君に、空色の紙飛行機を。
私の日課。紙飛行機を折って飛ばす。
どこへ向けてでもなく、ただ飛ばす。
ちょっと変わってるよね。
でも、大切なこと。
空色の紙飛行機を、私は飛ばす。
【君に、空色の紙飛行機を。】
「っ…………」
目を覚ました。
時計に目をやると5時。まだ早い。
ベットに潜り込み、人肌に温まった布団を頭から被る。
………眠れぬ。仕方がない、起きよう。
意を決して温かい布団から出る。さよなら……あったかい布団……。
クローゼットを開け、中学の制服を取り出し、それに着替える。
教科書、ノート、ワーク、ペンケース、ジャージ……。荷物の確認もついでにする。いつも忘れ物が多い私はこれくらいの時間に起きるのがいいらしい。だが夜型、おまけに冬でもないのに布団にしがみつく私には向いていない。
「あ……、いい天気」
ずっと開けていなかったカーテンと窓を開ける。爽やかな空気が部屋に充満する。梅雨特有の空気が薄れ、だいぶ晴れ晴れとしている。ただ、夜に少しが雨が降ったようで、庭の植物は少し濡れている。ただ、晴れてくれたおかげで朝日に反射して、まるで小粒の宝石のように輝いている。
「よし、やろう」
私は机の引き出しから、グラデーションが綺麗な紙を一枚取り出した。
「あら、今日は随分と早起きね」
「ん、なんか早く目が覚めた」
6時ごろ、私は1階のリビングへと降りる。カーテンと窓は全て開け放たれ、洗濯物が気持ちよさそうに風に揺れている。
朝は忙しい。それでも、こういったことは忘れない。流石に冬はカーテンだけだけどね。
顔を洗い、髪をすく。
「凜風、あなたまた紙飛行機飛ばしたでしょ。いい加減やめなさい。ご近所さんに迷惑でしょ」
……耳が痛い話だ。
「別に、何しようが私の勝手だ」
「それとこれとは話が別。人様に迷惑をかけるようなことはやめてちょうだい」
はあ。
*
「あれ、海野さん。なんか今日来るの早くない?」
「うっさい。私だって早く目が覚める時くらいあるわ!」
「でも珍しいねえ。だいぶ寝坊するって話もよく聞くけどなあ?」
からんじゃダメなの忘れてた……、この粘着質!!
粘着な女こと皆藤美月。私が苦手なやつ……。
「それに、また紙飛行機を飛ばしてたった聞いたけど……、いい加減やめたらぁ?あ、無理か」
バカにしたような口調で言う。
今日は最悪だ。
「みーづっきちゃん。おはよー!」
げ、篠宮も………。
「あ、綾ちゃん聞いてよ。海野さんまた紙飛行機飛ばしたんだって」
「だっさ、近所迷惑すぎでしょ」
「やめたらいいのに」
…………ほんとに最悪だ
*
私が毎日することは、紙飛行機を飛ばすこと。
近所迷惑だって言うなら、誰もいないところでやればいい。
私は裏山へ登った。おそらく風本町で1番空に近い山。
私は、いつもの空色のグラデーションの紙を取る。いつもだったら何も書かないけど、せっかくここに来たんだと思い、ペンを執る。
【拝啓、遥歩。
遥歩が空に行ってから、もう1年が経ちました。元気でやってる?
空からは、どんな景色なの?私がそっちに行った時に、とびっきりの景色を見せてよ。私も最高の土産話持ってくからさ。
私は、遥歩とはずっと一緒にいれると思ってた。それなのに、私を置いてさ。
ま、バツとして、私はしぶとく生きて遥歩をたっくさん待たせてやるよ。
それでも、私のことは絶対に忘れないで。
忘れたら、承知しねえからな!!
海野 凜風】
ぽた、ぽたと丸いしみが紙に落ちる。生暖かい液体が頬を伝って、どんどんしみを落とす。
それを一気にふき、私は神飛行機を飛ばした。
*
空の世界。
人間界で、空に来たものが集う場所。
そこには毎日、空色の紙飛行機が飛ばされてきていた。
空の世界の者は、それをただ静観していた。いつものことだったのだ。
その紙飛行機の山をひとつずつ、大切そうに取る1人の少女がいた。
1年前にこの世界に来た、風原遥歩という名の少女だ。
その少女の親友は、友達思いの子だったらしく、毎日紙飛行機を送っていた。
遥歩は、ひとつの紙飛行機を手に開き、それを開く。
しばらくして、彼女は泣いた
ああ、こういうふうに泣くんだ。この子だって泣くんだな、と当たり前の感想を抱く。
でも、泣いていた顔は、少しばかり嬉しそうだった。輝いていた。
空の世界にいても。親友が傍にいなくとも。
あんなに笑っていられるのだと知った。
FIN.
