【短編小説】幸せの形
眩しい…パチリと目を開く。
まだ少し眠たかったが無理矢理意識を浮上させる。
私の名前。小林あかね。18歳。
駄目だ。それ以外思い出せない。
私がどうしてここにいるのかも誰と住んでるのかもなにも思い出せない。
部屋を見回すと机に一枚の紙が置いてあるのを見つけた。
そこには私は病気で、一日たつと前の日のことを全て忘れてしまう病気にかかっていることが書かれていた。
この手紙の最後には自分の名前も書かれていた。文字も私の文字だし、これは本当に私が書いたものなのだろう。
そっか…私は病気なのか。
別に悲しくはなかった。
私はひとまず部屋からでて私の他にこの家に住んでる人はいないのかを探ることにした。
リビングらしきところに行くと私と同じぐらいの男の人が二人でソファーに座っていた。男たちは私のことを見ると笑顔で挨拶してきた。
「あかね!おはよう!」「おはよ」
二人に挨拶されたものの、私には二人のことが分からない。だからそのまま黙っていると男達から説明された。
「あかね。部屋にあった紙は見た?」
私は無言でうなずく。
「そっか。じゃあ僕たちの自己紹介から始めるか!僕は太陽!よろしくね!」
太陽という人の紹介が終わると隣にいたちょっと冷たそうな男も自己紹介してくれた。
「俺は夕陽。よろしく。俺たちは二人ともお前の幼馴染みだ。」
「よ、よろしく…」
言われてみれば見たことがある顔かもしれない。まぁそんなのはただの思い込みだが。
一緒に朝ごはんを食べているうちにだんだんと二人と打ち解けてきた。
そもそも二人は私のことを幼馴染みだと言ってくれているし、私だって記憶がないだけで幼馴染みだと言うことには変わりはないんだから気は合うはずなのだ。
二人ともある程度仲良くなった。
私は思いきって聞いてみることにした。
「二人は…なんでこんな私と一緒にいてくれるの?」
「そんなの決まってるじゃないか。ねぇ?夕陽。」
「おう。」
二人が意味ありげに私のことを見てくる。
「お前に結婚を申し込んだんだよ」
「そうそう!二人ともね!」
結婚?…予想もしてなかった単語が二人の口から出てきた。
「でも…!私は明日になったら二人のこと忘れちゃうんだよ??」
「それでもいいんだ。あかねと一緒にいられるならね。」
「あぁ。太陽の言うとおりだ。」
私はまだ反論したかったが二人のまっすぐな瞳を見るとなにも言えなくなってしまう。
「じゃあ…さ。私のこの病気が治ったら…もし治ったら…」
「うん。なに?」
二人が私の言葉の続きを促す。
「私はどちらかを…選ばないといけないんだよ…ね?」
私が消え入りそうな弱々しい声でそう言うと二人は優しい声で私に話してくれた。
「選ばなくてもいいんだよ。別に僕たちじゃなくてもいい。」
「そうだ。俺達は数ある選択肢の一つに過ぎない。」
どんなに優しい言葉をかけられたってこの病気は治らない。私は思わず二人に向かって怒鳴ってしまう。
「でも…!こんな不幸な毎日が続くんだったら死んだ方がマシだよ!!」
私の口からはどんどん言葉が溢れる。
「そもそもこんな病気!奇跡でも起こらないと治らない!奇跡なんて起こらないんだよ!」
あぁ。私がどんどん嫌な人間になっていくのが分かる。私が私じゃないみたい。
「そうだね。奇跡が起こらないと治らないかもね。でもさ。奇跡。起こるかもしれないじゃん。まだ諦めちゃ駄目だよ」
「奇跡って一度でもこの世界のどこかで起こったことがあるから『奇跡』なんていう言葉が出来たんだろ?」
二人の言葉を聞くと目から涙があふれでてくる。
この人達はなんて優しい人なんだろう。
こんな私の隣にいてくれて。
私がこの世界に絶望してもこの人たちは優しく慰めてくれる。
私はこんなに愛されている。
これのどこが不幸なのだろう。
幸せそのものじゃないか。
私が間違っていたんだ。
「二人ともありがとう。私幸せだよ。」
□
私は小林あかね。27歳。
例の病気は治った。
こうやって言ってしまえば簡単そうに見えるが実際は大手術をしたり、毎日すごい量の薬を飲んだり頑張ったのだ。
それもこれもこの二人がいつも隣にいてくれたから頑張れた。
その二人はと言うと…
「お父さん!遊ぼうよ〜!!」
「まだ眠い…夕陽おじさんに頼んで?」
私は太陽と結婚した。
子供もできた。5才の男の子だ。
結婚はしたが夕陽ともまだ一緒に暮らしている。我が子は元気にすくすくと育っている。
「夕陽おじさん遊ぼー!!」
「俺は眠いんだ。お母さんに頼め。」
「え〜!ひどい!!」
私は幸せだ。それはきっと明日も一年後も変わらない。私の周りの人達が笑っていれば幸せでいられるのだ。 アサヒさん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2020年6月16日みんなの答え:1件
まだ少し眠たかったが無理矢理意識を浮上させる。
私の名前。小林あかね。18歳。
