時間感覚
「よお!うわあ、老けたなあ?」
「……は、」
勝手に少し開けていた窓から体を挟みつつ入れろーと呑気な声をあげた男は、不法侵入以外の何者でもないのだが、懐かしい、旧知の中、一言では表せない存在だった。
誰が老けただ、これでもまだ三十手前だ、お前と前に会ったのが十代の頃だから、必然的にそう思えるだけだろうが!まるで昔の自分と目の前の男の距離感の様な言葉の数々が瞬時に脳裏に浮かぶ、いや、違う。そんなこと真っ先に思い付く事自体間違ってる、熟調子を狂わされるのだ。手元のティーカップとソーサーを落として割らなかった自分の事を今とても賞賛したくなった、なんて。
「貴様、どこほっつき歩いてんだ。まだ旅とやらの途中なのか?」
「そうそう、よくお分かりで。久々、つーか
数年越し?ここ寄ったからさ。挨拶くらいはしとこうかなって」
そうやって勝手に相向かいに座り込み、勝手にテーブルの茶菓子の包みを開けて口は運び、これうめえな!と屈託のない笑みを浮かべる様は全く変わってない。言いたいことも、あり得ないくらいあるのに__何だか何も言葉が出なくて、飲み込んでしまって、ただ此奴が目の前にいるという事実に淡々と順応してしまった自分が怖い。
目の前の男は、はっきり言って仕舞えば人じゃなかった、まだ俺自身が学生だった頃、人ならざるものに取り憑かれ、それを受け入れ人の形をした化け物になった。だからなのか、こうして目の前で茶菓子を頬張る姿は学生の頃から成長も止まってるみたいで何一つ変わらないし、その人ならざるものと長い長い旅をしてるという事だけは知っていた。もう一生会わず仕舞いかと思ったのに、こうも数年越しに飄々と姿を現されても、何故だか当たり前の様に受け入れてしまうから、此奴には人間離れした何かがあるのだなあ、と昔から思ってはいたが再三解らされる。いや、確かに人間でないけれど
「みんな元気にしてるか?なんかさーほら、毎日が新しい事だらけで、楽しくて。時間感覚なんてとうに失っちまった」
学生の頃と変わらない、昔からその宝石みたく煌めく瞳はずっと遠い彼方を見据えていて、何を見ているのかさっぱり理解もできなかったが、今に通じてるじゃないか。
そうやってまた二つ目の茶菓子の包みに手を伸ばしながら放つ言葉が、もう既にヒトなんかじゃない、自分が知らない存在になってしまった事がやけに分からされたようで、居た堪れなくてなんだか肩を竦めつつ、ぼちぼちだと曖昧な返事を返すので精一杯だった。そこから他愛もない雑談をして、また来るよ、と変わらぬ能天気な言葉だけを返してあいつは当たり前の様に去っていった。青天の霹靂、まさに一瞬の様な出来事だったが、もっといってやりたいことも、なにもかもが沢山、溢れるくらいあるのに。ただその軽い口約束を手を振って見送ってしまうしか、できなかった。
________________________
「あれ、おっかしいな…ここであってる筈なんだけど」
くしゃっとした茶髪をかき、古びれた地図を片手に、10代くらいの容姿を持つ若い男は困った顔で辺りを見渡していた。職業は旅人。他の者には姿が見えないけれど、その後ろには確かに人とは呼べない、化け物ともいえる存在が確かに背後に取り憑いていて。地図をずいっ、と覗き込んでいる。
『キミ、さっきから何を探してるんだい?』
「あいつの家だよ!なんかすごい地形とか色々変わってね?数年の間にそんなに大きな改修工事とかしたのかな」
あいつの家、ここらにある筈なのに見つからないんだよ、引っ越したのかな?そう呟けば、自身に取り憑いている。人ならざる化け物は少し驚いた様に声を漏らす。
『キミ、何を言ってるんだい。あれから200年も経ってるんだ。流石のあいつでも人間なんだから、生きのびれるじゃないだろう』
「へ」
200年、その言葉が未だ信じられなくて、ただ瞳をぱちくりと瞬きする他なかった。数年の事だと思ってた、毎日が知らない事だらけで、ありえないくらいの発見と、知らない事だらけの美しい世界をこの足で踏み、一生この命を終える事ができない自分の体が楽しくて、仕方がなくて、毎日毎日!
