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[SF]理想郷を手に入れて。 青く澄み切った空にいつもの毎日がやってきた。きっとこれからも続く毎日がやってきた。
有象無象でごった返している駅のステーションに、朝日を反射した電車が止まった。流れに乗って私も電車内に入る。
いつもだったら電車内は席の争奪戦が、静寂の間に起こっているはずだった。かといって空いている席もない。
「…今日、日曜日か。」思ったことがぽつりと出てしまった。
電車でいろいろな場所へ旅することが、私のくだらない人生の唯一の楽しみだ。
そろそろ学校にも顔を出さなくては、出席率も足りなくなるし他の人に顔を合わせられなくなる。そう思うだけで体はどんどん重くなる。手すりにつかまって外を眺める至福の時間。颯爽と通り過ぎる私だけの世界。しらない世界へ足を踏み入れると、どうしても自分がちっぽけな存在に見える。それもまたいい、だけど惨めに思える。私はどこにでもいる人間の一人なんだと思い始めてしまう。(なんかもう嫌だな。辛いな。)幸福な毎日に飽き飽きして、飛び出してきた家。幸福だけが幸せじゃないんだ。
ため息をこぼしていると、長いトンネルに入った。視界が一瞬にして黒に塗りつぶされる。一瞬驚いたが、少し間を開けてからトンネルに入ったことに気づく。広大な世界が見えるまで待つ。ふと疑問を持った。(トンネルに入ったとして、異様に暗すぎないか?)そう思った瞬間だった。バッと視界に塗りつけられた黒が消えていった。まるで暗闇でつけたライターの光のように一瞬として。どこもさっきとは違わないはずだった。窓越しから見る空と雲は透明を帯び、黒く深い色の川と異様なコントラストにある。ここはどこだろう?ここは私の世界じゃない。知らない。そう思うと一瞬にして恐怖で体が覆われていくようだった。
電車が止まり、ステーションに降り立った。体が軽い、夢じゃない、体をつねってもいたくない。
世界が美しくて、淡い空気に溶けそうになる。こんなにきれいで、儚い物は見たことが無い。

まるで理想の世界だった。

私は不思議な感覚にとらわれた。もしここが理想の世界だとするなら、私はここで何をすればいいのだろうか?私は自分の望みを叶えることができるのだろうか?私はこの世界に居場所を見つけることができるのだろうか?
そんなことを考えながら、ステーションから出てみた。すると、目に飛び込んできたのは、まるで絵本の中のような風景だった。緑豊かな草原に、色とりどりの花々が咲き乱れている。空には虹がかかり、小鳥たちがさえずっている。遠くには青々とした葉を茂らせる山がそびえている。近くには透き通った水を湛えた湖があり、そこには白鳥やカモが泳いでいる。人々は笑顔で挨拶を交わし、仲良く暮らしているようだった。
一瞬で不安なんてものを忘れた。
こんなに美しい世界があるなんて、信じられない。私はここで幸せになれると思った。
私は歩き始めた。この世界をもっと知りたいと思ったからだ。この世界にはどんな人や動物や物があるのだろうか?この世界にはどんな物語や歴史や文化があるのだろうか?この世界にはどんな秘密や驚きや冒険があるのだろうか?
私は歩き続けた。そして、その日から私の人生は変わり始めた。私はこの世界で出会った人々と友情を育み、愛を見つけ、夢を追い求めた。私はこの世界で学び、成長し、楽しみ、悩み、泣き、笑った。私はこの世界で自分自身を見つけた。
私は幸せだった。

とある医者「あぁ、あちらの世界へ入ってしまいましたな。」
とある一般人「また一人、あちらの世界の住人を増やしてしまったみたいだ。」

2XXX年、地球上では最新技術によって生み出された機器により、脳からの電気信号を五感に伝えることが可能となった。
その危機により、「理想の世界」に行くことが可能になった。

一般人「努力のない夢なんて無意味だろうに…。」
医者は問う。「どうしてそう思うのです?あちらの世界に行った人達は、みんな幸せなのです。」 一般人は不満げに言った。「幸せじゃないさ。それはただの妄想だ。現実から目を背けて、自分の都合のいい世界に逃げ込んでいるだけだよ。それが本当の幸せだと思ってるなら、あなたは医者として失格だよ。」 医者は冷静に言った。「私は医者として、人々の苦しみを和らげることが使命だと思っています。あちらの世界に行った人たちは、現実世界で苦しんでいた人たちです。貧困や病気や暴力や孤独に苦しんでいた人たちです。彼らにとって、現実世界は地獄でした。でも、あちらの世界では、彼らは自分の理想を叶えることができます。彼らは自分の価値を見出すことができます。彼らは自分の存在意義を感じることができます。それが幸せではないと言えますか?」 一般人は言葉に詰まった。「どちらの世界を選んでも、幸せになれるならいいんですよ。」そうして医者は、誰もいない世に歩き出した。
おおかみさん(東京・12さい)からの相談
とうこう日:2023年5月26日みんなの答え:1件

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  • きれいだし、感動するし! こんにちは、ひよりです。
    すごいですね…。同い年!?
    ちょっと不気味な雰囲気と、きれいな描写が混ざり合って、絶妙な感じ。医者と一般人が語った、夢や理想について。どれも、私では作れないものです。
    医者が言った、「どちらの世界を選んでも、幸せになれるならいいんですよ。」という言葉が刺さりました。幸せとは何なのか、考えさせられる内容でした。私的には、努力して手に入れる夢が、1番大切にできるものだと思います。でも、医者が言うことも一理ある。夢を追いかけることができない人にとっては、理想を簡単に手に入れられるということは、この上ない幸せでしょう。
    最後に医者が誰もいない世に歩き出した場面。これはどういうことなのでしょう。医者がいたのが理想郷だったのか、はたまたこの世にはもう人がいなくなってしまったのか。いずれにせよ、何か闇がありそうな、これもまた魅力的な終わり方です。スッと心に入りました。
    こんな素晴らしい小説を読ませていただいて、ありがとうございます。また書いてほしいな…なんちって。
    私も頑張って書いていきます!
    読んでくれてありがとう。またねです!
    ひよりさん(選択なし・12さい)からの答え
    とうこう日:2023年7月6日
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