自信を持って、好きと伝えたい。
「距離を置きたいの」
そう彼女に言われたときは、とても驚いた。
順調に恋人をしている…そう思っていたのは僕だけだったの?
問うと彼女は、
「私じゃふさわしくないよ」
と言った。
「そんなの気にしなくて良い…!僕は君が好きだからっ」
必死にそう伝えても、彼女の意思は変わらなかった。
僕の彼女は、ぽっちゃり系といわれる女の子だった。対して僕は、ありがたいことに、他人にイケメンだと言われる容姿。
でも生まれ持ったこの容姿には、たくさんの女の子が寄ってくる。
その中には悪質なファンの子もいて…彼女はその子たちに、嫌がらせを受けていたらしい。
彼女は、女の子に興味のなかった僕に、初恋を教えてくれた人。好きになって、猛アタックして…やっと恋人になれた。
なのに…なんで。
距離を置きはじめてからも、僕は彼女を見つめていた。
―――今までよりも、ずいぶん遠くから。
ずっと見つめていると、彼女の変化に気がついた。
ある日、彼女がメイクを始めて。
髪型に気をつけ始めて。
だんだん痩せていって。
制服をお洒落に着こなすようになって。
気がついたときには、ぽっちゃり系なんて女の子じゃなくなっていて。
…彼女は綺麗で可愛い、女優みたいな女の子になっていた。
でも彼女の隣に、僕はいなくて。
別の人のために可愛くなったのかな、なんて悲しくなって。
それでも僕は、彼女と距離を置かなくてはいかなかった。
だんだん見つめるのが辛くなっていって、もう諦めてしまいたいと思ってしまったある日のこと。
『放課後、話したいことがあります。中庭で待ってます』
というLINEが来た。
送ってきたのは彼女で。えっ、という声を漏らしてしまうほど驚いたくせに、
『わかった』
という素っ気ない返事をしてしまう。
なんだろう。また恋人らしい関係に戻れる?という期待の裏側で、
(今さらちゃんと、フラれるのかな)
そんな恐怖を感じた。
放課後になって、急いで中庭に向かう。中庭に着くと、既に彼女の姿があった。
「お待たせ、…っ」
彼女の下の名前を呼ぼうとして、でもなんとなく気まずくて。結局名前自体を呼べずに口を閉ざす。
「ううん、来てくれてありがとう。あの、ね」
話せて嬉しいのに、何を言われるのか怖い。
…でも彼女の言葉は少し、意外なもので。
「見せたいものが、あるの」
こっち、という彼女に、中庭にある花壇の前に連れて来られる。
「これ、なんだけど」
彼女が指差したのは、白い薔薇だった。花壇の端に、ちょこんと居座る白い薔薇。
でも、この花壇の中で一番美しいと感じた。
「私が界人くんに、距離を置こうって言ったときがあったでしょ?」
かいとくん、と彼女の口が僕の名を呼ぶ。自分の名前はこんなに綺麗な響きだっただろうか、と思う。
うん、と返事をすると、
「そのちょっと前にね、これの花言葉を知ったの。それから私がお世話してて」
と彼女が言った。
花言葉…なんだろう。色んな花は見ているけれど、花言葉など1つも知らないような気がする。
「白い薔薇の花言葉はね」
少し間を置いて、彼女は続けた。
「…私はあなたにふさわしい」
ふさわしい…どこかで聞いた響きだなと思って、彼女と距離を置くことになった日のことを思い出す。
『私じゃふさわしくないよ』
そう言っていた彼女。
…目の前の彼女は、あの頃の彼女とは違う。
ねぇ界人くん、と彼女が僕を呼ぶ。
彼女の目を見つめると、彼女は泣きそうな笑みを浮かべて口を開いた。
「私、界人くんにふさわしい女の子に、なれた…?」
彼女の言葉を聞いて、僕の方まで涙を誘われて。
彼女の背中に手を回して、ぎゅうっと抱きしめる。
「君はずっとずっと、僕にふさわしかったよ」
むしろ僕の方が、君にふさわしいか不安になるほど。
でも今彼女が求めているのは、こんな言葉じゃなくて。
「でも今はもっとふさわしくなったから、これからは僕のそばにずっとずっといて。ね?」
僕が言いたいのはこの言葉で、自惚れかもしれないけど、彼女が求めている言葉もこれだと感じて。…声は少し、震えてしまった。
「うんっ…」
彼女は僕の胸から顔を上げて、少し涙を流しながら頷いた。
「界人くん、大好きだよ」
彼女は綺麗な笑顔でそう言って。
僕も笑顔で、
「僕も、大好きだよ」
彼女にそう言って笑いかけた。 END
読んでくださりありがとうございます!とても長くて申し訳ない…楽しんでいただければ幸いです。
臣です。おみ、と読みます。可愛くなりたい女の子のお話は以前から書きたかったのですが、白薔薇の花言葉を知って、書くことにしました。
感想やアドバイス、お待ちしています。喜んで読みます!
