タイムスリップ
朝、目が覚めたら私の部屋がおかしなことになっていた。
とにかく見覚えのない物が多い。例えば高校の教科書や、新しそうなカバン、ずらりと並べられた知らない漫画。これら全て元々私の部屋にはなかったはずのものだ。ベットや机などはそのまんまだが、記憶とは若干位置が違う。
そして壁にかけられた「2020年8月」と書かれたカレンダー。
私の記憶では、今は2020年1月のはずだ。
このことから、私は一つの結論へ辿り着いた。
「‥‥私、未来にタイムスリップしちゃった?」
多分そうだ。きっとそうだ。
そうじゃなきゃこの状況の説明がつかない。
「‥っえ‥ど、どうしよ」
とりあえずベットから起き上がる。部屋のドアをそっと開け、廊下に出る。むあっと蒸し暑い空気が私をまとう。
私が元いた世界では12月のはずだから、こんなに暑いわけがない。やっぱり私、ほんとうにタイムスリップしちゃったんだ。
おそるおそる階段をおりて、家族のいるはずのリビングへ向かう。タイムスリップしちゃったのは私だけなのか、それとも家族全員タイムスリップしちゃったのかどうか確かめたかった。
だけどリビングには誰もおらずがらんとしている。カレンダーには8月と書いてあったから夏休み中のはず。もし私だけがタイムスリップしちゃっているのであれば、この世界の家族はみんなでお出かけでもしているのかな?
とりあえず私は一旦自分の部屋に戻り、クローゼットから服を取り出して私服に着替えた。そして玄関で靴を履き、外へ出る。
久しぶりの強い日差しが眩しい。目を細めながら、誰か知っている人を探すためあたりを見渡す。
知っている人はすぐに見つかった。
くるくるとした茶髪に、すらりと伸びた背。垂れ目でふわふわとした雰囲気の彼女は、どこからどう見ても私の親友。
だけど、彼女は見知らぬ制服を着ている。
やっぱり、タイムスリップしちゃったの私だけなんだな。
話しかけていいのかどうか戸惑っていると、向こうが私に気がついたようで近づいてきた。
「あれ?遥ちゃんだ。やっほー。学校は?」
「え?学校?」
今は夏休み中じゃないの?なんで学校が出てくるのだろう?
そんな私を彼女は不審に思ったようで首を傾げる。
「うん、学校だよがっこー。ほら、前に休校あったから夏休み潰して授業やるっていってたじゃん。遥の高校もそうだって聞いてたけど、違ったっけ?」
「えっ、ちょっとまって!」
休校?夏休みを潰す?なんの話だ?
それに、もう一つ気になることがある。
「ね、ねぇ、優香風邪でも引いた?なんでこんな蒸し暑いのにマスクなんてしてるの?」
私が尋ねると、優香はさらに怪訝そうな表情になる。
「なんでって‥そりゃ今コロナが流行っているからねぇ。付けろって政府がうるさいじゃん。それにほら、私だけじゃなくてみんなマスクつけてるよ」
優香が通行人に視線を移す。私もそちらを見ると、確かにみんなマスクをつけていた。
つけていないのは私だけだ。そしてそんな私を、通行人は汚物でも見るかのような視線を向ける。
「遥、今日どうしたの?まるでコロナ騒動のことなんか全部忘れちゃったみたいな口ぶりだけど」
心配そうに優香がこちらの顔を覗き込む。
ーーーーそこで、はっと目が覚めた。
私が見上げているには見慣れた天井。そして、見慣れた部屋。そこには高校の教科書も新しいカバンも知らない制服もない。
「よかったぁ‥夢か」
さっきのが本当にタイムスリップ先じゃなくてよかった。夏休みが潰れるとか、暑い中マスクしなきゃいけない世界なんて嫌すぎる。
ほっと胸を撫で下ろし、朝食を食べるためリビングへ向かう。
朝食は既に用意されていて、私は席へ座る。ちょうどテレビがついていて、視線を向けるとそこではとあるニュースがやっていた。
「先日、肺炎の原因である新型コロナウイルスの感染が、国内で初めて確認されました。政府関係者によるとー‥」
ーーー新型コロナウイルス?
