鉄壁の女
ごめんなさい、無理です。結(ゆい)から早口にそう言われて、里志(さとし)はうなだれた。今日も失敗した。
「結さんをどうやって落とせっていうんですかー」
里志は一年先輩の野口(のぐち)に喚いた。名字が野口であることから野口英世があだ名である野口は後輩を微笑ましそうに見つめた。
「里志。恋は一喜一憂するものだ。お前は今、立派な恋をしてるんだよ。それに、結を好きになったお前は女を見る目があると思う」
「結さんがいい女ってことですか?」
「結はズルをするような人じゃない。多分、興味を持ったことにはまっすぐだ。それに、真面目で努力家。言いたいことはちゃんというし、間違っていることには間違っているという正義感もある。聞くところによると、テストの点数も悪くないし、お前にはぴったりかもしれない」
「でも、鉄壁の女ですよ。俺がレストランに誘ったら早口でごめんなさい、無理ですって断ったんです。レストランすらダメってどういうことですか」
里志はビールをあおった。このままだと酔っ払いになりそうだ。野口は里志の前においてあるビール瓶をさりげなく自分の前に置いた。
「お前だから嫌だったとか?」
「どういうことですか」
「お前、その前に何かやったか?」
「納豆をご飯にかけて食べてました」
「そりゃ女の子はレストランに行きたくない。結ならなおさら。結の友達の美幸(みゆき)によれば結は納豆の匂いが苦手だそうだ。苦手な納豆の匂いがする男とは一緒にレストランに行きたくないよ」
里志は反省したように顔を手で覆っている。
「つまり、お前のリサーチ不足ってことだ」
追い討ちをかけると、顔を上げて野口をきっと見据えた。
「結さんについてもっと教えてください」
本当は自分で調べろと言いたいところだ。だが、テストまで時間が無いし、野口はあと二ヶ月ほどで大学四年生になる。院に行くか、就職するかを早く決めなければならない。野口の成績では院に行っても問題ないが、早くどちらかを選ぶ時期だ。これ以上、里志の恋愛に構っている暇は無くなる。
里志に結について知っていることを教えた。
「好きです。付き合ってください!」
一ヶ月後、里志は結に告白をした。里志は一ヶ月間、結を落とすべく努力をした。結が好きだと思う男になるべく頑張ったし、結との距離も縮まったと思う。
結は里志を見つめてやがて口を開いた。
「最近、変わってきてるなと思ったんですけど、それはこのためですか?」
聞いたのは確認のためだろう。物事の本質を見抜くのが得意な結相手に取り繕ったって無駄だ。
「そうです」
結は花が咲いたように笑った。
「告白に関しては良いですよ。そもそも、私が好きになるように努力する必要、無かったのに」
「え?」
里志はキョトンとした。
「レストランに誘ってくれたとか。納豆の匂いがして断ったんですけど。私が納豆の匂いが苦手って有名な話なのでそれを知った上で誘ったなら良い度胸だなって思って」
「その後に知ったんだよね。結さんが納豆の匂いが苦手だってこと」
結が驚いたように里志を見つめた。
「それじゃ。私、本屋に行くので」
結が里志に背を向けた。その背中を見つめた里志は言いようのない安心感に包まれるのを感じた。 哲学とイモリさん(静岡・13さい)からの相談
とうこう日:2020年7月9日みんなの答え:0件
「結さんをどうやって落とせっていうんですかー」
里志は一年先輩の野口(のぐち)に喚いた。名字が野口であることから野口英世があだ名である野口は後輩を微笑ましそうに見つめた。
「里志。恋は一喜一憂するものだ。お前は今、立派な恋をしてるんだよ。それに、結を好きになったお前は女を見る目があると思う」
「結さんがいい女ってことですか?」
「結はズルをするような人じゃない。多分、興味を持ったことにはまっすぐだ。それに、真面目で努力家。言いたいことはちゃんというし、間違っていることには間違っているという正義感もある。聞くところによると、テストの点数も悪くないし、お前にはぴったりかもしれない」
「でも、鉄壁の女ですよ。俺がレストランに誘ったら早口でごめんなさい、無理ですって断ったんです。レストランすらダメってどういうことですか」
里志はビールをあおった。このままだと酔っ払いになりそうだ。野口は里志の前においてあるビール瓶をさりげなく自分の前に置いた。
「お前だから嫌だったとか?」
「どういうことですか」
「お前、その前に何かやったか?」
「納豆をご飯にかけて食べてました」
「そりゃ女の子はレストランに行きたくない。結ならなおさら。結の友達の美幸(みゆき)によれば結は納豆の匂いが苦手だそうだ。苦手な納豆の匂いがする男とは一緒にレストランに行きたくないよ」
里志は反省したように顔を手で覆っている。
「つまり、お前のリサーチ不足ってことだ」
追い討ちをかけると、顔を上げて野口をきっと見据えた。
「結さんについてもっと教えてください」
本当は自分で調べろと言いたいところだ。だが、テストまで時間が無いし、野口はあと二ヶ月ほどで大学四年生になる。院に行くか、就職するかを早く決めなければならない。野口の成績では院に行っても問題ないが、早くどちらかを選ぶ時期だ。これ以上、里志の恋愛に構っている暇は無くなる。
里志に結について知っていることを教えた。
「好きです。付き合ってください!」
一ヶ月後、里志は結に告白をした。里志は一ヶ月間、結を落とすべく努力をした。結が好きだと思う男になるべく頑張ったし、結との距離も縮まったと思う。
結は里志を見つめてやがて口を開いた。
「最近、変わってきてるなと思ったんですけど、それはこのためですか?」
聞いたのは確認のためだろう。物事の本質を見抜くのが得意な結相手に取り繕ったって無駄だ。
「そうです」
結は花が咲いたように笑った。
「告白に関しては良いですよ。そもそも、私が好きになるように努力する必要、無かったのに」
「え?」
里志はキョトンとした。
「レストランに誘ってくれたとか。納豆の匂いがして断ったんですけど。私が納豆の匂いが苦手って有名な話なのでそれを知った上で誘ったなら良い度胸だなって思って」
「その後に知ったんだよね。結さんが納豆の匂いが苦手だってこと」
結が驚いたように里志を見つめた。
「それじゃ。私、本屋に行くので」
結が里志に背を向けた。その背中を見つめた里志は言いようのない安心感に包まれるのを感じた。 哲学とイモリさん(静岡・13さい)からの相談
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