父からの手紙
娘を返して。そうお父さんからの手紙に書かれていた。その手紙を読んで、私は自分が養女だということを初めて知った。
病気にかかったお母さんの治療費捻出のため、お父さんは昼夜問わず働き続けたこと。お母さんは死んでしまい、ひとり親だと幼稚園や小学校で私がなんと言われるか不安になり、養子に出したこと。私を返して欲しいこと。法律では私をお父さんに返すことが可能であること。
修学旅行に行くために荷物が入るリュックを探している時に箱を開けた私はそのことを知った。
私に先入観があったのかもしれないけど、お父さんの素朴な文章からは私を返して欲しいという思いが伝わってきた気がした。
他にもあるかと探してみると、手紙が十五通、見つかった。内、私のおばあちゃん、おじいちゃんからの手紙が五通。
下から義理のお母さんが私を呼ぶ。
「絹(きぬ)。早く、支度しなさい。四時に駅に集合なんでしょ?早く寝たほうがいい」
妹の澪(みお)も私を呼ぶ。
私は答えながら、父たちからの手紙を見つめる。思えば、私のご飯は妹やお父さん、お母さんより少なく盛られていたし、服を買い与えてくれる回数も妹より少なかったし、よく私は叩かれている。殴られた痕はまだ残っている。
私はポケットからメモ帳とペンを出し、お父さんからの手紙に書かれた住所を書くと、お父さんからの手紙を部屋の棚に隠し、それ以外の手紙を箱にしまった。
修学旅行から帰った私はお父さんからの手紙が棚から紛失したことに気づいた。
親には聞かないし、言えない。妹にも言えない。当惑する私に、後ろから声がかかった。お母さんの声だった。
「絹。知ったのね。言っておくけど、澪は知ってるよ。絹が養女ということは」
ぞっとするほど恐ろしい声だった。
私は何も言えなかった。なんて言えばいいのか分からず、私はただ頷いた。
その日、初めて、私はご飯を食べさせてもらえなかった。
翌日から私は家から外に出してもらえなかった。つまり、家に軟禁されたのだ。
学校には体調不良と連絡して休ませ、澪にもそう伝えてるという。
ご飯も食べさせてもらえず、水だけは飲ませてもらえた。
私はお母さんとお父さんになぜこんな事をするのか聞いた。すると、返ってきた返事は「育ててやった恩も感じず、実の親に戻ろうとするなんてわがまま。身を以て思い知らせるため」だった。嘘だとは思えなかった。
私には唯一、好きな本は与えられた。だから、私はひたすら本を読んだ。食事も、外出も許されない家でただそれだけは許された。
それから一週間後のことだった。真夜中に、澪が私を訪ねてきた。
「お姉ちゃん。助けに来たよ」
澪が私を呼んだ。お母さんに似て、なかなかに可愛い小学五年生だった。だけど、そんな可愛い少女が顔を懐中電灯で照らして真夜中に話しかけられると、ゾンビ映画のような怖さを持つ。あやうく私は悲鳴を上げかけた。
「助ける?どういうこと?」
澪が明るく笑った。
「本当はもっと早く助けたかったんだけどさ、今日になっちゃった。昼間は学校だし、朝はお母さんたちの目があって、仮病で学校を休もうにも見破られちゃう。夜しかチャンスは無いんだけど、眠ちゃった。
ごめんね。もっと早く来れなくて」
私はかぶりを振った。
「澪に謝れる筋合いなんか無い。それで、逃げ出すって?澪は?」
澪は卑屈な笑みを顔に浮かべた。
「私たちはここにいるしかない。お姉ちゃんの親に労力はかけられないし、迷惑でしょ?」
嫌だと思った。澪はあの両親とは似ても似つかない優しい子たちだ。頭も良いし、感受性も豊か。何より、私が澪と離れたくなかった。
私はメモ帳を手に持ち、言った。
「とにかく澪、一緒に行こう。お父さんの住所は知ってるから。話はそれから」
手紙に記されていた住所の家は木造の平屋建て。清潔感のある、それなりに大きい家だった。
早朝の四時、家から男の人が出てきた。若干、芸能人の櫻井くんに似ている気がした。私はお父さんに似てるんだなと思った。私を見て、立ち止まる。驚き、呆然としたように呟いた。
「絹?」
こくりと私は頷いた。そして、私の横にいる澪を見て、不思議そうな顔をする。
「絹。二人は?」
「澪です。絹さんの義妹です」
澪が礼儀正しく、例をした。それを横目に、私は自分の胸が暖かくなるのを感じた。 櫻井さん(静岡・13さい)からの相談
とうこう日:2020年7月16日みんなの答え:1件
病気にかかったお母さんの治療費捻出のため、お父さんは昼夜問わず働き続けたこと。お母さんは死んでしまい、ひとり親だと幼稚園や小学校で私がなんと言われるか不安になり、養子に出したこと。私を返して欲しいこと。法律では私をお父さんに返すことが可能であること。
