花火と共に会いに来た【短編小説】
8月某日。
この日は、私、“黒木梓(クロキ アズサ)”が住む地域が毎年開く花火大会がある日。
そして______青井焔(アオイ ホムラ)先輩の命日でもある。
私と青井先輩は、中学時代からの部活での、1つだけ年齢の違う先輩後輩であるが、その関係以上に親しかった。それこそ、私が彼に恋するくらいには。
3年前の今日______私が高校1年生の時。花火大会の終わりに先輩に告白する筈だった。が、会場へと移動している途中、先輩は事故______歩道に突っ込んできた車に巻き込まれて、私の目の前で命を落とした。
あの時、子供の様にはしゃぎながら歩道を走る先輩を落ち着かせていれば、あんな事にはならなかっただろう。つまり私のせいでもある。事故から数ヶ月は後悔と悲しみの感情に押し潰され、塞ぎ込んでいた事も、今となっては懐かしくすら感じている。今はなんとか立ち直ったが、未だに後悔していて。
そして今日。私は当時の事故現場に向かっている。毎年この日にはその場所に訪れているのだ。その場所は会場から少し離れた橋の上。橋の上なので花火はよく見えるし、車通りは多いが、逆に歩道を歩く人は殆どいない。
今年も難なくその場所へ到達する。しかし、そこにいる筈も無い人が居て。私は目を見開いては、恐る恐るその人の名前を呟いた。
「えっ、青井先輩…………?」
そう。先輩たる青井焔その人が、私を見つめてながら立っていたのだ。
私は見間違いかと思い目を擦る。しかし、彼の姿が消える事は無くて。有りえない現象に混乱していると、彼は口を開く。
「悪ぃな梓、驚かせて。
…………そして久しぶり。3年ぶりだな。俺だ」
懐かしい……大好きだった彼の声そのもの。困惑で顔をかく仕草も、彼そのもので。
「ほ、本物……?……な、何で居るんですか……?もしかして、生きてた……?」
「いや……死んじまってるよ。神様に無理言って、今日の十数分だけお前と話す時間をさ……貰ったんだ。お前に、謝りたくて。
ごめんな、お前を独りにして。俺が死んでから、お前がずっと自分を責めているの、あの世から見ていた。お前は、何にも悪くないのに……」
先輩は独り言にも近い私の問い掛けに答えては、涙を浮かべながら謝罪の言葉を述べて。
「……なんで先輩が謝るんですか……先輩こそ、なにも悪くないのに」
「あー……それもそうだな。ぶっちゃけ俺も巻き込まれただけだし。ま、逆に言えばお前も悪くないんだ。だからさ……もう背負うなよ」
自分が否定の言葉を出せば、先輩は優しく頭を撫でる。彼は死んでるのに、自身の頭を撫でるその手から、彼の温もりを感じれる。
「はい……、ありがとうございます」
「おう何でお前まで泣くんだよ……っと、花火、始まったみたいだな」
先輩に会えた嬉しさと、彼の言葉で背負ってきたものが消えた気がして、今まで溜まっていた涙が溢れだす。それと同時に、大きな音と共に、今日最初の花火が打ち上がった。
「綺麗だな。ホントならもう見る事ができないけど……お前と見れてよかった」
橋の柵に腕をおき、空を彩る花火を二人でお喋りしながら見つめる。その二人きりの時間はあっと言う間で、数分すると先輩が名残り惜しそうに話し始めた。
「残念だが……もう時間だ。時間が過ぎるのって早いもんだな。なんか最後に言いたい事あるか?」
「はい。……ひとつだけ、ずっと伝えたかった事があるんです。それは______」
「なんだ?勿体ぶらずに言ってくれよ」
焦らすように間をあければ、先輩は待ちきれずに子供が駄々をこねるように言って。そんな彼を可愛く思いながら、私の思いを言葉にする。
「______焔先輩、愛してます」
ドンッ、ドンッ______
そんな花火の音と共に、3年という年月を経て、ようやく伝える事が出来た、私の想い。先輩は一気に顔を紅潮して少し視線を逸らすと、その後私に向き直る。
「こっちは死んでるってのに、告白するとかばっかじゃねーの……
でも……嬉しいし、俺も同じ気持ちだ。愛してるぞ、梓!」
満面の笑みを浮かべながら、先輩は私と空に向って、気持ちを言葉にして叫んだ。
「なぁ……最後にひとついいか?」
