好きだと届けられたなら【短編小説】
秋に近づいた頃の少しやわらかな風が、俺の髪と、心を揺らした_________
「ねぇ、駿斗(しゅんと)。」
…びっくりした。中学生になってから、お前に俺の名前を呼ばれた事なんて一度もなかったのに。
「何だよ」
「好きな人いる?」
言うはずないだろ。いや、言える訳ない。
幼稚園からの仲だが、俺が好きなのはお前だなんて、恥ずかしすぎて死んでも言えない。
「……いない」
つい、そう言ってしまった。
おそるおそる、表情をうかがう。
「だよね。駿斗のことだもん。急にごめん」
そう言い、微妙(びみょう)な笑顔を作って教室を出ていった。
「どうしたん?なっちゃーん」
「待って、私も行く〜」
アイツの友達が、後を追う。
「お〜い駿斗〜、何かあったんかよ?そんなことよりさぁ、マジであのクエストむずいんだって。クリアしたんなら、さっさとやり方教えろよ。」
「教えたところで、お前には一生無理だろうけど」
「はぁーん!?バカにすんじゃねーよ!さっさと教えろコイツぅ〜〜」
「…わかったわかった、教えるから。頭押すなよ」
俺は少し、後悔した。
本当のことを、言っておけばよかったか…
「明日行われる、体育祭について説明します。まず集合時間ですが…」
休み時間が終わり、担任が教卓に立って、話を始めた。
あぁ、面倒くさい。
俺は男子の中でも運動が得意な方だが、こういう行事は嫌いだ。
…待てよ、体育祭が終わった後にアイツに告るのはどうだろう。
女子は、こういうマンガ的な演出好きそうだし。良い考えかも。
俺は期待に胸を踊らせつつ、少し緊張していた。
「…ねぇ、駿斗。」
「何だよ」
「明日、体育祭だね。」
「だな。面倒くせぇ。」
「昔からこういう行事、嫌いだよね。駿斗は。」
「ハハっ。まぁな。」
「……あ、あの、あのね、私、ずっと前から駿斗のことが、す…」
「す?」
「す、すごいガキくさいなって、思ってたんだ。」
「…なんだよそれw俺ってガキじゃなくて、中2だから、中二病かもな。じゃ、またな」
「あ……じゃあね」
下校中、そんな他愛(たあい)のない会話をしていた。
でも、今はわからなかった。
告白しようとしていて、さっきまで話していた相手が、次の日この世を絶ってしまうことを。
「な、んで、だよ…」
俺はその話を聞いた瞬間、頭の中が混乱して、上手く言葉が出なかった。
アイツは下校中に、カーブに耐えきれなかった車に引かれ、そのまま病院に搬送されたが死亡が確認されたという。
「うわぁぁぁん、やだよぉぉ、絶対ウソだぁ、死んでなんかないよぉ〜」
「…まだ楽しい思い出も、たくさん残っていたのに…」
担任や2年4組のクラスメートたちが、涙を流しながらアイツの死を悔やんでいた。
俺も泣きたかった。
アイツの家まで、一緒に送っていってやっていたら、俺がカッコよくアイツの事をかばって、死ななかったかもしれない。
でも、泣かない。
だからといって、アイツの死が悲しくない訳じゃない。
俺まで悲しんだら、アイツが心配するからだ……
俺が出来る事はただ一つ、この体育祭で一位をとって、アイツに想いを伝えるだけだ。
____________________________
『…優勝は、2年4組。得点は、572点』
あぁ、終わった。
皆でアイツが死んだ悔やみを背負いつつ、一丸で頑張ってきた成果が、発揮された。
俺はタオルで汗を拭い、一呼吸置いた。
「夏実(なつみ)……」
俺は初めて、“アイツ”…そう、『夏実』の名を呼んだ。
そういえば、夏実が俺の名前を初めて呼んだのは、昨日のことだったなぁ…
昨日、夏実が帰りに本当に言おうとしていた言葉を、考えてみた。
『……あ、あの、あのね、私、ずっと前から駿斗のことが、好きなんだけど』
俺は、空に広がるオレンジ色の雲を見つめて、笑った。
「俺も、好きだ。夏実……」
****************************
投稿者のしばばんです。
文が長いのと、展開が速くなってしまいすみません!!
