ゼロのエースは人見知り。
「ドンッ」
私の投げたボールは宙を舞い、スポッと気持ち良くシュートが決まった。
すると、周りから決まって、歓声があがる。
「さすが、霊長類最強女子だなっ」
そう同じバスケ部の、風間淕(かざまりく)から言われると、私はどんな反応をすればよいか困るのだ。
___私は、市内の中学校に通うごく普通のJCの永瀬真夏(ながせまなつ)。
だが、小三からやってきたバスケは男女問わず誰にも負けない自信がある。
「やっぱ、真夏は凄いわ〜」
「ねぇっ。私にもダンクとシュート教えてよ!」
あっという間に、同級生達に囲まれる。
「え、えっと…」
私は、何と言えばいいのか、という気持ちと、普段話さない子から声をかけられたことの緊張で上手く返せない。
と。その様子を察した子達が「あー…」と言い、
「真夏ちゃん、人見知りだもんねっ。無理に聞かないほうが良いよ。いこっ」
そう言うと、皆「そっかー」と納得したように口々に言い私から離れて行った。
私は、完全に人がいなくなると「…ぶっはぁー」
とため息をついた。
私の短所。それは、『人見知り』という事だった。
みんなから、話し掛けられると緊張してしまい、さっきのようにうまく返せないのだ。
だから、部活内の女子の中で話せる子は一人もいない。
まぁ、辛うじて男子なら…。
と。
私は、後ろから肩を叩かれた。
「おつ!お前のおかげで、体育祭優勝杯ゲット〜」
そこにいたのは、先程も私に話し掛けた淕だった。
今日は、学年で体育祭がありその競技にバスケがあったのだ。
そして、私のクラスの四組は無事優勝…でも。
「何か、あんま嬉しくないんだよね。」
淕の前だと、つい本音が漏れる。
「えっ?何で」
驚いたように聞き返す淕の顔すら、人見知りが作動してまともに見れないまま答える。
「一致団結とか…ほんと無理。一人でバスケやりたいのに」
じゃあ、何で私は団体競技を選んだんだって話だけど。
それは、純粋にバスケが好きだから。
私は仲良しごっこをしにスポーツをやってる訳じゃない。
「ふーん…。でも、真夏は真夏らしくやってればいいとおもうよ?」
「私らしくって…」
「何よ」が続かない。
私は唯一話せる友達さえも失いたくないから。
でも、淕は「じゃっ」とマイペースに手を振って帰って行った。
私の、学校生活は常に「ゼロ」
だ。
楽しいことはバスケだけ。
でも、そのバスケでさえ、気持ちが「ゼロ」のままでやっている。
私はそれを、『ゼロの青春』と呼ぶ。
でも、そんな事も言える人がいない私は「ゼロ」だな。
夕焼けで赤みがかかった、一人ぼっちの体育館で私はそう思った__。
翌日。
今日は、部活がある日だ。
でも、もちろん体育館にいくまでずっと一人。
いつもは、このままユニホームに着替える…はずが。
「あのさ!」
突然目の前に、仁王立ちした女子がいた。
同じバスケ部の子で、私とは違って社交的でバスケも上手い、
吉野楓(よしのかえで)ちゃんだった。
よく見ると、楓ちゃんの後ろにバスケ部女子がずらーっと並んでいた。
「真夏みたいな、やる気のない奴が一番上手いとかバスケ部の恥なの!」
突然の「真夏呼び」にも驚いたしその言い草に腹が立ちもした。
と…。
「だから、私とシュートで対決しましょ!どっちが一番か決めるから」
「え?」
私が答える間も与えず、楓ちゃんと女子達は、対決の準備に取り掛かってた。
「私は、やるかなんて…」
「拒否権なしだからっ」
そうバシッと言われ、何も言い返せなかった。
そして__。
「勝負は一回きり。私からね」
そう楓ちゃんは、言うとしっからりとしたフォームで構える。
そして…。
「シュパッ……ドンッ」
見事、シュートが入った。
女子達はキャーッと声をあげた。
冷や汗が出てるのが分かる。
楓ちゃんは、私を見据えると勝ち気な表情で言った。
「次どうぞ?」
体が強張る。いつもより、ガチガチに緊張しながらボールを受けとる今の自分は私じゃない。
(バスケってこんな、嫌になるものだったっけ…)
体が思うように動かない中、私は構え。「シュッ…」投げた。
…だが。
ボールは、あと少しのところで、入らなかった。
「あ…」
後ろを向きたくなくて、ただ立ち尽くす…と。
「ザ〜コ。これで、誰が一番か分かったよね?」
悔しくて。腹が立って。
(バスケなんか大嫌い…)
瞳に溜まった涙が溢れ出しそうになった。
「私から…」
私は呟きのように言った。
「は?」
聞き返す楓を一睨みし、私は言い放った。
「私からバスケを奪うな!」
そう、怒鳴ると楓は怯んだように一歩下がる。
私はゼロでも、別に良いから。
でも、一パーセントでも残ってるバスケを奪ってほしくない。
