アイツも死んだ
兄が死んだ
そう聞いたのは、麗らかな午後の日だった
涙は出なかった
最初にその知らせを母から聞き、
ボーッとしながら思ったのは
「アイツの塾代が浮くな……」
それだけだ
交通事故らしい
どうせ、ながらスマホでもしていたのだろう
自分があまりにも冷静なことに、自分が驚いている
14年間、共に過ごしたあの人だが
愛情など、湧く筈がない
何も興味がない
しかし__
目の前にアイツがいた
幽霊かと思ったがちゃんと足もある
体も動くし、目にも光はある
なのに、何故
死人にしか見えぬのだろうか
アイツは一歩踏み出した
もう一歩
でも、私は動けなかった
アイツの手が振り下ろされた
私は横に逃げた
アイツは宙を掴んだ
本当に掴んでいたのだ
何もないところを
私に見えていない何かが
アイツには見えていたのだろうか
唐突に、あの人の足がはずれた
次に腰、腕、肩
そして遂に頭も……
私は目の前の恐ろしい光景に叫び声をあげた
甲高く、鋭い叫びが木霊すると、足音が聞こえた
坂襟だった
坂襟と、その取り巻きの女たち
「アンタ、ここで何してるの?」
刺々しい声だった
声だけで、私を攻撃するような__
「答えられないの?
帰える場所はないの?
かわいそうな女」
かわいそうだなんて思ってる筈がない
ただ、喜んでるだけだ
私の悪口を言うことを
私を軽蔑した目で見下すことを
「このクソ女!!」
夢だった
アイツがもうこの世にいる筈がないのに
アイツの夢を見た
あの人たちの夢も見た
全力疾走をしてきた後のように、息が切れている
足音が聞こえ、ドアが開いた
「今日も学校にいかないの?」
母だった
随分やつれて見えるのは気のせいではないだろう
そりゃそうだ
長男は交通事故で死んで
残った娘は不登校
旦那には先立たれた
不幸な人だ、母は
その不幸の原因も、私が作り出してるのだと思うと
胸が締め付けられる
母はリュックから教科書が雪崩出ているところに
一瞥を投げかけて、こちらを見た
私も目を逸らさず、ジッと鳶色の瞳を見る
悲しい目だった
幾多の悲しみを抱えている人の目をしていた
先に目をそらしたのは、母だった
重い足取りで、部屋から出ていった
私は鳥かごの中の鳥だ
重い柵が時を重ねるうちにどんどん増えていく
遂には飛べなくなった、孤独な小鳥……
誰とも会いたくなかった
朝日が私の顔を照らす
希望の朝なんて、言葉だけの、退屈な朝だ
その知らせを聞いたのは、学校からの電話だった
「坂襟奏芽さんがお亡くなりになりました」
担任のいかにも「生徒が死んでしまって悲しいです」
というような声の響きに嫌気がさし
一言二言話して、電話を切った
溜息をつく
運命の神は意地悪だ
嫌いな人を私の前から消す
さぁ、君はどうする?とでも言いたげだ
運命の神がもし目の前に現れたら
その顔をぶん殴ってやる
私はそんなこと望まなかったのに
勝手に私を玩びやがって
凶暴な怒りが体から湧き上がる
その思いのまま、リュックを投げた
重いだけの教科書が散乱する
それでも、怒りは収まらない
椅子を両手で持ち、床に叩きつける
部屋を荒らして荒らして__
気づいたら、夜だった
あまりにも強く手を握りしめていたのだろう
手には少量の、黒ずんで乾いた血がこびりついていた
その部屋は、まるで嵐が通り抜けたようだった
ものが辺りに散らばり、足の踏み場もない
「どうしたの?!蒼空!」
母の強張った声が聞こえる
私は反射的に母に向かった
中1までやっていた、
ハンドボール部のシュートの時のように
ゼロ、イチ、ニ
母の前で両足で踏み込んで止まる
すぐに右足を大きく横にだす
半身のまま左足を戻して母をこえる
本来ならここで左足でふみこんで
右手を振り下ろし、シュート
と行きたいところだが、ゴールなんてない
私は町の中を走っていた
あてはない
ただ、ひたすら
なにかに駆られたように
例えるなら、私の心は
乾いて汚れきった砂漠だ
砂塵が舞い上がる
太陽が照りつける
焼けるようだ
景色だけが通り過ぎていく
やっと止まったのは、公園だった
否、公園と呼べるのかさえ不思議な
狭い空き地だ
そこのベンチに座り、ゼイゼイと喘ぐ
冷たい月明かりに胸が苦しい
ふとポーチのポケットに手を入れると
くしゃくしゃの紙があった
しわを伸ばして見ると、
そこには「誕生日おめでと」と書かれている
アイツの見慣れたくせ字だ
紙を持つ手が震えた
私を取り巻く環境は変わった
でも、私が変わらなくては、いつまでも今のままだ
変わらないといけないのは
自分自身だ
冷たく空虚な空は、まだ攻撃的だった
私は、それでも微笑んだ
空
私の名前の由来
─空のように広い心を 鸞鳥【小説色々書いてます】さん(神奈川・12さい)からの相談
とうこう日:2020年8月1日みんなの答え:0件
そう聞いたのは、麗らかな午後の日だった
涙は出なかった
最初にその知らせを母から聞き、
ボーッとしながら思ったのは
「アイツの塾代が浮くな……」
それだけだ
交通事故らしい
どうせ、ながらスマホでもしていたのだろう
自分があまりにも冷静なことに、自分が驚いている
14年間、共に過ごしたあの人だが
愛情など、湧く筈がない
何も興味がない
しかし__
目の前にアイツがいた
幽霊かと思ったがちゃんと足もある
体も動くし、目にも光はある
なのに、何故
死人にしか見えぬのだろうか
アイツは一歩踏み出した
もう一歩
でも、私は動けなかった
アイツの手が振り下ろされた
私は横に逃げた
アイツは宙を掴んだ
本当に掴んでいたのだ
何もないところを
私に見えていない何かが
アイツには見えていたのだろうか
唐突に、あの人の足がはずれた
次に腰、腕、肩
そして遂に頭も……
私は目の前の恐ろしい光景に叫び声をあげた
甲高く、鋭い叫びが木霊すると、足音が聞こえた
坂襟だった
坂襟と、その取り巻きの女たち
「アンタ、ここで何してるの?」
刺々しい声だった
声だけで、私を攻撃するような__
「答えられないの?
