巫女の涙
「いいの…いいの…こんな神社」
白色の巫女服が赤色にまみれていく
綺麗な黒髪も緑色の瞳も、
彼女の姿が火の海にうもれていった。
「狛寺さん。狛寺さん。こんにちはぁ」
袴姿の少女が俺に話しかけた。
長い黒髪、緑の瞳が印象的な女の子。
俺は蝶心希神社に毎日のようにお参りにくる。
こんな可愛い子、初めてだった。
「しのぶーっ、寺のお掃除するわよーっ」
寺の奥から、聞き慣れた声。
ひのえさんだ。
ひのえさんは、ここの巫女。
俺より年上で、袴のよく似合う美人。
同じく黒髪で清楚な女性。
(しのぶ?この子かな、可愛いな)
俺は少し、彼女を愛らしく思った。
「あの……どうか?」
頭に?の文字を、浮かべるように
俺に話しかけた。
赤い顔をして、上目遣いしてくるもので
可愛いったらありゃしない。
「あら、狛寺君じゃないの。今日は早いのねぇ」
ひのえさんが、俺に話しかけた。
「あ、そっかあ。狛寺君が来るときは、私が庭掃除だものね。
この子しのぶ。寺の所有者の娘さんで、巫女さんに憧れてて
ねっ、可愛い子でしょう?」
ひのえさんはきゃぴっとして、“しのぶ”さんを、
俺の方にとんっと押した。
俺の腕の中に収まるくらい小さくて、可愛い。
可愛いというより、顔だけで飯食ってける美人。
この時はまだ気付いてなかったが、
俺はなぜかしのぶさんが、庭掃除・賽銭箱の管理をする時間帯に
参りに行くようになっていた。
日に日にしのぶさんは俺のことを知ったようで、
俺が風邪になった日とか、
「今日は狛寺さん…来ないのかしら。なぁんて、可愛いこと言ってたの」
ひのえさんにきいた。
正直俺自身でも分かってた。
ただの一目惚れじゃなくて、本当の恋と…
「狛寺さんっ、会いたかったです!」
思わず口からこぼれたかのように、口をおさえる。
真っ赤なしのぶさんはいつもの大人びた声で
「嘘じゃないんですけど、忘れてください。」
見た目と裏腹な大人びた声は俺の心をふるわせる。
俺はなんで、彼女を…しのぶさんを…
死なせたんだろう……
ある日の夜、朝お参りに行ったとき、ひのえさんがおかしかった。
「狛寺君……しのぶ、泣いてるの。
悲しいわ、しのぶの瞳。緑色の中に」
『まるで光がないみたいに、悲しみと辛さに溺れてて』
いつもの明るく爽やかなひのえさんのこえが…
しのぶさんの涙が…
異変の始まりだとどうして気づかなかったのだろう。
夜
山奥の神社が赤く燃えていた。
俺がいくころには、ひのえさんがないていた。
「し…のぶ。私の…せい…」
「ひのえさんっ、ひのえさんっ」
駄目だ俺の声が届かない。
寺に移った火の横から、水をかける少女。
しのぶさん!!
「狛寺さん!?ど、どうしてっ。」
動揺する彼女を抱き寄せた。
「何やってんだよ!!ひのえさんすごく心配してたんだぞ!?
正直寺のこともだけど、しのぶのこと心配してたんだぞ!」
俺はしのぶさんに怒鳴った。
しのぶさんの目は少し赤くて、涙が止まってない。
「いいの…いいの…こんな神社」
彼女は俺の耳元でささやいて、
自らの運命のように火の海へむかった。
何やってるんだ!!
「まて、しのぶ!!」
白色の巫女服が赤色にまみれていく
綺麗な黒髪も緑色の瞳も、
彼女の姿が火の海へ消えていった。
その瞬間しのぶの涙を流す姿が俺の目に映り、
「狛寺さん…」
頬に垂れた涙の粒が火に落ちると、火は彼女をさらうかのように
空へ消えていった。
あれだけ燃えていたのに、どこも壊れてない。
『忘れないで……』
彼女が俺に囁いた言葉…
忘れない忘れたくない。
「どうしたの、狛寺君」
俺は驚いた。
あれだけしのぶを可愛がっていたひのえさんが、
消えたのに…覚えてないみたい…
「ひのえさんっ、しのぶが…しのぶが」
「しのぶ?可愛い名前ね、彼女さん?」
お、覚えてない!?