さっき夢で見た優香の言葉を思い出す。
(「遥、今日どうしちゃったの?まるでコロナ騒動のこととか全部忘れちゃったみたいな口ぶりだけど」)
あれは案外、夢じゃなかったのかもしれない うさん(千葉・14さい)からの相談
とうこう日:2023年5月2日みんなの答え:8件
とにかく見覚えのない物が多い。例えば高校の教科書や、新しそうなカバン、ずらりと並べられた知らない漫画。これら全て元々私の部屋にはなかったはずのものだ。ベットや机などはそのまんまだが、記憶とは若干位置が違う。
そして壁にかけられた「2020年8月」と書かれたカレンダー。
私の記憶では、今は2020年1月のはずだ。
このことから、私は一つの結論へ辿り着いた。
「‥‥私、未来にタイムスリップしちゃった?」
多分そうだ。きっとそうだ。
そうじゃなきゃこの状況の説明がつかない。
「‥っえ‥ど、どうしよ」
とりあえずベットから起き上がる。部屋のドアをそっと開け、廊下に出る。むあっと蒸し暑い空気が私をまとう。
私が元いた世界では12月のはずだから、こんなに暑いわけがない。やっぱり私、ほんとうにタイムスリップしちゃったんだ。
おそるおそる階段をおりて、家族のいるはずのリビングへ向かう。タイムスリップしちゃったのは私だけなのか、それとも家族全員タイムスリップしちゃったのかどうか確かめたかった。
だけどリビングには誰もおらずがらんとしている。カレンダーには8月と書いてあったから夏休み中のはず。もし私だけがタイムスリップしちゃっているのであれば、この世界の家族はみんなでお出かけでもしているのかな?
とりあえず私は一旦自分の部屋に戻り、クローゼットから服を取り出して私服に着替えた。そして玄関で靴を履き、外へ出る。
久しぶりの強い日差しが眩しい。目を細めながら、誰か知っている人を探すためあたりを見渡す。
知っている人はすぐに見つかった。
くるくるとした茶髪に、すらりと伸びた背。垂れ目でふわふわとした雰囲気の彼女は、どこからどう見ても私の親友。
だけど、彼女は見知らぬ制服を着ている。
やっぱり、タイムスリップしちゃったの私だけなんだな。
話しかけていいのかどうか戸惑っていると、向こうが私に気がついたようで近づいてきた。
「あれ?遥ちゃんだ。やっほー。学校は?」
「え?学校?」
今は夏休み中じゃないの?なんで学校が出てくるのだろう?
そんな私を彼女は不審に思ったようで首を傾げる。
「うん、学校だよがっこー。ほら、前に休校あったから夏休み潰して授業やるっていってたじゃん。遥の高校もそうだって聞いてたけど、違ったっけ?」
「えっ、ちょっとまって!」
休校?夏休みを潰す?なんの話だ?
それに、もう一つ気になることがある。
「ね、ねぇ、優香風邪でも引いた?なんでこんな蒸し暑いのにマスクなんてしてるの?」
私が尋ねると、優香はさらに怪訝そうな表情になる。
「なんでって‥そりゃ今コロナが流行っているからねぇ。付けろって政府がうるさいじゃん。それにほら、私だけじゃなくてみんなマスクつけてるよ」
優香が通行人に視線を移す。私もそちらを見ると、確かにみんなマスクをつけていた。
つけていないのは私だけだ。そしてそんな私を、通行人は汚物でも見るかのような視線を向ける。
「遥、今日どうしたの?まるでコロナ騒動のことなんか全部忘れちゃったみたいな口ぶりだけど」
心配そうに優香がこちらの顔を覗き込む。
ーーーーそこで、はっと目が覚めた。
私が見上げているには見慣れた天井。そして、見慣れた部屋。そこには高校の教科書も新しいカバンも知らない制服もない。
「よかったぁ‥夢か」
さっきのが本当にタイムスリップ先じゃなくてよかった。夏休みが潰れるとか、暑い中マスクしなきゃいけない世界なんて嫌すぎる。
ほっと胸を撫で下ろし、朝食を食べるためリビングへ向かう。
朝食は既に用意されていて、私は席へ座る。ちょうどテレビがついていて、視線を向けるとそこではとあるニュースがやっていた。
「先日、肺炎の原因である新型コロナウイルスの感染が、国内で初めて確認されました。政府関係者によるとー‥」
ーーー新型コロナウイルス?
