雪が降った日
「おはよう、今日雪すごいよね」
登校途中、クラスメイトであり幼なじみでもある少女にそう話しかけられた。
さく、さく、と地面を覆う雪を踏み、彼女は僕の横を歩く。
彼女と一緒に登校できるこの時間が好きだ。
「だよね。今の時期からこれだけ積もったのは珍しいと思う」
僕は無難にそう答えておいた。
「去年は降っても積もらなかったから。積もったの結構嬉しい」
彼女は、でも寒いけどね、と続けて言って
マフラーに隠されていたジャージのチャックを上まで閉めていた。
そして、手にはめた手袋で雪を掴み、前方へと投げた。
「おお、雪合戦やれるじゃん」
彼女はいつもより楽しそうである。
皆のテンションが上がった姿を見られるから、雪が降るのは好きだ。
雪を見ると楽しくなっちゃう地域なもので。
もちろん、僕も例外ではなく。
「雪だるまとかも作れそうだね」
と綺麗な部分の雪を取って丸めてみる。
これは特大が投げられるぞ、と彼女が呟きながら作っている雪玉の上に乗せる。
「じゃじゃん、完成」
頭と体が繋がった。
「もう!せっかく大きいの作って投げようとしてたのにさ!」
怒られたはずだが叱る側の彼女が笑っているせいでその実感がない。
二人で笑う。
彼女は笑った顔も可愛い。
ああ、やっぱり僕、この子のこと好きだなぁ。
心が締め付けられるような、というのかな。胸の辺りがギュウッってなる。
この感情は彼女には秘密である。この幸せな日常を続けるために。
「ところでこの雪だるま、私が学校に持ってくの?」
「……うーん、どうしような……」
言われてみれば確かに、と悩む。
すると唐突に、ぽつ、と服に水の跡が付く。
「雪降ってきた」
どちらからともなく、そう口に出す。
彼女は傘があるだろうか、と横目で確認する。
カバンから何も取り出そうとしない。
多分この子傘持ってないな。
僕も持ってきてないけどさ。
雨とか雪が降る中、傘を差さずに歩くってのが憧れでもあるし僕は別にいい。
それに、この子が差さないなら僕も差さずに歩こう、と思う。
とは言え、傘持ってきてたら二人で傘に入れたのかな、少し後悔。
一緒に傘を使ったら彼女は濡れずに済む。
……けれど、この子は僕のことをどう思ってるのか分かんないしな。
(もしこの子がその……相合い傘、とか僕とするのが嫌だったらあれだしね、うん)
言い訳を脳内で考えつつ歩く。
しゃく。真新しい白を自分で踏み潰して汚すことに罪悪感を覚えた。
靴の中に水が染みる。冷たい。
さっきまでより雪の降り方が少し強くなる。
隣に目を移してみる。
彼女の髪にひらひらと舞い落ちるそれを見つめる。
本人は気付いてないし、このままで教室に入っちゃいそうだな。
「あの、濡れるけど大丈夫?」
「私はこのくらいの雪ならまだ大丈夫、な気がする」
「分かった。……だけどちょっといい?」
彼女の頭の雪をそっと手で払う。
驚いたかのように大きく目を見開かれる。
「ごめん。雪が付いてたから」
「……うん、いいよ」
と彼女は言い、口元、それから鼻の辺りまでをマフラーで包んだ。
もしや寒いのかな、
そう思ってよく見ると彼女の頬がほんのり赤みがかっている。
風邪、熱か、と一瞬考える。が、その赤は、きっと。
だけど、気付かないフリをした。
僕は、顔が赤くなったとき、それを隠せる物を持っていないから。
ありがとう、そう遅れて口に出した彼女はまだ手に雪だるまを乗せていた。
周りを見渡してから提案してみる。
「ここの木の影に置いとこうよ、雪だるま」
「……そうだね。ここにしよっか」
彼女の手で、崩れないようにと置かれた雪だるま。
せめて明日の朝まで溶けていませんように、
そしてその姿を彼女と二人で見られますように、と願った。
________
最近、僕の住んでいるところでも雪が降りました。
校庭が砂なので雪がすぐ地面に吸われちゃって、
あんまり積もらなかったのが残念でしたけど。
