桜の衣を変えるころ
私は眠る前に考えた。
この記憶を忘れる前に。
春の霧の中で、私は生まれた。
周りはきれいな色の霧で包まれていた。
私は純白の髪に、同じ色をした肌に同じく純白の衣を着ていて、白銀の色をした目をしていたらしい。
正面には、白に近い桜色をまとった女性がいた。
「あなたはね、山桜の桜の精よ。横の木を見てみなさい」
横には幹の先にきれいなもやをまとわりつかせた木があった。
私はその時、言葉というものを知らなかったが、その木を見たとたん、全てを悟った。言葉の存在と自分の存在を。
「ここは桜の森、桜の精の森。ここにある木には、それぞれ精がいるの。あなたが最年少で、私が最年長」
体を取り巻く色が白から桜色に変わっているのに、私は初めて気付いた。
「あなたの名前は、さん。山桜のさんよ」
私はここで暮らすんだ。
「よろしくお願いします」
戸惑いつつ挨拶をした。
「こちらこそ。私はよしのよ」
そう言ってよしのは歩いて行く。自分の木の方へ。
私も自分の木へ近づき、そこで1日を過ごした。
次の日からさんの日々は忙しくなった。毎日色々な桜の精が挨拶に来るからだ。
そんな日々が終わるころ、夏が来た。
さんを取り巻く色が緑に変わった。
桜の花が散ったからだよと、ある桜の精が教えてくれた。
桜の木とともに、取り巻く色も変わるらしい。
夏には緑、秋には赤か黄色、冬には銀色に変わった。
私は近所の桜の精と毎日遊んだ。春夏秋冬、春夏秋冬、春夏秋冬。
いつの間にか100年たっていた。
とある冬の日。幸せはつぶれた。
空気が乾燥している日だった。
森の端に雷が落ちた。不思議と雨は降っていなかった。
雷は炎になり、燃え広がった。木を1本、2本と呑み込んでいく。辺りは桜の森から炎の森へと変わっていった。
下に近所の桜の精がいた。こちらに向かって叫んでいる。
「あなたの木の下に桜の木の種が落ちてる。それに乗り移って逃げて。あなたは最年少なんだから」
私は種に乗り移って逃げた。ひたすら転がり、止まるまで転がる。
崖の先端で種が止まった。そこからは、先程までいた桜の森が良く見えた。さんが止まったのを見はからったかのように、大雨が降り始めた。炎は消えた。
忘れたくなかった。新たな木になって、記憶を忘れたくなかった。
でも、生き残らなければ。
決心をして、やわらかな眠りに沈みこんだ。
深い深い眠りに。
ある森で火災があった。その焼け野原に集落ができた。火災から10年後の春のことだった。
その集落からは崖の先端にある山桜の木が良く見えた。
人々はその桜には精がいるといって、祀った。山と名前をつけて。
山……さん……と呼ばれた精は、木の上で笑った。
衣を銀色から桜色に染めなおして。110年前のあの日のようだと思いながら。
感想もらえると嬉しいです。
みたらしだんごさん(選択なし・11さい)からの相談
とうこう日:2021年1月11日みんなの答え:319件
この記憶を忘れる前に。
春の霧の中で、私は生まれた。
周りはきれいな色の霧で包まれていた。
私は純白の髪に、同じ色をした肌に同じく純白の衣を着ていて、白銀の色をした目をしていたらしい。
正面には、白に近い桜色をまとった女性がいた。
「あなたはね、山桜の桜の精よ。横の木を見てみなさい」
横には幹の先にきれいなもやをまとわりつかせた木があった。
私はその時、言葉というものを知らなかったが、その木を見たとたん、全てを悟った。言葉の存在と自分の存在を。
「ここは桜の森、桜の精の森。ここにある木には、それぞれ精がいるの。あなたが最年少で、私が最年長」
体を取り巻く色が白から桜色に変わっているのに、私は初めて気付いた。
「あなたの名前は、さん。山桜のさんよ」
私はここで暮らすんだ。
「よろしくお願いします」
戸惑いつつ挨拶をした。
「こちらこそ。私はよしのよ」
そう言ってよしのは歩いて行く。自分の木の方へ。
私も自分の木へ近づき、そこで1日を過ごした。
次の日からさんの日々は忙しくなった。毎日色々な桜の精が挨拶に来るからだ。
そんな日々が終わるころ、夏が来た。
さんを取り巻く色が緑に変わった。
桜の花が散ったからだよと、ある桜の精が教えてくれた。
桜の木とともに、取り巻く色も変わるらしい。
