ずっとずっと、忘れない
…星空(せいら)さんの検査結果ですが、末期の若年性アルツハイマー認知症でした
「…っ、ごめんいっちゃん」
これからのこと、よくご相談なさってください
そう医師に告げられ、泣き崩れる星空。俺は星空を慰めながら、診察室を出た。
「いっちゃん、ごめんなさい」
『なんで星空が謝るの。星空は悪くないんだよ?』
『とりあえず、家帰ろっか』
「…ぅん」
そう言ってタクシーに乗るけど、足取りは重い。
家についても無言のまま。
『何か食べる?』
「ごめん、食欲ないや」
落ち込んだ顔でそう言うと、寝室に入って行った。
翌日、俺が起きるといつも隣で寝ているはずの星空がいなかった。昨晩までタンスにあった服も、一着も跡形なく消えていた。急いでリビングに行くと、一枚の手紙があった。
樹へ
急に出ていってごめん。出ていった理由は、いっちゃんといるのが辛いからです。今は辛くないけど、この先絶対辛くなるから、出ていきました。私がいっちゃんといたら、いずれ私はいっちゃんを忘れちゃう、それがすごく嫌だから…。
いっちゃんと過ごした日々は、私にとって一生の宝物です。忘れちゃうかもしれないけど、今までもそしてこれからもいっちゃんのこと愛してるよ。
今までありがとう。これからはいっちゃんらしく生きてね。
大好きだよ。
星空より
その封筒には、俺の家の合鍵が入っていた。俺はすぐさま家を飛び出した。あいつが行きそうな場所どこを探しても、星空はいなかった。そして俺は駅に行った。
『星空っ!』
聞こえないふりをしているのだろう。こちらを振り向かない。
《ギュッ》
星空の元へ駆け寄り、バックハグをした。
「いっちゃん…」
『何してんだよ、ばーか』
『星空いなくなったら、俺どうしたらいいかわかんないじゃん』
「ごめん、」
その後、手を繋いで家に帰った。
半年経ち、星空は入院した。そして遂に、俺の存在が星空の頭から消えた。
「こんにちは」
『あっ、こんにちは。』
『お見舞いに、花束持ってきました』
「わぁ、薔薇じゃないですか!綺麗」
見た目はいつも通りの星空なのに、中身は別人みたいだ。
『星空さん、薔薇が好きでしょ?』
「樹さんすごい!なんでわかるんですか!」
『何かわかっちゃって』
『じゃ、これで。』
「ありがとうございました!」
俺は眼を潤ませて病院をあとにした。
そして3ヶ月後。星空に死期が迫っていた。星空のお兄さんも来ていた。
〈ごめんね、こんな妹で〉
『いえいえ、俺は星空が生きてるだけで幸せですから。』
〈頼もしかっただろうね、星空も〉
眼に涙を溜めながら話す兄の玲央(れお)さん。星空は誰からも愛されていたんだな、改めてそう思った。
「…っちゃん」
「……にぃ」
〈!?〉
〈星空っ〉
かすれるような小さな声で、俺達の名前を呼んだ。
「い、っちゃ、ん」
『ん?』
『どうしたの、星空』
「今、す、ぐ病室出、て」
はっきりと聞こえた。“今すぐ病室出て”。
『何でだよ!』
「お願い、これ、が最後の、お願い、だか、ら」
『わかった。』
〈ごめんね、樹くん〉
俺は病室を出た。
〈だよな、愛してる人に、最期なんて見せたくないよな。〉
「さ、すがれおにぃ」
「今、まで、ありがと、う」
《ピーーー》
その言葉を最後に、星空はこの世を去った。俺が手を握ると、振り絞るような涙が一滴だけ星空の瞳から零れ落ちた。
それから1ヶ月。俺は常に部屋に引きこもるようになった。すると、病院から電話が来た。
もしもし、失礼ですが真野間樹(まのまいつき)さんでしょうか。
『そうです』
お渡ししたいものがあるので、来て頂けますか?
