タイショウノオトメ
年号は、大正となった。
鎖国という縛りが解け、近代国家を目指しゆく日本国民にとって、それは明治からの受け継ぎ。そして、大きな、正しいことを成し遂げる。そんな決意の表れの象徴である。
私は、その象徴そのもの。
かつて貴族と呼ばれ、平安時代には政治の主権を握るほどだった、華族。私はそこの生まれだ。
物心ついた頃の記憶はどれも変わり映えのないものばかり。
『京子お嬢様』『京子さま』『鶴岡様』『京子さん』
、、、いや、一人違った。
彼は、唯一、私のことを『京子』と呼んだ。
最初は、生意気なお子様だと思った。
私よりいくらか背が低く、微かに赤みがかった癖っ毛。目は、炎のように燃える、純赤。
キラキラしたその目を私に向け、彼は『きょぉこ』と言った。
それから、私たちはすぐ仲良くなった。
無論、続くわけがないと私は知りながら。
彼がするのは、いつも遠い国のことだった。日本国の海の向こう、大きく発達した国々。戦争が絶えぬ、争う国々。
そんな会話を、私はなんとなく聞き流していた。
気がつけば、彼は大人になっていた。
来年には、戦に行くことのなるそうだ。
彼が、私に話して聞かせた、海の向こう。
彼が、憧れ焦がれた、あの島々。
私は、彼が戦に行くとは思っていなかった。憧れの地で刀を振るわないと、、、。
「お国のため、敵地へ切り行ってくる」
悲しくて、悔しくて、どうしようもない。
彼からの立派な宣言が、言葉が。
どうしようもなく、否定したくなる。
それでも、私はその気持ちを彼に言わなかった。
いや、言えなかった、、、。
『鶴岡京子お嬢様』
頭に響く、言いつけ。
鶴岡家の娘として、華族の一族として、由緒正しき血として。
思わず、耳を塞ぐ。
鶴岡京子は、独りだった。
あぁ、彼は、どうしているのだろう。
僕は、、、。否、私は自室でこもっていた。
「京子、、、」
思わず、口に出す。
本当は、敵地などでは無い、憧れの土地。
明日、そこに敵として踏み込む。
だというのに、浮かぶのは、京子の顔ばかり。
「、、、言うべきなのかも知れない」
もしかすると、故郷にいられるのは、今日が最後かも知れない。
ならば、いいのではないか。
どちらにせよ、あの世行きなのだから。
彼が、突然尋ねてきた。
私が、どうしたのか、と問うより先に、彼が言葉を紡ぐ。
「ずっと、言えてなかったことがあった。言わなければいけないことが、、、」
とく、とく、と私の鼓動が確かに聞こえた。
何かを期待しているような、、、喜びのような。
そんな感情が無意識のうちに交差する。
「、、、言わなければ、いけないこと?」
「あぁ」
すぅ、と息をつき、彼は告げる。
「僕は、、、君を、監視していた」
唖然と、彼を見つめる。
まさか、そんなことを告げられるとは、思いもよらなかった。
かんし、と乾いた口で言う。
「、、、。命令で、君のような少女を対象に、監視をしろと。定めた決まりを守れぬのなら、、、銃で撃つと」
「な、なんで、、、。おかしくありません、、、?何故、私のような少女を対象に、、、」
「女、華族、10代。これが、当てはまる少女は、片っ端から、監視されている。目的は、、、。お国のためだ」
お国のため、それは便利な言葉で。
たった一言で終わらせられる、都合のいい言い訳言葉。
いずれ、何度も何度もこの国で使われ、いずれは国民達も使い始めるのだろう。
「お国、、、」
「すまない、本当に。もう、僕は、、、いずれ、あちらへ行くし、もう、話してしまおうと、、、」
あちら。
「、、、お国のため、私は責務を果たして参ります」
彼の一人称が、変わり。
そして、立場が変わる。
「さようなら、、、。京子お嬢様」
「、、、お国のため、お頼み申しますわ」
「はっ」
彼が、行ってしまう、、、。
それでも、私が彼を引き止めることは、ついぞなかった。
あれから、数日経つ。
彼がどうしているのかは、全く聞かない。
ただただ、悲しかった。
監視、戦、思い、、、。
あれから、数年経つ。
彼が消えた季節を思い返しては、浸る。
ただただ、哀しかった。
対象、戦、想い、、、。
あの時のことを、今でも想う。
彼を、想う。
そして、『お国のため』の意味を探す。
対象の乙女の監視は、続く、、、。
お初にお目にかかります、六道と申します♪( ´θ`)
将来の夢は小説家です!
