弟が魔王をたおしてしまいました。
初投稿。
ピロンッ。学校帰り、電車の中で母からラインがきた。
「ごめん」
「帰りおそくなる」
「あっくんのお迎えお願い」
了解、とスタンプを送っておく。
あっくん、とは俺の弟のアツシのことだ。アツシはまだ保育園なので、お迎えをしなければならない。
保育園は駅から5分のところにある。
「アツシ、お兄ちゃんだぞ」
そう声をかけると、アツシはすぐに出て来た。
「ママは?」
「遅くなるって」
短く答えて保育園を後にする。いつもの近道に入ったところだった。
ヴンッ…
小さい音がして、足元に不思議なもようが広がった。
「なん」
なんだこれ、と言い終わるまでもなく、俺は気を失った。
***
「……さま、勇者様!」
「うわっ」
目の前に女の人の顔があった。
驚いて飛び起きると、あたりは見知らぬ大きな部屋のような場所だった。
「ここは……」
「お願いです、我が国を助けてください!」
女の人が必死に頼んできた。
「助けるって?」
「この世界をおびやかす魔王(まおう)からです!」
「魔王?」
「魔王は、この世界をほろぼそうとしているのです。だからあなた方をしょうかんしました」
「俺たちに関係がない、って言ったら?」
「この世界は、あなた方の世界のパラレルワールドです。だから、この世界がほろべば、あなた方の世界もほろぶのです。それに、魔王をたおしてくれれば、あなた方も元の世界に帰れるのですよ」
「そうなのか。でも、俺たちに魔王なんて倒せるわけがない。ただの子供だし」
「あなた方には勇者の力があるのです」
「勇者の力?」
すると女の人はある方向を指差した。台座がある。
「勇者の剣がささっています。魔王にはききますが、ふつうの人は当たってもいたいなーと思うだけです。ここの人はどんなに力持ちでもぬけませんが、あなた方異世界の人ならぬけるのです」
その時、ずっとたおれていたアツシが、目を覚ました。
「んー、ここどこ? あ、かっこいい剣だ!」
アツシはだれも止めないうちに、剣のところまで走っていって、うんしょ、と剣をぬいた。
「とったどー!」
俺はその剣を見て、思わず。
「は?」
と言った。
その剣には、どうみてもビニールでできたニセモノだった。あまつさえ『ㄝい什そ・え>よカいぱー』と書いてある。
「せいけんえくすかりばーだ!」
「いや、読めねーよ! ていうかそんなので戦えるか!」
「戦えます」
「え?」
女の人が説明する。
「あれの形は、持ち主に一番あった形にかわるのです。そしてどんな形でも、魔王へのききめはかわりません」
「そうかよ……」
ツッコむ気力もなくした。
「で、魔王はどこにいるんだ?」
「北の山の向こう側のおしろです。トンネルがこわされていないので、電車が使えますよ」
いろいろとおかしい。
「北の山への行き方は、まず〇〇線にのって、××駅でのりかえて……」
俺は道順をがんばっておぼえた。女の人は1番近くの駅まで見送りにきた。
「では、行ってらっしゃい〜!」
「いってきまーす」
アツシがニコニコしながら手をふった。
***
「当駅で終点となります。ここからの駅は使えません」
車内アナウンスが響いた。多分この先はあらされてしまっているのだろう。
「アツシ、歩こう」
「うん!」
すなおにうなずいてくれてよかった。俺たちは電車をおりると、アツシが急に走りはじめた。
「走るとあぶないぞ。それに、つかれちゃうだろ」
「ううん、ぜんぜんつかれない!」
まさか、と思いながら走ってみると、いつもとちがって体が軽かった。
俺はアツシをおんぶして走った。
「お兄ちゃんはやーい!」
みるみるおしろが近づいてくる。おしろのまわりには、水がたまった堀(ほり)があった。俺はぴょん、と飛びこそうとした。そうしたら、飛びすぎておしろのへいをこえて、かべをぶちぬいて大広間に飛びこんでしまった。
「いたた……」
「たのしかった!」
思ったよりはいたくない。
すると、目の前に何かいた。魔王なのかな。
「何ものだ!?」
「勇者のアツシでーす!」
「我は魔王。勇者、お前の命もここまでだ」
魔王はアツシにさわった。アツシはふしぎそうな顔をするだけだ。
「ばかな、まりょくが吸いとれないだと?」
「えい」
「ぐわあああっ」
魔王は何かおどろいていたが、アツシが剣を当てると光になって消えた。
その光が俺たちをつつむ。
「どうやら、帰れるみたいだな」
「楽しい冒険だったねー!」
「俺はおどろいたりツッコんだりしただけだけどな」
気づくともとの場所だった。けっこう暗くなっている。母は何があったか信じないだろうな。 スパークさん(選択なし・17さい)からの相談
とうこう日:2023年11月2日みんなの答え:2件
ピロンッ。学校帰り、電車の中で母からラインがきた。
「ごめん」
「帰りおそくなる」
「あっくんのお迎えお願い」
了解、とスタンプを送っておく。
あっくん、とは俺の弟のアツシのことだ。アツシはまだ保育園なので、お迎えをしなければならない。
保育園は駅から5分のところにある。
「アツシ、お兄ちゃんだぞ」