『はい、』
それでは、よろしくお願いします
そう言って電話は切れた。俺は病院に向かった。
あっ、真野間さん、お待ちしておりました。
そう言って、看護師さんが引き出しから小箱を取り出した。
これ多分、真野間さんへのプレゼントだと思いますよ。星空さん、忘れても大事な人の誕生日だってプレゼント買いに行ったんです。帰ったら、開けてみてくださいね。きっと素敵なプレゼントだと思います。
そう看護師さんに言われ、病院を出た。途中で待ちきれずに俺は公園のベンチに座り、小箱を開けた。そこには、腕時計があった。その下にメッセージカードがあり、そこには
“大切な人へ お誕生日おめでとう。時間は進み続けます。あなたも一歩ずつでもいいから、前に進んで行ってください”
と書かれていた。
綺麗な時計のガラスに、俺の涙が落ちていった。
end…
俐玖(RIKU)さん(福島・12さい)からの相談
とうこう日:2020年12月27日みんなの答え:5件
…星空(せいら)さんの検査結果ですが、末期の若年性アルツハイマー認知症でした
「…っ、ごめんいっちゃん」
これからのこと、よくご相談なさってください
そう医師に告げられ、泣き崩れる星空。俺は星空を慰めながら、診察室を出た。
「いっちゃん、ごめんなさい」
『なんで星空が謝るの。星空は悪くないんだよ?』
『とりあえず、家帰ろっか』
「…ぅん」
そう言ってタクシーに乗るけど、足取りは重い。
家についても無言のまま。
『何か食べる?』
「ごめん、食欲ないや」
落ち込んだ顔でそう言うと、寝室に入って行った。
翌日、俺が起きるといつも隣で寝ているはずの星空がいなかった。昨晩までタンスにあった服も、一着も跡形なく消えていた。急いでリビングに行くと、一枚の手紙があった。
樹へ
急に出ていってごめん。出ていった理由は、いっちゃんといるのが辛いからです。今は辛くないけど、この先絶対辛くなるから、出ていきました。私がいっちゃんといたら、いずれ私はいっちゃんを忘れちゃう、それがすごく嫌だから…。
いっちゃんと過ごした日々は、私にとって一生の宝物です。忘れちゃうかもしれないけど、今までもそしてこれからもいっちゃんのこと愛してるよ。
今までありがとう。これからはいっちゃんらしく生きてね。
大好きだよ。
星空より
その封筒には、俺の家の合鍵が入っていた。俺はすぐさま家を飛び出した。あいつが行きそうな場所どこを探しても、星空はいなかった。そして俺は駅に行った。
『星空っ!』
聞こえないふりをしているのだろう。こちらを振り向かない。
《ギュッ》
星空の元へ駆け寄り、バックハグをした。
「いっちゃん…」
『何してんだよ、ばーか』
『星空いなくなったら、俺どうしたらいいかわかんないじゃん』
「ごめん、」
その後、手を繋いで家に帰った。
半年経ち、星空は入院した。そして遂に、俺の存在が星空の頭から消えた。
「こんにちは」
『あっ、こんにちは。』
『お見舞いに、花束持ってきました』
「わぁ、薔薇じゃないですか!綺麗」
見た目はいつも通りの星空なのに、中身は別人みたいだ。
『星空さん、薔薇が好きでしょ?』
「樹さんすごい!なんでわかるんですか!」
『何かわかっちゃって』
『じゃ、これで。』
「ありがとうございました!」
俺は眼を潤ませて病院をあとにした。
そして3ヶ月後。星空に死期が迫っていた。星空のお兄さんも来ていた。
〈ごめんね、こんな妹で〉
『いえいえ、俺は星空が生きてるだけで幸せですから。』
〈頼もしかっただろうね、星空も〉
眼に涙を溜めながら話す兄の玲央(れお)さん。星空は誰からも愛されていたんだな、改めてそう思った。
「…っちゃん」
「……にぃ」
〈!?〉
〈星空っ〉
かすれるような小さな声で、俺達の名前を呼んだ。
「い、っちゃ、ん」
『ん?』
『どうしたの、星空』
「今、す、ぐ病室出、て」
はっきりと聞こえた。“今すぐ病室出て”。
『何でだよ!』
「お願い、これ、が最後の、お願い、だか、ら」
『わかった。』
〈ごめんね、樹くん〉
俺は病室を出た。
〈だよな、愛してる人に、最期なんて見せたくないよな。〉
「さ、すがれおにぃ」
「今、まで、ありがと、う」
《ピーーー》
その言葉を最後に、星空はこの世を去った。俺が手を握ると、振り絞るような涙が一滴だけ星空の瞳から零れ落ちた。
それから1ヶ月。俺は常に部屋に引きこもるようになった。すると、病院から電話が来た。
もしもし、失礼ですが真野間樹(まのまいつき)さんでしょうか。
『そうです』
お渡ししたいものがあるので、来て頂けますか?