※なりすまし・盗作等は本当に悲しいです。絶対にやめてください。 臣 さん(長野・14さい)からの相談
とうこう日:2020年9月20日みんなの答え:11件
そう彼女に言われたときは、とても驚いた。
順調に恋人をしている…そう思っていたのは僕だけだったの?
問うと彼女は、
「私じゃふさわしくないよ」
と言った。
「そんなの気にしなくて良い…!僕は君が好きだからっ」
必死にそう伝えても、彼女の意思は変わらなかった。
僕の彼女は、ぽっちゃり系といわれる女の子だった。対して僕は、ありがたいことに、他人にイケメンだと言われる容姿。
でも生まれ持ったこの容姿には、たくさんの女の子が寄ってくる。
その中には悪質なファンの子もいて…彼女はその子たちに、嫌がらせを受けていたらしい。
彼女は、女の子に興味のなかった僕に、初恋を教えてくれた人。好きになって、猛アタックして…やっと恋人になれた。
なのに…なんで。
距離を置きはじめてからも、僕は彼女を見つめていた。
―――今までよりも、ずいぶん遠くから。
ずっと見つめていると、彼女の変化に気がついた。
ある日、彼女がメイクを始めて。
髪型に気をつけ始めて。
だんだん痩せていって。
制服をお洒落に着こなすようになって。
気がついたときには、ぽっちゃり系なんて女の子じゃなくなっていて。
…彼女は綺麗で可愛い、女優みたいな女の子になっていた。
でも彼女の隣に、僕はいなくて。
別の人のために可愛くなったのかな、なんて悲しくなって。
それでも僕は、彼女と距離を置かなくてはいかなかった。
だんだん見つめるのが辛くなっていって、もう諦めてしまいたいと思ってしまったある日のこと。
『放課後、話したいことがあります。中庭で待ってます』
というLINEが来た。
送ってきたのは彼女で。えっ、という声を漏らしてしまうほど驚いたくせに、
『わかった』
という素っ気ない返事をしてしまう。
なんだろう。また恋人らしい関係に戻れる?という期待の裏側で、
(今さらちゃんと、フラれるのかな)
そんな恐怖を感じた。
放課後になって、急いで中庭に向かう。中庭に着くと、既に彼女の姿があった。
「お待たせ、…っ」
彼女の下の名前を呼ぼうとして、でもなんとなく気まずくて。結局名前自体を呼べずに口を閉ざす。
「ううん、来てくれてありがとう。あの、ね」
話せて嬉しいのに、何を言われるのか怖い。
…でも彼女の言葉は少し、意外なもので。
「見せたいものが、あるの」
こっち、という彼女に、中庭にある花壇の前に連れて来られる。
「これ、なんだけど」
彼女が指差したのは、白い薔薇だった。花壇の端に、ちょこんと居座る白い薔薇。
でも、この花壇の中で一番美しいと感じた。
「私が界人くんに、距離を置こうって言ったときがあったでしょ?」
かいとくん、と彼女の口が僕の名を呼ぶ。自分の名前はこんなに綺麗な響きだっただろうか、と思う。
うん、と返事をすると、
「そのちょっと前にね、これの花言葉を知ったの。それから私がお世話してて」
と彼女が言った。
花言葉…なんだろう。色んな花は見ているけれど、花言葉など1つも知らないような気がする。
「白い薔薇の花言葉はね」
少し間を置いて、彼女は続けた。
「…私はあなたにふさわしい」
ふさわしい…どこかで聞いた響きだなと思って、彼女と距離を置くことになった日のことを思い出す。
『私じゃふさわしくないよ』
そう言っていた彼女。
…目の前の彼女は、あの頃の彼女とは違う。
ねぇ界人くん、と彼女が僕を呼ぶ。
彼女の目を見つめると、彼女は泣きそうな笑みを浮かべて口を開いた。
「私、界人くんにふさわしい女の子に、なれた…?」
彼女の言葉を聞いて、僕の方まで涙を誘われて。
彼女の背中に手を回して、ぎゅうっと抱きしめる。
「君はずっとずっと、僕にふさわしかったよ」
むしろ僕の方が、君にふさわしいか不安になるほど。
でも今彼女が求めているのは、こんな言葉じゃなくて。
「でも今はもっとふさわしくなったから、これからは僕のそばにずっとずっといて。ね?」
僕が言いたいのはこの言葉で、自惚れかもしれないけど、彼女が求めている言葉もこれだと感じて。…声は少し、震えてしまった。
「うんっ…」
彼女は僕の胸から顔を上げて、少し涙を流しながら頷いた。
「界人くん、大好きだよ」
彼女は綺麗な笑顔でそう言って。
僕も笑顔で、
「僕も、大好きだよ」
彼女にそう言って笑いかけた。 END
読んでくださりありがとうございます!とても長くて申し訳ない…楽しんでいただければ幸いです。
臣です。おみ、と読みます。可愛くなりたい女の子のお話は以前から書きたかったのですが、白薔薇の花言葉を知って、書くことにしました。
感想やアドバイス、お待ちしています。喜んで読みます!