帰える場所はないの?
かわいそうな女」
かわいそうだなんて思ってる筈がない
ただ、喜んでるだけだ
私の悪口を言うことを
私を軽蔑した目で見下すことを
「このクソ女!!」
夢だった
アイツがもうこの世にいる筈がないのに
アイツの夢を見た
あの人たちの夢も見た
全力疾走をしてきた後のように、息が切れている
足音が聞こえ、ドアが開いた
「今日も学校にいかないの?」
母だった
随分やつれて見えるのは気のせいではないだろう
そりゃそうだ
長男は交通事故で死んで
残った娘は不登校
旦那には先立たれた
不幸な人だ、母は
その不幸の原因も、私が作り出してるのだと思うと
胸が締め付けられる
母はリュックから教科書が雪崩出ているところに
一瞥を投げかけて、こちらを見た
私も目を逸らさず、ジッと鳶色の瞳を見る
悲しい目だった
幾多の悲しみを抱えている人の目をしていた
先に目をそらしたのは、母だった
重い足取りで、部屋から出ていった
私は鳥かごの中の鳥だ
重い柵が時を重ねるうちにどんどん増えていく
遂には飛べなくなった、孤独な小鳥……
誰とも会いたくなかった
朝日が私の顔を照らす
希望の朝なんて、言葉だけの、退屈な朝だ
その知らせを聞いたのは、学校からの電話だった
「坂襟奏芽さんがお亡くなりになりました」
担任のいかにも「生徒が死んでしまって悲しいです」
というような声の響きに嫌気がさし
一言二言話して、電話を切った
溜息をつく
運命の神は意地悪だ
嫌いな人を私の前から消す
さぁ、君はどうする?とでも言いたげだ
運命の神がもし目の前に現れたら
その顔をぶん殴ってやる
私はそんなこと望まなかったのに
勝手に私を玩びやがって
凶暴な怒りが体から湧き上がる
その思いのまま、リュックを投げた
重いだけの教科書が散乱する
それでも、怒りは収まらない
椅子を両手で持ち、床に叩きつける
部屋を荒らして荒らして__
気づいたら、夜だった
あまりにも強く手を握りしめていたのだろう
手には少量の、黒ずんで乾いた血がこびりついていた
その部屋は、まるで嵐が通り抜けたようだった
ものが辺りに散らばり、足の踏み場もない
「どうしたの?!蒼空!」
母の強張った声が聞こえる
私は反射的に母に向かった
中1までやっていた、
ハンドボール部のシュートの時のように
ゼロ、イチ、ニ
母の前で両足で踏み込んで止まる
すぐに右足を大きく横にだす
半身のまま左足を戻して母をこえる
本来ならここで左足でふみこんで
右手を振り下ろし、シュート
と行きたいところだが、ゴールなんてない
私は町の中を走っていた
あてはない
ただ、ひたすら
なにかに駆られたように
例えるなら、私の心は
乾いて汚れきった砂漠だ
砂塵が舞い上がる
太陽が照りつける
焼けるようだ
景色だけが通り過ぎていく
やっと止まったのは、公園だった
否、公園と呼べるのかさえ不思議な
狭い空き地だ
そこのベンチに座り、ゼイゼイと喘ぐ
冷たい月明かりに胸が苦しい
ふとポーチのポケットに手を入れると
くしゃくしゃの紙があった
しわを伸ばして見ると、
そこには「誕生日おめでと」と書かれている
アイツの見慣れたくせ字だ
紙を持つ手が震えた
私を取り巻く環境は変わった
でも、私が変わらなくては、いつまでも今のままだ
変わらないといけないのは
自分自身だ
冷たく空虚な空は、まだ攻撃的だった
私は、それでも微笑んだ
空
私の名前の由来
─空のように広い心を 鸞鳥【小説色々書いてます】さん(神奈川・12さい)からの相談
とうこう日:2020年8月1日みんなの答え:0件
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