【短編小説】【恋愛】 冷徹令嬢の恋は叶わない
「…よろしく」
中2最初の席替えで隣になった四条姫鞠(しじょうひまり)はぶっきらぼうにそう言った。
氷のように冷たい性格から、姫鞠には『冷徹令嬢』というイメージがある。
彼女は大手企業の社長の娘、すなわち令嬢である。
俺、雨宮蒼(あめみやあおい)は彼女に一目惚れをした。
姫鞠は、テストでは常に学年1位、運動神経もトップクラス、成績はオール5という優等生。
しかも、美しい。
そこらの男子なら、姫鞠が瞬き一つするだけで彼女の虜になってしまうだろう。
今までに彼女に告白した沢山の男子たちがいるが、全員振られている。
彼らは、こう言われたそうだ。
「私、『恋』とか、出来ませんので」
意味は、誰もわからない……
「うわ、今日日直かよ…」
朝、俺は思わず声を出してしまった。
…急に独り言言ってる、ヤバイ奴だと思われてないといいが。
姫鞠も日直のようだ。
さて、花に水遣りするか…と思うと、既に土が湿っていた。
急に、後ろから声をかけられた。
「雨宮君」
俺は一瞬ビクッとしたが、平静を保って振り向いた。
「水遣り、私がやっておきました。あと、黒板消しと、机の整頓も終わってます。
放課後も、雨宮君は先に帰ってくれて構いません」
親切なのか、嫌味なのかわからない言葉だ。
「俺も日直だから、放課後一緒にやるよ」
俺は言ったが、姫鞠は無視をして、離れていった。
「ちょっと雨宮君!全然出来ていませんよ!ちゃんとやりなさい」
「やってるっての!」
放課後、軽く喧嘩になっているが、それどころではない。
実は、この時告白をしようと思っているのだ。
振られる予感しかしないが……
「な、なぁ四条」
彼女はぎろりと睨んだ。俺は弱さを見せないよう、しっかりと話した。
「実は俺、四条の事が……す、好きで…」
彼女は辛そうな顔をして口を開いた。
「…何度も言っているから、もう雨宮君も知っていると思ったのだけれど…。
私、『恋』出来ませんので。諦めてください」
俺はとっさに口を開いた。
「…何でだよ!何で、恋が出来ないって全員に言ってるんだ?
理由が、なんかあるんだろ?教えてくれ!」
彼女ははぁ、とため息をつくと、静かに話し始めた。
「私、中学を卒業したら海外の高校に行くって、決まってるんです。
きっと、もうこの日本に帰ってくる事はありません。
…お母様とお父様の決め事に逆らう事は出来ないのです。
そして、海外で高校、大学を卒業した後は、決められた男の人と結婚します。
……私の意思なんて、どこにも入っていませんよ。全ては親の判断です。
私…本当は………ぐすっ」
姫鞠は溢れた涙を必死に拭いながら続けた。
「本当は、『恋』したかった…。私は、雨宮蒼の事が大好きなんです。
でもそれは……絶対に叶わない『恋』だから、少しでも君の事を忘れるために突き放してた。
私のわがままで、君が嫌な思いをしていたらごめんなさい…
だけど、私の運命だけは、どうしても変えられないの…」
俺も泣いた。
俺たちは黄昏時の教室で二人、抱き合って泣き続けた。
あれから1年以上経った。
中学を卒業し、姫鞠は飛行機に乗って旅立つ時が来た。
俺と姫鞠は、空港で最後の挨拶を交わす。
「今までありがとう、蒼君。私の事、忘れないで」
「こちらこそだ、姫鞠。……婚約者と、どうかお幸せに」
俺と姫鞠は、お互いが愛用していたシャープペンシルを交換した。
これで、忘れる事はないだろう。
姫鞠は、最近やっと見せるようになった笑顔で言った。
「もう、行かないと。さようなら……『蒼』」
初めて彼女は『蒼』と呼んでくれた。
俺の目から、また涙が溢れた。
彼女はくるりと背を向けて、歩いていった。
彼女も泣いていた。
彼女の歩く道にぽたぽたと、涙が一滴一滴落ちていく。
俺は、姫鞠の姿が見えなくなってもなお、ずっと手を振り続けた。
end
読んでくださってありがとうございました!