さっき夢で見た優香の言葉を思い出す。
(「遥、今日どうしちゃったの?まるでコロナ騒動のこととか全部忘れちゃったみたいな口ぶりだけど」)
あれは案外、夢じゃなかったのかもしれない うさん(千葉・14さい)からの相談
とうこう日:2023年5月2日みんなの答え:8件
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すごぉ! やほぅ
元菜亜華の
雪音だよぉ!
よろっ!
え〜、
すごぉ!
確かに、
2020年1月は
まだコロナ
流行って
なかったぁ、、、!
それを
題材?
にする
なんて
すごいっ!
めたんこ
面白かった!
面白い作品を
ありがとっ!(*^▽^*)
じゃ、まったね〜っ!( ´∀`)/~~ 雪音#ゆきね#元菜亜華さん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2023年6月10日 -
面白ぉ!!! こんにちは!yunaと申します
よろしくねー(*^^*)
タイムスリップだから非現実的な感じなのかと思ったらだいぶ現実的()
すごく面白かったです!
現実と仮想?みたいなのが混ざっててすごく面白かったです!天才ですね!
私もこんな体験してみたいな…(
一つ一つの表現もすごく丁寧な感じがして読みやすかったです!
文章構成も神ですね!
ぐっばぁい
こんなに素敵な作品をありがとうございました!*
yuna#頼りにならないかいちょーさん(石川・12さい)からの答え
とうこう日:2023年6月8日 -
面白い短編小説でした! タイトルの通りとっても面白かったです!
遥のタイムスリップする前はまだコロナが流行ってなかったんですね、、、
今はだいぶ治まってますが、
あの時は大変だったことを改めて思い出します。
素敵な作品をありがとうございました! 紅花さん(愛知・13さい)からの答え
とうこう日:2023年6月7日 -
すごすぎ! 2020年1月でまさかって思ったらほんとにそうだった…コロナのこと知らずにコロナ禍の世界にタイムスリップしたら怖すぎじゃん!にしても2020年の夏休み短くなったのとか夏なのにマスクずっとつけてた生活がもはや懐かしいっていう状況…
ラスト、遥ちゃんに「この頃の君は、まだ知らない。」みたいな天の声を送りたくなりました笑 (笑い事じゃないけど)。
コロナ5類になってよかったですよね!
発想が天才でした! 小説家になりたい人さん(選択なし・16さい)からの答え
とうこう日:2023年6月7日 -
おんもしろい 展開が全く読めなくておもしろかったです!
今となっては素顔解禁になりましたけど、あの頃は本当に大変だったな…。 檸檬羊さん(東京・14さい)からの答え
とうこう日:2023年6月7日 -
予知夢だね みんな元気?しろもちだよ!
予知夢の話で面白かったです。
よく思いついたな!ってくらいniceな話でした!
最後まで読んでくれてありがとう! しろもち、元アレン、元々にーこさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2023年6月7日 -
凄いですね 面白い小説でした。
コロナがまだ流行っていない時の世界なんですね。想像力が凄いです。
まだコロナが流行っていなかったことを思い出しますね…^^
遥が見た夢は…予知夢だったのでしょうか?
素敵な小説、ありがとうございます。
では! ☆…ゆい…☆さん(神奈川・11さい)からの答え
とうこう日:2023年6月7日 -
「ぞわっ」ってしました そうですよね…
2020年1月なんてコロナでマスク生活強いられて、著名人がコロナで亡くなるなんて思ってもいなくて、オリンピックイヤーだって大盛り上がりで、最高の日本を見せて景気を良く〜って感じでしたもん。いつ日常が一変するか分からない、漫画以上に漫画してる世界なんだなと思わされましたね。
発想が素晴らしく最後は鳥肌立ってました!!面白い作品をありがとうございます! viaさん(選択なし・17さい)からの答え
とうこう日:2023年6月7日
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