「はい。なんでもどうぞ」
先輩の頼みを、私は2つ返事で承諾すれば、先輩は両手で私の両手を握って。
「俺はさ、あの世からずっと梓の事、すぐ側で見てるし、梓が来るのを何年だろうと、何十年だろうと、ずっと待ってるから______」
先輩はそこまで言い終えると、涙をボロボロ流しながら深呼吸をしては言葉を続けて。
「______あの世に来るなら、なるべくゆっくり来いよ。すぐ来たら許さないからな」
その言葉と共に、今日一番大きな花火が暗い夜空を赤い光で彩った。 蒼星さん(選択なし・15さい)からの相談
とうこう日:2020年7月2日みんなの答え:3件
8月某日。
この日は、私、“黒木梓(クロキ アズサ)”が住む地域が毎年開く花火大会がある日。
そして______青井焔(アオイ ホムラ)先輩の命日でもある。
私と青井先輩は、中学時代からの部活での、1つだけ年齢の違う先輩後輩であるが、その関係以上に親しかった。それこそ、私が彼に恋するくらいには。
3年前の今日______私が高校1年生の時。花火大会の終わりに先輩に告白する筈だった。が、会場へと移動している途中、先輩は事故______歩道に突っ込んできた車に巻き込まれて、私の目の前で命を落とした。
あの時、子供の様にはしゃぎながら歩道を走る先輩を落ち着かせていれば、あんな事にはならなかっただろう。つまり私のせいでもある。事故から数ヶ月は後悔と悲しみの感情に押し潰され、塞ぎ込んでいた事も、今となっては懐かしくすら感じている。今はなんとか立ち直ったが、未だに後悔していて。
そして今日。私は当時の事故現場に向かっている。毎年この日にはその場所に訪れているのだ。その場所は会場から少し離れた橋の上。橋の上なので花火はよく見えるし、車通りは多いが、逆に歩道を歩く人は殆どいない。
今年も難なくその場所へ到達する。しかし、そこにいる筈も無い人が居て。私は目を見開いては、恐る恐るその人の名前を呟いた。
「えっ、青井先輩…………?」
そう。先輩たる青井焔その人が、私を見つめてながら立っていたのだ。
私は見間違いかと思い目を擦る。しかし、彼の姿が消える事は無くて。有りえない現象に混乱していると、彼は口を開く。
「悪ぃな梓、驚かせて。
…………そして久しぶり。3年ぶりだな。俺だ」
懐かしい……大好きだった彼の声そのもの。困惑で顔をかく仕草も、彼そのもので。
「ほ、本物……?……な、何で居るんですか……?もしかして、生きてた……?」
「いや……死んじまってるよ。神様に無理言って、今日の十数分だけお前と話す時間をさ……貰ったんだ。お前に、謝りたくて。
ごめんな、お前を独りにして。俺が死んでから、お前がずっと自分を責めているの、あの世から見ていた。お前は、何にも悪くないのに……」
先輩は独り言にも近い私の問い掛けに答えては、涙を浮かべながら謝罪の言葉を述べて。
「……なんで先輩が謝るんですか……先輩こそ、なにも悪くないのに」
「あー……それもそうだな。ぶっちゃけ俺も巻き込まれただけだし。ま、逆に言えばお前も悪くないんだ。だからさ……もう背負うなよ」
自分が否定の言葉を出せば、先輩は優しく頭を撫でる。彼は死んでるのに、自身の頭を撫でるその手から、彼の温もりを感じれる。
「はい……、ありがとうございます」
「おう何でお前まで泣くんだよ……っと、花火、始まったみたいだな」
先輩に会えた嬉しさと、彼の言葉で背負ってきたものが消えた気がして、今まで溜まっていた涙が溢れだす。それと同時に、大きな音と共に、今日最初の花火が打ち上がった。
「綺麗だな。ホントならもう見る事ができないけど……お前と見れてよかった」
橋の柵に腕をおき、空を彩る花火を二人でお喋りしながら見つめる。その二人きりの時間はあっと言う間で、数分すると先輩が名残り惜しそうに話し始めた。
「残念だが……もう時間だ。時間が過ぎるのって早いもんだな。なんか最後に言いたい事あるか?」
「はい。……ひとつだけ、ずっと伝えたかった事があるんです。それは______」
「なんだ?勿体ぶらずに言ってくれよ」
焦らすように間をあければ、先輩は待ちきれずに子供が駄々をこねるように言って。そんな彼を可愛く思いながら、私の思いを言葉にする。
