彼らの夏
無機質な部屋の窓から、ざわざわと揺れる青い葉が見える。
きっと外は暑いだろう。煌めく太陽の光がカッと白い床を照らす。
その光が眩しくて、眩しすぎて俺は思わず目を閉じた。
「■■、■■■■■____」
ーーーーー
控えめなノック音がして、ガラガラと引き戸が開いた。
「…夏樹、体調はどう?」
そう言って病室に入ってきたのは、友人の美優だ。
「元気だよ。暑いけれど美優は大丈夫か?」
俺はにこりと笑ってそう返した。
美優は無言のまま、ぼんやりとした笑みを浮かべる。そして、そのまま持っていた着替えを俺のベッドに置いた。
「じゃあ、今日は私に付き合ってくれるかな?外出許可も出たからさ。」
ーーーーー
美優に言われるがまま着替え、病院の外へ出る。
外に出ると、茹だるような暑さで頭がくらりとした。
遠くから聞こえる蝉の声が、夏の盛りであることを俺に教えた。
「今日は、何処に行くんだ?」
花を抱えて無言で前を歩く美優の背中に問いかけると、短く言葉が帰ってきた。
「…お墓参り。」
様々な情景がフラッシュバックして、一瞬意識が遠のく。
……ああ、もうそんな時期なのか。胸の傷が、じくりと痛んだ。
一年前、俺の彼女である蓮井柚葉と美優の彼氏である相馬蓮は交通事故で亡くなった。四人で学校に登校している途中、工事現場から鉄柱が落下。俺と美優を庇って下敷きになった二人は即死だったらしい。
らしい、というのも俺はこのときの記憶があまりない。実際俺と美優は軽症で済んだものの、俺は「心因性ショック」と判断された。意識障害、記憶の混濁、幻聴、せん妄…長期間の入院を強いられた俺と違い、美優の回復は早かった。美優はあの後もこまめに俺の元を訪れ、事件のこと、柚葉のことなどをぽつぽつと話してくれた。病室に常に置いてあった黄色いユリを持ってきてくれたのも彼女だ。親友である柚葉と彼氏である蓮の二人の死は、彼女にとっても凄く辛かったはずなのに…彼女には感謝してもしきれない。
ーーーーー
「…き」
「…つき」
「…夏樹?」
美優に呼ばれて、はっとした。
足を止め、心配そうにこっちを見やる彼女に、俺はかぶりを振った。
「‥大丈夫だ。少しあのときのこと、思い出したような気がして…」
美優は少し驚いたような顔をしたが、またさっきの無表情に戻った。
もうすぐ着くから我慢してて、なんて呟いてもう一度歩きだす。俺も無言で、その後をついていった。
蝉の声が、やけに煩く感じた。
ーーーーー
都内の小さな墓地に着くときには暑さも少し和らいでいて、涼しい風が吹いていた。
蓮の墓はここの墓地じゃなかった筈だから、此処は
「…柚葉、の、墓へ」
思わず俺が声を漏らすと、美優が「蓮の墓はもう行ったから」と誰にいうともなく呟いた。
並ぶ墓石の前を歩く美優の影に目を落として、俺も歩く。
一つの墓の前で立ち止まり、美優は俺に花を寄越した。そのまま、じっと墓石を見つめる。そして、ふっとこちらへ振り向いた。
「ねぇ、夏樹?」
「なんだ」
「二人が死んだのはもうどうにもならないんだよ」
…そんなの知っている。実際俺たちは、墓参りに来ているじゃないか。
「知ってるって君はいうと思うけど」
彼女が墓石の方へ歩きだす。ゆっくり、時間をかけて。
「それなら、早く」
「戻ってきてよ、『柚葉』」
とさ、と音がして地面に花が落ちる。少女は口を開けてなにかを言いかけたが、また口を閉じる。言葉の代わりに、彼女の目からは、大粒の涙が溢れた。
「愛してるよって、言ったじゃん…」
8月15日。
青谷夏樹と相馬蓮、二人だけが亡くなったあの事故から、1年が経とうとしていた。
ーーーーーー
初めて短編小説を書きました!!