俺はしのぶのすべてをはなした。
可愛がっていたこと、泣いていたこと、あの夜のこと。
「まあ、可愛い子。なんだか、懐かしい子ね。
少し前まで可愛がっていたような会いたいなぁ」
記憶に残らなくても、何かしらで覚えられてる。
俺だけは覚えてるよ。忘れないよ。
神社でしか君をみたことなかったのは、
こんな力があったからかもしれない。
大丈夫…
君と生まれ変われたら、また…
君に出会って、好きだと伝えるよ。 蝶華坐しのぶさん(選択なし・11さい)からの相談
とうこう日:2020年7月2日みんなの答え:2件
白色の巫女服が赤色にまみれていく
綺麗な黒髪も緑色の瞳も、
彼女の姿が火の海にうもれていった。
「狛寺さん。狛寺さん。こんにちはぁ」
袴姿の少女が俺に話しかけた。
長い黒髪、緑の瞳が印象的な女の子。
俺は蝶心希神社に毎日のようにお参りにくる。
こんな可愛い子、初めてだった。
「しのぶーっ、寺のお掃除するわよーっ」
寺の奥から、聞き慣れた声。
ひのえさんだ。
ひのえさんは、ここの巫女。
俺より年上で、袴のよく似合う美人。
同じく黒髪で清楚な女性。
(しのぶ?この子かな、可愛いな)
俺は少し、彼女を愛らしく思った。
「あの……どうか?」
頭に?の文字を、浮かべるように
俺に話しかけた。
赤い顔をして、上目遣いしてくるもので
可愛いったらありゃしない。
「あら、狛寺君じゃないの。今日は早いのねぇ」
ひのえさんが、俺に話しかけた。
「あ、そっかあ。狛寺君が来るときは、私が庭掃除だものね。
この子しのぶ。寺の所有者の娘さんで、巫女さんに憧れてて
ねっ、可愛い子でしょう?」
ひのえさんはきゃぴっとして、“しのぶ”さんを、
俺の方にとんっと押した。
俺の腕の中に収まるくらい小さくて、可愛い。
可愛いというより、顔だけで飯食ってける美人。
この時はまだ気付いてなかったが、
俺はなぜかしのぶさんが、庭掃除・賽銭箱の管理をする時間帯に
参りに行くようになっていた。
日に日にしのぶさんは俺のことを知ったようで、
俺が風邪になった日とか、
「今日は狛寺さん…来ないのかしら。なぁんて、可愛いこと言ってたの」
ひのえさんにきいた。
正直俺自身でも分かってた。
ただの一目惚れじゃなくて、本当の恋と…
「狛寺さんっ、会いたかったです!」
思わず口からこぼれたかのように、口をおさえる。
真っ赤なしのぶさんはいつもの大人びた声で
「嘘じゃないんですけど、忘れてください。」
見た目と裏腹な大人びた声は俺の心をふるわせる。
俺はなんで、彼女を…しのぶさんを…
死なせたんだろう……
ある日の夜、朝お参りに行ったとき、ひのえさんがおかしかった。
「狛寺君……しのぶ、泣いてるの。
悲しいわ、しのぶの瞳。緑色の中に」
『まるで光がないみたいに、悲しみと辛さに溺れてて』
いつもの明るく爽やかなひのえさんのこえが…
しのぶさんの涙が…
異変の始まりだとどうして気づかなかったのだろう。
夜
山奥の神社が赤く燃えていた。
俺がいくころには、ひのえさんがないていた。
「し…のぶ。私の…せい…」
「ひのえさんっ、ひのえさんっ」
駄目だ俺の声が届かない。
寺に移った火の横から、水をかける少女。
しのぶさん!!
「狛寺さん!?ど、どうしてっ。」
動揺する彼女を抱き寄せた。
「何やってんだよ!!ひのえさんすごく心配してたんだぞ!?
正直寺のこともだけど、しのぶのこと心配してたんだぞ!」
俺はしのぶさんに怒鳴った。
しのぶさんの目は少し赤くて、涙が止まってない。
「いいの…いいの…こんな神社」
彼女は俺の耳元でささやいて、
自らの運命のように火の海へむかった。
何やってるんだ!!
「まて、しのぶ!!」
白色の巫女服が赤色にまみれていく
綺麗な黒髪も緑色の瞳も、
彼女の姿が火の海へ消えていった。
その瞬間しのぶの涙を流す姿が俺の目に映り、
「狛寺さん…」
頬に垂れた涙の粒が火に落ちると、火は彼女をさらうかのように
空へ消えていった。
あれだけ燃えていたのに、どこも壊れてない。
『忘れないで……』
彼女が俺に囁いた言葉…
忘れない忘れたくない。
「どうしたの、狛寺君」
俺は驚いた。
あれだけしのぶを可愛がっていたひのえさんが、
消えたのに…覚えてないみたい…
「ひのえさんっ、しのぶが…しのぶが」
「しのぶ?可愛い名前ね、彼女さん?」
お、覚えてない!?
俺はしのぶのすべてをはなした。
可愛がっていたこと、泣いていたこと、あの夜のこと。
「まあ、可愛い子。なんだか、懐かしい子ね。
少し前まで可愛がっていたような会いたいなぁ」
記憶に残らなくても、何かしらで覚えられてる。
俺だけは覚えてるよ。忘れないよ。
神社でしか君をみたことなかったのは、
こんな力があったからかもしれない。
大丈夫…
君と生まれ変われたら、また…
君に出会って、好きだと伝えるよ。 蝶華坐しのぶさん(選択なし・11さい)からの相談
とうこう日:2020年7月2日みんなの答え:2件
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わぁっ 本にしてもいいと思います! 素敵な小説でしたぁ… カナリヤさん(愛知・10さい)からの答え
とうこう日:2021年2月2日 -
涙が…出そうです(=∀=) すっごくいい話ですね。
少女漫画の最終話にありそうな展開です!
でも、みんなしのぶさんの記憶が失われてしまっただなんて…
狛寺さんだけはずっと覚えていてくだしいね。
しのぶさんを愛してくださいね…
のめりこんじゃってすみません><; 桜夜さん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2020年7月4日
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