でも雪が降ってクラスの皆が楽しそうだったので良かったです。
読んでくださってありがとうございました。 1054(常世)さん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2020年12月22日みんなの答え:2件
登校途中、クラスメイトであり幼なじみでもある少女にそう話しかけられた。
さく、さく、と地面を覆う雪を踏み、彼女は僕の横を歩く。
彼女と一緒に登校できるこの時間が好きだ。
「だよね。今の時期からこれだけ積もったのは珍しいと思う」
僕は無難にそう答えておいた。
「去年は降っても積もらなかったから。積もったの結構嬉しい」
彼女は、でも寒いけどね、と続けて言って
マフラーに隠されていたジャージのチャックを上まで閉めていた。
そして、手にはめた手袋で雪を掴み、前方へと投げた。
「おお、雪合戦やれるじゃん」
彼女はいつもより楽しそうである。
皆のテンションが上がった姿を見られるから、雪が降るのは好きだ。
雪を見ると楽しくなっちゃう地域なもので。
もちろん、僕も例外ではなく。
「雪だるまとかも作れそうだね」
と綺麗な部分の雪を取って丸めてみる。
これは特大が投げられるぞ、と彼女が呟きながら作っている雪玉の上に乗せる。
「じゃじゃん、完成」
頭と体が繋がった。
「もう!せっかく大きいの作って投げようとしてたのにさ!」
怒られたはずだが叱る側の彼女が笑っているせいでその実感がない。
二人で笑う。
彼女は笑った顔も可愛い。
ああ、やっぱり僕、この子のこと好きだなぁ。
心が締め付けられるような、というのかな。胸の辺りがギュウッってなる。
この感情は彼女には秘密である。この幸せな日常を続けるために。
「ところでこの雪だるま、私が学校に持ってくの?」
「……うーん、どうしような……」
言われてみれば確かに、と悩む。
すると唐突に、ぽつ、と服に水の跡が付く。
「雪降ってきた」
どちらからともなく、そう口に出す。
彼女は傘があるだろうか、と横目で確認する。
カバンから何も取り出そうとしない。
多分この子傘持ってないな。
僕も持ってきてないけどさ。
雨とか雪が降る中、傘を差さずに歩くってのが憧れでもあるし僕は別にいい。
それに、この子が差さないなら僕も差さずに歩こう、と思う。
とは言え、傘持ってきてたら二人で傘に入れたのかな、少し後悔。
一緒に傘を使ったら彼女は濡れずに済む。
……けれど、この子は僕のことをどう思ってるのか分かんないしな。
(もしこの子がその……相合い傘、とか僕とするのが嫌だったらあれだしね、うん)
言い訳を脳内で考えつつ歩く。
しゃく。真新しい白を自分で踏み潰して汚すことに罪悪感を覚えた。
靴の中に水が染みる。冷たい。
さっきまでより雪の降り方が少し強くなる。
隣に目を移してみる。
彼女の髪にひらひらと舞い落ちるそれを見つめる。
本人は気付いてないし、このままで教室に入っちゃいそうだな。
「あの、濡れるけど大丈夫?」
「私はこのくらいの雪ならまだ大丈夫、な気がする」
「分かった。……だけどちょっといい?」
彼女の頭の雪をそっと手で払う。
驚いたかのように大きく目を見開かれる。
「ごめん。雪が付いてたから」
「……うん、いいよ」
と彼女は言い、口元、それから鼻の辺りまでをマフラーで包んだ。
もしや寒いのかな、
そう思ってよく見ると彼女の頬がほんのり赤みがかっている。
風邪、熱か、と一瞬考える。が、その赤は、きっと。
だけど、気付かないフリをした。
僕は、顔が赤くなったとき、それを隠せる物を持っていないから。
ありがとう、そう遅れて口に出した彼女はまだ手に雪だるまを乗せていた。
周りを見渡してから提案してみる。
「ここの木の影に置いとこうよ、雪だるま」
「……そうだね。ここにしよっか」
彼女の手で、崩れないようにと置かれた雪だるま。
せめて明日の朝まで溶けていませんように、
そしてその姿を彼女と二人で見られますように、と願った。
