終電は消えて
「死んだらどうなると思う?」
深夜のホーム、ベンチに座って終電を待つ僕に、彼女は突然問いかけてきた。
「…死んだことないので分かりません。」
こう言うと、彼女は笑いだした。
「変なやつだな、君は。」
笑いながら言った彼女の言葉が、どうも僕には不快だった。
「なんですか、急に。」
「君こそ、何故ここにいるんだ?」
「なぜって…家に帰るんですよ。」
自分が苛立ち始めている、そう感じた。彼女も自分の感情を感じ取ったようで、
「そんな、カッカするなよ。泣いちゃうぞ?」
ニヤリとして言った。
彼女が僕のことを煽っているのか、それとも素でこういう感じなのかは、僕には分からなかった。
「電車が来るまで、君の話を聞かせてほしいな。」
「…話、ですか。」
自分の顔は僕には見えないが、きっと今、嫌な顔をしているだろう。
「人と話すのは苦手か?なら質問をしよう。君は答えるだけでいい。」
「…はぁ。」
我ながら間抜けた返事をしたものだ。
「では質問です。君はここに何をしにきた?」
「…それ、さっきも言いませんでしたか?」
「家に帰るんですよ。」
「なんで家に帰るんだ?」
「…家に帰れば、両親や、妹がいます。」
「君は家族に会うために、家に帰るのか。」
「…まあ、他にもいろいろ理由はありますけど、一番はそれですね。」
彼女はなぜだか、笑顔であった。
「ところで、君は随分と長いこと電車を待っていると思わないか?」
「…疲れてたら、時間の流れは…」
「そうか、そうか。」
彼女は僕の言葉を遮り、わざとらしく、感慨深そうに返事をする。
やはり、僕はこの人と馬が合わない。
「でも、不思議なものだね。」
「…何がですか。」
「だって今、終電が来ているよ?」
「…え…っ!?」
焦って立ち上がり、ホームの方を見る。
電車は来ていなかった。
いや、見えなかったのだ。
確かに線路から、音が聞こえる。
ガタン、ゴトン、と線路から響く音。パンタグラフが擦れる音。
確かに、目の前に乗るはずだった電車が走っている。
思い出した。
思い出したくなかった。
僕には家族がいて、家に帰ったら、出迎えてくれて。
早く帰りたい。早く帰りたい。
だから、この電車に乗らなくてはならない。
「そろそろ気づいただろう。」
彼女は不気味な笑いを浮かべていた。
「もう君が突き落とされてから何十年も経った。君の家族は、家になんていないよ。こちら側にいるんだ。」
誰かに押された。
落ちる、とはこういうものか。そう思った。
空中で自分は、実に無力だった。
気づいた時には真横から電車が迫ってきていた。
帰りたい。
帰りたかった。
帰らせてくれ。
「ほら、こっちへ。」
死神のように笑い、手を差し伸べる彼女。
本当に死神なのかもしれないと思えた。
「いや、違うな。」
僕の目を見て、雅な笑顔を見せた。
「お還りなさい。」
━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
もし死んだことに気づかなかったら、誰が助けてくれるのでしょうか。
あとがきが好評だったので、ちょっと書いてみることにしました。
今作は多分1番タイトルに迷いました。
タイトルから察せてしまうとちょっと寂しいので分かりづらく、でも最後にこれか!となるタイトルに…これがまた難しい。
元々最後の方は女の子視点に変更する予定だったのですが、謎にした方が面白いかなと思ってやめました。女の子は何を思ってるのか、想像してほしいです。 Hideさん(東京・14さい)からの相談
とうこう日:2020年8月13日みんなの答え:1件
深夜のホーム、ベンチに座って終電を待つ僕に、彼女は突然問いかけてきた。
「…死んだことないので分かりません。」
こう言うと、彼女は笑いだした。
「変なやつだな、君は。」
笑いながら言った彼女の言葉が、どうも僕には不快だった。
「なんですか、急に。」
「君こそ、何故ここにいるんだ?」
「なぜって…家に帰るんですよ。」
自分が苛立ち始めている、そう感じた。彼女も自分の感情を感じ取ったようで、
「そんな、カッカするなよ。泣いちゃうぞ?」
ニヤリとして言った。
彼女が僕のことを煽っているのか、それとも素でこういう感じなのかは、僕には分からなかった。
「電車が来るまで、君の話を聞かせてほしいな。」
「…話、ですか。」
自分の顔は僕には見えないが、きっと今、嫌な顔をしているだろう。
「人と話すのは苦手か?なら質問をしよう。君は答えるだけでいい。」
「…はぁ。」
我ながら間抜けた返事をしたものだ。
「では質問です。君はここに何をしにきた?」
「…それ、さっきも言いませんでしたか?」
「家に帰るんですよ。」
「なんで家に帰るんだ?」
「…家に帰れば、両親や、妹がいます。」
「君は家族に会うために、家に帰るのか。」
「…まあ、他にもいろいろ理由はありますけど、一番はそれですね。」
彼女はなぜだか、笑顔であった。
「ところで、君は随分と長いこと電車を待っていると思わないか?」
「…疲れてたら、時間の流れは…」
「そうか、そうか。」
彼女は僕の言葉を遮り、わざとらしく、感慨深そうに返事をする。
やはり、僕はこの人と馬が合わない。
「でも、不思議なものだね。」
「…何がですか。」
「だって今、終電が来ているよ?」
「…え…っ!?」
焦って立ち上がり、ホームの方を見る。
電車は来ていなかった。
いや、見えなかったのだ。
確かに線路から、音が聞こえる。
ガタン、ゴトン、と線路から響く音。パンタグラフが擦れる音。
確かに、目の前に乗るはずだった電車が走っている。
思い出した。
思い出したくなかった。
僕には家族がいて、家に帰ったら、出迎えてくれて。
早く帰りたい。早く帰りたい。
だから、この電車に乗らなくてはならない。
「そろそろ気づいただろう。」
彼女は不気味な笑いを浮かべていた。
「もう君が突き落とされてから何十年も経った。君の家族は、家になんていないよ。こちら側にいるんだ。」
誰かに押された。
落ちる、とはこういうものか。そう思った。
空中で自分は、実に無力だった。
気づいた時には真横から電車が迫ってきていた。
帰りたい。
帰りたかった。
帰らせてくれ。
「ほら、こっちへ。」
死神のように笑い、手を差し伸べる彼女。
本当に死神なのかもしれないと思えた。
「いや、違うな。」
僕の目を見て、雅な笑顔を見せた。
「お還りなさい。」
━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━ ━
もし死んだことに気づかなかったら、誰が助けてくれるのでしょうか。
あとがきが好評だったので、ちょっと書いてみることにしました。
今作は多分1番タイトルに迷いました。
タイトルから察せてしまうとちょっと寂しいので分かりづらく、でも最後にこれか!となるタイトルに…これがまた難しい。
元々最後の方は女の子視点に変更する予定だったのですが、謎にした方が面白いかなと思ってやめました。女の子は何を思ってるのか、想像してほしいです。 Hideさん(東京・14さい)からの相談
とうこう日:2020年8月13日みんなの答え:1件
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すごい! こういう系大好きなんです。
とっても面白かったです。 みー☆さん(埼玉・11さい)からの答え
とうこう日:2020年8月14日
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