サヨナラも言わずに
僕の名前はシキ。今日も変わらず、同じような毎日を送っている。毎日毎日同じような仕事をして、同じような時間を過ごして…
『今日も疲れたー』
そう言っていつもと同じ道を歩いて家に向かった。
すると…どこからだろう。可愛らしい歌声が聞こえる。その声は高く透き通っていて、とても綺麗だった。僕はその声に惹かれ、声の方へと向かった。
『どこから聞こえるんだろう?向こうの湖の辺りかな?』
そう…僕の家の近くには小さな湖がある。だが、その湖には人魚の噂があるため誰も近づかない。
だんだん声は大きくなっていく。間違いない。その声は湖の方から聞こえる。
あまり近づくと危険だと思った僕は、そっと物陰から覗いてみた。
すると、そこには小柄の女性が歌いながら、ちょこんと座っていた。
「〜♪」
綺麗な声の正体はその女性だった。僕はつい見とれて、歌い終わるまで物陰から見ていた。
歌い終わった女性は僕の存在に気がついたのか、ゆっくりと振り返った。
僕たちは目が合った。青い貝殻のネックレスがキラリと光る。女性はにっこりと笑った。
「もしかしてずっと聞いてた?」
『うん…すごく上手だね』
「えへへ…」
女性は照れくさそうに笑った。その顔はとても可愛らしかった。
『よくここに居るの?』
「…たまにかな。気が向いた時だけ」
『ここ、良くない噂があるけど…』
「あー、人魚の話でしょ?」
『知ってるの?』
「まあね」
その女性はすごく謎だらけ。何もかもが謎に包まれている。冷静だけどゆったりとした雰囲気の不思議な人だ。
「ごめん、私そろそろ帰らなくちゃ」
『あ、うん…あの、名前聞いていい?』
「千依(ちよ)」
『僕はシキ。千依、また会える?』
「明日土曜だし、来るよ。またね」
そう言って千依は走っていった。走る姿も可愛らしくて、僕は明日が楽しみになった。
翌日。女の子と2人で会うなんて初めてで、緊張していた。ドキドキしながら湖へ向かうと千依はもうそこに居た。ゆったりとした白いワンピースに昨日もつけていた青い貝殻のネックレス。昨日以上に千依は可愛かった。
『まだ10分前だよ?』
「楽しみすぎて。シキくんこそ早いね」
『僕も楽しみで…』
「そっか、嬉しい。今日晴れて良かったね。お話しよっか」
僕と千依はたくさん話した。他愛のない話でとても盛り上がった。
『はー、千依と居るとすごく楽しいよ!時間なんて忘れちゃうくらい!』
「うん、私もだよ」
『っていうか、この湖ってこんなに綺麗だったんだな』
「ずっと綺麗だったよ」
『いや…人魚の噂があったからさ。人魚って怖いって言うじゃん?』
「…」
『千依?』
千依はキョトンとした顔で僕のことを見つめた。その顔は今までの千依とは違った。
『ま、まぁ会ったことないからわからないけどさ!そうだ、せっかくだし、ボート乗らない?』
「でも…私たち昨日出会ったんだよね?まだ早いんじゃ…」
『友達!友達としてだから!ほら、行こ!』
そう言って僕は千依の手を引っ張って、ボート乗り場まで連れて行った。少し曇ってきたが、どうせ20分くらいだから問題ないだろう。
「ねえ、曇ってきたよ?」
『20分くらいだから大丈夫だよ。やばそうなら早めに降りればいいし』
千依は不安そうに僕を見つめた。さっきまでの冷静な千依では無くなってきた。僕は少しだけ不安になった…が、僕はそんな不安を吹き飛ばすように、ボートに乗った。
『うわっ、結構揺れるね!』
「そうだね…上手に漕いでよ?」
『任せて!』
そう言って僕はボートを漕ぎ出した。周りから見ると小さな池だが、ボートに乗って見ると意外と広い。
『千依、真ん中に来たよ!』
「う、うん…ねえシキくん…風吹いてきたよ…私、怖い…」
『あ、ごめんね!よし、戻ろうか!』
そう言って漕ごうとしたその時、ものすごく強い風が吹いてきた。風と共に雨まで降ってきた。雨風が僕らを打ち付ける…ボートが大きく揺れる…
「シキくん!これ、本当に大丈夫!?」
千依はとても動揺していた。
『大丈夫!千依は僕が必ず…』
守るからと言おうとした瞬間、ボートが大きく揺れた。
「シキくん!」
千依の悲鳴が聞こえたとともに僕の体はほおり投げられた。
体はどんどん沈んでいく…水は雨で濁って、どっちが上か分からない…
ああ…僕、死ぬんだ…千依、ごめんね…
…目が覚めると、辺りは夕焼けで染まっていた。僕の体はびしょ濡れだった。そういえば、水の中で誰かに手を引かれたような…?
