『さようなら』と少女は言った。
あの娘が言ったとき、もう直ぐお別れだって悟った。
この世界で仲良くなったあの娘、里音ちゃん。私に一番最初に声をかけてくれたのは、彼女だった。
「『星羅』って言うんだ。何だか、神秘的な名前」
彼女は微笑んで、「私、里音。よく、『りお』って間違えられるんだけど、ほんとは『さとね』っていうの。『りお』って呼ばれてるから、星羅ちゃんも『りお』でもいいよ」
「里音、ちゃん…」
中道 星羅。この世界での私の名前。
「アメリカから来ました」
自己紹介を終えると、「つまり、キコクシジョかぁ」とか、「こっちのことあんまり知らないってことだよね」とか、余計な言葉が耳に入る。
何となく他の子たちが近づいてこない中、彼女は気落ちしないで話しかけてきた。
私が周りからの視線を気にすると、「子供っぽいんだから、男子たちったら」とあの娘は呆れたように眉を寄せた。だけど、淡い瞳はいくつかに固まっている女子グループを見ていた。
「ここが理科室。人体模型、本格的過ぎて怖いの」とか、「体育の先生が凄く熱血で、グラウンド何周も走らされんの。陸上部はもっとやらされるらしいよ」とか、色々なことを付け加えながら校内をあの娘は一緒に歩いてくれた。
それが心地よい。今、彼女は私だけに話しかけている。私のことを気にしてくれている。
——友達になりたい。
そんな考えがふっと頭をよぎって、慌てて首を振った。
私は友達なんて、作ってはいけないのだから。
「友達って、羨ましいなぁ」
そっと呟いたその一言に、彼女は軽く目を見張った。
「何言ってんの、私たち、もう友達だよ」
ああ、と深く、浅く、息を吐く。
これが友達なんだ。
私は微笑み返して、「そうだね」と答えた。
古びた屋上に忍び込み、私たちはお弁当を広げた。といっても私は校内で買ったものだけど。
里音のお弁当は綺麗にラッピングされていた。「お疲れ様、里音」と書かれたメモが挟まっていて、丁寧に詰められた食材へ目がいく。
「どうしたの?」
私は肩をすくめた。クシャッと、プラスチックの容器が潰れる音がした。
そのときだった。里音の目が暗く濁る。
『見つけたぞ…今すぐ出ないとこの星ごと爆破する』
ノイズ混じりの耳障りな声。
「わかったわ。この星は、出る」
——さようなら。
心の中で囁いた。
私は一通の手紙を残して、この世界を去る。最後に友達の姿を目に焼き付けて。つぅっと、熱いものが顔をつたった。
これを見つけられるかは彼女次第。あの場所に手紙を差し込む。
——貴方は穏やかに暮らせますように。
里音へ
貴方の記憶の中に、もう既に私はいない。それはわかってるの。
この手紙を読む前に、破り捨てても構わない。だけど私は最後に伝えたいんだ。
私はある星の王女として生まれたの。国はとても栄えていた。けれど、兄のエックが王の座についてからは国は荒れていったの。ついには戦争にもなり、私たちは敗れた。
色々な星を逃げまわっているうちに、貴方に出会った。
短い時間だったけれど、仲良くしてくれて、友達になってくれて、ありがとう。
中道 星羅より
・*・*finish・*・*
こんにちは。雪月花です。
最後までお読み頂き有難う御座いました。
この話の続きは…是非ご自分でご想像ください。
アドバイスや感想、宜しくお願いします。 雪月花さん(東京・11さい)からの相談
とうこう日:2023年8月30日みんなの答え:0件
この世界で仲良くなったあの娘、里音ちゃん。私に一番最初に声をかけてくれたのは、彼女だった。
「『星羅』って言うんだ。何だか、神秘的な名前」
彼女は微笑んで、「私、里音。よく、『りお』って間違えられるんだけど、ほんとは『さとね』っていうの。『りお』って呼ばれてるから、星羅ちゃんも『りお』でもいいよ」
「里音、ちゃん…」
中道 星羅。この世界での私の名前。
「アメリカから来ました」
自己紹介を終えると、「つまり、キコクシジョかぁ」とか、「こっちのことあんまり知らないってことだよね」とか、余計な言葉が耳に入る。
何となく他の子たちが近づいてこない中、彼女は気落ちしないで話しかけてきた。
私が周りからの視線を気にすると、「子供っぽいんだから、男子たちったら」とあの娘は呆れたように眉を寄せた。だけど、淡い瞳はいくつかに固まっている女子グループを見ていた。
「ここが理科室。人体模型、本格的過ぎて怖いの」とか、「体育の先生が凄く熱血で、グラウンド何周も走らされんの。陸上部はもっとやらされるらしいよ」とか、色々なことを付け加えながら校内をあの娘は一緒に歩いてくれた。
それが心地よい。今、彼女は私だけに話しかけている。私のことを気にしてくれている。
——友達になりたい。
そんな考えがふっと頭をよぎって、慌てて首を振った。
私は友達なんて、作ってはいけないのだから。
「友達って、羨ましいなぁ」
そっと呟いたその一言に、彼女は軽く目を見張った。
「何言ってんの、私たち、もう友達だよ」
ああ、と深く、浅く、息を吐く。
これが友達なんだ。
私は微笑み返して、「そうだね」と答えた。
古びた屋上に忍び込み、私たちはお弁当を広げた。といっても私は校内で買ったものだけど。
里音のお弁当は綺麗にラッピングされていた。「お疲れ様、里音」と書かれたメモが挟まっていて、丁寧に詰められた食材へ目がいく。
「どうしたの?」
私は肩をすくめた。クシャッと、プラスチックの容器が潰れる音がした。
そのときだった。里音の目が暗く濁る。
『見つけたぞ…今すぐ出ないとこの星ごと爆破する』
ノイズ混じりの耳障りな声。
「わかったわ。この星は、出る」
——さようなら。
心の中で囁いた。
私は一通の手紙を残して、この世界を去る。最後に友達の姿を目に焼き付けて。つぅっと、熱いものが顔をつたった。
これを見つけられるかは彼女次第。あの場所に手紙を差し込む。
——貴方は穏やかに暮らせますように。
里音へ
貴方の記憶の中に、もう既に私はいない。それはわかってるの。
この手紙を読む前に、破り捨てても構わない。だけど私は最後に伝えたいんだ。
私はある星の王女として生まれたの。国はとても栄えていた。けれど、兄のエックが王の座についてからは国は荒れていったの。ついには戦争にもなり、私たちは敗れた。
色々な星を逃げまわっているうちに、貴方に出会った。
短い時間だったけれど、仲良くしてくれて、友達になってくれて、ありがとう。
中道 星羅より
・*・*finish・*・*
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