『はい、』
それでは、よろしくお願いします
そう言って電話は切れた。俺は病院に向かった。
あっ、真野間さん、お待ちしておりました。
そう言って、看護師さんが引き出しから小箱を取り出した。
これ多分、真野間さんへのプレゼントだと思いますよ。星空さん、忘れても大事な人の誕生日だってプレゼント買いに行ったんです。帰ったら、開けてみてくださいね。きっと素敵なプレゼントだと思います。
そう看護師さんに言われ、病院を出た。途中で待ちきれずに俺は公園のベンチに座り、小箱を開けた。そこには、腕時計があった。その下にメッセージカードがあり、そこには
“大切な人へ お誕生日おめでとう。時間は進み続けます。あなたも一歩ずつでもいいから、前に進んで行ってください”
と書かれていた。
綺麗な時計のガラスに、俺の涙が落ちていった。
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俐玖(RIKU)さん(福島・12さい)からの相談
とうこう日:2020年12月27日みんなの答え:5件
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感動!!!!!。゚(゚´Д`゚)゚。 チャオポン!ミノ撲!だよ☆
「俺が手を握ると、振り絞るような涙が一滴だけ星空の瞳から零れ落ちた。」のところがめっちゃ心に残っています。この話は最高です!この作品はとても感動的な話ですね!
こんなに感動したのに短くてごめんなさい!チャオペロ!ぐっぱっち! ミノ撲!さん(大阪・10さい)からの答え
とうこう日:2023年5月24日 -
感動した 本当に感動して泣きそうになりました。最後の文がすごく心に染みました! えび( ̄▽ ̄)さん(選択なし・10さい)からの答え
とうこう日:2021年1月5日 -
サドエンにしない所が流石 どうも、ゆにと申します(*´∀`*)
冒頭とタイトルからして、サドエン・バトエンの匂いがぷんぷんしてたんですけど(笑)
ラスト病室追い出されて、死んじゃってそれで終わりかなーとか思ってたんですけど、話はまだ続いてて。
普通の小説だと「死んでも君を忘れない」風に終わるんですけど、主人公の心も読者の心も悲しいままにしない所が流石だな〜と思います!
長文すみません´・ω|
素敵なお話をありがとうございました♪ではー。 ゆにっこ。さん(福島・12さい)からの答え
とうこう日:2020年12月29日 -
やっぱり流石! ども!さもちぃです!
早速だけど、やっぱりリクちゃんの作品いいね!病気の話だから暗いお話になるかと思ったんだけど、最後にLOVE が来ると言う最後にHAPPY の来る少し明るくなるストーリーだね!私は小説中々載らないから良いなあ…は!(・∀・)ごめん!自分の話が出て来てしもうた!これは置いといて、同じ福島から応援してるよ〜! さもちぃさん(福島・11さい)からの答え
とうこう日:2020年12月29日 -
泣きそう…(´;ω;`)←手遅れ こんばんは♪秋菜です(*´▽`*)
感想です!
泣きそう…(´;ω;`)
いや、泣いてました。
手遅れでした。
結構重たい感じのお話だと思っていましたが、結構読みやすくて、しかもお話の内容がしっかりしていて良かったです♪
俐玖さん小説書くの本当に上手ですね!
次も楽しみにしています♪
素敵なお話ありがとうございました♪
それでは〜。 秋菜(元ゆーな☆)@ゆの花嫁志望!さん(北海道・13さい)からの答え
とうこう日:2020年12月28日
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