この物語は、読んでの通り、駿斗目線で書いてます。わかりにくいかもしれないですが…
もしよかったら、感想よろしくお願い致します。 しばばんさん(埼玉・13さい)からの相談
とうこう日:2020年9月12日みんなの答え:2件
「ねぇ、駿斗(しゅんと)。」
…びっくりした。中学生になってから、お前に俺の名前を呼ばれた事なんて一度もなかったのに。
「何だよ」
「好きな人いる?」
言うはずないだろ。いや、言える訳ない。
幼稚園からの仲だが、俺が好きなのはお前だなんて、恥ずかしすぎて死んでも言えない。
「……いない」
つい、そう言ってしまった。
おそるおそる、表情をうかがう。
「だよね。駿斗のことだもん。急にごめん」
そう言い、微妙(びみょう)な笑顔を作って教室を出ていった。
「どうしたん?なっちゃーん」
「待って、私も行く〜」
アイツの友達が、後を追う。
「お〜い駿斗〜、何かあったんかよ?そんなことよりさぁ、マジであのクエストむずいんだって。クリアしたんなら、さっさとやり方教えろよ。」
「教えたところで、お前には一生無理だろうけど」
「はぁーん!?バカにすんじゃねーよ!さっさと教えろコイツぅ〜〜」
「…わかったわかった、教えるから。頭押すなよ」
俺は少し、後悔した。
本当のことを、言っておけばよかったか…
「明日行われる、体育祭について説明します。まず集合時間ですが…」
休み時間が終わり、担任が教卓に立って、話を始めた。
あぁ、面倒くさい。
俺は男子の中でも運動が得意な方だが、こういう行事は嫌いだ。
…待てよ、体育祭が終わった後にアイツに告るのはどうだろう。
女子は、こういうマンガ的な演出好きそうだし。良い考えかも。
俺は期待に胸を踊らせつつ、少し緊張していた。
「…ねぇ、駿斗。」
「何だよ」
「明日、体育祭だね。」
「だな。面倒くせぇ。」
「昔からこういう行事、嫌いだよね。駿斗は。」
「ハハっ。まぁな。」
「……あ、あの、あのね、私、ずっと前から駿斗のことが、す…」
「す?」
「す、すごいガキくさいなって、思ってたんだ。」
「…なんだよそれw俺ってガキじゃなくて、中2だから、中二病かもな。じゃ、またな」
「あ……じゃあね」
下校中、そんな他愛(たあい)のない会話をしていた。
でも、今はわからなかった。
告白しようとしていて、さっきまで話していた相手が、次の日この世を絶ってしまうことを。
「な、んで、だよ…」
俺はその話を聞いた瞬間、頭の中が混乱して、上手く言葉が出なかった。
アイツは下校中に、カーブに耐えきれなかった車に引かれ、そのまま病院に搬送されたが死亡が確認されたという。
「うわぁぁぁん、やだよぉぉ、絶対ウソだぁ、死んでなんかないよぉ〜」
「…まだ楽しい思い出も、たくさん残っていたのに…」
担任や2年4組のクラスメートたちが、涙を流しながらアイツの死を悔やんでいた。
俺も泣きたかった。
アイツの家まで、一緒に送っていってやっていたら、俺がカッコよくアイツの事をかばって、死ななかったかもしれない。
でも、泣かない。
だからといって、アイツの死が悲しくない訳じゃない。
俺まで悲しんだら、アイツが心配するからだ……
俺が出来る事はただ一つ、この体育祭で一位をとって、アイツに想いを伝えるだけだ。
____________________________
『…優勝は、2年4組。得点は、572点』
あぁ、終わった。
皆でアイツが死んだ悔やみを背負いつつ、一丸で頑張ってきた成果が、発揮された。
俺はタオルで汗を拭い、一呼吸置いた。
「夏実(なつみ)……」
俺は初めて、“アイツ”…そう、『夏実』の名を呼んだ。
そういえば、夏実が俺の名前を初めて呼んだのは、昨日のことだったなぁ…
昨日、夏実が帰りに本当に言おうとしていた言葉を、考えてみた。
『……あ、あの、あのね、私、ずっと前から駿斗のことが、好きなんだけど』
俺は、空に広がるオレンジ色の雲を見つめて、笑った。
「俺も、好きだ。夏実……」
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投稿者のしばばんです。
文が長いのと、展開が速くなってしまいすみません!!
この物語は、読んでの通り、駿斗目線で書いてます。わかりにくいかもしれないですが…
もしよかったら、感想よろしくお願い致します。 しばばんさん(埼玉・13さい)からの相談
とうこう日:2020年9月12日みんなの答え:2件
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わぉ 衝撃でした…
まさか死んじゃうなんて。
人生何が起こるかわかったもんじゃないですね…。
悔いなく生きようと思います…。
文章、すごくわかりやすくて、感動しやすかったです!
次回作も楽しみにしてます! フルーツタルトさん(選択なし・13さい)からの答え
とうこう日:2020年9月13日 -
うわぁ〜ん!!悲しいよ〜!! とっっっってもいい作品でした!!
彼女が死んでしまうのは悲しいですが,
主人公のしゅんとくん
りょろう思いだったんだね,,,
あ〜見てる時,涙が出そうだったよ〜
とってもいい作品でした!!。
また新しい作品,出していただけると嬉しいです!! ぴかりんさん(東京・11さい)からの答え
とうこう日:2020年9月13日
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