ご指導、感想、アイデアありましたら、よろしくお願いしますm(_ _)m
たくさんのご意見待ってます!!! 六道さん(徳島・13さい)からの相談
とうこう日:2024年5月24日みんなの答え:3件
鎖国という縛りが解け、近代国家を目指しゆく日本国民にとって、それは明治からの受け継ぎ。そして、大きな、正しいことを成し遂げる。そんな決意の表れの象徴である。
私は、その象徴そのもの。
かつて貴族と呼ばれ、平安時代には政治の主権を握るほどだった、華族。私はそこの生まれだ。
物心ついた頃の記憶はどれも変わり映えのないものばかり。
『京子お嬢様』『京子さま』『鶴岡様』『京子さん』
、、、いや、一人違った。
彼は、唯一、私のことを『京子』と呼んだ。
最初は、生意気なお子様だと思った。
私よりいくらか背が低く、微かに赤みがかった癖っ毛。目は、炎のように燃える、純赤。
キラキラしたその目を私に向け、彼は『きょぉこ』と言った。
それから、私たちはすぐ仲良くなった。
無論、続くわけがないと私は知りながら。
彼がするのは、いつも遠い国のことだった。日本国の海の向こう、大きく発達した国々。戦争が絶えぬ、争う国々。
そんな会話を、私はなんとなく聞き流していた。
気がつけば、彼は大人になっていた。
来年には、戦に行くことのなるそうだ。
彼が、私に話して聞かせた、海の向こう。
彼が、憧れ焦がれた、あの島々。
私は、彼が戦に行くとは思っていなかった。憧れの地で刀を振るわないと、、、。
「お国のため、敵地へ切り行ってくる」
悲しくて、悔しくて、どうしようもない。
彼からの立派な宣言が、言葉が。
どうしようもなく、否定したくなる。
それでも、私はその気持ちを彼に言わなかった。
いや、言えなかった、、、。
『鶴岡京子お嬢様』
頭に響く、言いつけ。
鶴岡家の娘として、華族の一族として、由緒正しき血として。
思わず、耳を塞ぐ。
鶴岡京子は、独りだった。
あぁ、彼は、どうしているのだろう。
僕は、、、。否、私は自室でこもっていた。
「京子、、、」
思わず、口に出す。
本当は、敵地などでは無い、憧れの土地。
明日、そこに敵として踏み込む。
だというのに、浮かぶのは、京子の顔ばかり。
「、、、言うべきなのかも知れない」
もしかすると、故郷にいられるのは、今日が最後かも知れない。
ならば、いいのではないか。
どちらにせよ、あの世行きなのだから。
彼が、突然尋ねてきた。
私が、どうしたのか、と問うより先に、彼が言葉を紡ぐ。
「ずっと、言えてなかったことがあった。言わなければいけないことが、、、」
とく、とく、と私の鼓動が確かに聞こえた。
何かを期待しているような、、、喜びのような。
そんな感情が無意識のうちに交差する。
「、、、言わなければ、いけないこと?」
「あぁ」
すぅ、と息をつき、彼は告げる。
「僕は、、、君を、監視していた」
唖然と、彼を見つめる。
まさか、そんなことを告げられるとは、思いもよらなかった。
かんし、と乾いた口で言う。
「、、、。命令で、君のような少女を対象に、監視をしろと。定めた決まりを守れぬのなら、、、銃で撃つと」
「な、なんで、、、。おかしくありません、、、?何故、私のような少女を対象に、、、」
「女、華族、10代。これが、当てはまる少女は、片っ端から、監視されている。目的は、、、。お国のためだ」
お国のため、それは便利な言葉で。
たった一言で終わらせられる、都合のいい言い訳言葉。
いずれ、何度も何度もこの国で使われ、いずれは国民達も使い始めるのだろう。
「お国、、、」
「すまない、本当に。もう、僕は、、、いずれ、あちらへ行くし、もう、話してしまおうと、、、」
あちら。
「、、、お国のため、私は責務を果たして参ります」
彼の一人称が、変わり。
そして、立場が変わる。
「さようなら、、、。京子お嬢様」
「、、、お国のため、お頼み申しますわ」
「はっ」
彼が、行ってしまう、、、。
それでも、私が彼を引き止めることは、ついぞなかった。
あれから、数日経つ。
彼がどうしているのかは、全く聞かない。
ただただ、悲しかった。
監視、戦、思い、、、。
あれから、数年経つ。
彼が消えた季節を思い返しては、浸る。
ただただ、哀しかった。
対象、戦、想い、、、。
あの時のことを、今でも想う。
彼を、想う。
そして、『お国のため』の意味を探す。
対象の乙女の監視は、続く、、、。
お初にお目にかかります、六道と申します♪( ´θ`)
将来の夢は小説家です!
ご指導、感想、アイデアありましたら、よろしくお願いしますm(_ _)m
たくさんのご意見待ってます!!! 六道さん(徳島・13さい)からの相談
とうこう日:2024年5月24日みんなの答え:3件
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小説家さん…!? 物語の世界に読者をうまく連れ込むのがうますぎます…!
また、違う時代風景を表すのは難しいのに、
言葉遣いや時代ならではのものも完璧に文章に入れているところが
上手だし、面白い!!
次作も待ってます☆ 応援してます! しまえながさん(神奈川・12さい)からの答え
とうこう日:2024年8月28日 -
読んだ感想 こんにちは、徳島県民です!
たまたま年も住む県も同じだったので
興味本位で読んでみました。
登場人物の心情がしっかり書かれていて
とても読みやすかったです!セリフも
自然で分かりやすかったです!
個人的には、「、、、」を無くしたり
「ーー」にしても良いのかなと思いました。
てか13歳なのに文才ありすぎません?
小説家、六道さんなら絶対なれますよ!! 徳島県民さん(徳島・13さい)からの答え
とうこう日:2024年8月27日 -
天才 いや天才過ぎでびびった
短いラクガキみたいな小説書く私が恥ずかしい…
歴史とかキャラクターとか話の作りとか全てがプロの小説家並み…
これは将来有望ですね!陰から応援してます〜 ももグミさん(鹿児島・10さい)からの答え
とうこう日:2024年8月27日
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