私はゼロのエースでも、自分らしくバスケがしたい。
ただ、それだけ__。END
ゆにっこ。さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年9月20日みんなの答え:6件
私の投げたボールは宙を舞い、スポッと気持ち良くシュートが決まった。
すると、周りから決まって、歓声があがる。
「さすが、霊長類最強女子だなっ」
そう同じバスケ部の、風間淕(かざまりく)から言われると、私はどんな反応をすればよいか困るのだ。
___私は、市内の中学校に通うごく普通のJCの永瀬真夏(ながせまなつ)。
だが、小三からやってきたバスケは男女問わず誰にも負けない自信がある。
「やっぱ、真夏は凄いわ〜」
「ねぇっ。私にもダンクとシュート教えてよ!」
あっという間に、同級生達に囲まれる。
「え、えっと…」
私は、何と言えばいいのか、という気持ちと、普段話さない子から声をかけられたことの緊張で上手く返せない。
と。その様子を察した子達が「あー…」と言い、
「真夏ちゃん、人見知りだもんねっ。無理に聞かないほうが良いよ。いこっ」
そう言うと、皆「そっかー」と納得したように口々に言い私から離れて行った。
私は、完全に人がいなくなると「…ぶっはぁー」
とため息をついた。
私の短所。それは、『人見知り』という事だった。
みんなから、話し掛けられると緊張してしまい、さっきのようにうまく返せないのだ。
だから、部活内の女子の中で話せる子は一人もいない。
まぁ、辛うじて男子なら…。
と。
私は、後ろから肩を叩かれた。
「おつ!お前のおかげで、体育祭優勝杯ゲット〜」
そこにいたのは、先程も私に話し掛けた淕だった。
今日は、学年で体育祭がありその競技にバスケがあったのだ。
そして、私のクラスの四組は無事優勝…でも。
「何か、あんま嬉しくないんだよね。」
淕の前だと、つい本音が漏れる。
「えっ?何で」
驚いたように聞き返す淕の顔すら、人見知りが作動してまともに見れないまま答える。
「一致団結とか…ほんと無理。一人でバスケやりたいのに」
じゃあ、何で私は団体競技を選んだんだって話だけど。
それは、純粋にバスケが好きだから。
私は仲良しごっこをしにスポーツをやってる訳じゃない。
「ふーん…。でも、真夏は真夏らしくやってればいいとおもうよ?」
「私らしくって…」
「何よ」が続かない。
私は唯一話せる友達さえも失いたくないから。
でも、淕は「じゃっ」とマイペースに手を振って帰って行った。
私の、学校生活は常に「ゼロ」
だ。
楽しいことはバスケだけ。
でも、そのバスケでさえ、気持ちが「ゼロ」のままでやっている。
私はそれを、『ゼロの青春』と呼ぶ。
でも、そんな事も言える人がいない私は「ゼロ」だな。
夕焼けで赤みがかかった、一人ぼっちの体育館で私はそう思った__。
翌日。
今日は、部活がある日だ。
でも、もちろん体育館にいくまでずっと一人。
いつもは、このままユニホームに着替える…はずが。
「あのさ!」
突然目の前に、仁王立ちした女子がいた。
同じバスケ部の子で、私とは違って社交的でバスケも上手い、
吉野楓(よしのかえで)ちゃんだった。
よく見ると、楓ちゃんの後ろにバスケ部女子がずらーっと並んでいた。
「真夏みたいな、やる気のない奴が一番上手いとかバスケ部の恥なの!」
突然の「真夏呼び」にも驚いたしその言い草に腹が立ちもした。
と…。
「だから、私とシュートで対決しましょ!どっちが一番か決めるから」
「え?」
私が答える間も与えず、楓ちゃんと女子達は、対決の準備に取り掛かってた。
「私は、やるかなんて…」
「拒否権なしだからっ」
そうバシッと言われ、何も言い返せなかった。
そして__。
「勝負は一回きり。私からね」
そう楓ちゃんは、言うとしっからりとしたフォームで構える。
そして…。
「シュパッ……ドンッ」
見事、シュートが入った。
女子達はキャーッと声をあげた。
冷や汗が出てるのが分かる。
楓ちゃんは、私を見据えると勝ち気な表情で言った。
「次どうぞ?」
体が強張る。いつもより、ガチガチに緊張しながらボールを受けとる今の自分は私じゃない。
(バスケってこんな、嫌になるものだったっけ…)
体が思うように動かない中、私は構え。「シュッ…」投げた。
…だが。
ボールは、あと少しのところで、入らなかった。
「あ…」
後ろを向きたくなくて、ただ立ち尽くす…と。
「ザ〜コ。これで、誰が一番か分かったよね?」
悔しくて。腹が立って。
(バスケなんか大嫌い…)
瞳に溜まった涙が溢れ出しそうになった。
「私から…」
私は呟きのように言った。
「は?」
