その日までには歌いたい
「辻崎(つじざき)タクマさん、落ち着いて聞いてください。辻崎 開花(かいか)さんが生きられるのはあと半年と思ってください」
それは突然の出来事だった。病院の廊下に出た俺は壁に体を任せた。床に涙が落ちる。
「嘘、、、なんだよな。嘘だ。絶対に嘘だよな。ドッキリ、、、だよな。」
俺はいつもなら出るはずの大きい声が出なかった。その代わりに涙がただあふれ出るだけだった。
「入るぞ。」
俺は開花がいる病室の前で言った。
「お兄ちゃん?どうぞー!」
開花の明るい声。いつもならその声で笑顔になれるのに、なぜだろう。今日はその明るい声を聞けば聞くほど、涙があふれてくるんだ。
「お兄ちゃんどうしたの?そんな下向いて。お兄ちゃんの顔見せて!」
「顔を上げると、、、夕日がまぶしいだろ。だから下向いているんだよ」
嘘だ。俺は顔を今すぐにでも上げて開花の顔を一秒でも長く見たい。でもこんな顔を見せたら心配させてしまう。
俺は開花に顔を見せないように、背中を開花に向けて椅子に座った。
そしてその夜は寝たり起きたりしながら過ごして朝を迎えた。
俺は大学に行かないといけなかったから、重いバックを背負って行った。
何故だろう。いつもと同じ中身で、同じバックなのに、とても重く感じる。
すっかり夜になってしまった。
「入るぞ」
俺はガチャっとドアを開ける。
「寝ちゃった、、、か、、、。」
気持ちよさそうに寝る開花を見ると、ずっとこのまま気持ちよく過ごしてほしいと涙がまた出てきた。
開花は俺がいなくて寂しくなかっただろうか。泣いていなかっただろうか。そう思うと不安になったが、ここ1週間は忙しい。レポートにアルバイト。それがオルゴールのように同じものが回り続ける。
「明日もいけないか、、、」
俺は病院をそういって出た。
「開花?お兄ちゃんだ。入ってもいいか?」
1週間来なかったのに急に来るなんて、俺って非常識な奴だよな。と自分でもあきれる。
「うん。入って」
少し暗い声だ。やっぱり怒っているのか。
「ごめんよ。1週間来れなくて。」
ドアを開けた俺は怒られる覚悟を持って言った。
「別にそのことに対して怒ってるわけじゃないの。なんで言ってくれなかったの?」
悲しそうな目で開花は見てくる。
「何のこと?」
僕は眉を細めて言った。
「私、死ぬんでしょ。お兄ちゃんから聞きたかった。」
違う。違う。隠していたかったわけじゃない。ただ、ただ開花のことを気遣って、、、。そう言おうとした。でも、言葉がのどに突っかかって言えなかった。
「お兄ちゃんが私をほったらかしにしていた時に先生から聞いた。」
ハア、と開花は大きくため息をつく。
「ごめんよ。伝えるのが怖くて言えなかった、、、。」
俺は下を向いて言った。
「あのさ。歌を歌いたい。」
開花は突然言った。本当に突然すぎて「え?」って言いかけた。
「歌?」
俺は目を真ん丸にして言った。開花はうん。と、うなずく。
「お願い。歌いたいの。最後の願い聞いてくれない?」
「別にいいけど、、、。歌がいいの?」
開花は大きくまたうん。と、うなずく。
そうして俺と開花の歌練習は始まった。
1週間後。
「ねえ、この歌がいい!」
開花はそう言ってパソコンを開き、歌を流した。
「どう?」
開花はどや顔で聞いてくる。
その曲は思ったより長かった。
「長すぎないか?お前こんな長いもの覚えられるのか?お前記憶力悪いだろ。」
久しぶりにこんな口調で話した気がする。でも開花はそんなこと気にせずに
「そんなことない!覚えられる!!」
と大きな声で言った。
「そうか?まあそこまで言うなら、、、。」
そうして歌う歌が決まった。
1か月後
パートを決めた。
開花はきっとあんまり歌えないだろうから、さびだけ俺と一緒に歌うことにして、あとは全部俺が歌うことにした。
「え〜」
開花は不満そうな目で俺を見つめてきた。
「しょうがないだろ。先のことも考えろ。」
母さんと父さんを病気で失った俺はいつの間にか親みたいになった。
「は〜い」
開花は1年生のような甘えた声で返事した。
まあそんなこんなでパートが決まった。
3か月後。あと開花が行ってしまうまで約2か月。
沢山練習。時々泣く開花を抱きしめながら歌った。
か弱い声でも美しい開花の声に聞きほれるときもあった。
あと行ってしまうまで3週間。
とにかく抱きしめた。
悲しかったけれど、わらって過ごした。
そして、歌う日。
その日の歌声はとてもきれいでずっと忘れない。 ムーン♪さん(愛媛・11さい)からの相談
とうこう日:2020年7月21日みんなの答え:6件
それは突然の出来事だった。病院の廊下に出た俺は壁に体を任せた。床に涙が落ちる。
「嘘、、、なんだよな。嘘だ。絶対に嘘だよな。ドッキリ、、、だよな。」
俺はいつもなら出るはずの大きい声が出なかった。その代わりに涙がただあふれ出るだけだった。
「入るぞ。」
俺は開花がいる病室の前で言った。
「お兄ちゃん?どうぞー!」
開花の明るい声。いつもならその声で笑顔になれるのに、なぜだろう。今日はその明るい声を聞けば聞くほど、涙があふれてくるんだ。
「お兄ちゃんどうしたの?そんな下向いて。お兄ちゃんの顔見せて!」
「顔を上げると、、、夕日がまぶしいだろ。だから下向いているんだよ」
嘘だ。俺は顔を今すぐにでも上げて開花の顔を一秒でも長く見たい。でもこんな顔を見せたら心配させてしまう。
俺は開花に顔を見せないように、背中を開花に向けて椅子に座った。
そしてその夜は寝たり起きたりしながら過ごして朝を迎えた。
俺は大学に行かないといけなかったから、重いバックを背負って行った。