「______焔先輩、愛してます」
ドンッ、ドンッ______
そんな花火の音と共に、3年という年月を経て、ようやく伝える事が出来た、私の想い。先輩は一気に顔を紅潮して少し視線を逸らすと、その後私に向き直る。
「こっちは死んでるってのに、告白するとかばっかじゃねーの……
でも……嬉しいし、俺も同じ気持ちだ。愛してるぞ、梓!」
満面の笑みを浮かべながら、先輩は私と空に向って、気持ちを言葉にして叫んだ。
「なぁ……最後にひとついいか?」
「はい。なんでもどうぞ」
先輩の頼みを、私は2つ返事で承諾すれば、先輩は両手で私の両手を握って。
「俺はさ、あの世からずっと梓の事、すぐ側で見てるし、梓が来るのを何年だろうと、何十年だろうと、ずっと待ってるから______」
先輩はそこまで言い終えると、涙をボロボロ流しながら深呼吸をしては言葉を続けて。
「______あの世に来るなら、なるべくゆっくり来いよ。すぐ来たら許さないからな」
その言葉と共に、今日一番大きな花火が暗い夜空を赤い光で彩った。 蒼星さん(選択なし・15さい)からの相談
とうこう日:2020年7月2日みんなの答え:3件
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
3件中 1 〜 3件を表示
-
泣きそぉ.... よすぎますよ
ほんとに、泣きそうになりました笑 チムloveさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年7月4日 -
泣きそぉ.... よすぎますよ
ほんとに、泣きそうになりました笑 チムloveさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年7月4日 -
よかったです! 「好きです」じゃなくて、「愛しています」っていうのが、ぐっときました!ロマンチックと切なさが混じったかんじでいいですね! はちみつさん(千葉・14さい)からの答え
とうこう日:2020年7月3日
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
3件中 1 〜 3件を表示
-
- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 回答には相談に対する回答内容を投稿してください。過度に自己紹介等が書かれている場合は、スタッフにて削除・非公開対応を行わせていただきます。
- ニックネームを頻繁に変更して、「元○○」というような説明を記載することはやめてください。
- 1部のユーザーになりすましの投稿が行われています。なりすましの投稿はやめてください。
- カテゴリごとの新着相談
-
-
- みんなはどんな沼にハマってる??03月19日
-
- 親にスマホを制限されています。03月29日
-
- 友達のことについて悩んでます。03月28日
-
- 新学期についていろいろ聞きたい!03月29日
-
- 毒親?ですか?03月29日
-
- みんなの好きな時代はー?03月28日
-
- みんなはどう対応する?03月28日
-
- 食欲がないです…03月28日
-
- たすけて03月28日
-
- 3000mを走ったら吐いた03月28日
-
- 五条悟好き集合ーー!03月29日
-
- 好きな人とのメール03月29日
-
- ピアス何個まで許せる?03月27日
-
- ドレミファソラシド 好きな音は?03月29日
-
- おすすめの靴下教えて!03月28日
-
- 『画面越しに恋してしまった』01月26日
-
- どうしよう(´;ω;`)ウッ…03月29日
-
いじめで困ったり、ともだちや先生のことで不安や悩みがあったりしたら、一人で悩まず、いつでもすぐ相談してね。
・>>SNSで相談する
・電話で相談する
・>>地元の相談窓口を探す
18歳までの子どものための相談先です。あなたの思いを大切にしながら、どうしたらいいかを一緒に考えてくれるよ。