ファンタジー…では無いと思うけど読んでね!
「ウララ」
通学路の墓地の隙間から、きみは出てきた。
「お母さーん、小さいハートちゃんがいる!」
ハートちゃんというのは、ぼくの小さい頃から大切にしているハート型クッションの名前。
「は?何言ってんの」
台所から駆けつけたお母さんは、真顔でそう言った。
分かってくれないなら、いいや。ぼくは小さいハートちゃんを引き連れ、自分の部屋に入った。
「きみはたしかに、ここにいるね」
うん、とうなずくように、きみは目を閉じ、また開く。きみの体はパラパラまんがみたいに一瞬一瞬形をわずかに変えるけど、少しくすんだサーモンピンク色をして、ぼくの目の前の空中に、たしかにいる。
「自己紹介するよ。ぼくは心音。『ぼく』って言うけど女。特に意味はないけど、しっくりくるんだ。中二病かな、中二だし」
小さいハートちゃんは、興味深そうに目をぱちくりする。こんなぼくに興味を持ってくれるなんて、眼頭が熱くなる。
「きみには名前、ある?」
どうやら話せないらしい小さいハートちゃんだけど、伏し目がちに縮こまるその姿は「ない」と言っている。
「じゃあぼくが名前をつけるよ。うーんと…」
インスピレーションで、ぐっときた。
「う、ウララ!」
ウララは嬉しそうに、瞳を輝かせた。
ミーンミーン。
セミの鳴き声がうるさい。もう今日から夏休みだもの。
「ご飯よー、心音」
ウララを手のひらに乗せていたぼくは、お母さんの声を聞くとベッドの上にそっとウララをおろしてやる。そして、
「ご飯粒ちょっと持ってきてあげるから、ウララはそれをお食べ」
と、小声で言う。
リビングで、家族そろって食事。
といっても、我が家の家族はぼくとお母さんだけ。たった一人の家族としてお母さんを大切にしたいし、されたいんだけど、お母さんったらあまりに冷たいもの、ぼくだって冷たくしちゃうのさ。
お母さんが、ぼくに言う。
「明日、病院に行こう」
ぼくがきょとんとしていると、
「実際にないものが見えるのは、かなりやばい」
と、付け足し。あぁ、ウララのことか。ウララが自分の精神異常か何かで存在してるなんて、思いたくもない。
そう、ウララはちゃんと、いるんだ。
部屋に戻ると、ウララにご飯粒を差し出してみる。ウララは一向に口を開かない。
「…嫌い、なの?」
(今年の夏休みは一人で妄想して過ごさなくてもいい。ウララがいる)
(ネットで炎上したけど、個人情報大丈夫かな)
(推し様ー、推し様ー)
急に色々浮かんできて、そのときのウララの表情は見えなかった。
白い、白い、世界。ぼくだけの、純白の安全地帯…では無いことは分かってるけど、そこは白かった。
「心音、やっと目を覚ましたのね!」
お母さんが覗き込んでいる。その横で白衣のおじさんが、
「全ての数値は正常。ショックにより倒れたのでしょう」
とか言っている。
私はすかさず、空中を見た。
「ウララ、ウララは!?」
お母さんがぼくの膝につっぷして泣く。
「もうそんなこと言わないで。寂しかった、怖かったんでしょう、色々。大丈夫、これからはちゃんとお母さんが守るわ」
久しい母の温もり。
「お母さん…」
でも、ごめん。「もうそんなこと言わない」は、できないよ。
ウララはぼくの幻。ぼくだけの安全地帯。つまんないとこだけど、怖いことなんか無いんだよ。
悲しい日には、弱った日には、ぼくはきみに会いたい。
きみの帰る場所はぼくも、誰も知らないけど。
深谷ねぎ。さん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2020年8月5日みんなの答え:1件
通学路の墓地の隙間から、きみは出てきた。
「お母さーん、小さいハートちゃんがいる!」
ハートちゃんというのは、ぼくの小さい頃から大切にしているハート型クッションの名前。
「は?何言ってんの」
台所から駆けつけたお母さんは、真顔でそう言った。
分かってくれないなら、いいや。ぼくは小さいハートちゃんを引き連れ、自分の部屋に入った。
「きみはたしかに、ここにいるね」
うん、とうなずくように、きみは目を閉じ、また開く。きみの体はパラパラまんがみたいに一瞬一瞬形をわずかに変えるけど、少しくすんだサーモンピンク色をして、ぼくの目の前の空中に、たしかにいる。
「自己紹介するよ。ぼくは心音。『ぼく』って言うけど女。特に意味はないけど、しっくりくるんだ。中二病かな、中二だし」
小さいハートちゃんは、興味深そうに目をぱちくりする。こんなぼくに興味を持ってくれるなんて、眼頭が熱くなる。
「きみには名前、ある?」
どうやら話せないらしい小さいハートちゃんだけど、伏し目がちに縮こまるその姿は「ない」と言っている。
「じゃあぼくが名前をつけるよ。うーんと…」
インスピレーションで、ぐっときた。
「う、ウララ!」
ウララは嬉しそうに、瞳を輝かせた。
ミーンミーン。
セミの鳴き声がうるさい。もう今日から夏休みだもの。
「ご飯よー、心音」