※なりすまし・盗作等は本当に悲しいです。絶対にやめてください。 臣 さん(長野・14さい)からの相談
とうこう日:2020年9月20日みんなの答え:11件
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11件中 1 〜 10件を表示
-
いや、何か、すごい! どうも、鈴木爆撃機です。
語彙力がなくてすごいしか出てきませんが、自分が知っている言葉でこの小説を表すなら、「お洒落」でしょうか。
花言葉がテーマってだけでもうお洒落ですよね。
後、「えっ、という声を漏らしてしまうほど驚いたくせに、 『わかった』 という素っ気ない返事をしてしまう。 」
こんな表現が出来る時点でもうすごいです。
あれ、臣さん中学生ですよね?めちゃくちゃもう語彙力がお洒落(?)ですよね。
以上、語彙力無さすぎお兄さんでした。 鈴木爆撃機さん(三重・13さい)からの答え
とうこう日:2020年11月6日 -
す、すごい!!! 先の結末が気になるけど、その衝動をなんとかおさえつつ、1行ずつスクロールして読みました。
花言葉とか、ステキすぎたろっっ!!もう花言葉とかもうステキっっ!!
女の子が界人くんにふさわしくなりたいから距離を置いたって…女の子かわいすぎる!!ぽっちゃりだったのが女優さんみたいにかわったって、ホントに界人くんのことが好きだったんだね…。
あぁもうステキっ。臣さんのファンになりました!応援してます!! ジュビさん(埼玉・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月28日 -
なんてロマンチック…!! こんちわ!エナガ大好きなシマエナガでーす!
ひゃー!また素晴らしい小説を…!ありがとうございやっす!!
アドバイス?そんなの無い!
憧れの先輩です!
では、さいなぁら! シマエナガさん(選択なし・11さい)からの答え
とうこう日:2020年9月22日 -
今回も良かった! もうファンですね。
小説って書くのムズいけど、臣さんのは超一イイ!
花言葉とかの意味があるやつ、私好き!
次回も楽しみにしてるよ。 青井〜。さん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月22日 -
すごいわっ!臣さん天才! こんにちは!たみです!
最後の方まですごーく上手かったです!!
男の子が主役とは珍しいですね!
そしてキュンキュン!
私、何回も臣さんのいろんな小説を読んでるんですが、やっぱりいいですね!
そして、私の小説にも感想ありがとうございます!嬉しく読みました!(#^.^#)
はい、タイトルに言ったとうり、臣さんは天才です!
長すぎてすみませんっ!
次の小説も楽しみにしています!!
そして一言!
頑張れ!応援してるよ!臣さん! たみさん(選択なし・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
う一ん… ず一っと花言葉系だとあきちゃうから、
たまには変えないと!
ガンバ! ゆはたこ(ゆは)さん(千葉・12さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
スゴイ!!!!!!!!!!!!!!!!! 臣ちゃんこんばんは!
今回もスゴくいい話!
恋愛系もいいね!
また読みたい!!!
!!が多くてごめんね!
次も絶対読むね! ゆゆーさん(東京・11さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
まって今回もさすがすぎる好き ありぴーです!
いやあ…さすがすぎて何も言えない。
すごい。上手い。本当にうますぎです!!
長いのなんて全然!
めちゃくちゃ楽しめましたよ!!
結末どうなるのかなって思ったけど、なるほど!
いい話ですね!!
私も、可愛くなりたい女の子の話好きです。
いつも思うんですけど、花言葉って調べてるんですか?
私が知らない花言葉ばっかりなので、勉強になるんですが笑、どこで知るのかなって気になってます。
次回作も楽しみに待ってますー!!!
本当に好きです…大ファンです… ありぴーさん(愛知・13さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
やっば! マジですごい!まさか彼女は界人にふさわしくなるために距離を…!?
花言葉は絶対現実でもやばい! SAKURAさん(神奈川・11さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日 -
元みおりぬ☆のあさり☆です! わっしょーーーっい!
ハイテンションな、あさり☆です!
(いつもだろー!って思った?(笑))
はい!今作も素晴らしすぎる小説!
いやぁ、今作も最高すぎて!!
もっと臣ちゃんのスゴさを言葉で
表したいのに語彙力の無さが……
何かに感動した時に「かわいい」
「すごい」とかの単語しか言えない
のって語彙力ない証拠らしいね…
(↑まさに私のことだ><;)
まぁまぁとにかく、語彙力ないけど
尊敬してるってことだけは知って
おいて!今作も最高でした!! あさり☆さん(選択なし・14さい)からの答え
とうこう日:2020年9月21日
11件中 1 〜 10件を表示
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- 【「相談するとき」「相談の答え(回答)を書くとき」のルール】をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
-
- 「短編小説投稿について」をかならず読んでから、ルールを守って投稿してください。
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- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
個人 を判断 することが出来ないため、削除依頼 には対応することは出来ません。投稿しても問題ない内容かよく確認してください。
- キッズなんでも相談では、投稿されたユーザーの
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