文章のつくりおかしいかもしれませんが、見逃してくださーい…
楽しんでもらえたら嬉しいです(^^♪ 元素さん(神奈川・13さい)からの相談
とうこう日:2023年8月24日みんなの答え:1件
きっと外は暑いだろう。煌めく太陽の光がカッと白い床を照らす。
その光が眩しくて、眩しすぎて俺は思わず目を閉じた。
「■■、■■■■■____」
ーーーーー
控えめなノック音がして、ガラガラと引き戸が開いた。
「…夏樹、体調はどう?」
そう言って病室に入ってきたのは、友人の美優だ。
「元気だよ。暑いけれど美優は大丈夫か?」
俺はにこりと笑ってそう返した。
美優は無言のまま、ぼんやりとした笑みを浮かべる。そして、そのまま持っていた着替えを俺のベッドに置いた。
「じゃあ、今日は私に付き合ってくれるかな?外出許可も出たからさ。」
ーーーーー
美優に言われるがまま着替え、病院の外へ出る。
外に出ると、茹だるような暑さで頭がくらりとした。
遠くから聞こえる蝉の声が、夏の盛りであることを俺に教えた。
「今日は、何処に行くんだ?」
花を抱えて無言で前を歩く美優の背中に問いかけると、短く言葉が帰ってきた。
「…お墓参り。」
様々な情景がフラッシュバックして、一瞬意識が遠のく。
……ああ、もうそんな時期なのか。胸の傷が、じくりと痛んだ。
一年前、俺の彼女である蓮井柚葉と美優の彼氏である相馬蓮は交通事故で亡くなった。四人で学校に登校している途中、工事現場から鉄柱が落下。俺と美優を庇って下敷きになった二人は即死だったらしい。
らしい、というのも俺はこのときの記憶があまりない。実際俺と美優は軽症で済んだものの、俺は「心因性ショック」と判断された。意識障害、記憶の混濁、幻聴、せん妄…長期間の入院を強いられた俺と違い、美優の回復は早かった。美優はあの後もこまめに俺の元を訪れ、事件のこと、柚葉のことなどをぽつぽつと話してくれた。病室に常に置いてあった黄色いユリを持ってきてくれたのも彼女だ。親友である柚葉と彼氏である蓮の二人の死は、彼女にとっても凄く辛かったはずなのに…彼女には感謝してもしきれない。
ーーーーー
「…き」
「…つき」
「…夏樹?」
美優に呼ばれて、はっとした。
足を止め、心配そうにこっちを見やる彼女に、俺はかぶりを振った。
「‥大丈夫だ。少しあのときのこと、思い出したような気がして…」
美優は少し驚いたような顔をしたが、またさっきの無表情に戻った。
もうすぐ着くから我慢してて、なんて呟いてもう一度歩きだす。俺も無言で、その後をついていった。
蝉の声が、やけに煩く感じた。
ーーーーー
都内の小さな墓地に着くときには暑さも少し和らいでいて、涼しい風が吹いていた。
蓮の墓はここの墓地じゃなかった筈だから、此処は
「…柚葉、の、墓へ」
思わず俺が声を漏らすと、美優が「蓮の墓はもう行ったから」と誰にいうともなく呟いた。
並ぶ墓石の前を歩く美優の影に目を落として、俺も歩く。
一つの墓の前で立ち止まり、美優は俺に花を寄越した。そのまま、じっと墓石を見つめる。そして、ふっとこちらへ振り向いた。
「ねぇ、夏樹?」
「なんだ」
「二人が死んだのはもうどうにもならないんだよ」
…そんなの知っている。実際俺たちは、墓参りに来ているじゃないか。
「知ってるって君はいうと思うけど」
彼女が墓石の方へ歩きだす。ゆっくり、時間をかけて。
「それなら、早く」
「戻ってきてよ、『柚葉』」
とさ、と音がして地面に花が落ちる。少女は口を開けてなにかを言いかけたが、また口を閉じる。言葉の代わりに、彼女の目からは、大粒の涙が溢れた。
「愛してるよって、言ったじゃん…」
8月15日。
青谷夏樹と相馬蓮、二人だけが亡くなったあの事故から、1年が経とうとしていた。
ーーーーーー
初めて短編小説を書きました!!
文章のつくりおかしいかもしれませんが、見逃してくださーい…
楽しんでもらえたら嬉しいです(^^♪ 元素さん(神奈川・13さい)からの相談
とうこう日:2023年8月24日みんなの答え:1件
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
1件中 1 〜 1件を表示
-
どんでん返し!! こんにちは、みつです!
短編小説読ませてもらいました!!
めっちゃ面白かったです!切ないですね。
最後の最後まで騙されました!(いい意味で!)
楽しませてもらいました!ぜひまた書いてください! mituさん(青森・14さい)からの答え
とうこう日:2023年10月10日
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
1件中 1 〜 1件を表示
-
- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
- カテゴリごとの新着相談
-
-
- みんなの好きな短歌は?11月29日
-
- 編集アプリのバグが…01月14日
-
- クラスメイト、、、どうすればいい?01月15日
-
- 学校にいきたくない理由01月15日
-
- kpopアイドルになりたいけど親に言えない01月14日
-
- 1日勉強しないくらいで怒る親01月14日
-
- 生理中の情緒不安定について01月15日
-
- 生活習慣病になりたくない01月15日
-
- 美術部を抜けたい01月14日
-
- “ドクターX”知ってる人!01月14日
-
- みんな夜桜さんちの大作戦知ってる⁈01月14日
-
- 別れるべきなのか本気で悩んでしまう01月14日
-
- 垢抜けについての質問返し!01月14日
-
- みんなのところは雪降った?01月14日
-
- どんな はぶらし 使ってる~~??01月14日
-
- あの場所で 〜笑顔と感動の物語〜09月30日
-
- 推しに幸せになってほしいけど、、01月14日
-
いじめで困ったり、ともだちや先生のことで不安や悩みがあったりしたら、一人で悩まず、いつでもすぐ相談してね。
・>>SNSで相談する
・電話で相談する
・>>地元の相談窓口を探す
18歳までの子どものための相談先です。あなたの思いを大切にしながら、どうしたらいいかを一緒に考えてくれるよ。