修学旅行に行くために荷物が入るリュックを探している時に箱を開けた私はそのことを知った。
私に先入観があったのかもしれないけど、お父さんの素朴な文章からは私を返して欲しいという思いが伝わってきた気がした。
他にもあるかと探してみると、手紙が十五通、見つかった。内、私のおばあちゃん、おじいちゃんからの手紙が五通。
下から義理のお母さんが私を呼ぶ。
「絹(きぬ)。早く、支度しなさい。四時に駅に集合なんでしょ?早く寝たほうがいい」
妹の澪(みお)も私を呼ぶ。
私は答えながら、父たちからの手紙を見つめる。思えば、私のご飯は妹やお父さん、お母さんより少なく盛られていたし、服を買い与えてくれる回数も妹より少なかったし、よく私は叩かれている。殴られた痕はまだ残っている。
私はポケットからメモ帳とペンを出し、お父さんからの手紙に書かれた住所を書くと、お父さんからの手紙を部屋の棚に隠し、それ以外の手紙を箱にしまった。
修学旅行から帰った私はお父さんからの手紙が棚から紛失したことに気づいた。
親には聞かないし、言えない。妹にも言えない。当惑する私に、後ろから声がかかった。お母さんの声だった。
「絹。知ったのね。言っておくけど、澪は知ってるよ。絹が養女ということは」
ぞっとするほど恐ろしい声だった。
私は何も言えなかった。なんて言えばいいのか分からず、私はただ頷いた。
その日、初めて、私はご飯を食べさせてもらえなかった。
翌日から私は家から外に出してもらえなかった。つまり、家に軟禁されたのだ。
学校には体調不良と連絡して休ませ、澪にもそう伝えてるという。
ご飯も食べさせてもらえず、水だけは飲ませてもらえた。
私はお母さんとお父さんになぜこんな事をするのか聞いた。すると、返ってきた返事は「育ててやった恩も感じず、実の親に戻ろうとするなんてわがまま。身を以て思い知らせるため」だった。嘘だとは思えなかった。
私には唯一、好きな本は与えられた。だから、私はひたすら本を読んだ。食事も、外出も許されない家でただそれだけは許された。
それから一週間後のことだった。真夜中に、澪が私を訪ねてきた。
「お姉ちゃん。助けに来たよ」
澪が私を呼んだ。お母さんに似て、なかなかに可愛い小学五年生だった。だけど、そんな可愛い少女が顔を懐中電灯で照らして真夜中に話しかけられると、ゾンビ映画のような怖さを持つ。あやうく私は悲鳴を上げかけた。
「助ける?どういうこと?」
澪が明るく笑った。
「本当はもっと早く助けたかったんだけどさ、今日になっちゃった。昼間は学校だし、朝はお母さんたちの目があって、仮病で学校を休もうにも見破られちゃう。夜しかチャンスは無いんだけど、眠ちゃった。
ごめんね。もっと早く来れなくて」
私はかぶりを振った。
「澪に謝れる筋合いなんか無い。それで、逃げ出すって?澪は?」
澪は卑屈な笑みを顔に浮かべた。
「私たちはここにいるしかない。お姉ちゃんの親に労力はかけられないし、迷惑でしょ?」
嫌だと思った。澪はあの両親とは似ても似つかない優しい子たちだ。頭も良いし、感受性も豊か。何より、私が澪と離れたくなかった。
私はメモ帳を手に持ち、言った。
「とにかく澪、一緒に行こう。お父さんの住所は知ってるから。話はそれから」
手紙に記されていた住所の家は木造の平屋建て。清潔感のある、それなりに大きい家だった。
早朝の四時、家から男の人が出てきた。若干、芸能人の櫻井くんに似ている気がした。私はお父さんに似てるんだなと思った。私を見て、立ち止まる。驚き、呆然としたように呟いた。
「絹?」
こくりと私は頷いた。そして、私の横にいる澪を見て、不思議そうな顔をする。
「絹。二人は?」
「澪です。絹さんの義妹です」
澪が礼儀正しく、例をした。それを横目に、私は自分の胸が暖かくなるのを感じた。 櫻井さん(静岡・13さい)からの相談
とうこう日:2020年7月16日みんなの答え:1件
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よかった よかった よかった よかった よかった
絹さん、助かって。澪さんが優しくて。
絹さんの義理親、恐い。怖い。 Chihiroさん(大分・11さい)からの答え
とうこう日:2020年7月17日
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