩かれる。
「与吉さまですか?」
「えぇ。そうでございます」
私は与吉にだけは打ち明けようと思っていた。城を抜け出したいことを。
「与吉さま。お話があります。」
「なんでございましょう?」
「城を抜け出したいのです。一日でいいから普通の生活をしたいのでございます。」
さすがに与吉も驚くかと思ったが与吉はこうなることを知っていたかのように全く動じなかった。
「いいのではないですか?応援しております。」
「そうですか?ありがとうございます」
□
私は次の日に作戦を実行した。
まず、買い物に行きたいという我が儘を家来に言った。
すると意外にすんなりと買い物に家来付きで行かせてもらえた。
次に町に出る。そこで私はかなりの急ぎ足で細い道をくねくねと進んでいった。
それでも家来達はきちんとついてきた。
そこまではお見通しだ。
そして人通りの無い細い道まで来る。
そこで私は家来達を集めていった。
「このお金を渡します。これで髪飾りを買ってくるのです。私に家来はつけなくて構わないので。」
家来達は素直に指示に従ってくれる。
良心が少し痛むがこれ以上姫を続けるだなんて嫌だった。
私は駆け出す。いつもの重い着物は脱ぎ捨てて下に着ていた浴衣を整える。
どれぐらい走っただろうか。
全く人のいない場所に来てしまった。
疲れたので道端に座っていると青年に声をかけられる。
「どうした?ここらじゃ見ない顔だが…」
その声には聞き覚えがあった。
私が求めていた人の声。
「与吉さま!!」
「そ、その声は…!夜姫様!?」
私は思わず与吉に抱きついてしまった。
こうやって一人の人間として与吉に会えたことが素直に嬉しかった。
「夜姫様!?どうなされたんです!?」
私が突拍子もない脱走計画を話したときも驚かなかった与吉が驚いていた。
私はそれを見て笑ってしまう。
「あはは」
それを見た与吉もつられて笑った。
夕陽が二人の幸せな影を写していた。
□
私はその後、きちんと城へ戻った。
でも今度は与吉も連れていった。
「お父様。この男性と私の結婚を認めてくれないでしょうか?」
「う〜ん…この男の職業は?」
「忍でございます。」
「忍か……」
お父様はかなり迷ってらしたが最終的には認めてくれた。
「良いだろう…!」
「あ、ありがとうございます!」
私が与吉を見る。
すると一瞬目があった。
そのときの与吉の顔は幸せそのものだ。
私たちはきっといい夫婦になれる。
私はそう確信した。 アサヒさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2020年6月17日みんなの答え:1件
夜姫と言う姫様がおった。
同じ時代。与吉と言う男もいた。
このお話はそんな二人の物語。
□
つまらない。私は常に暇だった。
姫って言っても親が帝の妻なだけで私自身に特別な仕事がある訳じゃない。
みんなはお姫様になりたい、とか考えるんだろうけど私は普通の生活をしたい。
みんなもお姫様になってみてよ。
お人形さんの気分になれるから。
庭を見るとしとしとと優しい雨が降っていた。
とんとん
誰かが私が入っている簾を叩く。
私は誰だかすぐに分かった。
だけどわざと分からないふりをした。
「なんのご用?」
「私のことを忘れてしまったのです?」
外から少しくだけた話し方で話しかけてくる男。与吉だ。
雨の日は毎日ここに来てくれる。
だから私は雨が好き。
「忘れてませんよ。与吉様。」
「こんにちは。夜姫様。」
与吉の顔は見たことがないが話している感じでは好青年といった感じだ。
私は与吉に好意を寄せている。
でもこの恋心は隠さなければ。
与吉のことが好きなどと公言してしまえばたちまち与吉は牢獄行き。
そんなこと私が耐えきれない。
「与吉様は毎回どうやってここまで来ているんです?」
「それは秘密でございます」
「そうですか」
城の警備は異様に厳しい。
そう簡単には入ってこれない。
だから与吉の職業は忍者かなにかなのではないかと私は思っている。
しばらく与吉と静かに話す。
この時間は姫をやっていて唯一と言ってもいい楽しい時間だ。
与吉は私に好意を持っているのだろう。
そうでなければこんなに何回も命を懸けて城に入っては来ない。
与吉にもっと近い人間として与吉に会いたかった。そんな世界にいきたい。
□
それからしばらく晴れの日が続いた。
しかし私の心は灰色に沈んでいた。晴れの日は与吉に会えない。
重い着物を着せられて、ずっと座る。
たまに意味不明な和歌を書かされて。
城を抜け出したい。
そんな思いが日に日に強くなっていったある日。ついに雨が降った。
とんとん
いつも通り簾を叩かれる。
「与吉さまですか?」
「えぇ。そうでございます」
私は与吉にだけは打ち明けようと思っていた。城を抜け出したいことを。
「与吉さま。お話があります。」
「なんでございましょう?」
「城を抜け出したいのです。一日でいいから普通の生活をしたいのでございます。」
さすがに与吉も驚くかと思ったが与吉はこうなることを知っていたかのように全く動じなかった。
「いいのではないですか?応援しております。」
「そうですか?ありがとうございます」
□
私は次の日に作戦を実行した。
まず、買い物に行きたいという我が儘を家来に言った。
すると意外にすんなりと買い物に家来付きで行かせてもらえた。
次に町に出る。そこで私はかなりの急ぎ足で細い道をくねくねと進んでいった。
それでも家来達はきちんとついてきた。
そこまではお見通しだ。
そして人通りの無い細い道まで来る。
そこで私は家来達を集めていった。
「このお金を渡します。これで髪飾りを買ってくるのです。私に家来はつけなくて構わないので。」
家来達は素直に指示に従ってくれる。
良心が少し痛むがこれ以上姫を続けるだなんて嫌だった。
私は駆け出す。いつもの重い着物は脱ぎ捨てて下に着ていた浴衣を整える。
どれぐらい走っただろうか。
全く人のいない場所に来てしまった。
疲れたので道端に座っていると青年に声をかけられる。
「どうした?ここらじゃ見ない顔だが…」
その声には聞き覚えがあった。
私が求めていた人の声。
「与吉さま!!」
「そ、その声は…!夜姫様!?」
私は思わず与吉に抱きついてしまった。
こうやって一人の人間として与吉に会えたことが素直に嬉しかった。
「夜姫様!?どうなされたんです!?」
私が突拍子もない脱走計画を話したときも驚かなかった与吉が驚いていた。
私はそれを見て笑ってしまう。
「あはは」
それを見た与吉もつられて笑った。
夕陽が二人の幸せな影を写していた。
□
私はその後、きちんと城へ戻った。
でも今度は与吉も連れていった。
「お父様。この男性と私の結婚を認めてくれないでしょうか?」
「う〜ん…この男の職業は?」
「忍でございます。」
「忍か……」
お父様はかなり迷ってらしたが最終的には認めてくれた。
「良いだろう…!」
「あ、ありがとうございます!」
私が与吉を見る。
すると一瞬目があった。
そのときの与吉の顔は幸せそのものだ。
私たちはきっといい夫婦になれる。
私はそう確信した。 アサヒさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2020年6月17日みんなの答え:1件
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スゴーイ!! すごい!面白い!ハッピーエンドでよかった。でもちょっと半ばあり得ないことが。でも物語だもんね!13歳でこれはスゴーイ!! 約ネバさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年6月18日
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