彼岸エレベーター
『マモナク、彼岸デ御座イマス…
到着マデ、シバシ、オ待チ下サイ…』
地下一階行きの筈だった。
私は、地下一階のボタンを押した筈だった。
なのに。
エレベーターは地下一階を通り越し、更に下の階まで進んでいる。
彼岸は、死者の世界の通称だ。
(私、死ぬの…?)
私が住むこのマンションに、地下一階より下の階はない。
「ちょっと、おかしいよね…?」
誰もいないエレベーターの中、私の声が響いた。
でも、乗った者を彼岸へ連れていってしまうエレベーター、通称「彼岸エレベーター」の噂なら、聞いたことがある。
そう思い出した時、背筋が凍りついた。
(絶対、私を彼岸へ連れて行く気だ…)
ゴゥン…
エレベーターはしばらく進み、やがてガシャンと音を立てて止まった。
『彼岸デ御座イマス…』
エレベーターのドアが開く。
「嘘…」
私の目の前に広がるのは、雲一つない晴れた空の下、真紅の彼岸花が満開に咲き誇っている景色だった。
彼岸花には色とりどりの蝶が止まっており、とても幻想的な雰囲気をかもし出している。
その美しさに魅了され、思わずエレベーターを降りてしまう。
その瞬間、エレベーターがスゥッと消えていってしまった。
『マタノ御利用ヲ、オ待チシテオリマス…』
という、無情な音声を残しながら。
私は、何とか此処から元の世界に戻るため、彼岸花の道を進んだ。
しばらく進むと、小さく綺麗な川の前に来た。
水がとても透き通っている。
そして、川面には彼岸花の花びらが浮き、花筏を作っていた。
「そこを渡るんですよ。
そうすれば元の世界に戻れますから…」
「!?」
振り返ると、そこには白い狐面をつけ、漆黒の着物を着ている少女が立っていた。
「戻りたいのでしょう?」
「そうだけど…」
「では、渡ってください。」
「え?う、うん」
私は少女の言う通りに川を飛び越えた。
すると、意識が遠のいていった。
そして、気がつくとあのエレベーターの中にいた。
エレベーターは上へ進んでいる。
しばらくして、音を立てながらエレベータードアが開いた。
いつものマンションだった。
安心しながら、さっきの出来事は何だったのだろうと思いつつ、私は家に戻った。
彼岸花の咲き誇る中、清らかに流れる川を見つめながら、少女は呟いた。
「危なかったですね、あの方はこのまま此岸から存在が消えてしまう所でした…
それにしても、彼岸エレベーターは危険なこと。
人間の皆さんに呼び掛けなくては…」
そして、狐面をつけたまま川を飛び越えて此岸…生者の世界へと消えていった。 完
ーーーーーーーーーーーーーーーーーー
こんにちは、作者のあおねこです!
感想お待ちしてます♪
では! あおねこさん(東京・12さい)からの相談
とうこう日:2020年7月25日みんなの答え:4件
到着マデ、シバシ、オ待チ下サイ…』
地下一階行きの筈だった。
私は、地下一階のボタンを押した筈だった。
なのに。
エレベーターは地下一階を通り越し、更に下の階まで進んでいる。
彼岸は、死者の世界の通称だ。
(私、死ぬの…?)
私が住むこのマンションに、地下一階より下の階はない。
「ちょっと、おかしいよね…?」
誰もいないエレベーターの中、私の声が響いた。
でも、乗った者を彼岸へ連れていってしまうエレベーター、通称「彼岸エレベーター」の噂なら、聞いたことがある。
そう思い出した時、背筋が凍りついた。
(絶対、私を彼岸へ連れて行く気だ…)
ゴゥン…
エレベーターはしばらく進み、やがてガシャンと音を立てて止まった。
『彼岸デ御座イマス…』
エレベーターのドアが開く。
「嘘…」
私の目の前に広がるのは、雲一つない晴れた空の下、真紅の彼岸花が満開に咲き誇っている景色だった。
彼岸花には色とりどりの蝶が止まっており、とても幻想的な雰囲気をかもし出している。
その美しさに魅了され、思わずエレベーターを降りてしまう。
その瞬間、エレベーターがスゥッと消えていってしまった。
『マタノ御利用ヲ、オ待チシテオリマス…』
という、無情な音声を残しながら。
私は、何とか此処から元の世界に戻るため、彼岸花の道を進んだ。
しばらく進むと、小さく綺麗な川の前に来た。
水がとても透き通っている。
そして、川面には彼岸花の花びらが浮き、花筏を作っていた。
「そこを渡るんですよ。
そうすれば元の世界に戻れますから…」
「!?」
振り返ると、そこには白い狐面をつけ、漆黒の着物を着ている少女が立っていた。
「戻りたいのでしょう?」
「そうだけど…」
「では、渡ってください。」
「え?う、うん」
私は少女の言う通りに川を飛び越えた。
すると、意識が遠のいていった。
そして、気がつくとあのエレベーターの中にいた。
エレベーターは上へ進んでいる。
しばらくして、音を立てながらエレベータードアが開いた。
いつものマンションだった。
安心しながら、さっきの出来事は何だったのだろうと思いつつ、私は家に戻った。
彼岸花の咲き誇る中、清らかに流れる川を見つめながら、少女は呟いた。
「危なかったですね、あの方はこのまま此岸から存在が消えてしまう所でした…
それにしても、彼岸エレベーターは危険なこと。
人間の皆さんに呼び掛けなくては…」
そして、狐面をつけたまま川を飛び越えて此岸…生者の世界へと消えていった。 完
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こんにちは、作者のあおねこです!
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では! あおねこさん(東京・12さい)からの相談
とうこう日:2020年7月25日みんなの答え:4件
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すごーい! 逆に不可解なことが多くてドキドキします。
のぞみさん(茨城・8さい)からの答え
とうこう日:2020年7月27日 -
さすがです! あおねこ樣さすがでございます!(殴る)
どうしてこんなに面白いストーリーが思い浮かぶのか……
表現力といい不思議な登場人物といい、とても最高でした。
尊敬します。
もっともっと作品をお願いします。本当にお待ちしております。 朝日 れもねーどさん(静岡・12さい)からの答え
とうこう日:2020年7月26日 -
待ってましたっ!! エレベーター乗るとき気をつけよ…
習い事行くとき毎回乗るから…怖い
でも、その景色見てみたいかも。怖いけど。
ほんっとさすが!!もう尊敬しかない!
また楽しみに待ってるねー!!! ありぴーさん(愛知・12さい)からの答え
とうこう日:2020年7月26日 -
新しい! あ!今回は、主人公が無事、此岸に帰れたんですね!よかったです!
でも、自分は運が悪いので、助けてもらえなさそうです...。
狐面の少女!もしかして、あなたが今までの語り手さんですか...?(違ったらすみません!気にしないでください!) はちみつさん(千葉・14さい)からの答え
とうこう日:2020年7月26日
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