一週間の二人
病院の近くの公園。
私……佐藤朱莉は、ブランコに座っていた。
どうしてこんなことになったんだろう。
お医者さんに『朱莉さんはがんです。寿命は……』
そう告げられた時。
一番泣いていたのは、お母さんだった。
ごめんね、ごめんねって、お母さんは何も悪いことしてないのに、ずっと謝ってた。
離婚してお父さんがいなくて、よかったなって思う。
もし、もう一人両親がいたならば、私の苦しみももっと大きかっただろう。
外の空気を吸いたくて、こうして出てきたけれど、私は何もできない。
今は夜十時。
とっくに外出できる時間を過ぎてる。
空では星が瞬いていて、冷たい風が私を通り抜けていく。
パジャマ一枚できたから、すごく寒い。
もう帰ろう。そしたら、きっと受付の看護師さんに見つかる。
怒られる。でもいい。残り少ない命だ。
怒られたって、何も想いやしない。
生きていたい、なんてわがままは言わない。
ううん。私の中の誰かが、言わせない。
「こんにちは。」
誰かが、隣のブランコに座った。オレンジのパジャマを着た、
セミロングの女の子だった。
「誰?」
「私も、この病院に入院してるの。受付のお姉さんにバレないように、さっき何とか出てきたんだ。
……酒井愛理って言うんだけど、私……」
女の子……愛理は、そこで一旦言葉を切った。
「余命一週間なんだ。」
私は息を飲む。
「私も。私も、余命一週間……。えっと、私の名前は、佐藤朱莉だよ…。」
「わ、仲間みっけ! それに、佐藤さんって、私の隣のベッドでしょ?」
そういえば、隣のベッドの人、酒井さんって名前だったような。
「ねえ、仲良くしようよ。よろしくね。一週間同士。」
差し出された手を、私は、そっと握った。それが、初めての友達だった。
「ねえ朱莉、この新聞記事、面白いよ!」
「朱莉って、難しい本読んでるんだね。私なんか、まだ低学年用で精一杯なのに。」
「今朝は寒いから、あったかくしとかなきゃだね! すっかり梅雨だなぁ。」
「ねえ朱莉。ホットケーキとパンケーキの違いって、何だろ?」
毎日が、楽しくなった。不思議と、病気で苦しむなんてこともなかった。
生きていたい。二人でずっといたい。
そう思った。人生で初めての、感情だった。
リリリリリン!
真夜中、警報の音で、目が覚めた。
『火事です、火事です。』
ちょうど、明日死ぬ日に、火事が起きるなんて、全く考えていなかった私は、慌てた。
「朱莉、早く避難しよう! こっち!!」
階段を駆け下りた。途中で、愛理が立ち止まった。後ろを走っていた人にも、あっという間に追い抜けられる。
「ご、ごめん。めまいがして……」
「愛理!」
階段を降りたところのあたりに、たまたま分厚い木の板が見えた。…………………………そうだ。
「愛理は先に行ってて。」
「ちょっと、朱莉、どうするつもり?」
「はやく!」
愛理を突き飛ばし、板を持つ。階段から襲ってくる炎が、一瞬だけ途切れる。あっという間に、燃えてしまうだろうな。
でも、これでいいの。
「愛理、ホットケーキとパンケーキの違い、わかんなかったね。」
「朱莉?」
「ほら、行って!」
板が燃えたら、私も_________。
愛理。
私に希望を与えてくれて、ありがとう。 赤色パンダさん(選択なし・10さい)からの相談
とうこう日:2020年7月7日みんなの答え:0件
私……佐藤朱莉は、ブランコに座っていた。
どうしてこんなことになったんだろう。
お医者さんに『朱莉さんはがんです。寿命は……』
そう告げられた時。
一番泣いていたのは、お母さんだった。
ごめんね、ごめんねって、お母さんは何も悪いことしてないのに、ずっと謝ってた。
離婚してお父さんがいなくて、よかったなって思う。
もし、もう一人両親がいたならば、私の苦しみももっと大きかっただろう。
外の空気を吸いたくて、こうして出てきたけれど、私は何もできない。
今は夜十時。
とっくに外出できる時間を過ぎてる。
空では星が瞬いていて、冷たい風が私を通り抜けていく。
パジャマ一枚できたから、すごく寒い。
もう帰ろう。そしたら、きっと受付の看護師さんに見つかる。
怒られる。でもいい。残り少ない命だ。
怒られたって、何も想いやしない。
生きていたい、なんてわがままは言わない。
ううん。私の中の誰かが、言わせない。
「こんにちは。」
誰かが、隣のブランコに座った。オレンジのパジャマを着た、
セミロングの女の子だった。
「誰?」
「私も、この病院に入院してるの。受付のお姉さんにバレないように、さっき何とか出てきたんだ。
……酒井愛理って言うんだけど、私……」
女の子……愛理は、そこで一旦言葉を切った。
「余命一週間なんだ。」
私は息を飲む。
「私も。私も、余命一週間……。えっと、私の名前は、佐藤朱莉だよ…。」
「わ、仲間みっけ! それに、佐藤さんって、私の隣のベッドでしょ?」
そういえば、隣のベッドの人、酒井さんって名前だったような。
「ねえ、仲良くしようよ。よろしくね。一週間同士。」
差し出された手を、私は、そっと握った。それが、初めての友達だった。
「ねえ朱莉、この新聞記事、面白いよ!」
「朱莉って、難しい本読んでるんだね。私なんか、まだ低学年用で精一杯なのに。」
「今朝は寒いから、あったかくしとかなきゃだね! すっかり梅雨だなぁ。」
「ねえ朱莉。ホットケーキとパンケーキの違いって、何だろ?」
毎日が、楽しくなった。不思議と、病気で苦しむなんてこともなかった。
生きていたい。二人でずっといたい。
そう思った。人生で初めての、感情だった。
リリリリリン!
真夜中、警報の音で、目が覚めた。
『火事です、火事です。』
ちょうど、明日死ぬ日に、火事が起きるなんて、全く考えていなかった私は、慌てた。
「朱莉、早く避難しよう! こっち!!」
階段を駆け下りた。途中で、愛理が立ち止まった。後ろを走っていた人にも、あっという間に追い抜けられる。
「ご、ごめん。めまいがして……」
「愛理!」
階段を降りたところのあたりに、たまたま分厚い木の板が見えた。…………………………そうだ。
「愛理は先に行ってて。」
「ちょっと、朱莉、どうするつもり?」
「はやく!」
愛理を突き飛ばし、板を持つ。階段から襲ってくる炎が、一瞬だけ途切れる。あっという間に、燃えてしまうだろうな。
でも、これでいいの。
「愛理、ホットケーキとパンケーキの違い、わかんなかったね。」
「朱莉?」
「ほら、行って!」
板が燃えたら、私も_________。
愛理。
私に希望を与えてくれて、ありがとう。 赤色パンダさん(選択なし・10さい)からの相談
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