[登場人物]
・海野 凜風・・・うみの りふ。毎日紙飛行機を飛ばす少女。中学生。
・風原 遥歩・・・かざはら あゆむ。凜風の親友。12歳。 秋葉+あきは+さん(静岡・12さい)からの相談
とうこう日:2024年5月9日みんなの答え:2件
どこへ向けてでもなく、ただ飛ばす。
ちょっと変わってるよね。
でも、大切なこと。
空色の紙飛行機を、私は飛ばす。
【君に、空色の紙飛行機を。】
「っ…………」
目を覚ました。
時計に目をやると5時。まだ早い。
ベットに潜り込み、人肌に温まった布団を頭から被る。
………眠れぬ。仕方がない、起きよう。
意を決して温かい布団から出る。さよなら……あったかい布団……。
クローゼットを開け、中学の制服を取り出し、それに着替える。
教科書、ノート、ワーク、ペンケース、ジャージ……。荷物の確認もついでにする。いつも忘れ物が多い私はこれくらいの時間に起きるのがいいらしい。だが夜型、おまけに冬でもないのに布団にしがみつく私には向いていない。
「あ……、いい天気」
ずっと開けていなかったカーテンと窓を開ける。爽やかな空気が部屋に充満する。梅雨特有の空気が薄れ、だいぶ晴れ晴れとしている。ただ、夜に少しが雨が降ったようで、庭の植物は少し濡れている。ただ、晴れてくれたおかげで朝日に反射して、まるで小粒の宝石のように輝いている。
「よし、やろう」
私は机の引き出しから、グラデーションが綺麗な紙を一枚取り出した。
「あら、今日は随分と早起きね」
「ん、なんか早く目が覚めた」
6時ごろ、私は1階のリビングへと降りる。カーテンと窓は全て開け放たれ、洗濯物が気持ちよさそうに風に揺れている。
朝は忙しい。それでも、こういったことは忘れない。流石に冬はカーテンだけだけどね。
顔を洗い、髪をすく。
「凜風、あなたまた紙飛行機飛ばしたでしょ。いい加減やめなさい。ご近所さんに迷惑でしょ」
……耳が痛い話だ。
「別に、何しようが私の勝手だ」
「それとこれとは話が別。人様に迷惑をかけるようなことはやめてちょうだい」
はあ。
*
「あれ、海野さん。なんか今日来るの早くない?」
「うっさい。私だって早く目が覚める時くらいあるわ!」
「でも珍しいねえ。だいぶ寝坊するって話もよく聞くけどなあ?」
からんじゃダメなの忘れてた……、この粘着質!!
粘着な女こと皆藤美月。私が苦手なやつ……。
「それに、また紙飛行機を飛ばしてたった聞いたけど……、いい加減やめたらぁ?あ、無理か」
バカにしたような口調で言う。
今日は最悪だ。
「みーづっきちゃん。おはよー!」
げ、篠宮も………。
「あ、綾ちゃん聞いてよ。海野さんまた紙飛行機飛ばしたんだって」
「だっさ、近所迷惑すぎでしょ」
「やめたらいいのに」
…………ほんとに最悪だ
*
私が毎日することは、紙飛行機を飛ばすこと。
近所迷惑だって言うなら、誰もいないところでやればいい。
私は裏山へ登った。おそらく風本町で1番空に近い山。
私は、いつもの空色のグラデーションの紙を取る。いつもだったら何も書かないけど、せっかくここに来たんだと思い、ペンを執る。
【拝啓、遥歩。
遥歩が空に行ってから、もう1年が経ちました。元気でやってる?
空からは、どんな景色なの?私がそっちに行った時に、とびっきりの景色を見せてよ。私も最高の土産話持ってくからさ。
私は、遥歩とはずっと一緒にいれると思ってた。それなのに、私を置いてさ。
ま、バツとして、私はしぶとく生きて遥歩をたっくさん待たせてやるよ。
それでも、私のことは絶対に忘れないで。
忘れたら、承知しねえからな!!
海野 凜風】
ぽた、ぽたと丸いしみが紙に落ちる。生暖かい液体が頬を伝って、どんどんしみを落とす。
それを一気にふき、私は神飛行機を飛ばした。
*
空の世界。
人間界で、空に来たものが集う場所。
そこには毎日、空色の紙飛行機が飛ばされてきていた。
空の世界の者は、それをただ静観していた。いつものことだったのだ。
その紙飛行機の山をひとつずつ、大切そうに取る1人の少女がいた。
1年前にこの世界に来た、風原遥歩という名の少女だ。
その少女の親友は、友達思いの子だったらしく、毎日紙飛行機を送っていた。
遥歩は、ひとつの紙飛行機を手に開き、それを開く。
しばらくして、彼女は泣いた
ああ、こういうふうに泣くんだ。この子だって泣くんだな、と当たり前の感想を抱く。
でも、泣いていた顔は、少しばかり嬉しそうだった。輝いていた。
空の世界にいても。親友が傍にいなくとも。
あんなに笑っていられるのだと知った。
FIN.
[登場人物]
・海野 凜風・・・うみの りふ。毎日紙飛行機を飛ばす少女。中学生。
・風原 遥歩・・・かざはら あゆむ。凜風の親友。12歳。 秋葉+あきは+さん(静岡・12さい)からの相談
とうこう日:2024年5月9日みんなの答え:2件
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言葉が出ないほどすごい、、、 こんちは(・・♪Yunです!
、、、すっっっげぇ
神作だぁ、、
めちゃくちゃ感動した、、!!
発想力も文章力もすごい、、、!
凜風も遥歩もいい子だ、、!
二人とも大好き!
もう言葉が出ない!言葉で表せない、、!
グッときた!
あとタイトルも素晴らしい!
タイトルからもう好き!
次回も楽しみ!頑張ってください!
ばいばい(‐O・♪)/ Yunさん(静岡・11さい)からの答え
とうこう日:2024年8月13日 -
すごすぎる、、、 ボキャブラリーがえぐい。読んでてめっちゃ感動。 あいすさん(東京・11さい)からの答え
とうこう日:2024年8月12日
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