聞き返す楓を一睨みし、私は言い放った。
「私からバスケを奪うな!」
そう、怒鳴ると楓は怯んだように一歩下がる。
私はゼロでも、別に良いから。
でも、一パーセントでも残ってるバスケを奪ってほしくない。
私はゼロのエースでも、自分らしくバスケがしたい。
ただ、それだけ__。END
ゆにっこ。さん(選択なし・12さい)からの相談
とうこう日:2020年9月20日みんなの答え:6件
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うわ何これ好き でもなんか、楓ちゃんも好きなんだよね私。キャラ性が、とかの話じゃなくて、この子も真剣にバスケやってんだろうなぁとか思ったらなんか複雑でした(笑)
まぁそこが学校ものの面白いとこですよね!オフィス物とかにはない、思春期特有のムズムズした感じ。
ゆにちゃんはそれを表現できてて、すっごく尊敬します(*´ω`*)
あ、花言葉なんですが、私は気になった花をGoogle先生にお聞きしてる感じです。あとは逆引きもできるのでそれで。参考になればと思います!
次作も楽しみにしていますね♪ 臣 さん(長野・14さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
えっっ何億万円あれば買えますか…? こんにちは(´∀`*)
ましろです!
改めて思ったんやけど……「ゆに」ってめちゃくちゃ可愛いやん。(笑)
本題入ります〜〜
楓ちゃん………
アァ!?なんやともういっぺん言ってみろやゴルァ!
……て思った。(笑)
「ゼロのエース」ってめっちゃ好き(*`ω´*)
なんか短い中でもしっかりストーリーがあって凄いよねぇ!
やっぱゆにちゃんが書く小説好きだわ。
これからも応援させてくださいね〜〜
ましろさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
元みおりぬ☆のあさり☆です! やばいっ!ウマすぎ!
ナニソノ表現!私には思い付かん!
ゆにちゃんの語彙の多さで
私の語彙の無さがシミジミ伝わる…
え、本当にゆにちゃんスゴッ!
ゼロのエースって表現からド好み!
真夏ちゃんの人見知りって性格
私と一緒だから共感しまくり!!
最後、真夏ちゃんがスパッと言えて
良かった!私なら悔しくて泣いちゃう
かも…情けない))
人見知りでもバスケの一番になる
資格はあるもんね!
楓ちゃんが決めることじゃないし!
めっちゃスカッとしたし真夏ちゃんが
成長した姿を見れて良かった♪
とても最高な小説をありがとう!! あさり☆さん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
うん。 うん。ゆに様は天才だね。うん。
楓さんなんかヤダね(`^´)
でも真夏ちゃんの強い気持ちが出てて良かった!!
あと…クソ関係ないけど、永瀬っていう名字が羨ましい((
漆黒ってニックネームにいれるくらいまじ永瀬っていう名字が羨ましい((は
これからもゆにっ“娘”です!!
(勝手につけた((殴でもけっこうよくないすか!!) 紫と漆黒(ゆは)さん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
ゆにっこさ〜ん! こんにちは。まるもっこです=(^.^)=
今回も凄かったです!最後、自分の気持ちを相手に
言えたシーンは感動しました。
なんというか自分の意見を始めていった瞬間でしたよね!
バスケのゴールが入るときの効果音が好きっ。
シュッ、スポッ。最高!ホント最高でした♪
次作も楽しみに待っています♪( ´▽`)
それでは〜( ´ ▽ ` )ノ まるもっこ(元ナスビ)さん(神奈川・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
えぇぇーっめっちゃいいー! あーやです^^*
凄いー!
めっちゃいい!好きー!
てか語彙力凄すぎない!?
読みやすいし内容面白いし、天才!
応援してるよ!
次の作品も楽しみにしてるね(*^^*) あーやさん(東京・13さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日
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-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
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