五等星、美しい夜。
――これは、たった一度の、最高の夜の話。
「私、何にもない。」
軽く呟いた言葉は、薄くなったトローチのように、教室の笑い声に消えた。
私、闇白 御恵(やみしろみえ)は、友達がいなかった。
一度は頑張ったものの、毎度同じの甲高い笑い声に、その決意は散った。
はあ、何で私はこんなにも。
そう、何度も心で呟いた。
そう思うたび、生きる価値を見出せなくなる。
大人になって、人に迷惑をかけるなら、もう、決断してしまった方がいい。
死んでも、この世界は何も変わらないだろう。
この憂鬱さに打ち勝てる日はきっと来ない。
そう思っていた、時だった。
「ねぇ、ちょっと、こっち」
突如腕を掴まれ、教室の外へ出された。
「誰?」
生徒に無関心な私は、その男子に問いかけた。
「星川 和泉。それより、今日の夜、空いてない?」
「は?」
どう言う意味だろう。と言うか、呼び出しておいて、からかう気?
「君と、みたい景色がある」
信じられないので、頭の中で、整理した。
つまり、友達のいない私が、男子に、夜に誘われた。
チャンスと捉えるか、危ないと捉えるか。
いや、間違いなく前者で捉えた方がいいに決まっている。
「良いけど」
「じゃあ、今日の夜9時ごろに、外
に出て」
え、そんなに遅い時間?
言おうとしたが、いつのまにかいなくなっていた。
夜。ドアには鍵がかかっていて、空いたら緊急のサイレンが鳴るようになっている。
でも、約束してしまったんだ。
とりあえず、2階の窓から、いつもこっそりここで遊んでいるので、手際よく降りると、冷たい空気が身に纏った。
ゆっくり玄関を出ると、すぐそこに和泉が、いた。
「本当に来てくれたんだ。」
「まぁ、うん。まあ。」
「じゃあ、こっち。」
和泉は歩き出す。
そして、私も慌てて後を追う。
人がいなくなってしまったように静かな住宅街は、少し不気味に感じられた。
「ねえ、どこまで行くの?」
「……」
答えない。
やっと立ち止まった場所は、川原だった。
あまり行ったことがないが、知っている場所だ。
思い切り息を吸うと、風が吹き、草むらが揺れた。
先ほどの不気味さはなく、少しばかり心地よかった。
「空を、みて」
和泉が言ったので、空を見る。
そこには、たくさんの星々が、街頭に負けず、ものすごい威力で輝いていた。
でも、少し光が薄い、五等星もあった。
見惚れてはぁっと息を吐くと、彼が喋り出す。
「綺麗でしょ。でも、あまり光っていない星もあるね」
「君は、あれを綺麗だと思う?」
和泉は、一歩だけ前に出た。
「思うよ。いや、僕はそっちの方が好きだ」
「どう言うこと?」
驚いて和泉を見ると、彼はまだ、空を見上げていた。
「一等星や二等星に、目が行ってしまうけれど、それでも、輝いている四、五、六等星も、見つけてあげたいと思う。きっと君も、そうでしょう?」
「えっ」
「君が、何もないと言っていたこと、聞いていたよ。だから、見せたかった。目立たなくても、絶対に一人の目には、うつるんだって。それは、人を救うことだってある。僕も、目立たない存在で、生きる意味を見出せない時、この星に、助けられたから。だから僕は、君を助けたい。」
そう言われて、思う。
私は、誰かを、助けられるのだろうか。
誰かに、必要とされるだろうか。
でも、きっとこの子も、友達がいない。
それなら。
「友達に、なってくれない?」
声を、振り絞る。
「私の、最初の……」
言葉が、途切れる。
「友達に」
その子は、私を見る。
「なんて、素晴らしい日だ。」
その子は、泣きそうな顔で言う。
「良いよ」
その途端、安心と嬉しさで、私達は夜の中、声を押し殺して、泣いた。
私たちは、今だけは、もう少しばかり、生きようと、思ったのであった。
Huuさん(東京・10さい)からの相談
とうこう日:2023年9月30日みんなの答え:1件
「私、何にもない。」
軽く呟いた言葉は、薄くなったトローチのように、教室の笑い声に消えた。
私、闇白 御恵(やみしろみえ)は、友達がいなかった。
一度は頑張ったものの、毎度同じの甲高い笑い声に、その決意は散った。
はあ、何で私はこんなにも。
そう、何度も心で呟いた。
そう思うたび、生きる価値を見出せなくなる。
大人になって、人に迷惑をかけるなら、もう、決断してしまった方がいい。
死んでも、この世界は何も変わらないだろう。
この憂鬱さに打ち勝てる日はきっと来ない。
そう思っていた、時だった。
「ねぇ、ちょっと、こっち」
突如腕を掴まれ、教室の外へ出された。
「誰?」
生徒に無関心な私は、その男子に問いかけた。
「星川 和泉。それより、今日の夜、空いてない?」
「は?」
どう言う意味だろう。と言うか、呼び出しておいて、からかう気?
