物語
僕には会いたい人がいる。
あの夏に、砂浜で出会った子。
あのころは、12歳ごろだったかな?
あの子にもう一度会って、伝えたいことがある。
この学校に伝わる七不思議の一つ、「ころしやさん」
そうは言っても、実際に殺してしまうのではなく、どこか別の世界に送り飛ばしてしまうだけなのだそうだ。
でも、誰もその人の行く先はわからないし、どこを探しても見つからない。
でもさ、「ころしやさん」の方がなんか怖そうだろ?「ゆうかいやさん」って、なんか弱そうに感じるんだよな。
まあ、この学校で人に恨まれるようなことはしない方がいい。
誰かがころしやさんに「あの人やっちゃって」なんて言ったら、その人はもう次の日にはきれいさっぱり消えてる。
みんなその「あの人」にならないように、お互い気遣いながら学校生活を送っているのだ。
ころしやさんは、標的がどこにいようと探し当て、サッと消してしまう。
っていうことは、人探しが得意なんじゃないか?
って思ったわけで、僕の会いたい子を探してもらおうという感じになったんだ。
消さないでくれ、っていう願いを聞いてもらえるかはわからない。
けど、聞いてみないよりはいいんじゃないか?
夕方、ころしやさんのいるところに向かってみた。
3年B組と、3年C組の教室の間の柱。
「お願いがあります。通してください。」
「え、あ、ちょっ…まって…ウワッこんなとこに本置いたの誰よ!あ、私しかいないか。お騒がせいたしました。どーぞー。」
バタンバタン音がした後、柱に黒檀でできた扉が現れた。
金ピカのドアノブをひねって、中に入ってみる。
中は魔女の部屋みたいで、本がたくさん積んであり、薄暗く、それでもってどこからか入ってきている優しい黄色の光が窓から差し込んでいた。
柱の中の部屋なんだから細長いかと思ったら、そんなことはなく一軒家みたいな広さだ。まあ、七不思議なんだから不思議に満ち溢れているのはおかしくはないか。
「で、なんの用?誰をどうして欲しいの?」
振り向くと、黒いローブを纏っていて、濡烏色の髪を腰まで垂らした同い年くらいの女の子が立っていた。
「はじめまして。僕、楓って言います。あの、どっかにやって欲しいんじゃなくて、探して欲しいんです。」
「自己紹介した人なんて初めてよ。みんな自分の目的に必死で自分が誰かなんて言いやしない。私はカナデ。よろしく。んでまあ、どっかにやるよりはラクだから、特徴でもなんでも話してくれる?」
「えっと、よく覚えてないんですけど、小6の時に砂浜で会った女の子で、多分同い年だと思います。その後も結構一緒に遊んだりしたかな?家が結構近くて。途中で引っ越しちゃったけど。髪は結構黒くて、長くて、目はパッチリしてました。あん時はおさげだったかな?え、一本の三つ編みだったっけ。」
「ハッキリしないのね。まあ、いいや。なんとかなるっしょ。えっと、水晶玉くーん、おい、起きろ。仕事だ。こんな手がかりだけだけどコイツ探して。」
「マッタク、オンナダッテイッテンデショ。クンヅケヤメロッテノ。テカ テガカリスクナクナイ?マ、イイワ。ヤンナイトアノアブナイトンカチニワラレチャウンダモノ。テカソコノ ダンシ、ツギオネガイスルトキハモットシラベテカラコイヨナ。」
水晶が喋ったのでびっくりしていると、数秒経った後に答えが出た。
「シンジランナイケド、ソコノゴシュジンサマガアテハマッタワ。ムカシ、ビーチデアソンダミタイダシ、マ、モウシンジャッテルケド。」
女の子は目を見開き、僕をじーっと見つめている。この女の子があの子だとしたら、どうして七不思議になっちゃったんだろう。死んじゃったって事になるよね。
びっくりした。僕はなかなか答えが飲み込めず。むせそうになる。
「てか、なんで君私を探してるの?君の物語にとって私はそんなに重要な人物なの?」
ああ、あの子だ。あの子、昔こんなこと言ってたっけ。
「人生ってのは物語なのよ。でも、書き込んだらもう書き直せない。書き直せないから物語を書くのをやめるか、やめないかなの。失敗を生かせるか生かせないか。でも、どうやったって生かせないこともあるよね。」
彼女はもう物語を書くのをやめてしまったのだろうか。取り返しのつかない書き間違えをしてしまったのだろうか。
「ねえ、言いたいことがあるんだ。そのために君を探してた。ずっと前から好きだったんだ。引っ越す前に伝えたかったけど、うまく言い出せなくて…。ごめん。」
そう言うと、彼女は初めて普通の女の子みたいに笑って、「私も」と返した。
5時の烏の歌が聞こえ、いつのまにか僕は学校の廊下にいた。また、君に会いに行く。
君の物語はまだ、ここで続いてるから。いや、僕が続けてみせるから。 地縛霊さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年7月20日みんなの答え:1件
あの夏に、砂浜で出会った子。
あのころは、12歳ごろだったかな?
