惚れ薬の罪悪感
「はぁ...」
僕は、学校の机に突っ伏しながら息を漏らす。こうすると、頭の中のギチギチにつまった悩みが少しだけ外に排出されるようで一瞬だけ楽になる。その悩みは出現してからすぐに僕の思考の大半を制圧し、気づけばその悩みについて考えていることが多い。
僕の名前は広川。身長は160前半くらいの中二だ。僕は生きていてたった一度もモテたことは無い。学力も下。努力はしないくせに飯だけは大食いで家計を圧迫し、隙あらば楽をしようとする。周りに迷惑しかかけれない害人だと思っている。こんな自分が憎い。殺してやりたいと思うほどに。
僕の心に暗い思いが渦巻いている中、暗所に光が差し込むように甲高い声がかかる。
「広川くん、また落ち込んでる?」
「うー...」
僕は声の主に対して顔も上げずに声を漏らすことで応答する。声の主には両腕の中にしまわれた顔からのこもった声だけが聞こえるだろう。
声の主は顔を上げなくてもわかる。クラスが同じの小林だ。彼女は僕に''惚れて''いる。こんな自分に? いやいや、とてもじゃないが僕に女子を落とす技なんて無い。でも現に彼女は僕に惚れている。なぜか? 僕でも気が付かないような魅力に気が付いたから? たまたま僕の見た目がタイプだったから? ...どれも違う、というかありえない。僕は人に迷惑しかかけられない害人なのだから。彼女もまた、僕が迷惑をかけてしまった人物といえる。なぜなら彼女は、僕が誤って飲ませた惚れ薬によって惚れているのだから。
小林は美人で、成績も良くて、行動的である。よってこんなゴミ以下の何者でもない僕とは全く持って釣り合わないのだ。でも、現に彼女はあんたに惚れているのだろう? 何かいいところがあんたでもあるんだよ。と反論する人はいるだろう。だが、その反論も、僕が小林に惚れ薬を飲ませたという事実であっという間に効力を失う。はは、と自分のクズっぷりに笑みすら漏れる。やはり、僕は生まれないほうが良かったのだ。
「もう、アンタは劣等感が強すぎるの!」
その声を聞いて、僕はようやく頭を上げる。窓から差し込む直射日光が目に刺激を与え、瞳孔が狭まり、それと同時に水晶体のピント調節によってはっきりと小林の顔を視認する。
「人の失敗なんかいくつでもあるでしょ、私だってあるんだから」
現在進行形で迷惑をかけている人物にそれを言われて、胸元が冷えるような感覚に襲われる。これは僕が自己嫌悪している時の感覚だ。他の人も失敗はあるだろうが僕のような他人に大迷惑をかけるタイプとは違う。あくまで親に叱られる程度だろう。
「でも僕は、他人に迷惑をかけて、学習すらしない人だよ? それで何度も同じミスをして迷惑をかけてきた。」
生きたくない。というのが本音だろう。今もこうして小林に迷惑をかけているところだし、僕がこの世からいなくなることが僕のできる最大の良いことだろう。僕は生きているだけで迷惑をかけるといっても過言ではない。迷惑をかける瞬間は毎回、無自覚なのだから。
「しかも、僕は迷惑しかかけられないし、これから役に立つようなこともできない。努力もしないクズ人間だよ。」
そこまで言ったところで、再び机に突っ伏そうとするが小林の行動によって阻止される。小林は僕の腕をつかみ、強制的に僕を立ち上がらせようとする。女子とはいえど、その予想外の行動に、僕は思わず彼女の思い通り立ち上がってしまう。
「じゃあ、他の人に過去の失敗を聞いて回ろうよ。」
小林も僕も立ち上がっているが、僕の方が背は低い。僕の片腕は小林に掴まれていたが、その腕は小林の手から離れ、自由になっている。僕が小林のその態度に困惑していたら、小林は改めて僕に手を差し出し、口を開く。
「ほら、手、繋ごうよ?」
ギリ、と自らの歯が軋むのが僕だけに伝わる。そうだった。小林が僕の席によく行くようになり、彼女の友人に不審がられ、その友人に
『小林ちゃんは広川が好き』
という噂を流されたが小林はそれを逆に利用して僕へ距離を詰めた。もちろん、すべて惚れ薬の効果によって。
僕は、手を差し出し顔を赤らめながら笑う小林の手を、こみ上がる罪悪感によって泣き出すのを必死に我慢しながら握った。小林さん、ごめんなさい。僕の惚れ薬のせいで僕なんかに惚れさせてしまって本当にごめんなさい。
そして繫がれた手は小林の手によって恋人繋ぎに修正される。広川にとってこれは毒であるということを知らずに。
広川さん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2020年8月11日みんなの答え:3件
僕は、学校の机に突っ伏しながら息を漏らす。こうすると、頭の中のギチギチにつまった悩みが少しだけ外に排出されるようで一瞬だけ楽になる。その悩みは出現してからすぐに僕の思考の大半を制圧し、気づけばその悩みについて考えていることが多い。
僕の名前は広川。身長は160前半くらいの中二だ。僕は生きていてたった一度もモテたことは無い。学力も下。努力はしないくせに飯だけは大食いで家計を圧迫し、隙あらば楽をしようとする。周りに迷惑しかかけれない害人だと思っている。こんな自分が憎い。殺してやりたいと思うほどに。
