何も無い私と正反対なあの人と
私は美術部の2年生
中学に進学してからずっと美術部にいる…のに
何一ついい作品が作れない想像出来ない
『ゆっくり自分のペースで』なんてもう何回も自分の中で唱えた聞き飽きた
それに比べて、と部長の翔(かける)を見る
いつも周りに誰かいて、絵も上手で…
考えれば考えれるほどに…羨ましくて羨ましくて…憎い
―今日も残って絵を描かないと、次のコンクールに間に合うように
何回も線を描いて消して、キャンバスに手を伸ばしては俯いて
ああ、今になってようやく分かった
私は、この美術の世界に似合ってないんだ
もう筆は握らない
絵の具だらけの手を見て不快感を感じる
『これだけやってもお前はこの程度なんだろ?』と言われた気がする
「うお!?まーだ残ってたの」
教室の入口には翔がいた…なんで
「あー…筆がカバンに入ってて戻しにきたんだ、学校の筆だからな」
…いまは翔と私だけ、いい状況
「あのー、私…退部するね」
「え?なんでよ、いつも絵熱心に描いてたのにさ」
私の中の何かが切れた…
「そんなこと言ったって!私は駄目なんだ!どんなに頑張ったって!どんなに…どんなに努力してもこれっぽちも報われない…もう嫌なんだ…私と翔を比べるの」
翔は私が怒鳴ったのに驚いてたけどすぐにいつもの表情になった
それを見てまたイラッとする
翔が2つのキャンバスを持ってきた
絵で埋め尽くされたキャンバスとまっさらなキャンバス
「お前からみた俺は絵が描かれたキャンバスでお前からみた自分がまっさらなキャンバスなんだろ?」
「…そうだけど、それがなに」
「どっちのが凄いと思う?」
「決まってる、絵が描かれてる方…翔のが凄いよ、誰でもそう言う」
「じゃあよ、どっちのほうが絵を描くスペースがある」
「それは…まっさらな方」
「だろ?確かに俺は、お前から見たら凄いんだろうけど…俺はお前が羨ましかったんだ」
「…え?」
「何も無い?違う…可能性が無限大なんだ」
「俺は…自分の可能性に限界を感じてた…絵も描くのが苦しくなってた…周りの期待が重くてな」
翔がそんな事思ってるなんて…
「けど、お前はいつも熱心に絵を描いてた…何度も何度も…それが出来るお前が羨ましくて羨ましくて…憎かった」
―この言葉に何故か親近感を感じたのは多分気の所為では無い
「こんなくだらない事いってるけど…そのくらいにお前には美術部にいて欲しいんだ…頼むよ」
私の中の何かが弾けた
淀んで見えてた教室が…空が…輝いてた
…こんなに、誰かの声が透き通って聞こえるなんて知らなかった
…こんなに、誰かに期待されてるなんて思っても見なかった
今までの苦しさがよぎって消えた
絵の具だらけの手が美しく見えた
世界が変わった
もう一度…絵を描いてみたい…きっと凄い絵を描いてみせる
「ありがとう、翔…私まだ…頑張ってみるよ」
…涙が止まらない
「わーあ、泣くな泣くな、俺が泣かせたみたいじゃんかよ」
声は焦ってるけど表情は柔らかかった
胸の鼓動がいつもよりうるさい
翔が側にいるならどんな絵だって描ける気さえした
黄昏時の教室で二人で過ごした、私には眩しすぎる思い出
canさん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2024年1月28日みんなの答え:1件
中学に進学してからずっと美術部にいる…のに
何一ついい作品が作れない想像出来ない
『ゆっくり自分のペースで』なんてもう何回も自分の中で唱えた聞き飽きた
それに比べて、と部長の翔(かける)を見る
いつも周りに誰かいて、絵も上手で…
考えれば考えれるほどに…羨ましくて羨ましくて…憎い
―今日も残って絵を描かないと、次のコンクールに間に合うように
何回も線を描いて消して、キャンバスに手を伸ばしては俯いて
ああ、今になってようやく分かった
私は、この美術の世界に似合ってないんだ
もう筆は握らない
絵の具だらけの手を見て不快感を感じる
『これだけやってもお前はこの程度なんだろ?』と言われた気がする
「うお!?まーだ残ってたの」
教室の入口には翔がいた…なんで
「あー…筆がカバンに入ってて戻しにきたんだ、学校の筆だからな」
…いまは翔と私だけ、いい状況
「あのー、私…退部するね」
「え?なんでよ、いつも絵熱心に描いてたのにさ」
私の中の何かが切れた…
「そんなこと言ったって!私は駄目なんだ!どんなに頑張ったって!どんなに…どんなに努力してもこれっぽちも報われない…もう嫌なんだ…私と翔を比べるの」
翔は私が怒鳴ったのに驚いてたけどすぐにいつもの表情になった
それを見てまたイラッとする
翔が2つのキャンバスを持ってきた
絵で埋め尽くされたキャンバスとまっさらなキャンバス
「お前からみた俺は絵が描かれたキャンバスでお前からみた自分がまっさらなキャンバスなんだろ?」
「…そうだけど、それがなに」
「どっちのが凄いと思う?」
「決まってる、絵が描かれてる方…翔のが凄いよ、誰でもそう言う」
「じゃあよ、どっちのほうが絵を描くスペースがある」
「それは…まっさらな方」
「だろ?確かに俺は、お前から見たら凄いんだろうけど…俺はお前が羨ましかったんだ」
「…え?」
「何も無い?違う…可能性が無限大なんだ」
「俺は…自分の可能性に限界を感じてた…絵も描くのが苦しくなってた…周りの期待が重くてな」
翔がそんな事思ってるなんて…
「けど、お前はいつも熱心に絵を描いてた…何度も何度も…それが出来るお前が羨ましくて羨ましくて…憎かった」
―この言葉に何故か親近感を感じたのは多分気の所為では無い
「こんなくだらない事いってるけど…そのくらいにお前には美術部にいて欲しいんだ…頼むよ」
私の中の何かが弾けた
淀んで見えてた教室が…空が…輝いてた
…こんなに、誰かの声が透き通って聞こえるなんて知らなかった
…こんなに、誰かに期待されてるなんて思っても見なかった
今までの苦しさがよぎって消えた
絵の具だらけの手が美しく見えた
世界が変わった
もう一度…絵を描いてみたい…きっと凄い絵を描いてみせる
「ありがとう、翔…私まだ…頑張ってみるよ」
…涙が止まらない
「わーあ、泣くな泣くな、俺が泣かせたみたいじゃんかよ」
声は焦ってるけど表情は柔らかかった
胸の鼓動がいつもよりうるさい
翔が側にいるならどんな絵だって描ける気さえした
黄昏時の教室で二人で過ごした、私には眩しすぎる思い出
canさん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2024年1月28日みんなの答え:1件
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感動! おはにちばんわ!花火君だよ!
本題
とても素敵です!「何も無い?違う、可能性が無限大」というところで感動しました!ありがとうございました! 花火君(元レインボー君)さん(神奈川・11さい)からの答え
とうこう日:2024年4月1日
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