『千依?』
辺りを見渡すが、千依はいなかった。
「…シキくん」
千依の声がして、振り返ると千依は湖の中に居た。
『千依…?』
「…ごめんね」
千依の後ろに大きな何かが見えた。
もしかして千依が…
サヨナラも言わずに千依は水の中へ潜って行った。
僕の首に付けられた青い貝殻のネックレスが寂しげにキラリと光った。 こずえさん(選択なし・15さい)からの相談
とうこう日:2020年7月9日みんなの答え:2件
『今日も疲れたー』
そう言っていつもと同じ道を歩いて家に向かった。
すると…どこからだろう。可愛らしい歌声が聞こえる。その声は高く透き通っていて、とても綺麗だった。僕はその声に惹かれ、声の方へと向かった。
『どこから聞こえるんだろう?向こうの湖の辺りかな?』
そう…僕の家の近くには小さな湖がある。だが、その湖には人魚の噂があるため誰も近づかない。
だんだん声は大きくなっていく。間違いない。その声は湖の方から聞こえる。
あまり近づくと危険だと思った僕は、そっと物陰から覗いてみた。
すると、そこには小柄の女性が歌いながら、ちょこんと座っていた。
「〜♪」
綺麗な声の正体はその女性だった。僕はつい見とれて、歌い終わるまで物陰から見ていた。
歌い終わった女性は僕の存在に気がついたのか、ゆっくりと振り返った。
僕たちは目が合った。青い貝殻のネックレスがキラリと光る。女性はにっこりと笑った。
「もしかしてずっと聞いてた?」
『うん…すごく上手だね』
「えへへ…」
女性は照れくさそうに笑った。その顔はとても可愛らしかった。
『よくここに居るの?』
「…たまにかな。気が向いた時だけ」
『ここ、良くない噂があるけど…』
「あー、人魚の話でしょ?」
『知ってるの?』
「まあね」
その女性はすごく謎だらけ。何もかもが謎に包まれている。冷静だけどゆったりとした雰囲気の不思議な人だ。
「ごめん、私そろそろ帰らなくちゃ」
『あ、うん…あの、名前聞いていい?』
「千依(ちよ)」
『僕はシキ。千依、また会える?』
「明日土曜だし、来るよ。またね」
そう言って千依は走っていった。走る姿も可愛らしくて、僕は明日が楽しみになった。
翌日。女の子と2人で会うなんて初めてで、緊張していた。ドキドキしながら湖へ向かうと千依はもうそこに居た。ゆったりとした白いワンピースに昨日もつけていた青い貝殻のネックレス。昨日以上に千依は可愛かった。
『まだ10分前だよ?』
「楽しみすぎて。シキくんこそ早いね」
『僕も楽しみで…』
「そっか、嬉しい。今日晴れて良かったね。お話しよっか」
僕と千依はたくさん話した。他愛のない話でとても盛り上がった。
『はー、千依と居るとすごく楽しいよ!時間なんて忘れちゃうくらい!』
「うん、私もだよ」
『っていうか、この湖ってこんなに綺麗だったんだな』
「ずっと綺麗だったよ」
『いや…人魚の噂があったからさ。人魚って怖いって言うじゃん?』
「…」
『千依?』
千依はキョトンとした顔で僕のことを見つめた。その顔は今までの千依とは違った。
『ま、まぁ会ったことないからわからないけどさ!そうだ、せっかくだし、ボート乗らない?』
「でも…私たち昨日出会ったんだよね?まだ早いんじゃ…」
『友達!友達としてだから!ほら、行こ!』
そう言って僕は千依の手を引っ張って、ボート乗り場まで連れて行った。少し曇ってきたが、どうせ20分くらいだから問題ないだろう。
「ねえ、曇ってきたよ?」
『20分くらいだから大丈夫だよ。やばそうなら早めに降りればいいし』
千依は不安そうに僕を見つめた。さっきまでの冷静な千依では無くなってきた。僕は少しだけ不安になった…が、僕はそんな不安を吹き飛ばすように、ボートに乗った。
『うわっ、結構揺れるね!』
「そうだね…上手に漕いでよ?」
『任せて!』
そう言って僕はボートを漕ぎ出した。周りから見ると小さな池だが、ボートに乗って見ると意外と広い。
『千依、真ん中に来たよ!』
「う、うん…ねえシキくん…風吹いてきたよ…私、怖い…」
『あ、ごめんね!よし、戻ろうか!』
そう言って漕ごうとしたその時、ものすごく強い風が吹いてきた。風と共に雨まで降ってきた。雨風が僕らを打ち付ける…ボートが大きく揺れる…
「シキくん!これ、本当に大丈夫!?」
千依はとても動揺していた。
『大丈夫!千依は僕が必ず…』
守るからと言おうとした瞬間、ボートが大きく揺れた。
「シキくん!」
千依の悲鳴が聞こえたとともに僕の体はほおり投げられた。
体はどんどん沈んでいく…水は雨で濁って、どっちが上か分からない…
ああ…僕、死ぬんだ…千依、ごめんね…
…目が覚めると、辺りは夕焼けで染まっていた。僕の体はびしょ濡れだった。そういえば、水の中で誰かに手を引かれたような…?
『千依?』
辺りを見渡すが、千依はいなかった。
「…シキくん」
千依の声がして、振り返ると千依は湖の中に居た。
『千依…?』
「…ごめんね」
千依の後ろに大きな何かが見えた。
もしかして千依が…
サヨナラも言わずに千依は水の中へ潜って行った。
僕の首に付けられた青い貝殻のネックレスが寂しげにキラリと光った。 こずえさん(選択なし・15さい)からの相談
とうこう日:2020年7月9日みんなの答え:2件
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いいですね こんにちは お世話になっているあわわです。
いいですねー
最後のキラリと光ったが好きです あわわさん(東京・10さい)からの答え
とうこう日:2020年7月11日 -
ふあああああああああああ↑↑↑ こんにちは!雪見大福です
今作、至上最高に好きです!!!
素敵やった〜#´∀`#
次回作も楽しみにしてます★
それでは! 雪見大福さん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年7月10日
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