________
最近、僕の住んでいるところでも雪が降りました。
校庭が砂なので雪がすぐ地面に吸われちゃって、
あんまり積もらなかったのが残念でしたけど。
でも雪が降ってクラスの皆が楽しそうだったので良かったです。
読んでくださってありがとうございました。 1054(常世)さん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2020年12月22日みんなの答え:2件
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
2件中 1 〜 2件を表示
-
共感。 こんにちは!ましろです(*´∀`)
え……幼なじみちゃんが可愛い(笑)
雪降るとテンションあがりますよね〜。
私のとこも、降りはするけど積もりはしないので(笑)雪が降ると、皆めちゃ騒いでて楽しそうだし私も楽しい!
でも雪合戦!なんか活発でよく笑う女の子、っていうの想像した(笑)
主人公君も可愛い。
「じゃじゃん」が好き(笑)お茶目〜……
描写がとても丁寧……!寒いけど、どこか温まるお話でした!
素敵な小説ありがとうございました! ましろさん(福岡・12さい)からの答え
とうこう日:2020年12月24日 -
冬ですねぇ 冬らしい繊細さや、どことなく漂う儚さが美しい小説だなぁと思いました。雪のように淡い、綺麗な恋で…コンセプト?のようなものがしっかりしている感じがして、とても楽しんで読めました!
最近寒いですよね…( ̄^ ̄*)私の住む長野って結構雪降るはずなんですけど、雪が積もった暁には、みんな目をキラキラさせて外を見ています(笑)雪は特別で、美しいものですね…!
素敵なお話ありがとうございました♪ ご自愛ください(*´`) 臣 さん(長野・14さい)からの答え
とうこう日:2020年12月23日
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
2件中 1 〜 2件を表示
-
- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 回答には相談に対する回答内容を投稿してください。過度に自己紹介等が書かれている場合は、スタッフにて削除・非公開対応を行わせていただきます。
- ニックネームを頻繁に変更して、「元○○」というような説明を記載することはやめてください。
- 1部のユーザーになりすましの投稿が行われています。なりすましの投稿はやめてください。
- カテゴリごとの新着相談
-
-
- みんなはどんな沼にハマってる??03月19日
-
- ビデオ通話だと知らずに出てしまった…03月27日
-
- 同じテニスクラブの子がいじめてきます03月28日
-
- クラス替えは2年に一回?一年に一回?03月28日
-
- 弟と遊びたくない03月28日
-
- 春休み中の勉強の仕方を教えてください〜!03月27日
-
- 心配すぎる03月27日
-
- 体が硬い…03月27日
-
- 先輩方!教えてください!!03月28日
-
- 押しが好きすぎて辛い03月27日
-
- 妖怪ウォッチについて語り合わないか?03月27日
-
- 片思いあるあるぅ!03月27日
-
- ピアス何個まで許せる?03月27日
-
- みんなは、何限目が好き?03月28日
-
- しはんのぺンライトについて03月27日
-
- 図書室(ホラー注意)01月26日
-
- 明るくなりたい!03月27日
-
いじめで困ったり、ともだちや先生のことで不安や悩みがあったりしたら、一人で悩まず、いつでもすぐ相談してね。
・>>SNSで相談する
・電話で相談する
・>>地元の相談窓口を探す
18歳までの子どものための相談先です。あなたの思いを大切にしながら、どうしたらいいかを一緒に考えてくれるよ。