夏には緑、秋には赤か黄色、冬には銀色に変わった。
私は近所の桜の精と毎日遊んだ。春夏秋冬、春夏秋冬、春夏秋冬。
いつの間にか100年たっていた。
とある冬の日。幸せはつぶれた。
空気が乾燥している日だった。
森の端に雷が落ちた。不思議と雨は降っていなかった。
雷は炎になり、燃え広がった。木を1本、2本と呑み込んでいく。辺りは桜の森から炎の森へと変わっていった。
下に近所の桜の精がいた。こちらに向かって叫んでいる。
「あなたの木の下に桜の木の種が落ちてる。それに乗り移って逃げて。あなたは最年少なんだから」
私は種に乗り移って逃げた。ひたすら転がり、止まるまで転がる。
崖の先端で種が止まった。そこからは、先程までいた桜の森が良く見えた。さんが止まったのを見はからったかのように、大雨が降り始めた。炎は消えた。
忘れたくなかった。新たな木になって、記憶を忘れたくなかった。
でも、生き残らなければ。
決心をして、やわらかな眠りに沈みこんだ。
深い深い眠りに。
ある森で火災があった。その焼け野原に集落ができた。火災から10年後の春のことだった。
その集落からは崖の先端にある山桜の木が良く見えた。
人々はその桜には精がいるといって、祀った。山と名前をつけて。
山……さん……と呼ばれた精は、木の上で笑った。
衣を銀色から桜色に染めなおして。110年前のあの日のようだと思いながら。
感想もらえると嬉しいです。
みたらしだんごさん(選択なし・11さい)からの相談
とうこう日:2021年1月11日みんなの答え:319件
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本をつくって下さい。 ものすごくいい話ですね!
本当に本をつくったら??
君ならできるよ!絶対!!
この話をつくるのに何時間かかりました??
また、投稿して下さいね! すげぇ子さんさんさんさんさん(神奈川・16さい)からの答え
とうこう日:2021年10月9日 -
すごいぃぃぃぃぃ じゅ、11歳!?
私14だけどこんな文章絶対に書けない!
絶対に書けない!(大事なことなので2回言いました)
なんて言えばいいのか分からないけど、とにかく文が美しかったです。
また短編小説の投稿やってほしいなー なのんさん(岐阜・14さい)からの答え
とうこう日:2021年10月9日 -
すごい すごいですね! Eさん(青森・13さい)からの答え
とうこう日:2021年10月5日 -
凄すぎ すごく感動して涙出そうになった。 クルミさん(三重・10さい)からの答え
とうこう日:2021年10月4日 -
うわっ!! や、やばい、、凄すぎる!めっちゃ感動した!とてもいいおはなしです!
店4!さん(愛知・9さい)からの答え
とうこう日:2021年10月2日 -
スゲー 情景とかスゴイ入れてて、こんなに短い小説なのに工夫が多くてスゴーい!文もわかりやすいー!めっちゃめちゃいいです! ヤッホーさん(愛知・11さい)からの答え
とうこう日:2021年9月30日 -
めっちゃ感動 めっちゃ感動しました! らんらんこさん(兵庫・9さい)からの答え
とうこう日:2021年9月29日 -
Wow もう・・・すゴイ! ys-ktnさん(東京・10さい)からの答え
とうこう日:2021年9月27日 -
す、すごい! わたしより年下なのに、こんなイイお話をつくれるなんてっ
↑(バカにしすぎw)
桜の衣をかえるころ、とか、どうやったらそんなイイ題名思いつくん?
(感動)
みゅうみゅうさん(東京・12さい)からの答え
とうこう日:2021年9月25日 -
すんごい みたらしだんごさんすごすぎ!私より1歳下!?
信じられん!
感動した!こんなに良い作品をありがとう! アサリさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2021年9月25日
319件中 221 〜 230件を表示
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
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