ニックネーム変えました。
結ばれたけど結ばれない(?)お話を書いてみました。
おかしなところがあるかもしれません…
温かい目で見てください(^^;;
感想、もし良ければコメントしてください! めろんぱん(元ちょこちっぷ)さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年10月3日みんなの答え:4件
中2最初の席替えで隣になった四条姫鞠(しじょうひまり)はぶっきらぼうにそう言った。
氷のように冷たい性格から、姫鞠には『冷徹令嬢』というイメージがある。
彼女は大手企業の社長の娘、すなわち令嬢である。
俺、雨宮蒼(あめみやあおい)は彼女に一目惚れをした。
姫鞠は、テストでは常に学年1位、運動神経もトップクラス、成績はオール5という優等生。
しかも、美しい。
そこらの男子なら、姫鞠が瞬き一つするだけで彼女の虜になってしまうだろう。
今までに彼女に告白した沢山の男子たちがいるが、全員振られている。
彼らは、こう言われたそうだ。
「私、『恋』とか、出来ませんので」
意味は、誰もわからない……
「うわ、今日日直かよ…」
朝、俺は思わず声を出してしまった。
…急に独り言言ってる、ヤバイ奴だと思われてないといいが。
姫鞠も日直のようだ。
さて、花に水遣りするか…と思うと、既に土が湿っていた。
急に、後ろから声をかけられた。
「雨宮君」
俺は一瞬ビクッとしたが、平静を保って振り向いた。
「水遣り、私がやっておきました。あと、黒板消しと、机の整頓も終わってます。
放課後も、雨宮君は先に帰ってくれて構いません」
親切なのか、嫌味なのかわからない言葉だ。
「俺も日直だから、放課後一緒にやるよ」
俺は言ったが、姫鞠は無視をして、離れていった。
「ちょっと雨宮君!全然出来ていませんよ!ちゃんとやりなさい」
「やってるっての!」
放課後、軽く喧嘩になっているが、それどころではない。
実は、この時告白をしようと思っているのだ。
振られる予感しかしないが……
「な、なぁ四条」
彼女はぎろりと睨んだ。俺は弱さを見せないよう、しっかりと話した。
「実は俺、四条の事が……す、好きで…」
彼女は辛そうな顔をして口を開いた。
「…何度も言っているから、もう雨宮君も知っていると思ったのだけれど…。
私、『恋』出来ませんので。諦めてください」
俺はとっさに口を開いた。
「…何でだよ!何で、恋が出来ないって全員に言ってるんだ?
理由が、なんかあるんだろ?教えてくれ!」
彼女ははぁ、とため息をつくと、静かに話し始めた。
「私、中学を卒業したら海外の高校に行くって、決まってるんです。
きっと、もうこの日本に帰ってくる事はありません。
…お母様とお父様の決め事に逆らう事は出来ないのです。
そして、海外で高校、大学を卒業した後は、決められた男の人と結婚します。
……私の意思なんて、どこにも入っていませんよ。全ては親の判断です。
私…本当は………ぐすっ」
姫鞠は溢れた涙を必死に拭いながら続けた。
「本当は、『恋』したかった…。私は、雨宮蒼の事が大好きなんです。
でもそれは……絶対に叶わない『恋』だから、少しでも君の事を忘れるために突き放してた。
私のわがままで、君が嫌な思いをしていたらごめんなさい…
だけど、私の運命だけは、どうしても変えられないの…」
俺も泣いた。
俺たちは黄昏時の教室で二人、抱き合って泣き続けた。
あれから1年以上経った。
中学を卒業し、姫鞠は飛行機に乗って旅立つ時が来た。
俺と姫鞠は、空港で最後の挨拶を交わす。
「今までありがとう、蒼君。私の事、忘れないで」
「こちらこそだ、姫鞠。……婚約者と、どうかお幸せに」
俺と姫鞠は、お互いが愛用していたシャープペンシルを交換した。
これで、忘れる事はないだろう。
姫鞠は、最近やっと見せるようになった笑顔で言った。
「もう、行かないと。さようなら……『蒼』」
初めて彼女は『蒼』と呼んでくれた。
俺の目から、また涙が溢れた。
彼女はくるりと背を向けて、歩いていった。
彼女も泣いていた。
彼女の歩く道にぽたぽたと、涙が一滴一滴落ちていく。
俺は、姫鞠の姿が見えなくなってもなお、ずっと手を振り続けた。
end
読んでくださってありがとうございました!
ニックネーム変えました。
結ばれたけど結ばれない(?)お話を書いてみました。
おかしなところがあるかもしれません…
温かい目で見てください(^^;;
感想、もし良ければコメントしてください! めろんぱん(元ちょこちっぷ)さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年10月3日みんなの答え:4件
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泣けます 好きなのに一緒にいられないなんて悲しいですね。
でも2人がお互いに気持ちを伝えられて良かったです。 *はるちゃんさん(神奈川・13さい)からの答え
とうこう日:2020年10月4日 -
すごいです! 私も短編小説書いていた時期あったんですけど恋愛はしっくりこなくて。でもめろんぱんさんのおもしろかったです!また書いてください! あいあいさん(千葉・12さい)からの答え
とうこう日:2020年10月4日 -
おお ちょこち…めろんぱんちゃん、こんにちは〜!!
私も改名してゆはからゆのになったよ(そんなに変わってないw)
これからめろちゃんって呼ぶね(え)
結ばれたけど結ばれない、でもハッピーエンド…。
めちゃめちゃ好みすぎる〜〜!!
新しい試み(?)で斬新(?)だ(^^)
てか、令嬢も令嬢で大変なんだね、逆らえないとか。
でも、恋できたから良かった!!
名前からあふれる令嬢感…。
戻ってきてほしいなぁ(†^†)
長文ごめんね!!ありがと〜♪ yuno__(ゆの)さん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2020年10月4日 -
発想すげ一! 元「なな」の「修菜(しゅうな)」です!
決まった人と結婚、か…
親、藤原道長かよ!かわいそう…。
一応両思いなんで、よかったです!
上手でした! 修菜さん(東京・11さい)からの答え
とうこう日:2020年10月4日
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