あの子にもう一度会って、伝えたいことがある。
この学校に伝わる七不思議の一つ、「ころしやさん」
そうは言っても、実際に殺してしまうのではなく、どこか別の世界に送り飛ばしてしまうだけなのだそうだ。
でも、誰もその人の行く先はわからないし、どこを探しても見つからない。
でもさ、「ころしやさん」の方がなんか怖そうだろ?「ゆうかいやさん」って、なんか弱そうに感じるんだよな。
まあ、この学校で人に恨まれるようなことはしない方がいい。
誰かがころしやさんに「あの人やっちゃって」なんて言ったら、その人はもう次の日にはきれいさっぱり消えてる。
みんなその「あの人」にならないように、お互い気遣いながら学校生活を送っているのだ。
ころしやさんは、標的がどこにいようと探し当て、サッと消してしまう。
っていうことは、人探しが得意なんじゃないか?
って思ったわけで、僕の会いたい子を探してもらおうという感じになったんだ。
消さないでくれ、っていう願いを聞いてもらえるかはわからない。
けど、聞いてみないよりはいいんじゃないか?
夕方、ころしやさんのいるところに向かってみた。
3年B組と、3年C組の教室の間の柱。
「お願いがあります。通してください。」
「え、あ、ちょっ…まって…ウワッこんなとこに本置いたの誰よ!あ、私しかいないか。お騒がせいたしました。どーぞー。」
バタンバタン音がした後、柱に黒檀でできた扉が現れた。
金ピカのドアノブをひねって、中に入ってみる。
中は魔女の部屋みたいで、本がたくさん積んであり、薄暗く、それでもってどこからか入ってきている優しい黄色の光が窓から差し込んでいた。
柱の中の部屋なんだから細長いかと思ったら、そんなことはなく一軒家みたいな広さだ。まあ、七不思議なんだから不思議に満ち溢れているのはおかしくはないか。
「で、なんの用?誰をどうして欲しいの?」
振り向くと、黒いローブを纏っていて、濡烏色の髪を腰まで垂らした同い年くらいの女の子が立っていた。
「はじめまして。僕、楓って言います。あの、どっかにやって欲しいんじゃなくて、探して欲しいんです。」
「自己紹介した人なんて初めてよ。みんな自分の目的に必死で自分が誰かなんて言いやしない。私はカナデ。よろしく。んでまあ、どっかにやるよりはラクだから、特徴でもなんでも話してくれる?」
「えっと、よく覚えてないんですけど、小6の時に砂浜で会った女の子で、多分同い年だと思います。その後も結構一緒に遊んだりしたかな?家が結構近くて。途中で引っ越しちゃったけど。髪は結構黒くて、長くて、目はパッチリしてました。あん時はおさげだったかな?え、一本の三つ編みだったっけ。」
「ハッキリしないのね。まあ、いいや。なんとかなるっしょ。えっと、水晶玉くーん、おい、起きろ。仕事だ。こんな手がかりだけだけどコイツ探して。」
「マッタク、オンナダッテイッテンデショ。クンヅケヤメロッテノ。テカ テガカリスクナクナイ?マ、イイワ。ヤンナイトアノアブナイトンカチニワラレチャウンダモノ。テカソコノ ダンシ、ツギオネガイスルトキハモットシラベテカラコイヨナ。」
水晶が喋ったのでびっくりしていると、数秒経った後に答えが出た。
「シンジランナイケド、ソコノゴシュジンサマガアテハマッタワ。ムカシ、ビーチデアソンダミタイダシ、マ、モウシンジャッテルケド。」
女の子は目を見開き、僕をじーっと見つめている。この女の子があの子だとしたら、どうして七不思議になっちゃったんだろう。死んじゃったって事になるよね。
びっくりした。僕はなかなか答えが飲み込めず。むせそうになる。
「てか、なんで君私を探してるの?君の物語にとって私はそんなに重要な人物なの?」
ああ、あの子だ。あの子、昔こんなこと言ってたっけ。
「人生ってのは物語なのよ。でも、書き込んだらもう書き直せない。書き直せないから物語を書くのをやめるか、やめないかなの。失敗を生かせるか生かせないか。でも、どうやったって生かせないこともあるよね。」
彼女はもう物語を書くのをやめてしまったのだろうか。取り返しのつかない書き間違えをしてしまったのだろうか。
「ねえ、言いたいことがあるんだ。そのために君を探してた。ずっと前から好きだったんだ。引っ越す前に伝えたかったけど、うまく言い出せなくて…。ごめん。」
そう言うと、彼女は初めて普通の女の子みたいに笑って、「私も」と返した。
5時の烏の歌が聞こえ、いつのまにか僕は学校の廊下にいた。また、君に会いに行く。
君の物語はまだ、ここで続いてるから。いや、僕が続けてみせるから。 地縛霊さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年7月20日みんなの答え:1件
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いいですね! 面白かったです!
扉が現われたり、水晶玉が喋ったり。意外と女の子も普通で、(女の子だったのも意外でした)悲しいけど、いい話だと思いました! はちみつさん(千葉・14さい)からの答え
とうこう日:2020年7月21日
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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