ウララを手のひらに乗せていたぼくは、お母さんの声を聞くとベッドの上にそっとウララをおろしてやる。そして、
「ご飯粒ちょっと持ってきてあげるから、ウララはそれをお食べ」
と、小声で言う。
リビングで、家族そろって食事。
といっても、我が家の家族はぼくとお母さんだけ。たった一人の家族としてお母さんを大切にしたいし、されたいんだけど、お母さんったらあまりに冷たいもの、ぼくだって冷たくしちゃうのさ。
お母さんが、ぼくに言う。
「明日、病院に行こう」
ぼくがきょとんとしていると、
「実際にないものが見えるのは、かなりやばい」
と、付け足し。あぁ、ウララのことか。ウララが自分の精神異常か何かで存在してるなんて、思いたくもない。
そう、ウララはちゃんと、いるんだ。
部屋に戻ると、ウララにご飯粒を差し出してみる。ウララは一向に口を開かない。
「…嫌い、なの?」
(今年の夏休みは一人で妄想して過ごさなくてもいい。ウララがいる)
(ネットで炎上したけど、個人情報大丈夫かな)
(推し様ー、推し様ー)
急に色々浮かんできて、そのときのウララの表情は見えなかった。
白い、白い、世界。ぼくだけの、純白の安全地帯…では無いことは分かってるけど、そこは白かった。
「心音、やっと目を覚ましたのね!」
お母さんが覗き込んでいる。その横で白衣のおじさんが、
「全ての数値は正常。ショックにより倒れたのでしょう」
とか言っている。
私はすかさず、空中を見た。
「ウララ、ウララは!?」
お母さんがぼくの膝につっぷして泣く。
「もうそんなこと言わないで。寂しかった、怖かったんでしょう、色々。大丈夫、これからはちゃんとお母さんが守るわ」
久しい母の温もり。
「お母さん…」
でも、ごめん。「もうそんなこと言わない」は、できないよ。
ウララはぼくの幻。ぼくだけの安全地帯。つまんないとこだけど、怖いことなんか無いんだよ。
悲しい日には、弱った日には、ぼくはきみに会いたい。
きみの帰る場所はぼくも、誰も知らないけど。
深谷ねぎ。さん(選択なし・13さい)からの相談
とうこう日:2020年8月5日みんなの答え:1件
![※23:00〜6:00は回答の投稿はできません](/soudan/v2/images/btn_answer_ng.png)
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
1件中 1 〜 1件を表示
-
文句なし… すごく感動した!
わぁぁあ〜。ねぎさんは語彙力にありまっていますね!
良かったらこれからも書いてください♪ ゆはさん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2020年8月6日
[ まえへ ]
1
[ つぎへ ]
1件中 1 〜 1件を表示
-
- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
![※23:00〜6:00は相談の投稿はできません](/soudan/v2/images/sendng_subbtn.png)
![実施中のアンケート](/images/smp/survey_list_t.png)
- カテゴリごとの新着相談
-
-
- AIと話せるならどんなことを話してみたい?06月26日
-
- 学校のiPad07月20日
-
- どうすれば…07月20日
-
- 緊張のほぐし方を教えてください!07月20日
-
- ペットが熱中症なりそう07月20日
-
- 読書感想文の書き方がわかんなーい!!07月20日
-
- どうすればいい?07月20日
-
- 目が大きくなる方法ってありますか?07月20日
-
- 後輩が部活にきません(吹奏楽部)07月20日
-
- 韓国語習ってる人に質問です!!07月20日
-
- みんなの好きな女優さん教えてください!07月20日
-
- 好きな人をドキドキさせたい!07月20日
-
- 前髪切りすぎて変になっちゃった…07月20日
-
- 夏休みの過ごし方!07月20日
-
- おすすめのペンポーチ(長文)07月20日
-
- 最初と最後04月24日
-
- また会える方法?07月20日
-
![いろんな相談先があります](/images/bnr/bnr_sos.png)
![子供のSOSの相談窓口](/images/bnr/bnr_sos_2.png)
いじめで困ったり、ともだちや先生のことで不安や悩みがあったりしたら、一人で悩まず、いつでもすぐ相談してね。
・>>SNSで相談する
・電話で相談する
![24時間子供SOSダイヤル(通話料無料)](/images/bnr/bnr_tel.png)
・>>地元の相談窓口を探す
![チャイルドライン](/images/bnr/bnr_sos_3.png)
18歳までの子どものための相談先です。あなたの思いを大切にしながら、どうしたらいいかを一緒に考えてくれるよ。