僕の心に暗い思いが渦巻いている中、暗所に光が差し込むように甲高い声がかかる。
「広川くん、また落ち込んでる?」
「うー...」
僕は声の主に対して顔も上げずに声を漏らすことで応答する。声の主には両腕の中にしまわれた顔からのこもった声だけが聞こえるだろう。
声の主は顔を上げなくてもわかる。クラスが同じの小林だ。彼女は僕に''惚れて''いる。こんな自分に? いやいや、とてもじゃないが僕に女子を落とす技なんて無い。でも現に彼女は僕に惚れている。なぜか? 僕でも気が付かないような魅力に気が付いたから? たまたま僕の見た目がタイプだったから? ...どれも違う、というかありえない。僕は人に迷惑しかかけられない害人なのだから。彼女もまた、僕が迷惑をかけてしまった人物といえる。なぜなら彼女は、僕が誤って飲ませた惚れ薬によって惚れているのだから。
小林は美人で、成績も良くて、行動的である。よってこんなゴミ以下の何者でもない僕とは全く持って釣り合わないのだ。でも、現に彼女はあんたに惚れているのだろう? 何かいいところがあんたでもあるんだよ。と反論する人はいるだろう。だが、その反論も、僕が小林に惚れ薬を飲ませたという事実であっという間に効力を失う。はは、と自分のクズっぷりに笑みすら漏れる。やはり、僕は生まれないほうが良かったのだ。
「もう、アンタは劣等感が強すぎるの!」
その声を聞いて、僕はようやく頭を上げる。窓から差し込む直射日光が目に刺激を与え、瞳孔が狭まり、それと同時に水晶体のピント調節によってはっきりと小林の顔を視認する。
「人の失敗なんかいくつでもあるでしょ、私だってあるんだから」
現在進行形で迷惑をかけている人物にそれを言われて、胸元が冷えるような感覚に襲われる。これは僕が自己嫌悪している時の感覚だ。他の人も失敗はあるだろうが僕のような他人に大迷惑をかけるタイプとは違う。あくまで親に叱られる程度だろう。
「でも僕は、他人に迷惑をかけて、学習すらしない人だよ? それで何度も同じミスをして迷惑をかけてきた。」
生きたくない。というのが本音だろう。今もこうして小林に迷惑をかけているところだし、僕がこの世からいなくなることが僕のできる最大の良いことだろう。僕は生きているだけで迷惑をかけるといっても過言ではない。迷惑をかける瞬間は毎回、無自覚なのだから。
「しかも、僕は迷惑しかかけられないし、これから役に立つようなこともできない。努力もしないクズ人間だよ。」
そこまで言ったところで、再び机に突っ伏そうとするが小林の行動によって阻止される。小林は僕の腕をつかみ、強制的に僕を立ち上がらせようとする。女子とはいえど、その予想外の行動に、僕は思わず彼女の思い通り立ち上がってしまう。
「じゃあ、他の人に過去の失敗を聞いて回ろうよ。」
小林も僕も立ち上がっているが、僕の方が背は低い。僕の片腕は小林に掴まれていたが、その腕は小林の手から離れ、自由になっている。僕が小林のその態度に困惑していたら、小林は改めて僕に手を差し出し、口を開く。
「ほら、手、繋ごうよ?」
ギリ、と自らの歯が軋むのが僕だけに伝わる。そうだった。小林が僕の席によく行くようになり、彼女の友人に不審がられ、その友人に
『小林ちゃんは広川が好き』
という噂を流されたが小林はそれを逆に利用して僕へ距離を詰めた。もちろん、すべて惚れ薬の効果によって。
僕は、手を差し出し顔を赤らめながら笑う小林の手を、こみ上がる罪悪感によって泣き出すのを必死に我慢しながら握った。小林さん、ごめんなさい。僕の惚れ薬のせいで僕なんかに惚れさせてしまって本当にごめんなさい。
そして繫がれた手は小林の手によって恋人繋ぎに修正される。広川にとってこれは毒であるということを知らずに。
広川さん(選択なし・14さい)からの相談
とうこう日:2020年8月11日みんなの答え:3件
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すごすぎます... 自分と一歳しかちがわない人がこんなに上手な文を書いていると思うと、自分ももっと上を目指さなければいけないな、と思います...
情景描写のしかたや、物語の進め方がすごくうまくて、尊敬します!
めっちゃおもしろかったです!! ふるぅさん(滋賀・13さい)からの答え
とうこう日:2020年8月13日 -
....すごい 感情の表現の仕方とかストーリーとかもうすごい...
参考にさせてもらいます... otoufuさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2020年8月12日 -
おもしろい! 罪悪感の表現が上手ですね!なんかリアルでした!終わり方もいい感じでした!! ゆうさん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年8月12日
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