その男のあどけなさを残す顔は初めて歪んで、憑き物は心配そうに此方を覗き込んでくる。
「じゃあ、アイツはもうとっくに?」
その若い男の双眸、宝石のやうな煌めきを秘めた瞳が、初めて濁りを見せた。また来るよ
。まるで昨日言った事の様に思えた自分の言葉が脳裏に反芻する、そしてただ呆然と、無意識のうちに ごめん と言葉が出ていた。無論、その言葉は誰に伝わる訳もなく、ただ虚空に消えていった。 はつかさん(静岡・14さい)からの相談
とうこう日:2023年12月14日みんなの答え:1件
「……は、」
勝手に少し開けていた窓から体を挟みつつ入れろーと呑気な声をあげた男は、不法侵入以外の何者でもないのだが、懐かしい、旧知の中、一言では表せない存在だった。
誰が老けただ、これでもまだ三十手前だ、お前と前に会ったのが十代の頃だから、必然的にそう思えるだけだろうが!まるで昔の自分と目の前の男の距離感の様な言葉の数々が瞬時に脳裏に浮かぶ、いや、違う。そんなこと真っ先に思い付く事自体間違ってる、熟調子を狂わされるのだ。手元のティーカップとソーサーを落として割らなかった自分の事を今とても賞賛したくなった、なんて。
「貴様、どこほっつき歩いてんだ。まだ旅とやらの途中なのか?」
「そうそう、よくお分かりで。久々、つーか
数年越し?ここ寄ったからさ。挨拶くらいはしとこうかなって」
そうやって勝手に相向かいに座り込み、勝手にテーブルの茶菓子の包みを開けて口は運び、これうめえな!と屈託のない笑みを浮かべる様は全く変わってない。言いたいことも、あり得ないくらいあるのに__何だか何も言葉が出なくて、飲み込んでしまって、ただ此奴が目の前にいるという事実に淡々と順応してしまった自分が怖い。
目の前の男は、はっきり言って仕舞えば人じゃなかった、まだ俺自身が学生だった頃、人ならざるものに取り憑かれ、それを受け入れ人の形をした化け物になった。だからなのか、こうして目の前で茶菓子を頬張る姿は学生の頃から成長も止まってるみたいで何一つ変わらないし、その人ならざるものと長い長い旅をしてるという事だけは知っていた。もう一生会わず仕舞いかと思ったのに、こうも数年越しに飄々と姿を現されても、何故だか当たり前の様に受け入れてしまうから、此奴には人間離れした何かがあるのだなあ、と昔から思ってはいたが再三解らされる。いや、確かに人間でないけれど
「みんな元気にしてるか?なんかさーほら、毎日が新しい事だらけで、楽しくて。時間感覚なんてとうに失っちまった」
学生の頃と変わらない、昔からその宝石みたく煌めく瞳はずっと遠い彼方を見据えていて、何を見ているのかさっぱり理解もできなかったが、今に通じてるじゃないか。
そうやってまた二つ目の茶菓子の包みに手を伸ばしながら放つ言葉が、もう既にヒトなんかじゃない、自分が知らない存在になってしまった事がやけに分からされたようで、居た堪れなくてなんだか肩を竦めつつ、ぼちぼちだと曖昧な返事を返すので精一杯だった。そこから他愛もない雑談をして、また来るよ、と変わらぬ能天気な言葉だけを返してあいつは当たり前の様に去っていった。青天の霹靂、まさに一瞬の様な出来事だったが、もっといってやりたいことも、なにもかもが沢山、溢れるくらいあるのに。ただその軽い口約束を手を振って見送ってしまうしか、できなかった。
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「あれ、おっかしいな…ここであってる筈なんだけど」
くしゃっとした茶髪をかき、古びれた地図を片手に、10代くらいの容姿を持つ若い男は困った顔で辺りを見渡していた。職業は旅人。他の者には姿が見えないけれど、その後ろには確かに人とは呼べない、化け物ともいえる存在が確かに背後に取り憑いていて。地図をずいっ、と覗き込んでいる。
『キミ、さっきから何を探してるんだい?』
「あいつの家だよ!なんかすごい地形とか色々変わってね?数年の間にそんなに大きな改修工事とかしたのかな」
あいつの家、ここらにある筈なのに見つからないんだよ、引っ越したのかな?そう呟けば、自身に取り憑いている。人ならざる化け物は少し驚いた様に声を漏らす。
『キミ、何を言ってるんだい。あれから200年も経ってるんだ。流石のあいつでも人間なんだから、生きのびれるじゃないだろう』
「へ」
200年、その言葉が未だ信じられなくて、ただ瞳をぱちくりと瞬きする他なかった。数年の事だと思ってた、毎日が知らない事だらけで、ありえないくらいの発見と、知らない事だらけの美しい世界をこの足で踏み、一生この命を終える事ができない自分の体が楽しくて、仕方がなくて、毎日毎日!
その男のあどけなさを残す顔は初めて歪んで、憑き物は心配そうに此方を覗き込んでくる。
「じゃあ、アイツはもうとっくに?」
その若い男の双眸、宝石のやうな煌めきを秘めた瞳が、初めて濁りを見せた。また来るよ
。まるで昨日言った事の様に思えた自分の言葉が脳裏に反芻する、そしてただ呆然と、無意識のうちに ごめん と言葉が出ていた。無論、その言葉は誰に伝わる訳もなく、ただ虚空に消えていった。 はつかさん(静岡・14さい)からの相談
とうこう日:2023年12月14日みんなの答え:1件
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めちゃくちゃすごい.'.' こんにちゎだょぉ(^^♪
ミーハーな甘党だょぉ(≧▽≦)
ミーちゃんって呼んでほしいなぁ(∀`*ゞ)エヘヘ
( `・∀・´)ノヨロシク
〇。**Start**。◯
めちゃくちゃ上手.'.'
語彙力ありすぎ.'.'
リアリティがある
会話だね.'
はつかさん‥‥天才?
またはつかさんの
短編小説
読みたいな~.'.'
〇。**Goodby**。◯ ミーハーな甘党さん(埼玉・11さい)からの答え
とうこう日:2024年2月25日
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