駄目だ。それ以外思い出せない。
私がどうしてここにいるのかも誰と住んでるのかもなにも思い出せない。
部屋を見回すと机に一枚の紙が置いてあるのを見つけた。
そこには私は病気で、一日たつと前の日のことを全て忘れてしまう病気にかかっていることが書かれていた。
この手紙の最後には自分の名前も書かれていた。文字も私の文字だし、これは本当に私が書いたものなのだろう。
そっか…私は病気なのか。
別に悲しくはなかった。
私はひとまず部屋からでて私の他にこの家に住んでる人はいないのかを探ることにした。
リビングらしきところに行くと私と同じぐらいの男の人が二人でソファーに座っていた。男たちは私のことを見ると笑顔で挨拶してきた。
「あかね!おはよう!」「おはよ」
二人に挨拶されたものの、私には二人のことが分からない。だからそのまま黙っていると男達から説明された。
「あかね。部屋にあった紙は見た?」
私は無言でうなずく。
「そっか。じゃあ僕たちの自己紹介から始めるか!僕は太陽!よろしくね!」
太陽という人の紹介が終わると隣にいたちょっと冷たそうな男も自己紹介してくれた。
「俺は夕陽。よろしく。俺たちは二人ともお前の幼馴染みだ。」
「よ、よろしく…」
言われてみれば見たことがある顔かもしれない。まぁそんなのはただの思い込みだが。
一緒に朝ごはんを食べているうちにだんだんと二人と打ち解けてきた。
そもそも二人は私のことを幼馴染みだと言ってくれているし、私だって記憶がないだけで幼馴染みだと言うことには変わりはないんだから気は合うはずなのだ。
二人ともある程度仲良くなった。
私は思いきって聞いてみることにした。
「二人は…なんでこんな私と一緒にいてくれるの?」
「そんなの決まってるじゃないか。ねぇ?夕陽。」
「おう。」
二人が意味ありげに私のことを見てくる。
「お前に結婚を申し込んだんだよ」
「そうそう!二人ともね!」
結婚?…予想もしてなかった単語が二人の口から出てきた。
「でも…!私は明日になったら二人のこと忘れちゃうんだよ??」
「それでもいいんだ。あかねと一緒にいられるならね。」
「あぁ。太陽の言うとおりだ。」
私はまだ反論したかったが二人のまっすぐな瞳を見るとなにも言えなくなってしまう。
「じゃあ…さ。私のこの病気が治ったら…もし治ったら…」
「うん。なに?」
二人が私の言葉の続きを促す。
「私はどちらかを…選ばないといけないんだよ…ね?」
私が消え入りそうな弱々しい声でそう言うと二人は優しい声で私に話してくれた。
「選ばなくてもいいんだよ。別に僕たちじゃなくてもいい。」
「そうだ。俺達は数ある選択肢の一つに過ぎない。」
どんなに優しい言葉をかけられたってこの病気は治らない。私は思わず二人に向かって怒鳴ってしまう。
「でも…!こんな不幸な毎日が続くんだったら死んだ方がマシだよ!!」
私の口からはどんどん言葉が溢れる。
「そもそもこんな病気!奇跡でも起こらないと治らない!奇跡なんて起こらないんだよ!」
あぁ。私がどんどん嫌な人間になっていくのが分かる。私が私じゃないみたい。
「そうだね。奇跡が起こらないと治らないかもね。でもさ。奇跡。起こるかもしれないじゃん。まだ諦めちゃ駄目だよ」
「奇跡って一度でもこの世界のどこかで起こったことがあるから『奇跡』なんていう言葉が出来たんだろ?」
二人の言葉を聞くと目から涙があふれでてくる。
この人達はなんて優しい人なんだろう。
こんな私の隣にいてくれて。
私がこの世界に絶望してもこの人たちは優しく慰めてくれる。
私はこんなに愛されている。
これのどこが不幸なのだろう。
幸せそのものじゃないか。
私が間違っていたんだ。
「二人ともありがとう。私幸せだよ。」
□
私は小林あかね。27歳。
例の病気は治った。
こうやって言ってしまえば簡単そうに見えるが実際は大手術をしたり、毎日すごい量の薬を飲んだり頑張ったのだ。
それもこれもこの二人がいつも隣にいてくれたから頑張れた。
その二人はと言うと…
「お父さん!遊ぼうよ〜!!」
「まだ眠い…夕陽おじさんに頼んで?」
私は太陽と結婚した。
子供もできた。5才の男の子だ。
結婚はしたが夕陽ともまだ一緒に暮らしている。我が子は元気にすくすくと育っている。
「夕陽おじさん遊ぼー!!」
「俺は眠いんだ。お母さんに頼め。」
「え〜!ひどい!!」
私は幸せだ。それはきっと明日も一年後も変わらない。私の周りの人達が笑っていれば幸せでいられるのだ。 アサヒさん(選択なし・13さい)からの相談
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幸せ 笑うって大事だね!
世界中のみんなが笑えば平和になるね!! マインさん(埼玉・13さい)からの答え
とうこう日:2020年6月18日
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