そう声をかけると、アツシはすぐに出て来た。
「ママは?」
「遅くなるって」
短く答えて保育園を後にする。いつもの近道に入ったところだった。
ヴンッ…
小さい音がして、足元に不思議なもようが広がった。
「なん」
なんだこれ、と言い終わるまでもなく、俺は気を失った。
***
「……さま、勇者様!」
「うわっ」
目の前に女の人の顔があった。
驚いて飛び起きると、あたりは見知らぬ大きな部屋のような場所だった。
「ここは……」
「お願いです、我が国を助けてください!」
女の人が必死に頼んできた。
「助けるって?」
「この世界をおびやかす魔王(まおう)からです!」
「魔王?」
「魔王は、この世界をほろぼそうとしているのです。だからあなた方をしょうかんしました」
「俺たちに関係がない、って言ったら?」
「この世界は、あなた方の世界のパラレルワールドです。だから、この世界がほろべば、あなた方の世界もほろぶのです。それに、魔王をたおしてくれれば、あなた方も元の世界に帰れるのですよ」
「そうなのか。でも、俺たちに魔王なんて倒せるわけがない。ただの子供だし」
「あなた方には勇者の力があるのです」
「勇者の力?」
すると女の人はある方向を指差した。台座がある。
「勇者の剣がささっています。魔王にはききますが、ふつうの人は当たってもいたいなーと思うだけです。ここの人はどんなに力持ちでもぬけませんが、あなた方異世界の人ならぬけるのです」
その時、ずっとたおれていたアツシが、目を覚ました。
「んー、ここどこ? あ、かっこいい剣だ!」
アツシはだれも止めないうちに、剣のところまで走っていって、うんしょ、と剣をぬいた。
「とったどー!」
俺はその剣を見て、思わず。
「は?」
と言った。
その剣には、どうみてもビニールでできたニセモノだった。あまつさえ『ㄝい什そ・え>よカいぱー』と書いてある。
「せいけんえくすかりばーだ!」
「いや、読めねーよ! ていうかそんなので戦えるか!」
「戦えます」
「え?」
女の人が説明する。
「あれの形は、持ち主に一番あった形にかわるのです。そしてどんな形でも、魔王へのききめはかわりません」
「そうかよ……」
ツッコむ気力もなくした。
「で、魔王はどこにいるんだ?」
「北の山の向こう側のおしろです。トンネルがこわされていないので、電車が使えますよ」
いろいろとおかしい。
「北の山への行き方は、まず〇〇線にのって、××駅でのりかえて……」
俺は道順をがんばっておぼえた。女の人は1番近くの駅まで見送りにきた。
「では、行ってらっしゃい〜!」
「いってきまーす」
アツシがニコニコしながら手をふった。
***
「当駅で終点となります。ここからの駅は使えません」
車内アナウンスが響いた。多分この先はあらされてしまっているのだろう。
「アツシ、歩こう」
「うん!」
すなおにうなずいてくれてよかった。俺たちは電車をおりると、アツシが急に走りはじめた。
「走るとあぶないぞ。それに、つかれちゃうだろ」
「ううん、ぜんぜんつかれない!」
まさか、と思いながら走ってみると、いつもとちがって体が軽かった。
俺はアツシをおんぶして走った。
「お兄ちゃんはやーい!」
みるみるおしろが近づいてくる。おしろのまわりには、水がたまった堀(ほり)があった。俺はぴょん、と飛びこそうとした。そうしたら、飛びすぎておしろのへいをこえて、かべをぶちぬいて大広間に飛びこんでしまった。
「いたた……」
「たのしかった!」
思ったよりはいたくない。
すると、目の前に何かいた。魔王なのかな。
「何ものだ!?」
「勇者のアツシでーす!」
「我は魔王。勇者、お前の命もここまでだ」
魔王はアツシにさわった。アツシはふしぎそうな顔をするだけだ。
「ばかな、まりょくが吸いとれないだと?」
「えい」
「ぐわあああっ」
魔王は何かおどろいていたが、アツシが剣を当てると光になって消えた。
その光が俺たちをつつむ。
「どうやら、帰れるみたいだな」
「楽しい冒険だったねー!」
「俺はおどろいたりツッコんだりしただけだけどな」
気づくともとの場所だった。けっこう暗くなっている。母は何があったか信じないだろうな。 スパークさん(選択なし・17さい)からの相談
とうこう日:2023年11月2日みんなの答え:2件
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良いね! こんにちは!パン粉です。
こういうギャグのノリ、大好きです!
スパークさんの他の話も、もしあったら読んでみたいです!
面白い物語をありがとうございます! キッチンに散ったパン粉さん(選択なし・16さい)からの答え
とうこう日:2024年1月23日 -
Wow ゑっ?このコンビも世界観も好きです…ありゃます…m(_ _)m 〆鯖さん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2024年1月11日
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