「君と、みたい景色がある」
信じられないので、頭の中で、整理した。
つまり、友達のいない私が、男子に、夜に誘われた。
チャンスと捉えるか、危ないと捉えるか。
いや、間違いなく前者で捉えた方がいいに決まっている。
「良いけど」
「じゃあ、今日の夜9時ごろに、外
に出て」
え、そんなに遅い時間?
言おうとしたが、いつのまにかいなくなっていた。
夜。ドアには鍵がかかっていて、空いたら緊急のサイレンが鳴るようになっている。
でも、約束してしまったんだ。
とりあえず、2階の窓から、いつもこっそりここで遊んでいるので、手際よく降りると、冷たい空気が身に纏った。
ゆっくり玄関を出ると、すぐそこに和泉が、いた。
「本当に来てくれたんだ。」
「まぁ、うん。まあ。」
「じゃあ、こっち。」
和泉は歩き出す。
そして、私も慌てて後を追う。
人がいなくなってしまったように静かな住宅街は、少し不気味に感じられた。
「ねえ、どこまで行くの?」
「……」
答えない。
やっと立ち止まった場所は、川原だった。
あまり行ったことがないが、知っている場所だ。
思い切り息を吸うと、風が吹き、草むらが揺れた。
先ほどの不気味さはなく、少しばかり心地よかった。
「空を、みて」
和泉が言ったので、空を見る。
そこには、たくさんの星々が、街頭に負けず、ものすごい威力で輝いていた。
でも、少し光が薄い、五等星もあった。
見惚れてはぁっと息を吐くと、彼が喋り出す。
「綺麗でしょ。でも、あまり光っていない星もあるね」
「君は、あれを綺麗だと思う?」
和泉は、一歩だけ前に出た。
「思うよ。いや、僕はそっちの方が好きだ」
「どう言うこと?」
驚いて和泉を見ると、彼はまだ、空を見上げていた。
「一等星や二等星に、目が行ってしまうけれど、それでも、輝いている四、五、六等星も、見つけてあげたいと思う。きっと君も、そうでしょう?」
「えっ」
「君が、何もないと言っていたこと、聞いていたよ。だから、見せたかった。目立たなくても、絶対に一人の目には、うつるんだって。それは、人を救うことだってある。僕も、目立たない存在で、生きる意味を見出せない時、この星に、助けられたから。だから僕は、君を助けたい。」
そう言われて、思う。
私は、誰かを、助けられるのだろうか。
誰かに、必要とされるだろうか。
でも、きっとこの子も、友達がいない。
それなら。
「友達に、なってくれない?」
声を、振り絞る。
「私の、最初の……」
言葉が、途切れる。
「友達に」
その子は、私を見る。
「なんて、素晴らしい日だ。」
その子は、泣きそうな顔で言う。
「良いよ」
その途端、安心と嬉しさで、私達は夜の中、声を押し殺して、泣いた。
私たちは、今だけは、もう少しばかり、生きようと、思ったのであった。
Huuさん(東京・10さい)からの相談
とうこう日:2023年9月30日みんなの答え:1件
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めっちゃすごい! るなです。めちゃ感動したし、10歳でこれ書けることがすごい。
いい話で思わずアイデア思いついて今短編小説書いてるw
こんなにいいものが書けるんだったら、もうプロレベル!! るなさん(大阪・12さい)からの答え
とうこう日:2023年11月27日
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