何故だろう。いつもと同じ中身で、同じバックなのに、とても重く感じる。
すっかり夜になってしまった。
「入るぞ」
俺はガチャっとドアを開ける。
「寝ちゃった、、、か、、、。」
気持ちよさそうに寝る開花を見ると、ずっとこのまま気持ちよく過ごしてほしいと涙がまた出てきた。
開花は俺がいなくて寂しくなかっただろうか。泣いていなかっただろうか。そう思うと不安になったが、ここ1週間は忙しい。レポートにアルバイト。それがオルゴールのように同じものが回り続ける。
「明日もいけないか、、、」
俺は病院をそういって出た。
「開花?お兄ちゃんだ。入ってもいいか?」
1週間来なかったのに急に来るなんて、俺って非常識な奴だよな。と自分でもあきれる。
「うん。入って」
少し暗い声だ。やっぱり怒っているのか。
「ごめんよ。1週間来れなくて。」
ドアを開けた俺は怒られる覚悟を持って言った。
「別にそのことに対して怒ってるわけじゃないの。なんで言ってくれなかったの?」
悲しそうな目で開花は見てくる。
「何のこと?」
僕は眉を細めて言った。
「私、死ぬんでしょ。お兄ちゃんから聞きたかった。」
違う。違う。隠していたかったわけじゃない。ただ、ただ開花のことを気遣って、、、。そう言おうとした。でも、言葉がのどに突っかかって言えなかった。
「お兄ちゃんが私をほったらかしにしていた時に先生から聞いた。」
ハア、と開花は大きくため息をつく。
「ごめんよ。伝えるのが怖くて言えなかった、、、。」
俺は下を向いて言った。
「あのさ。歌を歌いたい。」
開花は突然言った。本当に突然すぎて「え?」って言いかけた。
「歌?」
俺は目を真ん丸にして言った。開花はうん。と、うなずく。
「お願い。歌いたいの。最後の願い聞いてくれない?」
「別にいいけど、、、。歌がいいの?」
開花は大きくまたうん。と、うなずく。
そうして俺と開花の歌練習は始まった。
1週間後。
「ねえ、この歌がいい!」
開花はそう言ってパソコンを開き、歌を流した。
「どう?」
開花はどや顔で聞いてくる。
その曲は思ったより長かった。
「長すぎないか?お前こんな長いもの覚えられるのか?お前記憶力悪いだろ。」
久しぶりにこんな口調で話した気がする。でも開花はそんなこと気にせずに
「そんなことない!覚えられる!!」
と大きな声で言った。
「そうか?まあそこまで言うなら、、、。」
そうして歌う歌が決まった。
1か月後
パートを決めた。
開花はきっとあんまり歌えないだろうから、さびだけ俺と一緒に歌うことにして、あとは全部俺が歌うことにした。
「え〜」
開花は不満そうな目で俺を見つめてきた。
「しょうがないだろ。先のことも考えろ。」
母さんと父さんを病気で失った俺はいつの間にか親みたいになった。
「は〜い」
開花は1年生のような甘えた声で返事した。
まあそんなこんなでパートが決まった。
3か月後。あと開花が行ってしまうまで約2か月。
沢山練習。時々泣く開花を抱きしめながら歌った。
か弱い声でも美しい開花の声に聞きほれるときもあった。
あと行ってしまうまで3週間。
とにかく抱きしめた。
悲しかったけれど、わらって過ごした。
そして、歌う日。
その日の歌声はとてもきれいでずっと忘れない。 ムーン♪さん(愛媛・11さい)からの相談
とうこう日:2020年7月21日みんなの答え:6件
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すごいー!! こんにちは、みかんです!回答遅くなってごめんね!
この間「お兄ちゃんなんていやだって!」も読んだけど、ほんとに11歳とは思えない!すごいですね!
私が気に入ったのは、後半のところ!急に歌う日になるんじゃなくて、歌を練習していた日々のことも、主人公の気持ちやきれいな声にふれて書いているのがすごいと思いました!
ぜひぜひまた書いて下さい!また読みたいです!私もまた書くので、見つけたらよかったら読んでみてね(また宣伝ごめんなさい)♪ みかんさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年7月26日 -
すごーい 感動しました----
ムーンさんすごいです
次の作品も楽しみにしています なっちさん(茨城・12さい)からの答え
とうこう日:2020年7月23日 -
! とってもいいお話でしたね。
修正するともっと素敵になると思います、
「嘘、、、だよな?嘘だ。絶対に嘘だ。
夢だ…」
のほうがいいです!
「ドッキリだよな」
だと少し幼い感じがしたので… サナ*・さん(埼玉・17さい)からの答え
とうこう日:2020年7月23日 -
何これ? これ何のこと?本当にあった出来事?それとも話?
めっちゃくちゃいい話だと思う。これ考えたとしたらム一ンさんすごいね^▽^
フリスク28さん(富山・10さい)からの答え
とうこう日:2020年7月23日 -
いいね! 感動しました。また楽しみにしてます みみひさん(京都・10さい)からの答え
とうこう日:2020年7月23日 -
うん? 序盤と半ばは良かった。
文字数たりなかったのかな?
変な文のとことかココいらんなってところを
消して修正すると最後もよくなったと思いました。
つぎもがんばってください。 りのさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年7月22日
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