幸せでしたよ。
所詮僕には前世の記憶というものがある。
記憶では、大正時代だろうか。少し裕福な一般の家庭に生まれ前世の僕は、一人の黒髪を後ろで一つに結っていた、青い目をした少女と恋をして、その少女といろいろな旅をした。しかし、大正を代表とする大地震である関東地震により、彼女を残して命を落としている。
そうなってくると彼女があの後どうなったのかがとても気になってくるものだ。僕とは違う人と結婚して、幸せになったのか、はたまた一生独り身で過ごしたのか。どちらにせよ、少し僕の心は痛む結果だ。でも、彼女が幸せだったのならいい。そう思っていた。
「父さん、この写真何…?」
ある時父に家の蔵の掃除を頼まれた。わざわざ実家に帰省したのに、蔵掃除を命じられるとはついていないと思いながら掃除をしていると、一つのアルバムを見つけた。埃をたくさん被り、色あせたアルバム。表紙には、”みや子”と書かれていた。
―彼女の名前だ。
懐かしい字と彼女の名前。アルバムを手に取り、ページをめくる。めくるたびに、少しの埃が舞い上がる。
最後のページをめくると、時間が止まったような錯覚に陥った。
「それか?そうだな…。オレの曾ばあちゃんのお姉さんのアルバムらしいぞ。ばあさん曰く、みや子さんは、生涯愛すと決めていた相手を失ったショックで、遺書を残してすぐそこの川で命を落としたそうだぞ。20代と若かったそうだからな…かわいそうに。」
アルバムの最後のページには、彼女の遺書と、白黒の僕と一緒に撮った写真が入っていた。
―そうか…彼女は…
彼女は幸せだったのだろうか…?愛する人がなくなってしまったショックで自死を選ぶまで追い詰められていた彼女が。
ふと、彼女の遺書を見ていないことに気付き、少しだけ目を通そうとした。そこに彼女の本当の想いが残っているのではと思った。思いたかった。
そこには、彼女の友人や両親に対する言葉、僕に対する思いでが書かれている。
彼女の遺書には最後、こう書かれていた。
―ありがとう、あなたとの旅を忘れることはないわ。私は、幸せでしたよ。
ふと、僕の頬に涙が伝っていることに気付いた。
「大丈夫?」
ふと隣を見ると、実家の帰省についてきていた青い目後ろで黒髪を一つに結っている今の僕の彼女がいた。
「実弥(みや)…?」
そう呟くと彼女はにこりと笑って、
「ありがとう、豊さん。」
そう、僕の前世の名前を口にして微笑んでいた。
あとがき
読んでくださりありがとうございます!
一応設定としては、主人公の僕の前世の名前は、『豊(ゆたか)』で、そんな彼の恋人が『みや子』さんとなっております。
『僕』はみや子さんの妹の曾孫ですね。
僕の今世での彼女である実弥さんは、みや子さんの生まれ変わりという設定です。
僕は自然と彼女の姿を忘れてしまっていたのでしょう言葉では表現できても、映像としては思い出すことができないかのような。100年以上前のことですからね。 いすみかんさん(静岡・14さい)からの相談
とうこう日:2023年10月2日みんなの答え:1件
記憶では、大正時代だろうか。少し裕福な一般の家庭に生まれ前世の僕は、一人の黒髪を後ろで一つに結っていた、青い目をした少女と恋をして、その少女といろいろな旅をした。しかし、大正を代表とする大地震である関東地震により、彼女を残して命を落としている。
そうなってくると彼女があの後どうなったのかがとても気になってくるものだ。僕とは違う人と結婚して、幸せになったのか、はたまた一生独り身で過ごしたのか。どちらにせよ、少し僕の心は痛む結果だ。でも、彼女が幸せだったのならいい。そう思っていた。
「父さん、この写真何…?」
ある時父に家の蔵の掃除を頼まれた。わざわざ実家に帰省したのに、蔵掃除を命じられるとはついていないと思いながら掃除をしていると、一つのアルバムを見つけた。埃をたくさん被り、色あせたアルバム。表紙には、”みや子”と書かれていた。
―彼女の名前だ。
懐かしい字と彼女の名前。アルバムを手に取り、ページをめくる。めくるたびに、少しの埃が舞い上がる。
最後のページをめくると、時間が止まったような錯覚に陥った。
「それか?そうだな…。オレの曾ばあちゃんのお姉さんのアルバムらしいぞ。ばあさん曰く、みや子さんは、生涯愛すと決めていた相手を失ったショックで、遺書を残してすぐそこの川で命を落としたそうだぞ。20代と若かったそうだからな…かわいそうに。」
アルバムの最後のページには、彼女の遺書と、白黒の僕と一緒に撮った写真が入っていた。
―そうか…彼女は…
彼女は幸せだったのだろうか…?愛する人がなくなってしまったショックで自死を選ぶまで追い詰められていた彼女が。
ふと、彼女の遺書を見ていないことに気付き、少しだけ目を通そうとした。そこに彼女の本当の想いが残っているのではと思った。思いたかった。
そこには、彼女の友人や両親に対する言葉、僕に対する思いでが書かれている。
彼女の遺書には最後、こう書かれていた。
―ありがとう、あなたとの旅を忘れることはないわ。私は、幸せでしたよ。
ふと、僕の頬に涙が伝っていることに気付いた。
「大丈夫?」
ふと隣を見ると、実家の帰省についてきていた青い目後ろで黒髪を一つに結っている今の僕の彼女がいた。
「実弥(みや)…?」
そう呟くと彼女はにこりと笑って、
「ありがとう、豊さん。」
そう、僕の前世の名前を口にして微笑んでいた。
あとがき
読んでくださりありがとうございます!
一応設定としては、主人公の僕の前世の名前は、『豊(ゆたか)』で、そんな彼の恋人が『みや子』さんとなっております。
『僕』はみや子さんの妹の曾孫ですね。
僕の今世での彼女である実弥さんは、みや子さんの生まれ変わりという設定です。
僕は自然と彼女の姿を忘れてしまっていたのでしょう言葉では表現できても、映像としては思い出すことができないかのような。100年以上前のことですからね。 いすみかんさん(静岡・14さい)からの相談
とうこう日:2023年10月2日みんなの答え:1件
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すごい とても感動!
前世で地震によって別れてしまった恋人が、
実は生まれ変わり今の彼女となっていた…
「僕」が名前を思い出すと
「ありがとう、豊さん」
と微笑むみや子。
このシーンでとても感動した。
みや子にも前世の記憶があったが
「僕」が気づいてくれるまで胸の中に想いを潜めていて、
気づいてもらえたことで彼女の想いが
伝わって本当に良かったと思う。
ケーキさん(東京・15さい)からの答え
とうこう日:2023年11月29日
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